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「砂喰らう男」 ごきげんよう、諸君。 私はダルタニア・イーヴァルカーン。 今宵は、一人の魔法使いの話をしよう。 彼は、非常に優秀な退魔師で、多くの魔を討ち滅ぼしてきた。 伝説になるほどに。 しかし、彼の伝説は突如終わる。 一人のアヤカシに負けたとき。 そして、そのアヤカシは・・・彼が、退魔師になる目的でもあった。 さて、今宵はその退魔師の物語を語るとしよう。 彼が彼になった物語を。 ・・・一番古い記憶は、炎に焼かれた自らの家。 俺を逃がすために死んだ父と母の姿。 その、俺が退魔師をしている理由。 炎に焼かれて死んだ両親と、炎の向こうで笑っていた誰か。 その誰かがアヤカシである、ということは祖父が教えてくれた。 祖父は、非常に優秀な退魔師だった。 そして、俺にもその才能は受け継がれていたらしい。 祖父から教わったのは、戦うための術と、護るための術。 力をつけ、術という牙を手に入れた俺は、アヤカシを葬り続けた。 いつか、仇を討てると信じて。 そのアヤカシ退治はいつも通りのはずだった。 ナイトワーデンとやらから派遣された他のメンバーを置いて、一人先走る。 俺の術で殺せない相手はいない。その傲慢さもあったのだろう。 そして、そのアヤカシを捕捉する。 それは・・・忘れもしない、あのアヤカシだった。 自らの最大の力で攻撃を仕掛けた。 しかし、その術は・・・いとも簡単になぎ払われる。 ちょんと指で弾いた。相手からすると、その程度の認識なんだろう。 はじき返された術で、俺は致命傷を負い。 負けた、という事実を一瞬で理解する。 追い求めてきた相手に、俺は再び負けたのだ。 ・・・そして、父たちと同様に、俺は死を迎えるのだろう。 覚悟を決めた瞬間だった。 俺と、アヤカシの間に誰かが割り込む。 「独断専行とは感心しないな、魔法使い!」 ナイトワーデンから派遣されたという男だった。 「責任追及は後だ。生き残るぞ!」 男は言い放ち、俺を護りながら、その場から離脱した。 安全な場所にたどり着いたが、俺の状態は最悪だった。 俺をみた、タタラもマヤカシも、10人中10人が助からないと言うだろうほどに。 ・・・しかし。 ・・・死にたくない。 ・・・仇を・・・討つまでは・・・! そうして、俺は蘇る。 ・・・失ったのは、戦うための術。 得たものは、砂の体。 残ったものは、護るための術。 男に、ナイトワーデンに誘われた。 「お前さんは、同じ間違いをしない男だろう? 剣を護るための盾。何かを倒すなら、それも力だ。」 それだけを言って、彼は俺を魔術師として、ナイトワーデンに推挙した。 そして、俺は今も戦い続ける。 例え、仇を討つのが自らの力でなかったとしても。 例え、砂を喰らってでも。 俺は生き、戦い続けてやる・・・! ・・・さて、ここまでが、彼が彼になるまでの物語。 続き? それは、まだ紡がれていない物語なのだよ。 私も一人の読者として、ぜひ読ませていただきたいものだがね。 彼は復讐を果たせるのか? 復讐を果たしたとして、その後、如何に生きていくのか? ふふふ、とても興味深いね。 願わくば、彼の物語の終焉が、幸福で彩られんことを。 それでは、御機嫌よう。 君も良い物語を。
「砂喰らう男」 ごきげんよう、諸君。 私はダルタニア・イーヴァルカーン。 今宵は、一人の魔法使いの話をしよう。 彼は、非常に優秀な退魔師で、多くの魔を討ち滅ぼしてきた。 伝説になるほどに。 しかし、彼の伝説は突如終わる。 一人のアヤカシに負けたとき。 そして、そのアヤカシは・・・彼が、退魔師になる目的でもあった。 さて、今宵はその退魔師の物語を語るとしよう。 彼が彼になった物語を。 ・・・一番古い記憶は、炎に焼かれた自らの家。 俺を逃がすために死んだ父と母の姿。 その、俺が退魔師をしている理由。 炎に焼かれて死んだ両親と、炎の向こうで笑っていた誰か。 その誰かがアヤカシである、ということは祖父が教えてくれた。 祖父は、非常に優秀な退魔師だった。 そして、俺にもその才能は受け継がれていたらしい。 祖父から教わったのは、戦うための術と、護るための術。 力をつけ、術という牙を手に入れた俺は、アヤカシを葬り続けた。 いつか、仇を討てると信じて。 そのアヤカシ退治はいつも通りのはずだった。 ナイトワーデンとやらから派遣された他のメンバーを置いて、一人先走る。 俺の術で殺せない相手はいない。その傲慢さもあったのだろう。 そして、そのアヤカシを捕捉する。 それは・・・忘れもしない、あのアヤカシだった。 自らの最大の力で攻撃を仕掛けた。 しかし、その術は・・・いとも簡単になぎ払われる。 ちょんと指で弾いた。相手からすると、その程度の認識なんだろう。 はじき返された術で、俺は致命傷を負い。 負けた、という事実を一瞬で理解する。 追い求めてきた相手に、俺は再び負けたのだ。 ・・・そして、父たちと同様に、俺は死を迎えるのだろう。 覚悟を決めた瞬間だった。 俺と、アヤカシの間に誰かが割り込む。 「独断専行とは感心しないな、魔法使い!」 ナイトワーデンから派遣されたという男だった。 「責任追及は後だ。生き残るぞ!」 男は言い放ち、俺を護りながら、その場から離脱した。 安全な場所にたどり着いたが、俺の状態は最悪だった。 俺をみた、タタラもマヤカシも、10人中10人が助からないと言うだろうほどに。 ・・・しかし。 ・・・死にたくない。 ・・・仇を・・・討つまでは・・・! そうして、俺は蘇る。 ・・・失ったのは、戦うための術。 得たものは、砂の体。 残ったものは、護るための術。 男に、ナイトワーデンに誘われた。 「お前さんは、同じ間違いをしない男だろう? 剣を護るための盾。何かを倒すなら、それも力だ。」 それだけを言って、彼は俺を魔術師として、ナイトワーデンに推挙した。 そして、俺は今も戦い続ける。 例え、仇を討つのが自らの力でなかったとしても。 例え、砂を喰らってでも。 俺は生き、戦い続けてやる・・・! ・・・さて、ここまでが、彼が彼になるまでの物語。 続き? それは、まだ紡がれていない物語なのだよ。 私も一人の読者として、ぜひ読ませていただきたいものだがね。 彼は復讐を果たせるのか? 復讐を果たしたとして、その後、如何に生きていくのか? ふふふ、とても興味深いね。 願わくば、彼の物語の終焉が、幸福で彩られんことを。 それでは、御機嫌よう。 君も良い物語を。

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