あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔ヨシヒコと零王の城-00



「ミス・ヴァリエール、前へ」
「はい……」
眼鏡をかけた頭髪の少し寂しい壮年の男性 コルベールに名を呼ばれ
桃色がかったブロンドの少女 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは僅かに表情を強張らせた。

今日は春の使い魔召喚の儀式の日
トリステイン魔法学院に在籍する生徒たちにとって、最も重要な儀式のひとつである。

何をやらせても、どんな魔法を使わせても失敗に次ぐ失敗
コモンマジックすら爆発させてしまう学院きっての劣等生のルイズではあったが、今日だけは違っていた。
彼女には自信があった。
否、それは確信と言ってもいいほどのものであった。
“必ず成功する”などというあいまいな感覚ではない“どのような使い魔を召喚するか”まで、思い描けていたのである。
ルイズは目を閉じ、静かに杖を頭上に掲げた
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」
緊張気味の表情とは裏腹に、心の奥は暖かな感情で満たされていった。
(…見える、見えるわ。私の使い魔となるものの姿が……!)
「五つの力を司るペンタゴン……」
心の奥底から湧きあがった熱は、少しずつ全身へ広がっていった。
(ドラゴン、グリフォン、マンティコアにバジリスク、バイコーンなんかも捨てがたいわね……)
「我の運命に従いし……」
熱は体の隅々まで駆け巡り、末端神経にまで到達していた
(でも……)
「この世界……」
(だけど……)
「…ではない、異世界に住まうもの……」
そう、ルイズは確信していたのだ。
自身が呼び出す使い魔が、この世界の動物や幻獣などではなく、異世界より来るものであるという事を…!!
サモン・サーヴァントはこの世界、彼女たちの住まうハルケギニアのどこかから動物なり幻獣を召喚する魔法である。
何が召喚されるかは、術者の実力と属性に応じて、ある程度の傾向が見られるが、具体的に「何が召喚されるか」は、召喚されるまでは分からない。
まして、ここではない「異世界」から召喚されるなどあり得ないし、そもそも異世界が存在するという事すら、彼女たちの常識ではありえないことなのである。
しかしルイズには見えていた。
異世界からやってくる、自分の使い魔の姿が。
(……「異世界の魔法学校」で校長を務めていた大魔法使い、白い装束に身を包んだ悪魔のような魔力を持った妙齢の女性魔導師
 もしくは謙虚な騎士や、最強の戦闘民族、空を飛ぶ程度の能力を持った巫女さんを召喚するってのも悪くないわね……)
そう、ルイズは「異世界」から「人間」を召喚するつもりなのだ!
「異世界」という時点で荒唐無稽に過ぎるのだが、まして人間の召喚ともなれば前例がない。それ自体はルイズ自身も重々承知していた。
しかし、それでもなおルイズは自分が「異世界から人間を召喚する」ことを確信していたのである。
…召喚するであろう対象をえらく具体的に想像したのは、まあたぶんどこかでアカシックレコードでもひも解いてしまったからであろう。
異世界へのアクセスには付き物の珍事である(んなわけあるか)。
それはともかく、彼女は自分の中で召喚対象のイメージを固めていった。
「我が導きに答えし…」
(…だけど、だけどね……)
「身長は170サント前後、黒髪黒目で私と同年代、ちょっとスケベだけど、とても頼りになる…平民!!」
(そう、平民!平民の男の子!!平民を召喚するのよ!
 人間の、しかも平民を召喚なんかしたら、それこそ「ゼロのルイズがやりやがった」って馬鹿にされるでしょうね
 …でもいいの!“彼”は絶対に頼りになるんだから。最後まで私の力になってくれるんだから!!
 “彼”はちょっとスケベで…もしかしたら、私以外の女の子に目移りしちゃうこともあるかもしれないけど
 それでも最後には私のところへきて、私を助けてくれるわ。
 だからそんなときでも、私は“彼”のことを叱っても、心から謝れば許してあげるわ。
 …あっ、でも“彼”が私を巡ってワルド様と死闘を繰り広げるようなことになったらどうしよう。
 いやん、こまっちゃうわ)
などなど、取り留めもない妄想を働かせつつも、ルイズの詠唱は最終段階を迎えた。
「その者を、我に従いし使い魔として召喚せよ!」
そう叫びつつ杖を振るうと、その杖の先には果たして、銀色に光り輝く鏡が中空に浮かんでいた。
「…やった!成功した!!」
彼女の『サモンサーヴァント』は成功した。
あとは、この鏡を通り抜けてやってくる異世界からの使い魔を待つばかりである。
待つこと数瞬、「その者」は光の中から現れた。
身の丈170サント程度で黒髪黒目、肌はやや黄色がかっている。年齢は…一見すると彼女より数歳年上、20代前半くらい。
ただ、黒髪黒目で肌が黄色がかっている人種は、実年齢よりやや幼く見える傾向があると聞いたことがある。
であるならば、20代後半かもしれない。
…頭に巻かれた紫色のターバンとマントという出で立ちを見たときは、まさか「伝説の魔物使いの王様」でも召喚したかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。
全体的に見て、「大体は」予想通りであったが、やや狙いと外れていた。
そんな青年の出で立ちを見ながら、ルイズはしばし逡巡していたが、やがて結論を出した。
(……ちょっと予想とは外れていたけれども、概ね狙い通り。とりあえず良しとしよう!)
そう結論付け、ルイズは後ろに控えていたコルベールを一瞥した。
コルベールは彼女と視線を合わせ、何も言わず、こくりと頷いた。
異世界…かどうかは分からないが、平民が召喚されるという前代未聞の珍事を目の当たりにし、コルベール自身少なからず驚いてはいたものの
学院の教師であり、伝統あるサモンサーヴァントの監督者でもあるという立場上、動揺を生徒たちに見せるわけにはいかなかった。
また、それ以上に「あの」落ちこぼれルイズがかなり異例とはいえ、ほぼ彼女の口にした通りの人物を召喚したということに、とても感心していた。
だからルイズの意志を尊重し、召喚の儀式を続行させることに決めたのである。
それを見てとったルイズは僅かに笑み、もう一度正面に向き直り、“彼”のもとへと歩を進めた。
“彼”とおよそ一歩の距離まで歩み寄り、今度はじっくりと観察した。
“彼”の瞳は、まっすぐルイズを見据えていた。
そして、何よりも“彼”は落ち着いていた。
「異世界に召喚される」という世紀の珍事を、今まさに実体験しているにもかかわらず、である。
(……よっぽど肝が据わっているのね。もしくは、前にもそんな経験をしてるのかしら?)
そんな“彼”の様子に感心しつつ、これから自分が“彼”にたいしてすることを想像し、少し頬を赤らめた。
「か、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから。」
自分で呼び出しといてそりゃないだろと言いたくなるが、彼女も年頃の少女である。やはり気恥ずかしさはあるのだ。
そんなルイズの様子を、“彼”は何も言わず、ただじっと見つめていた。
ルイズは“彼”の瞳に吸い込まれそうになる錯覚を感じながらも、気持ちを引き締めて儀式を続行した。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ。」
そう言い終わるや否や、ルイズは眼を瞑り、精一杯背伸びをして“彼”と唇を重ねた。
かくして、コンクラクト・サーヴァントは成功し、晴れて“彼”はルイズの使い魔となったのである。
唇を離し、赤みがかっていた頬をさらに朱に染めつつ、ルイズは使い魔となった“彼”を見た。
“彼”は相変わらず真っ直ぐな瞳で彼女を見つめていた。
いささかの動揺も見て取れない“彼”の様子に若干の悔しさを感じつつ、ルイズは自分の使い魔に対してまず何よりも初めに知るべき情報を得るために、彼に語りかけた。
「あなた…名前は?」
その質問を投げかけられ、“彼”は力強く、はっきりと答えた。


「私の名はヨシヒコ。勇者ヨシヒコです!」


(…ヨシヒコ…)
彼の名を心の中で反芻しつつ、ルイズはこれから彼との生活を思い描いていた。

……しかし、ルイズが先ほど“彼”…ヨシヒコに対して感じた“違和感”が実際はとんでもなく大きな食い違いであったことに気付くのに
そう長い時間はかからないのであった……




――――――――――予算の少ない異世界活劇――――――――――

                使い魔ヨシヒコと零王の城



新着情報

取得中です。