あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのぽややん 6

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 今、ヴェストリの広場に集まった生徒たちは、大きく三つに分かれていた。
 一つは、
「アオさんがんばって~!」で。

 もう一つは、
「お、なんだなんだ決闘か?」で。

 最後は、
「ギーシュ! あいつをぶち倒してくれ!!」である。
 とくに、ギーシュを応援している集団のオーラが黒い、いや、もう真っ黒だ。
「俺の彼女が、あいつにあいつにぃぃぃ!!」
 だとか、
「顔か? 顔が全てなのか、畜生!!」
 等々。
 そんな嫉妬成分たっぷりの応援に、ギーシュは芝居がかった仕草で応えているのだが。
 その表情は、いささかげんなりしている。
 彼にしてみれば、野郎どもの応援なんぞで気合が入るか、と言いたいところだった。

「珍しいじゃない、あんたが見物に来るなんて」
 キュルケは、野次馬の中に、相変わらず本を読んでいる親友の姿を見つけ、近づいた。
 ちなみに彼女らのいる場所は、中立エリアだ。
 青髪の少女、タバサは、本から目を離さずに、こくりと頷いた。
「興味があった」
「へえ、あんたがねえ……。! あれってルイズじゃない」
 中立エリア最前列どまん中に、腕組して仁王立ちのルイズと、その横でおろおろするシエスタの姿があった。
 キュルケはにやりと笑うと、本を読んだままのタバサを引きずって、そこに向かった。
「は~い、ルイズ」
 声をかけらられたルイズは、無言のまま、前を見ている。
 あらま。これは相当機嫌が悪いわね。
 かまわず言葉を続ける。
「にしても、よくこんなばかげた事を許したわね。いくらなんでも、あのアオって平民がかわいそうじゃない」
 シエスタが、なにか言いたそうに口を開くが、ルイズに目で制され押し黙る。
「だってそうでしょ。メイジと平民が決闘だなんて。勝負になるわけがないじゃない」
「そうでもない」
 タバサが、ボソリと呟いた。
 皆の視線がタバサに集まるが、相変わらず無表情のまま、本を読んでいる。
 そして、黄色い歓声が上がった。

「来たか」
 ギーシュが、忌々しそうに前方を見据えた。
 エプロン姿のアオが、広場中央に向かって歩いてくる。
 ギーシュも歩を進め、真ん中でお互いが向かい合う。二人の距離はおよそ十歩。
「逃げずによく来たね、平民。ところで君は、その姿のままで決闘する気なのかね」
 ギーシュは薔薇を突きつけながら、言った。顔が引きつっている。
 アオは、自分を見てふっと笑うと、ふりふりエプロンを華麗に外して印象を変えた。
 次に向けた目は、何の迷いもない目。全てを見通すような冷たい目。希望も絶望も、遠いどこかに置き忘れた目。  

 殺すだけなら簡単だ。手加減をしなければいい。

 だが、さすがにそれはまずいだろう。ならば。
 ギーシュを前にして、アオは考える。自然と顔が笑う。肉食獣の笑みだ。

 逃げられないように、最初に足を砕こう。
 降参させないように、次はのどを潰す。
 そうしてから、ゆっくりと末端から壊していこう。
 殺さないよう、死なないよう。細心の注意を払いながらゆっくりと。
 気絶させるのもダメだ。
 自分がどうなっているのか。その目で、耳で、ちゃんと確認させてあげなくては。
 最後に、耳と目を奪い、無明無音の闇に突き落とそう。

 アオは考えをもてあそんだ後、苦笑して、悪い人ごっこするのをやめた。
 ギーシュが怯えたからだ。

 エプロンを外すまでは、確かにあの平民だったのに。今の、今のこいつは、なんなんだ!? 
 ギーシュは、目の前の得体の知れない何かに、恐怖していた。
 その目は鋭く、見抜かれただけで死にそうなくらい、恐ろしい感じだった。
「おい、ギーシュ。早く始めろよ」
「はは、まあそう焦らずに」
 じょ、冗談じゃない!? 

 アオが、クスクス笑っている。
 内心の怯えを隠して、必死に虚勢をはる姿が、かわいくって仕方なかったのである。
 でもこれじゃ、埒があかないな。
 アオは、ギーシュだけに聞こえるよう、呟くように言った。
 恋人に囁くように、甘く、優しく。
「ねえ、何かやって僕を楽しませてよ。
 だって……僕、あきちゃった。
 ほら。ずっと見ていてあげるから」
 ギーシュの、わずかに残っていた男の矜持に、火が点く。
「うおおおおおっっっ!」
 叫びと共に振るわれた薔薇から、放たれた花びら。
 それは瞬く間のうちに、ゴーレムに変化する。
 その数、七。
「望み通り、見せてやったぞ! これが、この青銅のギーシュのゴーレム、『ワルキューレ』たちだ!!」
 ギーシュは、その瞳にプライドの炎を燃え上がらせ、アオを見据えた。

「初っ端から七体だと!?」
「本気だ。ギーシュのやつが本気だ!」
「うわっ、容赦ねえぇぇぇ」
 アオとギーシュの間に交わされた会話など、知りもしない観客の生徒たちが、がぜん盛り上がってくる。
「ちょっ!?」
 これに慌てたのがルイズだった。
 ギーシュの事を、ろくでもないやつだと思ってはいたが……まさか丸腰の平民相手に、本気になるなんて。
 だが、止めにいこうとするルイズのマントを、タバサが掴み止めた。
「なんで止めるの! これじゃあいつが」
 殺される。
 ルイズはタバサの手を振りほどこうとするが、しっかり掴んで離そうとしない。
 タバサはフルフルと首を振りながら言った。
「まだ、早い」
「早いって、そんなこと言っている場合じゃ……」
 再び歓声が上がる。
「ギーシュが仕掛けた!!」

「ワルキューレ!」
 ギーシュに操られるまま、ゴーレムの一体がアオに殴りかかる。
 その一撃を紙一重で後方に跳んで避け、地面を転がる。その勢いを利用して立ち上がったアオの手には、転がった際に拾った石が握られていた。
 追撃から距離を置くよう、さらに後ろに跳びながら、流れるような動作で石を放つ。
 だが、ゴーレムの甲冑を模した装甲の上で、乾いた音を立てて砕けた。
「バカめ! この僕の二つ名が示すとおり、錬金で生み出されたワルキューレは青銅製。
 石などで砕けるものか!!」
 確かに、少々の傷と凹みができたくらいで、ゴーレムにダメージは無さそうだった。

 硬いな。
 それに。
 ためしにもう一つ、今度はギーシュに向かって投げるが、途中で別のゴーレムに阻まれ、防がれる。
 動きも悪くない、か。……ギーシュって言ったけ。なかなかやるじゃないか、彼。

「はっ、無駄なあがきをする。今度はこちらの番だ。行け!!」
 ギーシュは一体をそばに残し、残り全てをアオに殺到させた。
 アオは冷静に観察しながら、迫る六体ものゴーレムの波状攻撃を、避けて避けて、また避ける。
「すごい」
 シエスタは、舞を舞うかのように避けつづけるアオの姿に見惚れた。
 あれほど騒いでいた生徒たちも、固唾を呑んで見守っている。
 面白くないのはギーシュだった。
 攻めているのは自分なのに、これではただの引き立て役ではないか。
「どうした、平民。避けているばかりでは、どうにもならないぞ」
 みえみえの挑発だったが、アオはそれに乗ることにした。
 一旦ゴーレムたちから距離を開けると、うち一体に向かって歩き出す。
 その動きはあまりに無造作だった。
「覚悟を決めたか。いいだろう、ならば引導を渡してやる」
 ゴーレムの拳が、アオの顔面を撃ちぬくように振りぬかれた。

「っ!」
 凄惨な光景を想像して、思わず目をつぶるルイズ。
 やたらと重々しい音の後、どよめきが聞こえる。
 恐る恐る目を開けると、何事もなかったように、アオが立っていた。
 だが、その横には奇妙なオブジェがあった。例えるなら、地面に人間を逆さまに突き刺して、下半身だけ出したような。
「ス、スケキヨ!?」
 いや、違う。あれは、ギーシュのゴーレムの足だ。
 地面に刺さったまま、足がばたばたと動く光景は、いっそ滑稽だった。
「なにが、なにがあったの?」
 わけがわからないといったルイズの言葉に、キュルケが呆れたように答えた。
「あんた、あれを見てなかったの? ……すごかったわよ」
「静かに!」
 タバサが、珍しく語気を強めて言った。
「見て」
 そして指差す。
 アオが、次のゴーレムに向かうところだった。

 わけがわからないのは、ギーシュも同じだった。
 自分のゴーレムは、確かにあの平民を攻撃したはずなのに。
 それが、なぜこんな事になっている!?
「うわああ、行け、いけぇぇぇ!!!」
 半狂乱で薔薇を振り回しながら、叫ぶ。
 アオは、自分の顔めがけてくる拳を右手でさばくと、相手の力を利用して転ばす。前のめりに回転しながら浮いたゴーレムを、さらに空いていた左手で加速させ、逆様になったところで地面に叩きつけた。
 アオはそれを、一呼吸の間にやってのけた。
 ゴーレムは、自身の重さ、重力、加えられた勢いによって、地面に突き刺さる。
 また、その硬さも災いしていた。
 まるで釘のように、軟らかい地面に、面白いように突き刺さっていく。抜け出そうにも、上半身がほぼ埋まってしまっているため、脚しか動かせない。
 次々と向かって来るゴーレムを、アオは接触するそばから、転ばし、突き刺していく。
 そして瞬く間に、彼の後ろに、合計六本の柱が立った。 
 残りは、ギーシュを守る一体のみ。 
 アオは、ギーシュに向かって歩き出した。
「ひい! 来るな、くるなああぁぁ!!」
 最後の一体が、アオに突っ込んでいく。
 すると、アオも駆け出した。
 ゴーレムが体当たりしようと、肩からぶち当たろうとする刹那、アオは跳んでその肩に足をかけ、さらなる跳躍をみせた。
「ぼ、僕のワルキューレを踏み台にしただとぉ!?」
 ゴーレムは勢い余って、地面に突き刺さっている一体に衝突しバラバラになる。
 アオは空中でバレルロールし、ギーシュの背後に降り立つ。
 ギーシュは振り向くことができなかった。
 それよりも早く、薔薇を持っていた右腕を後ろに締め上げられ、抵抗する事すらできなくなっていた。
「は、離せ離せ離せぇッ!!!」
 暴れようにも、腕をがっちりと固められてしまい、身動きができない。
「はにょあ」
 突然、ギーシュが身悶えた。
「……驚いた?
 ふふっ、案外うぶなんだね。耳に息を吹きかけられたぐらいで。次はどこがいい?」
 まさか、まさかこれはぁぁ。
 ギーシュの顔が青ざめる。
 貞操の危機!?

 アオはもちろんの事、ギーシュも一応美形の少年。苦悶の表情を見せ、組み伏せられる姿。なにより雰囲気がさっきから妖しい。
 全女生徒の視線、釘付け。

 アオは、冷や汗流しまくりのギーシュの耳元で囁いた。
「じゃあとりあえず……腕の一本でも貰おうか」
 ギーシュは、明るく言われた言葉の意味がわからずに、間の抜けた顔をするが、右腕に走った激痛にすぐさま悲鳴を上げた。
「ぐあぁぁぁぁっ!!!」
「待ちなさい!!」
 一人の生徒が、止めに入った。
 あれは、あの姿は。
「モ、モンモランシー?」
 ギーシュは、激痛でかすむ目が捉えた映像に、驚きの声を上げる。
「それ以上ギーシュにひどい事をするのなら、私が相手になるわ」
 杖を突きつけ、きっぱりと宣言する。
「それってつまり、君が、僕と決闘するって事?」
「ええ、そうよ」
 だが、杖の先が小刻みに揺れている。
「だ、だめだモンモランシ-! 僕なんかのために、君を危険な目にあわせるなんてできない!!」
「あなたは、黙っていて、ギーシュ。さあ、どうなの。YES or NOで答えなさい」
 ふっ、とやさしく笑うアオ。
「YES。で、僕の負け」
 そう言ってギーシュを開放すると、両手を上げた。

「え、な、何?」
 ぽかんとするモンモランシー。
 いや、彼女だけではない。広場全体の空気が呆気にとられている。
 アオは、ギーシュの首に腕を巻きつけて、言った。
「やっぱり、女の子って強いね。そう思わないかい? ギーシュ」
「あ、ああ、そ、そうだね」
「あんまりふわふわしていると、いつか後ろから刺されるよ。それはめーな事なんだから」
 ウインクするアオ。
 そして、顔を見合わせる二人を残して、中立エリアに向かう。
「おーいシエスタ~」
 呼ばれたシエスタが、慌てて駆け寄る。
「ごめん、負けちゃった。お詫びに食堂の片付けも手伝うよ」
「え、そんな、え、ええ」
 軽く混乱している。
「それではみなさん、ごきげんよう」
 アオは優雅に一礼し、スキップして去っていく。
 シエスタもペコリと頭を下げてから、アオの後を追った。

「えーと、てことはモンモランシーの勝ちって事?」
「なんだその大番狂わせわああっ!?」 
「おい! 胴元はどこ行った、胴元はぁ!!」
 アオがいなくなったとたん、見物していた生徒たちが大騒ぎになる。

「わっけ、わかんないわよー!!」
 色々とタイミングを失ったルイズの叫びが、歓声に飲み込まれていった。


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