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ゼロのペルソナ-27

話し合いが終わり、退出しようとしたタバサはアンリエッタに呼び止められた。
「先ほどは偉そうなことを申し上げてしまいましたわ。ごめんなさい」
「気にしていません」
アンリエッタはタバサの手を取り、両手を包みこんだ。
「アルビオン王家は絶え、ロマリアがなくなって、始祖の流れを継ぐのはもはやわたしとあなただけなのです。
 これからは手を取り合いましょう。
 ……ウェールズさまとの約束を果たすのもこの戦いが終わってからになりますね」
最後は自分に言い聞かせるようにして言った。微笑んでいたがどこか悲しげだった。
タバサはどういえば分からず黙っていた。
「それからシャルロットさま。あなたに会いたいという人がいます」
「誰ですか?」
「あなたのよく知る人です。そしてあなたの王位継承を推した人です。
 わたしは一緒に話をしようとも申し上げたのですが、まずはあなたとそして使い魔さんにだけ会いたいと」
「えっ俺も?」
タバサにも陽介にも心当たりの人物が思い浮かばなかった。いったい誰が彼らに会いたがっているのであろうか。

使用人に連れられてきた部屋の中には、陽介も、そして冷静沈着なタバサも驚いてしまう人物がいた。
「い、イザベラさん……!?」
ロマリアを滅ぼしたガリア王の娘がトリステインの来客用の寝室にいたのだ。
「久しぶりね、ヨースケ……それにシャルロット」
イザベラは二人の驚いた顔が見れて嬉しいのか笑っている。
「あなたがどうして?」
対象の定まらない漠然とした質問はタバサがそれだけ驚いていることを示している。
イザベラは目を細めた。
「どうして……か。色々な理由があるわね……。父上がロマリアを攻めたのは知ってるわね?」
タバサはこくりと陽介はこくこくと頷いた。
「あんなことをしたら国はお終いよ。
 他国だけじゃなくて民からも敵視されて、貴族たちだって言うことを聞かなくなるでしょうね。
 だから新しい王が必要なのよ」
「ならあなたがなればいい」
イザベラは苦笑しながら首を振る。
「わかってるでしょ、シャルロット。父上はかつてオルレアン公派と争って王位についたわ。
 なら父上の娘が王位を継いだところで誰も納得なんてしないわ」
それに、と言葉を続けた。
「あなたはわたしなんかよりずっと王に相応しいわ。この王位はもともとあなたのものよ」
タバサは困ったという表情を浮かべる。
「わたしは王になる気は……」
「ないの?」
タバサはどう言ったらいいのか分からないという様子だ。
「それもそうよね。つい先日までは王族から追放で、いきなり王になれなんて言われたら混乱するわよね……」
それから二人は押し黙ってしまう。どちらも言葉を見出せないようだ。
だが伝えたいことがないということではないはずだ。陽介はそう確信している。
「なあ、王になるとかならないとかそーいうのはひとまず置いといて、
 それよりもっと言いたいことがあるんじゃーねーのイザベラさん」
はっとしたイザベラは探り探りと言った感じで喋り始めた。
「ねえ、シャルロット……あなたは父をわたしの父に殺されてきっとわたしを憎く思ってると思うの」
タバサは首をふってそれを否定した。
「あなたの父がやったこと。あなたは関係ない」
「でもあなたに今までひどいことをしてきたわ」
「それもあなたの父が決めたこと」
「ひどいいたずらをしたわ」
「気にしてない」

イザベラが気に病んでいたことをタバサは次々と否定していく。
だがイザベラの顔は完全には、うしろめたさはなくならない。
彼女はもじもじとしている。言いたいことをうまくいえない。どう切り出せばいいのかわからないといった様子だ。
陽介は彼女に代わってタバサに言った。
「タバサと仲良くしたいってことじゃね?」
陽介の主人はそうなの?というように視線を遣る。
「ちがっ……」
彼女は顔を赤くしながら否定の言葉を口に仕掛けたが押し止めて、代わりに黙って頷いて肯定した。
「わたしは構わない」
それがタバサのなんとも味気ない返答であった。
それから二人は子供のころからしたことのない家族としての抱擁をしたが、なんともぎこちなかった。
二人のぎこちない抱擁が終わると形容しがたい微妙な雰囲気が部屋に流れた。
そりゃ、そう簡単に仲良くなるなんて出来ないよな。と陽介が考えているとタバサが尋ねてきた。
「どうすればいい?」
どうすればいいとは主語も目的語もないなんともシンプルな質問文だが、陽介にはちゃんとその意味は伝わった。
タバサはイザベラと仲良くなる方法が知りたいのだろう。
さすがは付き合いが深いだけあるぜ。と、心の中で自画自賛する。
それはさておいてもタバサもイザベラと仲良くしたいと思っていることは歓迎すべきことに陽介には思えた。
だが具体的な方法を提案しようというと難しくなる。
んー。と陽介は首をひねった。自分は親友とどうしたっけか?と元の世界に居た相棒を思い出す。
冬でも学ランの前を閉めることがなく、灰色の髪を妙な形に切っていた親友の姿を思い浮かべる。
そういえばあいつ何を思ったのか、ちょうど今の二人みたいに突然抱きしめてきたな……。
案外悪い気分じゃなかった…ってこれだけだと何か怪しいヤツみたいだな。完二じゃあるまいし。
えーと、んでもってその後、自分があいつと本当に心を通わせたのは……
「川原で殴り合いの喧嘩……」
「それにする」
陽介が懐古して呟いたことをタバサは受け入れた。当然、陽介は慌てる。イザベラも驚いている。
「ちょっ、待てよ、タバサ!」
「なに?」
「えーと……ホラ、ここ川原じゃないし」
「ここでする」
「それに女の子が殴り合うってのは一般的じゃないような……」
「あなたはしたの?」
「いや、親友としたことがあるけどさ……」

「ならそれにする」
タバサは何を思ったのか殴り合うという意見が気に入ったようだった。
陽介が止めようとすると、イザベラが笑った。
「ははっ、なに?殴り合って分かり合おうっての?」
タバサはこくりと首を立てに振る。
「いいわ。あなたがそれで満足するっていうならわたしもそうするわ」
陽介の思惑とは反対になぜかイザベラも乗り気になってしまったようだ。
なんでこんなことに……。
呆然とする陽介に彼の主から、邪魔になるとマントを脱いでわたされる。
「手加減はしない」
戸惑う陽介を置き去りにして少女たちの喧嘩が始まった。
二人は示し合わせたように同時に拳を突き出した。
イザベラの腕の方が長いが先に相手に拳を当てたのはタバサの方だった。
より早い小さな拳はイザベラのボディに入った。
その拳を受けながらイザベラの拳は半瞬遅れて相手の薄い胸を打つ。
ダメージはイザベラのほうが大きかったが、下がったのは体格が小さいタバサの方だった。
タバサは右拳を構えて地面を踏みしめる。
腰の入ったタバサの拳はイザベラの頬に当たり、イザベラはタバサの横っ腹を殴った。
次にイザベラは顔を、タバサはわき腹を……というように拳の押収が続く。
避けることはしない。ただひたすらお互いの拳を相手に届けようとする。
さながら言葉の代わりに思いを届けようとするように。
トリステインの国賓クラスを迎えるための客室で、喧嘩っ早い少年だろうとたじろぐような喧嘩が行われている。
息を切らして戦う少女を見ながら陽介は結局見ているだけだった。
この争う物音を聞いて誰かやってくるかと心配だけはしていたが誰も来なかった。
そういや、あいつ今はどうしてだっけか?自分たちがこの世界に来たころには海外にいたはずだ。
親もとに帰った後、すぐにまた親の短期の出張が決まったから今度は旅行も兼ねて親についていったとか。
とはいえこの世界に来て一ヶ月くらいになるのでそろそろ帰って来ているだろうか。
八十稲羽には女子勢が残ってるはずだからきっと帰ったらめちゃくちゃ怒られるんだろうなあ。シンパイかけんなっつって。
そういえば、いつか完二とも殴り合いしようかと冗談交じりに約束したことがあったけど未だにしてねーな。
などと同じ部屋にいながら一人取り残されている陽介は少女同士の喧嘩が終わるまで仲間たちのことを考えていた。
一歩も引かない殴り合いは長く続いた。5分以上はやっていたかもしれない。
全力の殴り合いである。少女どころか男でさえ生涯にやるかどうかの激しい喧嘩をそれだけやったのだ。
その結果として、二人の少女は当然ながら満身創痍で、仲良く巨大なベッドで仰向けに転がっている。
ちょうど互いにベッドの反対側から倒れこみ、お互いに頭が当たりそうなくらいの距離だ。
二人とも汗を流しハアハアと息が荒い。
イザベラの頬ははれてドレスはところどころ破れて、タバサのメガネは傾いて白いシャツはボタンが飛んで下に着ているショーツが見えていた。
陽介は破れた服を隠すようににマントを主に返す。

「どうだ、スッキリしたか、二人とも?」
その答えは否定だった。
「ぜっんぜん!はあはあ…。顔も、お腹も、体中痛いし…。バカじゃないのあんた……」
「わたしもそう思う…」
確かに提案したのは陽介だが、彼の反対を無視して始めたのにひどい言われようだった。
「でも…エレーヌのことがわかった気がするわ…。小さな体なのにすっごく強くて……」
「鍛え方が違う」
そう言ってタバサは荒く息継ぎをする。イザベラは従妹のらしくない憎まれ口に苦笑した。
「そうよね…。わたしが…わたしたちがあなたをそんなに強くしたのよね…」
それから二人の荒い呼吸だけが聞こえた。
「わたし…あなたに嫉妬してた…。魔法の才能に恵まれてて…みんなに愛されてて…。
 わたしが持ってないもの…あなたは全部持ってた……。だからうらやましかった……」
また息使いが支配する沈黙が流れる。
「……ありがとう、エレーヌ」
「……わたしもありがとう」
それから二人の間に言葉はなくなった。
言葉はもう要らなくなったのだ。それを陽介は理解した。
ボロボロの二人の顔に浮かぶのは明らかな笑顔だった。
人のことバカとか言っておきながら、お前らスッキリしてんじゃねえか。
そう思っても陽介は口に出さなかった。代わりに別の現実的問題を口にする。
「で、その怪我どーすんだ?」
「どうするって?」
「治さないのかってことだよ?」
「治す……そっか治さないといけないわね」
「みんなが心配する」
「そうよね、エレーヌ……。ふふっ、まさか王族同士殴りあってるなんて知られたらみんなどう思うからしら」
その想像が愉快なのかイザベラは笑った。
確かに現王女が自分ではなく別の人物を王位に推しておきながら、
その二人が平民も真っ青な殴りをしたとなればきっと彼女が想像するように面白い顔の一つもするであろう。
「なんだか治すのもったいないわね……」
イザベラは愛おしそうに腫れ上がった自分の頬をさすった。
同じようにタバサも腕をなぜる。次に腫れ上がった顔に触れながら陽介に言った。
「あなたに治して欲しい」
「えっ、俺?」
「以前治してもらったことがある」
確かに陽介は回復魔法が使える。吸血鬼退治のときに戦いで傷ついたタバサを直したこともある。
とはいえクマの方が優れた回復魔法の使い手なので、普段はあまり使わないが。
「ヨースケってメイジなのかい?」
ペルソナ使いを知らず、当然陽介がペルソナ使いだと知らないイザベラは質問した。
「いや、メイジじゃねーんだけどよ……なんて言ったらいいかな……」
「回復魔法が使える」
タバサが端的に必要なことを言った。
「もしかして先住魔法?何でもいいか。わたしもヨースケに治して欲しいな」
「まあ、イザベラさんもそう言うなら……」

陽介はペルソナスサノオを召還して中級回復魔法ディアラマを二人に使った。
イザベラは突然現れたその亜人のようなものに驚いたが、自分の怪我が一瞬で治ったのにも驚いた。
完全回復する上級回復呪文ディアラハンには及ばないがディアラマも少女の喧嘩の傷くらいなら一発で治せる。
処置を終え、陽介は息をついてベッドに腰かけた。二人の少女のように横になったりはしない。
傷はいえたはずなのに二人の少女は未だにベットで仰向けになっていた。
怪我がなくなったところをさすりながらイザベラは仰向けのまま尋ねた。
「いったいなんなんだい、その力?」
「ペルソナっつーんだけど……説明が難しいな……」
「彼は別の世界から来た」
タバサも仰向けのままがあっさりと重要な秘密を暴露した。
「ってタバサさん?そんなあっさりとそんなこと言っていいわけ?」
「ふーん、別の世界から。なるほどねえ」
「信じてるし!」
「なに、じゃあ嘘なの」
イザベラはじろりと陽介を見てくる。
なんだか下から見下ろされるような不思議な気分になった。
「嘘じゃねえけど普通信じっか?別の世界から来ました、なんて」
「あんたは普通じゃないから、別の世界から来たって言われても信じるわよ」
「なんか、イザベラさんヒドイこと言ってない……?」
陽介はタメ息をつきたくなった。
「ねえ、そのイザベラさんってやめくれないかしら。中途半端に他人行儀よ」
「えっ……。いやでもイザベラさんって姫さまだし……」
「もう姫じゃないわ。だいたい敬語もあんたロクに使ってないじゃない」
「いや、敬語はイザベラさんがいいって言ったから……」
「とにかく呼び捨てでいいわよ。だいたい姫とか言い出したらエレーヌなんて王よ」
「タバサは王になるかどうかまだ決めてねーだろ」
そう言って陽介はタバサを見る。
タバサは横になったまま陽介を仰ぐようにして視線を返す。
「あなたはわたしが王になっても助けてくれる?」
陽介はきょとんとした顔を浮かべたが、すぐに笑った。
「あったりまえだろ。お前がなんだろうと助けてやるよ。元の世界に帰るまででよければな」
ありがとう、そう小さな声で聞こえた。
イザベラは仰向けのまま探るように手を動かして、タバサの手を握った。
握った手は同じように握り返される。
「ねえ、エレーヌ」
「なに?」
「父上を助命して欲しいの……」
タバサは手を握ったまま無言だった。
「わかってるわ。無理を言ってるってことは。父上は許されないことをしたということを。それでもあの人は……」
イザベラは手をさらに強く握る。
「あの人もわたしの家族だから」
タバサは答えを返せなかった。
しかし二人の手は強く、固く結ばれている。

タバサとイザベラは幼少時代から仲がよくなかった。
正確にいうならイザベラが一方的にタバサを嫌っていた。
それでも彼女らはまるで自分たちが生まれてからそうであったように、あるべき姿であるように、彼女たちは家族となった。

翌日、トリステインはアンリエッタ姫が王位を継承することを発表。
またトリステイン、ゲルマニア、ロマリア連合皇国の連名でオルレアン公の遺児シャルロットがガリアの新王になることが発表され、
その正当性は支持した各国、そして前ガリア王女イザベラがそれを保障した。


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