あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと電流-24


「電人ザボーガー、GO!」

 世界扉を潜り抜け終え、三ッ首竜に向かい構えるザボーガー。
 扉が消えると同時に、その足下にいくつかの包みが転がった。

「嬢ちゃん、そいつは博士……ザボーガーの親父さんからのプレゼントだ、受け取ってやってくれ」
「プレゼント?」

 デルフリンガーの説明に、こんな状況でとは言わない。
 こんな状況だからこその物品だと、ルイズは理解した。
 しかし、その理解はルイズだけではない。

 三ッ首の牙が輝き、電撃のブレスが雷鳴のごとく唸る。
 瞬間、カリーヌの魔法がブレスを相殺し、シエスタが転がりながら包みを拾い上げる。

「これは……」

 包みの中から現れたのは、ザボーガーのヘルメットを簡易にしたようなモノが六つ。
 シエスタから受け取りそれに触れたルイズの表情が引き締まる。
 メットを被っているルイズ、すなわちザボーガーの主にのみに伝えられた言葉。
 大門博士の意思。そして決意。それは、ザボーガーの言葉。

「皆、これを被って」

 疑問はない。
 カリーヌが、シエスタが、ギーシュが、モンモランシーが、キュルケが。
 そして、イザベラがそれを受け取る。

「虚無が怒りの電流ならば……」

 地球での魔神三ッ首との最終決戦において、大門豊は身体に埋め込まれた電極回路より発生する怒りの電流でザボーガーを起動させた。
 そしてここハルケギニアの地では、虚無こそがザボーガーの力である。
 では、大門豊は虚無の力を持っていたのか。彼は、メイジだったのか。

 答えは、否である。

 デルフは知っていた。心を震わせること、感情を高めることがガンダールヴの力となること。
 感情の震えこそが虚無の力となること。
 そして、怒りの電流は悪への純粋な怒り、それは正しき怒りにより生まれる力。
 正しき怒りは虚無を、怒りの電流を生むとすれば。
 地球人に出来て、どうしてハルケギニアの人間に出来ない道理がある。ましてや、そこにいるのはメイジと虚無の使い魔ではないか。

 六つの簡易ヘルメットにはそれぞれ、体外用の電極回路が付属されている。

「ふざけるなぁっ!」

 龍が吼えた。
 地球での戦いは相討ち。そしてこの地での戦いは勝利した。
 二度目など無い。
 地球であろうとハルケギニアであろうとも、自らの地にてリーヴスラシルの力すら得た魔神に勝てる理屈があろうか。

「貴様らを食い尽くし滅ぼし、調子に乗った虚けのアルビオンも共に滅ぼしてくれるわっ!」
「まだわからないの?」

 しかし龍の咆哮の前に立つのはルイズ。
 虚無の使い手、ザボーガーの主。

「貴方の滅びは既に決まっているのよ、魔神三ッ首」

 ハルケギニアにザボーガーが現れたこと。
 地球で戦ったザボーガーが再びこの地に現れたこと。
 虚無と酷似した力が、地球で発見されていたこと。

「それは偶然じゃない、それは必然。貴方を滅ぼすために、人間が魔神を打倒するために用意された道」

 そして、今、自分たちはその道を歩く。
 正しき道を。

「必然があるならば、それは即ち貴様ら人間の滅びだっ!」
「舐めるなっ!」

 ギーシュがヘルメットを被る。
 モンモンラシーが、カリーヌが、キュルケが。

「人間を」
「ハルケギニアを」
「メイジを!」
「地球を!」

 シエスタがメットを被る。

「あたし達を、舐めんじゃないよ、クソ龍」

 イザベラがメットを被り、ルイズに並ぶ。

「さあ、言ってやりな、虚無」
「ザボーガーを、舐めんじゃないわよっ!」

 三ッ首のブレスすら見劣りするような電撃、怒りの電流迸る。
 紫色のスパークがそれぞれのメットから立ち上がり、一点へと集約されていく。
 それは、天の裁きの雷鳴か。
 神の怒りの稲光か。

「ザボーガー! ジェットブーメラン! ロケットチェーンパンチ!」

 放つブーメランに一瞬遅れるブレス。
 しかし、ブレスを散らすようにブーメランは回転している。
 散らされたブレスを貫くように、鋼の拳が三ッ首を叩き砕く。そして紫の電撃を帯びたチェーンが、三ッ首を拘束する。
 苦悶の雄叫びをあげ、三ッ首はガスブレスを放つ。だが、それすらもジェットブーメランの二撃目によって打ち消されようとしていた。

「……この力は……」

 立ちつくすは狂える魔神。
 怯えるは震える魔龍。
 向かうは勇気ある人間。
 立ちはだかるは電人。

 いや、目映いばかりの紫光に煌めくその姿はまさしく――

 ――電神 降臨

「あ、あああ」

 ルイズの視線が三ッ首の視線に絡む。

「……はっ……ははっ……呪う、呪ってくれる、命乞いなどせぬ! 我は魔神三ッ首なり! 
この命朽ち果てようと、貴様らを冥界の底より永劫に呪い続けてくれるわっ!」 
「ザボーガー……!」

 声を上げようとしたルイズを止めるイザベラ。

「イザベラ?」
「……許されるなら、頼むよ。シャルロットの前で言う事じゃないかも知れないが、あれは、私の仇だ」
「待って」

 二人の間にタバサが割り込んだ。

「シャルロット……」
「三ッ首は私の仇でもある。……伯父を、伯母を、従姉を狂わせた三ッ首」

 言葉こそイザベラに向けられているが、まだ目を向けることは出来ない。
 そのタバサにヘルメットが被せられた。

「行きなさい、タバサ」

 その肩を押され、タバサはさらに前へ出る。それを追う様に二人、ルイズとイザベラ。
 三人が、三ッ首へと向き直る。
 三人は、烈火と燃えた恨みの三組の視線を受け止める。

「貴方の呪いごとき、私は恐くない」

 タバサの言葉を切っ掛けとするように、

「ザボーガー!」

 イザベラとルイズが命ずる。
 そして、タバサが命ずる。
 三つの声が、重なった。

「ストロングバズーカファイヤー!」

 耳を聾さんばかりの苦悶の叫びと呪詛の呻き。
 最後の息を撒き散らしながら三つの首がうねる。
 不信と驚愕の咆哮は、やがて痛みと恐れを訴えるものへと変わり、静かに消えていった。

「リーヴスラシルよ。前座は疾くに去りたまえ」

 ルイズたちの視線が一カ所へと向けられる。
 崩れ落ちた魔神の背後、一つの大きな窓にぶら下がる手。
 人の口と耳、目をつけた醜悪な、人間の一部がそこにあった。
 そしてそのものは、ルイズとカリーヌのよく知る言葉を発しているのだ。

「……ワルド」
「ああ、誰かと思えばヴァリエールの愚かな女か」
「ワルド!」
「おや、僕の可愛いルイズ。君は僕が直々に滅ぼしてあげるよ。楽しみにしているがいい」

 さて。とワルドは言を続ける。

「ガリアは滅び、リーヴスラシルもヴィンダールヴも終わった。残るは二つだが、生憎今の僕に虚無の使い魔は必要ない」
「何が言いたいの?」
「虚無の力では僕は止められない。ザボーガーでは、僕は止められない。これから始まるのは戦いではないからね」 

 今のワルドの力は風原石による大隆起である。確かに、直接止められるモノではない。
 確かに、操っている元凶を叩けば止めることはできるだろう。
 しかし……

「ヴァリエールとトリステイン。人々はどちらを選ぶかな?」
「どういう意味よ」
「……ヴァリエールの身柄を差し出さなければ、大隆起がトリステインを襲う。そう告げようかと思っているわけでね」

 ギーシュが一歩踏み出す。

「おいおい、君は国を捨ててヴァリエールを守るのかい? グラモン家ともあろうものが」

 そのまま動けないギーシュを嘲るように、ワルドはひとしきり笑う。

「ルイズ。君と僕の縁だ。しばらくの猶予はあげるよ。ああ、安心したまえ、僕からの指示がない限り、君たちには手を出すなと……」

 ワルドは言葉を止め、もう一度高く笑った。

「ついさっきアンリエッタとマザリーニには伝えておいたよ。なにしろガリア崩壊の証拠付きだ。彼女らも従うしかなかっただろうね」
「ワルド……」
「なんだい、ルイズ」
「貴方は一体、何が目的なの?」

 トリステインを、いや、ハルケギニアを手中に収めようと言うのか。
 大隆起を操作できるのならば、それは不可能ではない。
 大地を自在に操られれば、人に逃げ場など無い。だからこそ、ワルドは唯一の逃げ場アルビオンを奪ったのだ。
 単純な話、今大隆起を無差別に引き起こせば、ハルケギニアは壊滅する。残るのはアルビオンだけだ。
 破壊と君臨だけが目的なら、それはあまりにも簡単だろう。
 大隆起の後に残された兵力など、現存のアルビオン軍であっさりと沈黙させることが出来る。

 だが、今のワルドがそれを望んでいるとは思えない。あまりにも、その動きは緩慢だ。

「世界の命運を、相応しい者に返す。それだけのことだ。実に単純だろう?」
「単純ですね、同時に愚かですが」

 カリーヌの言葉に、ワルドは笑う。

「自らが成し遂げられなかったことを先んじられるのは、さすがの烈風といえど悔しいと見える」

 眦を上げ、カリーヌは一歩前に出た。

「何を愚かな」
「僕は知っているのですよ、貴方の野望を」
「馬鹿なことを……」

 ルイズはワルドの言葉など信じない。
 カリーヌ個人は知らず、ヴァリエールをよく知るギーシュとキュルケも同様だ。
 そしてモンモランシーはギーシュ、タバサはキュルケ、シエスタはルイズの言をそれぞれ信じる。
 ただ一人、ヴァリエールを知らぬのはイザベラだが、しかし彼女は鼻で笑った。

「少なくとも、今のあんたが言うって事で、それが相当の与太話だってのはわかるよ」
「いやはや、さすがは腐ってもヴァリエール。舌先三寸でガリアの姫すら手懐けるか」
「力で押さえるしか能がなさそうなあんたが言うなって話さ」
「なに、実弟すら力で抑えつけたジョゼフ殿には及ばんよ」

 イザベラは射殺さんばかりの眼差しでワルドのクリーチャーを睨みつける。

「おや、どうしたのかね? ガリアの姫よ。いや、今は亡国の姫と言うべきか」

 ワルドは含み笑いを漏らす。

「これは失礼。滅ぼしたのは僕だったね。どうかね? 力で抑えつけられ、国ごと踏みにじられた気分は?」

 ギリ、と歯ぎしりの音が聞こえる。

「僕はいい気分だよ。君はどうだい? 無力な者が強大な力を誹る気分はどうだい?」
「無力は、敗北ではない」

 突然横に並んだ声に、イザベラは愕然と目を向ける。

「アルビオンの簒奪者。いいえ、貴方は王の名に値しない。貴方はイザベラにも劣る」
「ほお。君が……他でもない君が僕を簒奪者と呼ぶのかね。シャルルの娘よ」

 タバサは敢然と、イザベラを庇う様に歩を進めた。

「イザベラはこの場に現れた。魔竜と虚無の戦いに、虚無の力に列する者として身を投じた。貴方の様に高みから見物などしない。
貴方にイザベラを嗤う資格はない」

 そしてタバサは一瞬振り向き、居並ぶ一同に目を向ける。

「貴方は烈風に劣る。ルイズに劣る。キュルケに劣る。ギーシュにも、モンモランシーにも、シエスタにも、貴方は劣っている。
私はジョゼフを憎んだけれど、その能力は知っていた、認めていた。だけど私は、貴方の力など認めない」
「そうか、ならば劣っている僕のささやかな力を発揮しようか」

 ややざらついた口調の言葉に、

「やめなさいっ!」

 ルイズが叫ぶ。やや遅れて、キュルケとギーシュも同じ内容を叫んでいた。
 カリーヌも口を開こうとしていたが、ルイズの言を耳にして口を閉じる。

「ルイズ?」

 何事かと振り向いたタバサを、キュルケが抱きしめる様にして背後へと引いた。

「タバサ、駄目。これ以上は駄目」

 同じく何事かと言いかけたイザベラの表情が青ざめる。

「……あ……あ……まさ……か」

 ルイズは小さく頷くと、タバサとイザベラの間に位置した。
 いつの間にか、カリーヌもルイズと並んでいる。

「ワルド。貴方の今の力は私もお母さまも認めているわ」 
「貴方の言葉にここは従います、貴方の約定を守りなさい」

 イザベラに続いて、タバサも理解した。
 もし、二人がこのままワルドを糾弾していれば、大隆起が再びガリアを襲っていたことを。
 今のガリアに再び大隆起が起これば、二次災害は恐るべきものとなるだろう。まさに、阿鼻叫喚の地獄絵図だ。
 そう、今のガリア勢に動くことは出来ない。

 ワルドは承諾した。
 いや、むしろワルドは喜んでいたのかも知れない。
 彼にとってガリアへの追撃などどうでもよいことだ
 それ以上に彼は、ヴァリエールの二人を服従させることに喜びを感じているのだから。

「ワルド、貴方の目的は何なの?」
「二度も同じ事を問うのかい、ルイズ」
「いいえ。私が尋ねているのは、貴方の私たちに対する目的よ」 
「復讐」
「何に対する?」
「母の仇」

 ルイズは短く端的に言葉を続ける。
 決してワルドの意識が逸れないよう、矢継ぎ早に。
 ガリアに対する制裁に意識が向かない様に。

「貴方のお母さまの仇? 誰が」
「君の母上だよ、ルイズ」

 一瞬、空気が固まったような錯覚をルイズは覚える。
 その理由は疑惑ではない。客観的な証拠はなくとも、ワルドの言葉が誤りであることをルイズは知っていた。
 母としてではなく、烈風としてのカリーヌがそのようなことを為そうはずがない。それは誰もが認める事実と言っていいだろう。
 もし万が一ワルドの言葉に理があるとすれば、それはとりもなおさず、ワルドの母に責があると言うことに他ならない。

「戯言ではないよ」

 しかしワルドも、それを知っている。
 だからこそワルドには何らかの言い分がある。それも、カリーヌを疑うには充分な。
 ルイズは、無意識に耳をそばだてていた。

「その女が僕に告げた言葉。それこそが証拠なんだよ」

 口を開きかけたカリーヌは、ルイズの仕草で思い直す。
 カリーヌではいけない。
 ここは、母の所行を知らなかった娘として、ルイズでなければならない。
 カリーヌが尋ねれば、ワルドはそれをカリーヌによる事実隠蔽ととるだろう。

「どういう意味?」

 だからこそ、ルイズは尋ねるのだ。
 何も知らぬふりを装い、母を疑う演技と共に。
 そしてワルドは答える。

「僕が、僕の母上を殺すわけがないだろう?」

 当然のことの様に、常識を語る様に。
 まるで、掲げた杖を手放したら地面に落ちた、と告げる様に。
 それはワルドにとってはあまりにも自明すぎる答えだったのだろう。

「だから僕は、母を殺した犯人を捜したのさ」

 ワルドにとっては自然。しかし、他の者にとっては異様な告白が続く。

 母は死んだ。
 それが事故であるわけなどない。
 この僕が、いかなる形であろうと母をこの手にかけるわけがない。
 何かが酷く間違っている。
 そうだ。
 犯人はいる。母を殺した犯人はいる。存在しなければならない。
 僕が犯人ではないのだから、母を殺した者が存在しなければならない。

 だが、どうやって見つければいい。

 途方に暮れた僕に近づいてくる者たちがいた。
 この中に、母を殺した犯人がいるのか。
 いや、いるはずだ。
 母を殺し、僕の仕業に見せかけようとした者が。
 だって僕が、僕が母を殺すわけがないのだから。

 いた。
 犯人はあの女だ。
 あの女は、この僕の才能を独り占めするために母を殺したのだ。
 恐ろしい。
 なんて恐ろしい女なのだろう。
 あの女は僕を取り込もうとしている。
 誤魔化されてたまるか。
 僕には才能がある。いつか、あの女より強くなる。絶対に。
 絶対に。

 僕は、あの女に従う振りをしていなければならない。
 今はまだ、僕に力はないから。
 あの女を見過ごさなければならない。

 だけど、僕は忘れない。
 絶対に忘れない。
 あの女が僕を母から奪おうとしたことを。
 僕にはわかっている。あの女は言ったのだ。
 母を失った僕に、あの女は言ったのだ。
 事もあろうに、この僕に。
 母を失ったこの僕に。


「困ったことがあれば、私を母とも思ってなんでも言いなさい」


 僕は絶対に、あの女を許さないだろう。
 僕の母はただ一人。
 あんな女がその座を奪おうなんて。
 母を殺してまで、その座を奪おうとしたのか。
 許さない。
 絶対に許さない。
 決して。

 三ッ首の死体は燃え上がり、シエスタが抱えていたマシンホークのメットからもルーンが消えていく。
 それを呆然と見つめる一同は、ある意味毒気を抜かれていた。
 この場を去ったワルドの言葉は、あまりにも想像以上だったのだ。

「結局、タダの気狂いかい」
「そうね」

 イザベラの吐き捨てる様な言葉に、キュルケが頷いた。

「世界を滅ぼす力を持って、その使い方を知っている気狂いよ」 

 カリーヌは俯き、立ちつくしている。
 自らの過ちならば、己を正そう。正せぬほどの過ちならば、命に替えても償いを求めよう。
 だが、これは過ちなのか。
 母を失った少年に言葉をかけることが、過ちなのか。
 どうすれば良かったのか。
 少年を冷たく見捨てるべきだったのか。
 このことあるを、どうやって予期すれば良かったのか。
 できるわけがない。
 そう言って終わるのならどれほど楽だっただろう。
 既に国の、いや、世界の命運が賭けられているのだ。
 それはただ一言の、過ちではなかったはずの言葉から始まったのだ。

「母さま」

 ルイズがその肩に触れる。

「負けません」
「ルイズ?」
「間違った者には、負けません」

 勝つ方法など想像もつかない。
 それでも。
 ワルドが間違っているのなら、絶対に負けない。

「どんなことになろうとも、絶対に負けません」

 ルイズが言うのなら。
 娘が言うのなら。
 今はそれで良い。
 そう、カリーヌは思った。


 イザベラは大きく溜息をつくと、タバサにガラスの小瓶を差し出す。

「これは?」

 タバサは驚愕を隠そうともせずに小瓶とイザベラを見比べる。

「解毒薬だよ。気をつけるんだね、それをなくすと新しい薬はまず手に入らないから」
「……何故?」
「その薬はエルフ製だけど、しばらくは手紙のやりとりすら出来ないだろうからね。三ッ首は、エルフ領にも攻め込んでいたからね」
「そうじゃない」
「渡さない理由なんて、もうないだろう」

 話は終わったとでも言うように手を振ると、イザベラはルイズに向き直る。

「残党はまだ国境付近にいるだろうから、あたしは騎士団の生き残りをかき集めて掃討するつもりだ」

 残党を刈り尽くさねば復興も安心して出来ない。

「そっちは、アルビオンをどうするつもりだい?」

 問題はマシンバッハの所属だった。
 ストロングザボーガーが今後ルイズ達に必要か否か。言ってしまえば、アルビオン戦に必要かどうか、である。
 マシンバッハの戦力は、三ッ首残党、下手をすればエルフとも戦わなければならないイザベラには必要不可欠だ。
 ホークを失った今、異世界の超戦力はザボーガーとバッハの二つしかないのだから。

「可能ならば、お互いに助け合いたいのだけど」
「ガリア辺境からだと距離が遠すぎるさ。バッハやザボーガーで飛ばしても、咄嗟の援軍は無理だね」

 それから、とイザベラは付け加える。

「シャルロットはどうするんだい? 今すぐとは言わないけれど、ガリアに戻ってくる気はあるのかい?」

 ナイフを一本、イザベラは取りだしてタバサに柄を向けた。

「今なら、少なくとも国内では王位簒奪とは言われないだろうね、正統伝承者が取り戻したって言われるさ」

 できれば、命は助けて欲しいけれど、と続ける。

「今はわからない。けれど……」

 タバサはナイフを受け取り、そして捨てた。

「私は王になりたい訳じゃない」



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