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第八十四話「再会の姫」


ウルトラマンゼロの使い魔
第八十四話「再会の姫」
地殻怪地底獣ティグリス 登場



 剣と魔法の世界ハルケギニアで、侍の格好をした奇妙奇天烈な姫君、クリスティナ・ヴァーサ・
リクセル・オクセンシェルナがトリステイン魔法学院にやってきた翌日。クリスは正式にルイズらの
クラスに編入を果たした。生徒たちは当然ながら、見たこともない出で立ちで、デバンという奇怪な
生物を使い魔にしているクリスに奇異の目を向けていた。
 そして同日、クリスはアンリエッタへと、トリステインの魔法学院への留学に際して便宜を
図ってもらったことの礼を言うために、トリスタニアの王宮へと向かうこととなった。そして
王宮までの案内兼護衛役として、アンリエッタと特に親しい間柄のルイズと才人が同行することとなった。
 そういうことで現在、ルイズたち一行はトリスタニアへと足を運んでいた。

「ああ、クリス! それにルイズと、サイトさんも! 来てくれたのね!」
 王宮のアンリエッタへのお目通りが認可され、彼女の私室で対面すると、アンリエッタは
弾んだ声を出して一行を歓迎した。
「アンリエッタ女王陛下もご機嫌麗しく。お目通り感謝致します」
「ふふッ! そんなに畏まらなくていいのよ。いま、ここにはわたくししかいませんもの」
 クリスが恭しく頭を下げると、アンリエッタはおかしそうにそう言った。
「改めて、ようこそ、トリステイン王国へ。歓迎するわ、わたくしのお友達、クリス」
「……ははッ!」
 アンリエッタが「友達」と呼ぶと、クリスもおかしそうに笑った。
「そうだな、小うるさい皆もいないし堅苦しいことは抜きにしよう。アンリエッタ、この度は
本当に世話になった。お陰で学院での生活も不自由なく送れる」
「いいえ、わたくしは何も。あなたの人徳よ」
 クリスとアンリエッタが対等に言葉を交わす様子を目の当たりにして、クリスの後方に
控えるルイズがぽつりとつぶやいた。
「クリス、ほんとに姫さまのご友人だったのね……」
 すかさず才人が突っ込む。
「何だルイズ、信じてなかったのか?」
「まぁ、正直に言うと、半信半疑だったわね。だって、姫さまとクリスのイメージは、今一つ
結びつかなかったんだもの」
「へぇ。ま、気持ちは分からなくもないけどな」
 かく言う才人だって、クリスがアンリエッタの友と自称してから、こうして直に二人の関係を
目にするまでにわかに信じられなかった。絵に描いたようなファンタジーのお姫さまのアンリエッタと、
クリスはある意味で対極だったのだから、本心から信じられないのも無理のないことなのかもしれない。
 クリスからお礼を告げられたアンリエッタは、次にルイズと才人の方を向いた。
「ルイズ、わたくしの元までクリスを連れてきてくれたこと、感謝します。わたくしから
改めて紹介するけれど、クリスはわたくしの数少ない対等な立場のお友達なの。留学中、
どうかクリスのことをお願いするわね」
「は、はい! 姫さま、ご安心下さい。不肖ルイズ・フランソワーズ、どんな時もクリスティナ・
リクセル姫のお力になることを姫さまに誓います」
 ルイズはその場に片膝を突いて頭を垂れ、アンリエッタに約束した。
 だが肝心のクリスは、ルイズにこんなことを言う。
「ルイズ、わたしのことはクリスでいい。学院では身分に関係なく、ともに魔法を学ぶクラスメイト
なのだからな。あそこでは、わたしはただのクリスだ」
「ふふッ、ルイズ、そうしてあげてちょうだい。クリスは見て分かるかもしれないけれど、
格式ばったことが嫌いなのよ」
「し、承知致しました。では……クリス、困ったことがあったらわたしに相談しなさいね。
出来る限りなら力になるから」
「ああ! こちらこそ、どうかよろしく頼む」
 クリスがルイズに笑顔を向けていると、アンリエッタは最後に才人へ向き直った。
「サイトさんも、ここまでクリスを無事に連れてきてくれてありがとうございます」
「いやぁ、俺は今回何もしてないですよ」
 一緒についてきただけなのにお礼を言われて、才人は少々照れくさくなった。
 それにしても、今のアンリエッタはどこか楽しそうだと才人は思った。戦後はかなり影を
背負った様子であったが、現在は年齢相応の少女らしさが窺える。
 実際に、アンリエッタは語る。
「わたくし、数日前から今日のこの時間をとても楽しみにしていたの。ルイズとクリス、
二人のお友達と語り合えるなんて。こんなに嬉しいことはないわ」
「もったいないお言葉です、姫さま」
「いいのよ、ルイズ。あなたもクリスのようにもっと気を抜いてちょうだいな」
「そ、そんな! 姫さまを相手にそんなこと出来ません!」
 とルイズが言うと、クリスがツッコミを入れた。
「おや、ルイズ。わたしも王族なのだが?」
「あ、あなたは学院ではただのクリスだって自分で言ったじゃない! だからよ!」
「ははは! 冗談だよ、冗談」
「あらあら! 二人はもうすっかり仲良くなったのね」
 ルイズとクリスのやり取りにアンリエッタがおかしそうに笑うと、クリスがアンリエッタに告げる。
「そうだ! アンリエッタ、サイトは本当にサムライだったよ」
「そうなの? わたくしには、あなたのお話を聞いてもよく分からなかったのだけれど……」
 やはり、トリステイン人のアンリエッタには『侍』の概念がよく理解できなかったようだ。
「サムライに会えただけでも、この国に来た甲斐があったよ。本当にありがとう、アンリエッタ。
お前がわたしをサイトに、そしてルイズに引き合わせてくれたのだ」
「あなたの役に立てたのなら嬉しいわ、クリス」
 クリスとアンリエッタが話していると……突然アニエスがノックもなしに部屋に飛び込んできて、
開口一番に報告した。
「ご歓談中失礼致します、陛下。このトリスタニアに怪獣が一体、まっすぐに接近中です!」
「――詳しく教えて」
 アンリエッタは瞬時に女王の顔となり、アニエスに求めた。
 トリスタニアに接近中という怪獣の現在地、トリスタニアからの距離を教えてもらい、
銃士隊が運んできた遠見の鏡でその姿を確かめる。
『グアァ――――――!』
 果たして、鏡に怪獣の容貌が映し出された。二本の角を頭部から生やしたトラのような怪獣であり、
ルイズたちのやってきた魔法学院のある方角からちょうど真逆の方向から四足歩行で一歩一歩城下町に
近づきつつある。双眸は何故か半分しかまぶたが開いていない。
「地殻怪地底獣ティグリスっていう怪獣か……!」
 才人が通信端末で怪獣の情報を引き出した。
「現在の移動速度から計算しますと、半刻に満たない時間で怪獣はトリスタニアに侵入することでしょう」
「わかりました、即刻対処致しましょう。ルイズ、サイトさん、一緒に来て下さい」
「承知致しました、姫さま」
 アンリエッタがルイズと才人を連れて部屋から出ていこうとすると、クリスが呼び止めた。
「アンリエッタ、お前自ら指揮を執るのか?」
「ええ。国を守ることこそが王族の第一の役割ですもの」
「そうか、すっかり立派な女王になったな……。では、わたしに何か出来ることはないだろうか? 
友として、どんなことでも力になるぞ」
 クリスはそう申し出たのだが、アンリエッタはゆっくりと首を横に振った。
「大丈夫よ。これでも怪獣を相手にする経験は豊富なのだから。気持ちだけ受け取るわ。
だからあなたはここで吉報を待っていてちょうだい。ありがとう、クリス」
「分かった……。アンリエッタ、ルイズもサイトも、無理はしてくれるなよ!」
 クリスの激励を受けながら、アンリエッタたちは部屋を出た。アニエスたち銃士隊を先に
作戦会議室に行かせると、才人とゼロがウルトラ戦士として意見をする。
「姫さま、ティグリスの対処は俺たちに任せてくれないか。データによると、ティグリスは
凶暴性のない、地底で大人しく生活してる怪獣だっていうんだ」
『地上に出てきたのには何か理由があるはずだ。俺たちがあいつを止めてみせるぜ!』
 平和を守るために凶悪な敵と戦いながらも、一つでも多くの生命を助けたいと願うウルトラ戦士として、
悪性のない怪獣が傷つけられることは望ましくない。才人とゼロは、ティグリスと人間が無用な衝突を
しないようにする考えであった。
 アンリエッタも彼らの気持ちを汲む。
「分かりました。ではこの一件は、あなた方に託します。どうかわたくしたちのみならず、
怪獣のことも助けてあげて下さい」
「頑張ってね、サイト、ゼロ!」
「ああ! それじゃ行くぞ! デュワッ!」
 ルイズの声援を受けながら、才人はウルトラゼロアイを装着。光となって王宮から飛び出し、
ティグリスの迫る方角へと一直線に飛んでいった。
 そして接近するティグリスを発見すると、ウルトラマンゼロの巨大な姿でその面前に着地する。
『よっしゃ! 止まれ、ティグリス!』
 降り立ったゼロは早速ティグリスの首周りに組みつき、これ以上の進行を止めようとする。
「グアァ――――――!」
 だがティグリスは怪力を発揮し、ゼロを払いのけた。
『うわッ!』
 ティグリスは地底深く、常に四方八方から強烈な圧力を受ける環境下で長い時を過ごす生物。
その影響で、肉体は実に強固に出来上がっている。その身体から生じるパワーはかなりのものだ。
単純な力では、ゼロをも上回る。
 しかしゼロは無用な暴力は振るわない。しりもちを打ってもすぐ立ち上がり、今度はティグリスの
尻尾をむんずと掴んだ。
『せぇぇぇぇいッ!』
「グアァ――――――!」
 ゼロもまた怪力を発揮して、腰をひねってティグリスを街の反対方向に投げ飛ばした。
これでティグリスを街から大分引き離すことが出来た。
 が、ティグリスはなおもトリスタニアへの接近を続けようとする。その様子を観察して、
才人がゼロに呼びかけた。
『ゼロ、何だかあいつ、様子が変じゃないか?』
『ああ……俺もちょうどそう思ったところだ』
 ティグリスは一心不乱にトリスタニアを目指している。ゼロが止めようとすると抵抗するが、
それ以外の時はゼロのことがまるで目の中に入っていないようだ。
 目といえば、ティグリスの視線はどこか虚ろだ。まっすぐ前を向いていないようにさえ見える。
正気ではないのではないだろうか?
『正気じゃないなら、目を覚まさせてやろうぜ!』
 ゼロの身体が青く輝き、ルナミラクルゼロへと変身した。そして、
『フルムーンウェーブ!』
 手の平からティグリスへ淡い光の粒子を浴びせかける。浄化技、フルムーンウェーブ。
対象の覚醒効果もあるのだ。
「……グアァー?」
 フルムーンウェーブの効果は無事に発揮され、ティグリスは半開きだったまぶたがパッチリと開いた。
そして辺りを不思議そうにキョロキョロ見回す。自分がどうして地上にいるのか、分かっていない様子だ。
「グアァ――――――」
 やがてティグリスはクルリと半回転して、来た道を静かに引き返していった。このまま元いた
地底の世界に帰っていくのだろう。
『これでティグリスは大丈夫だな。だが……』
 あっさりとティグリスを帰らせたゼロだが、釈然としない気持ちを抱えていた。先ほどまでの
ティグリスは、明らかに不自然な状態であった。どこかの誰かが、何らかの目的でティグリスを
操ってトリスタニアにけしかけようとしたのだろうか。だが何のために? ティグリスがあまりに
簡単に正気に戻ったのも逆に腑に落ちないし、ティグリスを操作した誰かがいるとするなら、
何故この状況に至っても一向に姿を見せないのか。一体何をしようとしていたのか? 手掛かりが
なさすぎて、全く答えが見つからない。
 結局ゼロは、空へ飛び立って才人に戻って王宮に戻る以外に出来ることがなかった。

 ティグリスを元の生息地に戻した後、ルイズ、才人、クリスの三人も学院へ帰還することとなった。
帰りの馬車の中で、クリスが口を開く。
「最後は忙しなくなったが、無事アンリエッタへの挨拶も済んだ。これで正式に学院での生活が始まるな」
 彼女に才人が言う。
「クリス、ほんとに姫さまと仲いいんだな。あんなに楽しそうな姫さま、久しぶりに見た」
 それに対し、クリスはこう返す。
「アンリエッタが喜んでいたのは、ルイズにわたしを紹介できたからだと思うぞ?」
「え?」
 ルイズは一瞬虚を突かれたかのような顔になった。
「ルイズにわたしを託すことはアンリエッタの、ルイズへの信頼の証だ。わたしとアンリエッタは
友人ではあるが、国というしがらみからは抜け切れない。しかし、ルイズにはそれがないのだから」
「……そうね」
 クリスの言葉に、ルイズは若干感心させられた。
「わたしも、アンリエッタのあんな笑顔は久しぶりに見たな。正直、友人を最高の笑顔に
出来るルイズが羨ましいよ」
 正面から持ち上げられ、ルイズは気恥ずかしさを覚える。
「な、何言ってるのよ。姫さま、あなたに会えたことだってすごく喜んでらしたじゃない!」
 才人はクリスを次のように評した。
「クリスってさ、何て言うか、素直だよなぁ。そういうことを簡単に言えちゃう辺りが」
「そうなのか? 師匠もよくそう言っていた。お前は素直だから色々教え甲斐があると」
 クリスが「師匠」の単語を出すと、才人があっと思い出す。
「あ! そうだよ! クリスの師匠のこと、教えてくれよ!」
「ニホンから来たっていうサムライの人?」
 聞き返すルイズ。
「そうそう! 詳しく教えてくれ!」
 才人がせがむと、クリスは遠い目をしながら語り始めた。
「師匠か……。名はニシキダ・コジューロー・カゲタツ。ここではない世界からこちらに
迷い込んだと言っていた。モノノケ……要するに魔物を退治しながら流浪する旅人だったそうで、
これまで首の前後に顔を持つ鬼、マトーなる悪しき呪術師、心中した男女が化けて出た怨霊などを
退治したという。真実なのかどうかは、わたしにも分からないが」
 ニシキダ・コジューロー・カゲタツ……。名前の響きは確かに日本風である。現代日本では
廃れた「諱」があるということは、本当に侍だったのか。さすがに端末に情報はなかった。
「なぁ、サイト。ニホンはどこにあるんだ? 師匠が言っていた通り、異世界にあるのか?」
「えッ、あー、その……すっごい遠くにあるんだ。ここからずーっとずーっと東の、ロバ・アル・カリイレ。
俺はそこからルイズの魔法で召喚されたんだ」
 異世界のことをあまり言い触らされても困るので、才人はいつものように「はるか東方から
やってきた」設定を使った。
「むむう……。ロバ・アル・カリイレは幻とも言われる地。だから師匠は『異世界』という
表現をしたのかもしれないな。……おっと、すまん。師匠の話だったな」
「その師匠って人とは、どうやって出会ったんだ? 旅人ってことは、俺みたいに召喚された
訳じゃなかったんだろ?」
「ああ。十年ほど前、師匠は我が国にふらりと立ち寄った。そして、とある森の中で魔物に
襲われていた幼い日のわたしを助けてくれたのだ。迅雷のような速さで剣を抜き、あっという間に
魔物を斬り捨てた姿は、とにかく鮮烈だったな……」
 クリスは幼き日のヒーローを、熱い口調で説明した。
「わたしは彼に礼をするため、身分を明かし城に招こうとした。が、彼はわたしの身分を知っても
名誉や金を要求せず、更には名乗らずにその場を立ち去ろうとしたのだ。その姿は……わたしに
とっては衝撃だった」
 当時を思い返しているのか、クリスの瞳はキラキラと輝いている。
「王族であるわたしに取り入ろうとする者は掃いて捨てるほどいる。だが、その正反対な態度を
取った者は師匠が初めてだった。彼は何故そのように振る舞えるのか、わたしは不思議でたまらず、
素直に尋ねた。『褒美が欲しくないのか』と。すると師匠は、『モノノケを退治することが拙者の
使命。拙者の見出したブシドウ。拙者にとってはこれが当たり前のこと故に、見返りなど求めんのさ』
と答えたのだ」
「へええ~! 格好いいなぁ」
 クリスの説明の中の、カゲタツの『武士道』に才人はいたく感心した。
「わたしは彼をそのように突き動かす『ブシドウ』というものを知りたくて、半ば無理矢理城に招き、
彼が説くサムライの生きざまに感動し、自分を弟子にしてほしいと願った訳さ」
「じゃあその人、まだクリスの国にいるのか?」
 才人の問い返しに、クリスは否定する。
「いや……わたしが大きくなったある日に、この剣を残して忽然と姿を消してしまったのだ。
恐らくは、また魔物退治の旅に出たのだろう。その後どうなったのか……今はどこにいるのか、
故郷のニホンには帰れたのか、何も分からない。師匠ほどの剣の腕ならば、滅多なことは
ないとは思うのだが……」
 ――クリスのあずかり知らぬことだが、カゲタツ……錦田小十郎景竜はその後、ネオフロンティアスペースの
日本に帰還し、そこで天命を全うした。しかしその霊が、封印を破られて復活した二面鬼・宿那鬼を再度
封じるために現世に蘇ったことは、別の話である。
「別れの挨拶と感謝の気持ちを伝えられなかったことは残念ではあるが……わたしは師匠のお陰で
己の生き方を決められた。そして師匠の教えてくれた『ブシドウ』をこの生ある限り全うしようと誓ったのだ」
 クリスは己の師匠を思い返しながら、精一杯の感情と熱意を込めながらその思いを宣言した。

 ルイズたちが魔法学院に帰還している頃に、トリステインの空の一画でも、学院を目指す
風竜の影があった。
 タバサとシルフィードである。トリステイン・ゲルマニア連合とアルビオンの戦争時に、
キュルケにくっついてトリステインから離れていたのだが、戦争も終わったので久々に学業に
復帰するために一路学院へと向かっているのである。
 その旅路の中で、シルフィードがふとつぶやいた。
「それにしてもお姉さま、さっきの任務はすごい肩透かしだったのね」
 実はタバサの学院帰還は、もう少し後になるはずだった。ツェルプストー家に滞在していた時に
任務が一件飛び込んできて、それを達成してからのはずだったのだが……いざ任務先に赴いたら、
頼まれたことが既に解決されていたので、予定を切り上げたのである。
「不登校児の貴族の子を学院に通わせるようにするなんて、どうなっちゃうのかシルフィちょっと
楽しみでもあったけれど、その子の家の門を叩いたちょうどその日に、えーっと、何て名前だったっけ? 
……そうそう、オリヴァンって子が自分から学院に通うようになったなんて。とんだ無駄足だったのね。
まぁ、お姉さまが楽できたからそれでいいんだけど」
 シルフィードが勝手にまくし立てることを、タバサはいつものように本を読みながら聞き流す。
「でもあの子、急に意見を翻したみたいで、一体どうしたのかしら? 昨日までは相変わらず
だったそうだけど、ひと晩経ったらすっかり変わったなんて。どんな夢を見たのかしら? それに、
何で逆立ちの練習してたのね? 謎なのね。きゅい」
 シルフィードがいくらしゃべっても、タバサはまるで関心を持たない。終わったことに
これ以上首を突っ込むつもりはないと、態度が物語っていた。
 シルフィードも肩をすくめ、それ以上不登校児の件には触れずにまっすぐ学院の方向へと飛んでいった。


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