あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

るろうに使い魔-27



 剣心は今、シエスタに誘われて、草が生い茂る壮大な平原へとやって来た。
 視界一辺を、見渡せるほどの雄大さと、陽の光が照りつける美しさが、そこにはあった。
 隣では、私服姿のシエスタが、思いを馳せるような目で平原を見ていた。
「それにしても驚きました。ケンシンさんとうちのひいおじいちゃんが、同じ国から来たなんて…」
 あの後、剣心はタルブの墓標跡地へと赴き、そしてシエスタの曽祖父の墓を見た。
 刻まれている文字は、ハルケギニアではさっぱりわからない字体だったが、剣心は何とかそれが読めた。
「海軍少尉佐々木武雄 異界ニ眠ル」
 ここでもう、剣心は確信した。彼は間違いなく、自分と同じ日本から来た人間なのだ。それも遠い未来から。
 何故未来の遺産がこんなところに置いてあるのか、その理由は知る由もなかったが、こうして今、その実物が安置されているのもまた事実なのであった。
 同時に、シエスタの雰囲気にも納得が行った。彼女も祖国の血を引いているから、通りで懐かしいと思えるわけなのだ。
 元々、先代の比古清十郎も、この地を訪れていたのだから、いつか必ず手掛かりは見つかるだろうとは思ってはいたが、それがこんな形になるとは思ってもみなかった。
 そして、その後にシエスタから見せたいものがある、と言われてこの草原へとやって来たのだ。



     第二十七幕 『想いと想い』



「本当に、あれは貰ってもいいでござるか?」
「はい。そう遺書にも遺していましたし」
 何でも、シエスタの曽祖父は、「墓標が読めるものに、『竜の羽衣』をさずける」と書き残していたようだった。
 そして、同時に「これを陛下の元へと返上して欲しい」との願いも書かれていた。
「そうでござるか……」
 剣心は、少し寂しそうに空を見上げた。
 あのゼロ戦を見て、未来の日本の姿を、剣心は垣間見てしまったからだ。
 恐らく、自分がいなくなっている頃には、また戦争が起こってしまったのだろう。それも大規模で、世界を巻き込むような。
(まだ…戦いは終わらないのでござるな…)
 左頬の十字傷をなぞりながら、剣心はそんな思いに耽っていると、ふとシエスタが覗き込みように見ていた。

「あの、ケンシンさん」
「何でござる?」
「父が言ってました。祖父と同じ国から来た人に会えたのも、何かのめぐり合わせだろうって…」
 顔を赤らめて、草原を見上げながら、シエスタは言葉を紡ぐ。剣心は、何も言わずに彼女の言葉を待った。
「あの、もしよろしければ…私と、一緒に…ここで住みませんか? そうすれば、私もご奉仕をやめて、二人で…」
 それは、紛れもない『告白』だった。今度はシエスタが、恐る恐る剣心の返答を待った。
 剣心は、少し影のある様な、優しい笑顔をすると、彼女にこう言った。


「気持ちは嬉しいでござるよ。けど、拙者には向こうで待っている人がいるでござる」


 その言葉に、シエスタは胸に何かが深く刺し込まれるような感覚を覚えた。胸が動悸で高鳴っていく。身体が固まり、何も言えなくなる。
 それでも、絞るかのようなか細い声で、シエスタは言った。
「…恋人…さん、ですか…?」
「…そうでござるな」
 シエスタは、今度は刺し込まれた何かが、体を抉るように暴れるのを感じた。息が苦し
くなって、立つ足は震え始めていた。
 それでも、シエスタは諦めきれずに、剣心に聞いた。
「やっぱり…帰っちゃうんですか…元の世界に…」
 シエスタは、剣心が、この世界で言う『東方』とは違う、全く別の『異世界』から来たと、本人から聞いたのだ。
 それは、もう簡単に会えるような場所じゃない。どこか遠く、本当に遠くの世界。そうとも教えられた。
 剣心がいなくなる。そんな事態を認めたくないかのように、シエスタは言ったのだ。
 そのシエスタの、若干涙声を含んだ言葉に、剣心はゆっくりと告げる。

「取り敢えず、東方と呼ばれるところへ、あのゼロ戦を使って行くつもりでござる。そうすれば、何か手掛かりが見つかるかもしれない」
 まだ、帰る手段の目処が立っていない。あくまでも目標だけだ。だが、やってみる価値はある。
 実際に帰るかどうかは兎も角として、今は方法を見つけることが大事だ。そう剣心は思っていた。
 だが、同時にルイズの事も思い出す。彼女に約束をした以上、あまり勝手なマネをして心配させるのもどうかと考えているのだ。
 手段を見つけるにしても、暫くは当分先になるかな…そんな風に思案していると、シエスタが決断するように言った。
「じゃあ…もし…帰る手段が見つからなかったら…そしたら…その時は…」
「…シエスタ殿…」
「私…待ってますから…いつまでも…」
 そして、涙を見せないようにシエスタは、その場を走り去っていった。
 剣心は、その後ろ姿を、切なそうに見ていた。



 さて、この一部始終を、遠巻きに見つめていた連中がいた。ルイズ達である。
「ふぅん、面白いことになってるじゃないの」
「へぇ、彼もスミにおけないなぁ。あんな可愛い子を…」
 そんな風に、キュルケとギーシュが呟いた。剣心に気付かれないように、かなり遠くで見守っていたため、声までは聞こえなかったが、雰囲気から察するにかなり良いムードであるのは確かだ。
 隣では、ルイズが燃えるようなオーラを滾らせながら、歯を食いしばって見ていた。
 もしキスの一つでもする気配を見せていたら、即刻消し飛ばそうと杖を構えていたのだったが、どうやらそんな事はないようなのが救いだった。

 暫くして、おもむろにシエスタが小走りに何処かへと行ってしまったので、キュルケ達は何があったのかと議論し始めた。
「フラれた、とか?」
「案外告ったんじゃないかしら。それで恥ずかしくなって逃げたとか……」
 と、キュルケはここで、言葉を切った。隣のルイズが、急に立ち上がって駆け出そうとしたからだ。
「お、落ち着きなさいって! まだそうと決まったわけじゃ…」
「うう、うるさいわね!!! ききき、今日という今日はアイツにたた、立場ってものをおお教えてやるわよ!!」
 震える声で若干どもりながら、ルイズは杖を振ろうと身構えたが、寸前でキュルケに止められた。
「全くもう、好きじゃないとか言ってたくせに、完全に嫉妬じゃないの」
「だだだ誰が、あああんなバカ犬、すすす好きなもんですか!!」
 完全に敵意をむき出しにしながら叫ぶルイズに対し、キュルケは呆れたようにため息をついた。
「あんた、あんなにダーリンに助けられた事、もう忘れたの?」
 その言葉に、ルイズはハッとした。確かにそうだ。アルビオンでの任務では、彼がいなかったら最悪命を落としていたかもしれないのだった。感謝されこそすれ、恨まれる筋合いは無い筈だ。
そう思うと、自然と杖を持つ手から力が抜ける。
 でも…とルイズはイヤイヤと首を振る。キュルケは、ルイズが何に葛藤してるのか良く分かっていた。
「ま、理屈じゃないんでしょうけど、確証もないのにいちいち目くじら立てたってしょうがないでしょ? 主人を名乗るならもう少し余裕を持ちなさいな」
「でも…」
「ケンシンは、あんたの玩具じゃないのよ」
 反論の余地を与えないようなキュルケの言葉に、ルイズは言葉を詰まらせた。
 うん……自分でもワガママだっていうのは分かっている。
 剣心は私の使い魔なんだから、自分だけを見て欲しい。内心そう思っているのだが、同時に貴族としてのプライド故に、そんなことを堂々と言えるはずもなかった。
 だから、シエスタと仲良くするのを見ていると、すぐ制裁を与えることしか考えられなくなってしまうのだ。
「取り敢えず、後でちゃんと話を聞いてからにしなさいな。でないと本気であんた、いつかケンシンに見捨てられるわよ?」
 ルイズは、顔を俯かせた。悔しいが、キュルケの言っていることは正しい。まだそうと決まったわけじゃないのだ。
 でも…とルイズは思う。もし本当に、シエスタは剣心に告白したらどうすれば良いのかと、それを剣心が受け入れた時、自分はどんな反応をしたらいいのか、と。



 その夜、シエスタの家で一泊してから、朝一番で学院に帰ることになった。さすがにこれ以上は休暇を認めるわけにはいかないと、学院から手紙が来たからだ。
 シエスタは、そのまま残ることとなった。どうせ結婚式でお暇をもらえるので、このまま帰省することにしたのだ。
 ただ、彼女の表情は、どこか暗く、そして寂しそうだった。
 剣心とも、中々顔を合わせようとはせず、と言うより、何をどう切り出していいか迷っているようだったのだ。
 そんなギクシャクした二人を見て、ルイズは怒るより悲しくなった。
 夕食も済んで、就寝する前、ルイズは剣心に聞いた。
「ねえ、これからどうするの?」
 直接的に言えば、昼間のシエスタとの会話の事を聞きたかったのだが、どうしても遠回りするような調子になってしまった。
 剣心は、そんなルイズを見ながら、うーんと唸ったが、ルイズには正直に話すことにした。
「あのゼロ戦で、東方に向かう手掛かりを探そうと、今は考えてるでござる」
 その答えに、ルイズは不安と安堵をいっぺんに抱えた。取り敢えず、シエスタとは何事もないようでホッとしたのだが、同時にそれ以上の不安に押しつぶされそうになった。

「でも、あれは飛ばないって言ってたじゃん…」
 確かにそうだった。今のゼロ戦には燃料がない。だから飛ばすことも動かすことも不可能だ。
 しかし、剣心には考えがあった。
「コルベール殿なら、何か思いつくかもしれないでござるよ」
 あの授業の時、魔法に頼らない科学を見出そうとするコルベールの熱心さを見て、彼なら何とかなるんじゃないか、と剣心は思っていたのだ。多分、喜んで手を貸してくれるだろう。
 それに『ガンダールウ』の能力のおかげで、あのゼロ戦を動かすには、どうすればいいのか等は大体分かっていた。
 剣心の見る限り、目立った外傷や破損箇所は無いため、単に『燃料』があれば、理論上は動くはずだ。
 それを使って、東方の地へ行く。直ぐに帰れるかは兎も角、手段さえ見つければ後はどうにでもなる。

「じゃあ…やっぱり…」
 ルイズは俯いた。というより、軽い自己嫌悪に陥っていた。
 手掛かりを探す。と剣心に言ったくせに、いざその手段が見つかるとなると、どうしても否定的な 意見ばっかり口に出てしまう。そんな自分に嫌気がさしたのだ。
 剣心は、今にも泣き出しそうにするルイズを見て、安心させるように頭を撫でた。
「大丈夫でござるよ。そんな直ぐって訳じゃないでござるし」
 そう言ってくれるが、ふと舞踏会で剣心が言ってたことを、ルイズは思い出した。

『拙者には、確かに帰るべき場所がある。だけどそれだけが理由じゃない。向こうには、
何も告げずに置いてきてしまった人がいる。だから連絡だけでも取りたいのでござるよ』

 そうだ、剣心にも帰るべき場所がある。待っている人だっている。それを無理やり召喚させてきて、危険な目にも遭わせておいて、でもそれでも剣心は優しく接してくれる。
 でも…とルイズは思うのだ。いつかは別れなきゃならない。でもその悲しみを、私は堪えることができるのかと…。





 一夜明けて次の朝、快晴の中をシルフィードと何体かの竜たちが、空を飛んでいた。勿論竜が運んでいるのはゼロ戦だった。
 最初それが学院に来たとき、生徒たちは怪訝な顔持ちをしていたが、コルベールだけは興味津々といった風でそれを見ていた。
「何と、これが空を飛ぶというのかね!!?」
「まあ、理論上は…そうでござるな」
 と言っても、剣心自体このゼロ戦がどうやって飛ぶのか、見当がまるで付かなかった。
 只、『ガンダールウ』のルーンが、頭の中で「これは飛べる」とずっと囁いてくるのだ。だからこれは、自身の勘以上に信じてもいいと、剣心は思った。
「成程面白い。構造上どうすれば動くか、分かるかね?」
「動かない原因は燃料不足なだけでござるから、燃料さえあればもしくは…」
「ほほう、いいとも。乗りかかった船だ。是非ともこの私にも協力させてくれ!!」
 案の定、コルベールは二つ返事で受け入れてくれた。というか、ダメと言われても彼はやる気だろう。
 剣心は、燃料の成分の大体をコルベールに教え、コルベールは何とかそれを作り出そうと色々と試してくれた。
 剣心は、彼を手伝うようにアレコレ走り回った。
 その内試作品を何度も作っては、何度も爆発を繰り返し、失敗こそしながらも、少しづつそれらしく近づいていくのが実感できた。
 やがて、完成品の一つ『ガソリン』を、何とか作り上げたときには、剣心とコルベールは達成感で喜びあった。

「やったな、ケンシン君!!」
「コルベール殿のおかげでござるよ」
 気付けば、かなりの日数剣心達は研究に没頭していた。コルベールは、授業の合間合間を縫ってすぐ自室に籠り、成分の分析に余年を欠かさなかった。
 剣心も剣心で、暇を見てはコルベールと共に研究の成果を見守ってきたのだ。
 そんな彼等だったからこそ、完成した時の喜びもひとしおだった。
 しかし、ここで言いづらそうに剣心は、コルベールに告げた。
「けど…あれを飛ばすとなると最低でも、樽分で五つぐらい必要かなと…」
 一瞬その言葉に、気落ちしたような表情をしたコルベールだったが、直ぐにやる気で蘇り、顔を輝かせた。
「良し、なら五樽分作ってやろうではないか。私は絶対にこれを飛ばしてみせるぞ!!」





 そしてさらに数日後。剣心達の知らないところで事件は起きた。
 それは、トリステインとゲルマニアによる、結婚披露宴でのこと。
 新アルビオンの誇る巨大戦艦『レキシントン』号の上で、志々雄は感慨深げに眼下の船の軍団を見下ろしていた。
 トリステインの並べ立てる空軍戦艦は、『レキシントン』号とは比べ物にならないほど小さく、吹けば飛びそうなくらいだった。
 今頃奴等は、これから何が起こるのか想像もつかないのだろうな。と、そう思いながら志々雄は煙管の煙を燻らせていた。
 やがて、志々雄の後ろへと、ワルドが膝をついて現れた。
「シシオ様。艦長より、手筈が整ったとの知らせが」
「良し、始めろ」
 それと同時に、ドンドンと轟くような音がトリステイン側から飛んできた。無論それは只の礼砲であり、実弾はない。
 しかしアルビオン側は、まるでさもその砲撃で撃ち落とされたかのように、一隻の船を炎上させた。予め火薬と爆薬を乗せていたその船は、ドゴンと大きな衝撃音を響かせながら墜落していった。

 戦争が始まった。と言っても、それは一方的な虐殺に過ぎなかった。

 仕返しと言わんばかりに、『レキシントン』号の大砲から実弾を込めて装填していく。
「撃っ!!!!!」
 志々雄の命令と共に、『レキシントン』号の大砲から一斉掃射が開始される。
 キィィン…と弾丸が飛んでいく音を響かせながら、弾はトリステイン側の『メルカトール』号に着弾、爆発した。
 直ぐ様、相手側から返信が届いた。
「『砲撃ヲ中止セヨ。我ニ交戦ノ意思アラズ』」
「構わん、続けろ」
 志々雄の無慈悲な言葉と共に、再び『レキシントン』号による砲撃。轟音と共に命中。
「『繰リ返ス。砲撃ヲ中止セヨ!! 我ニ交戦ノ意思アラズ!!』」
「うるせぇよ、続けろ」
 三度目の砲撃。『メルカトール』号だけでなく、あちこちの船から火の手が上がり始めた。
 ここまで来ると、ようやく相手側もこちらの意図を理解したのか、反撃に映るが、所詮は焼け石に水の状態だ。
 一隻、また一隻と確実に沈められ、もはやトリステイン側は風前の灯。勝敗は火を見るより明らかだった。
「シシオ様、新たな歴史が今刻まれましたな」
「らしくねぇな、ワルド。只戦争が始まっただけじゃねえか」
 しかし、志々雄の顔は、まるで宴を楽しむかのように狂喜の笑みを浮かべていた。
 これが、これから長きに渡る抗争の始まり。後に確実にハルケギニアの歴史に残る『戦争』の幕開けだった。
「さあ、お前はどう出る? 抜刀斎よ…」


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