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正義の雪風 ジャスティス☆シャルロット

「きゃあああっ! 痴漢よ~っ!!」
 乗合馬車の車内に女性の悲鳴が響いた。
「事件ニャ! タバサちゃん、変身ニャ!」
「……わかった……タマエル……」
 その声を聞きつけ現場に急行する、魔法学院2年生・タバサと彼女が召喚した使い魔・猫天使タマエル。
 そしてタバサは懐から取り出した杖――星の紋章や翼が付いた多分に装飾的な、普段学院で使用している杖とは明らかに異なるそれ――を天に掲げ、呪文を詠唱する。
「……チェンジ……ジャスティス……!」
 呪文と共にタバサの体は閃光に包まれ、その中で彼女の体は急成長していく。
 そして光が消えた時、そこには……、

「ジャアアアスティイイス!!」
 身長2メイルを超える筋骨粒々といった体格のメイジ・ジャスティスシャルロットが、雄叫びを上げつつ目をぎらつかせて全力疾走していたのだった。
「ジャスティスキーック!!」
 飛び蹴りの一撃で乗合馬車を横転させると、シャルロットは周囲を見回し、
「痴漢はどこじゃー!!」
「あっちです!」
 と女性が指差す先には、いち早く乗合馬車から脱出しそのまま逃走しようとする中年男性の姿があった。
「むっ! ジャスティスステッキ!」
 気合一閃、シャルロットは中年男性めがけ飾り付きの杖・ジャスティスステッキを投擲した。
「ぎゃおっ!」
 狙い過たずジャスティスステッキは中年男性の尻に直撃、男性はステッキが尻の穴に刺さったまま悶絶しつつ重々しい足音を立てて接近するシャルロットを待つ以外不可能だった。
「あひっ、あひい~っ」
「お前は2つの罪を犯した。1つは被害者の女性に、もう1つは善良な乗客に! 痴漢冤罪事件!! 万が一痴漢に間違われたら人生が終わる。善良な乗客は遣わなくていい気を遣い、悲しい努力を続けている。それも全て貴様のような痴漢野郎がいるせいだ!! 一部の糞野郎のせいで多くの善良な人々が迷惑する、そんな事はあってはならぬうっ!!」
 そして腰を振りつつ呪文詠唱していくシャルロットがかざすジャスティスステッキに、魔力の光が収束していく。
「よって魔法でお仕置きじゃい! 赤ジャスティス青ジャスティス黄ジャスティス……自分の尻が大好きになーれ!!」
「んぎゃー!?」
 ジャスティスステッキからほとばしる光線が、中年男性を直撃!
 ややあって、中年男性は自分の尻を激しく揉みしだき始める。
「あっ、ああ~ん。あっ、あふっ、らめえ~。やめられない止まらない~。ああ……、わ、わしはこれからどうなってしまうの~?」
「知らん! ジャースティース!!」
 涙・鼻水・唾液にまみれた顔で尋ねた中年男性に背を向け、高々とジャスティスステッキをかかげるシャルロット。
 するとそこに、
「あの……、痴漢から助けてくれてありがとうございました」
 胸元が大きく開けられた上着に、膝上と言うより股下と言った方が適切な丈のスカートを穿いた女性――冒頭で上がった悲鳴の主だ――がシャルロットに感謝の言葉を述べたが、
「お前も無防備すぎだー!!」
「ひでぶっ!」
 シャルロットによる平手の一撃であえなく撃沈。
「ありがとう、ジャスティスシャルロット!!」
「なんかありがとー!!」
「ジャースティース!」
 そしてシャルロットはその場に居合わせた男性達からの声援に見送られ、どこへともなく走っていったのだった。

 トリステイン魔法学院に終業の鐘が響く。放課後の教室では……、
「またジャスティスシャルロットが出たんだって!」
「やだー、怖ーい!」
「でも正義の味方だぜ!」
「でもキモーイ!!」
 口々にシャルロットの噂話をしている級友達の中、タバサは1人俯いたまま席に着いていた。
「俺、シャルロットを見た事あるけど、あいつ絶対男だぜ!」
「嘘!?」
 男子生徒達のとんでもない発言に、さらに落胆の度合いを高めるタバサ。
 するとそこに、シャルロットの噂話に加わっていなかったルイズ・キュルケが接近してくる。
「あんなのメイジじゃなくて変質者よね」
「この世から消えて無くなればいいのに。タバサもそう思うでしょ?」
 2人の辛辣な発言に一瞬ぎくっとしたタバサだったが、この場はとりあえず、
「……う……うん……そうだね……」
 と答えておく事にしたのだった。

「ニャにーっ、ジャスティスシャルロットをやめるー!?」
 川沿いの道を歩きながらタバサが放った言葉に、タマエルは思わず驚愕の声を上げた。
「……私……もう2度と変身しない……」
「どどど、どーしてニャ!? シャルロットに任命した時にはあんニャに喜んでたのに……」
 確かにタマエルを召喚した日の夜、自分が魔法少女に選ばれたと知ったタバサは、
『……私が魔法少女……嬉しい……やるやる……』
 と大変な喜びようだった。
 しかしそれは、
「……だってそれは……大人の女性に変身すると思ったから……」
 そう、タバサが考えていた変身後の姿は美しさと可憐さを合わせ持つ長身の女性であり、その姿に憧れていたからこそタマエルからの以来を快諾したのだった。
「……それが何でああなの……」
「え? だってあれはタバサちゃんが――」
 ここで時間は再度タマエルを召喚した日の夜に遡る。
『……ねえ……変身すると大人の姿になるの……』
『なるニャ』
『……あの……だったら1つ頼みがある……』
 タバサはそこまで言うと少々の間恥ずかしがるように口ごもっていたが、やがて意を決したように言葉を続ける。
『……お……大きくしてほしい……』
「――だから……」
「……そうじゃない……」
 タマエルの言葉に思わず声を上げたタバサ。創造と現実の差を考えれば無理からぬ事だろう。
「……それに何で変身すると……人格まで変わるの……」
「あれはもう1人の君の姿だニャ。君の中の正義の心、それを増幅させた正義の塊、それがジャスティスシャルロットなんだニャ」
「……もう1人の私……あれが……」
 タバサは思わず顔を引きつらせた。シャルロットの人格が元々自分の中に存在したものだという事に、少なからず衝撃を受けたようだ。
「……で……でもやりすぎ……この間は騎馬暴走族を壊滅させてしまうし……その前は悪い子爵を魔法でブタに……その前は感覚共有で覗きをしたオールド・オスマンを巨大化させて晒し者にしてしまうし……」
「否! このタマエルはハルケギニアを正義の光で照らすため、天上界より使わされた猫天使ニャ! だからジャスティスシャルロットの行動にも間違いは無いニャ!」
「……そ……そうなのかな……」
「それともタバサちゃんは、ハルケギニアが悪で満ち溢れてもいいって言うのかニャ!?」
「……そ……それは困るけど……」
 そしてタマエルは首から提げている厚紙の裏に視線を向け、
「悪を成敗する度に貰えるジャスティススタンプもまだ7つ……。戦いはまだこれからニャ」
「……気になってたんだけど……それ全部埋まるとどうなるの……」
「ボクの肩書きが、『天使』から『天使長』にランクアップするんニャ~」
「……自分の出世のため……」
 タマエルのあまりの発言にどん引きしたタバサ。一方タマエルは慌てて、
「いやいや、そういうのも含めて頑張ろうっていう意味ニャ」
「……どういう意味……もうタマエルを信じられない……」
「タバサちゃん!」
 何とかしてタバサに自分の言葉を聞いてもらおうと、タマエルは強い口調で語る。
「違うんだ、タバサちゃん。ボクの目を見て!」
 その言葉にわずかに心打たれ、タマエルの瞳を見つめるタバサ。すると、
「……催眠術……」
 タマエルの瞳から放たれた怪しい光輪から、タバサは慌てて目を逸らす。
「いやいや、今のは冗談で……」
「……冗談で催眠術かけるなんて信じられない……」
 そう言うとタバサは、手にしていたジャスティスステッキを川に放り込んだ。
「あーっ、ジャスティスステッキがー!! ボク泳げないのに~」
 慌てふためくタマエルには目もくれず、その場から立ち去るタバサ。
「あっ、タバサちゃん」

 1人道を歩くタバサ。
 その視界の隅に、『変な人についていっちゃ駄目だよ!』の文字と衛兵の鎧を着込んだ犬の絵が描かれた立て看板が入った。
(……これでもうシャルロットにならなくていい……悪人は衛兵に任せればいい……)
 そんなタバサの後方から1台の馬車がゆっくり接近し……、
「………!」
 追い越し様に馬車の中から身を乗り出した男が、タバサの口を押さえて車内に引きずり込んだ。
(……え……何……た……助けて……助けてタマエル……)

 トリスタニアのはずれに位置する倉庫街。そこにある倉庫の1つでは……、
「いかがですか、御前。今宵の生け贄は?」
 2人の男――片方は先程タバサを馬車に引きずり込んだ男だ――を左右に従えた「御前」ことジョゼフ1世の視線の先には、天井から逆さ吊りにされたタバサの姿があった。
「マーベラス。では早速始めようか」
 そう言って満足げに歪んだ笑みを浮かべたジョゼフ1世は、下着だけ残して纏っていた衣服を全部脱ぎ捨てる。
「……嫌……何をする気なの……」
 すると男の1人が逆さ吊りにしたタバサを抱え、無造作に積み上げられた木箱によじ登る。
「………」
「いきますよ、御前」
「OKー」
 首を傾げるタバサをよそに、男は簡素な造りのベッドに横たわったジョゼフ1世に声をかけ、タバサを抱えていた手を離す。
「……きゃああ……」
 当然の事ながらタバサの体は振り子の要領で勢いよく移動し、
「うほほー♪ 私の醜い肉体を可憐なめがねっ娘の汚れ無きショートヘアがあ~♪」
 素肌に直接当たったタバサの髪の感触に悶絶するジョゼフ1世。タバサの体が通過すると大きく息を吐いていたが、戻ってくると再度、
「……きゃー……」
「おっ、おふうーっ♪」
 タバサの髪がジョゼフ1世の素肌に触れ、ジョゼフ1世は悶絶しつつ声を上げた。
「いかがですか、御前?」
「……エクセレンッ」
 にやけた笑顔でそう答えたジョゼフ1世に呆れた視線を向けるタバサ。そんな彼女を再度抱えた男が語りかける。
「金と権力を手に入れた御前の望みは、ご自分の特殊な性欲を満たす事のみなのだ」
「……最低な大人……」
 激しい衝撃を受けたタバサに向かってジョゼフ1世はおもむろに上半身を起こし、
「あ、『ショートヘアさわさわ』以上のエロ行為はしないから。私その辺紳士だから」
「……その格好で紳士言う……」
「もちろんお礼はさせてもらうよ」
 とジョゼフ1世が掌で指し示した先には、金貨がいっぱいに詰まった袋を両手で持ち、さらに背中にも背負っている男が立っていた。
 しかしそこでタバサを抱えていた男が彼女の頭に杖を突きつけ、
「ただし、そのお金には口止め料も含まれている。わかるよね? ……わかったらおとなしく我々に従いなさい。返事は? イエスorノー?」
「……イ……」
 そこまで言ったところで、タバサは強い決意を込めた瞳で男を睨みつけ、
「……嫌……あなた達は悪人……悪人の命令には絶対従わない……」
「このガキ……」

「うん、その瞳なんだニャ」
 突然聞こえてきたその声に、タバサもジョゼフ1世も男達も声がした方向に視線を向ける。
「その熱く激しい正義の瞳。やっぱりシャルロットはタバサちゃんじゃなきゃ駄目なんだニャー」
 一同が見上げた先には、全身ずぶ濡れになったタマエルがジャスティスステッキ片手に明かり取りの小窓の枠に立っていた。
「……タマエル……」
「タバサちゃん!」
 タマエルが投げ渡したジャスティスステッキを器用に体を振って後ろ手に受け止め、タバサは呪文を詠唱する。
「……チェンジ……ジャスティス……!」
 呪文と共にタバサの体は閃光に包まれ、その中で急成長していく彼女の体が拘束していた縄をひきちぎっていく。
「法で裁けぬ悪党を、魔法で裁く夢乙女!」
 人が着地した音とは思えない轟音を立てて、人影が床に降り立つ。
「正義の雪風っ! ジャスティイスシャルロットオオオオ!!」
 本当に光を放たんばかりに目をぎらつかせて、高々と吼えるシャルロット。
「ひっ、ひいいっ!」
 狂乱状態に陥った男の1人がエアニードルを放ち、それがシャルロットの二の腕に命中する。
 しかしその傷口からは多数の目と蠢く触手を持った何かが顔を覗かせ、甲高い声を上げつつ傷を塞ごうとしていた。
「うわあああ!?」
「何だそれはー!?」
「これは……、『魔法』だ」
「違うよ! 『魔』だよ! あんたの体に巣食ってる『魔』だよー!!」
「こいつ人間じゃねえー!」
「勘弁してくれ」
「おとなしく衛兵に捕まるから~」
 すっかり怯えきった状態で、拝まんばかりにシャルロットに懇願する3人。
「衛兵?」
 ジョゼフ1世のその言葉に、シャルロットはぴくりと眉を動かした。
「お前らを衛兵になぞ渡しはしない。なぜならっ! 貴様らのようなド変態が捕まりニュースになったら、その変態の原因は漫画やアニメだと根拠の無い事を言い出す馬鹿が現れて、さらにはアホな法律を作ろうとする未熟な正義感で動く糞虫どもが湧いて出る事になるのだ!! 変態は変態である事を自覚して、他人に迷惑をかけずにひっそりと変態ライフを営む! それが真の変態道である!!」
「は、はい、すみません」
 平身低頭でかしこまるジョゼフ1世達の姿にシャルロットは何かの気配を感じたのか、
「はっ、……といってる間にもこのわしをいやらしい目で見ているな、この変態め!」
「見てねえー!!」
 慌てて胸元を隠しスカートの前部を手で押さえるシャルロットに、ジョゼフ1世は精一杯の否定の言葉を返した。
「いいや、騙されんぞ。今まさに貴様の脳内では、このわしの可憐でチルドレンな肉体が醜い欲望のなすがままに……」
「してないし! あんた可憐でもチルドレンでもないし!」
「ええい黙れ! そもそも魔女っ娘は少女達の憧れの存在であって、大きいお友達のものではないのだぞ!! だから魔女っ娘作品同士のクロスSSなんか鼻の下伸ばして読んでんじゃねーぞ!!」
「何の話!?」
 後半になってシャルロットが突然自分ではない誰かに対し激しく言い放った事に、困惑を隠せないジョゼフ1世。
「とにかくわしを肉欲の目で見るのはやめろ!」
「見るわけないだろー!」
「何? じゃあ何か? このわしに女の魅力が無いとでも言うのか!?」
「あるわけないだろー!」
 ジョゼフ1世の返答は実に自然なものだった。
 しかし次の瞬間、シャルロットに顔面を乱暴にわしづかみにされて持ち上げられた。
「何だとー!!」
「いだだだ、嘘です嘘です! とっても魅力的です~」
「やっぱりエロい目で見てたなー!!」
「どないせいっちゅーんじゃー!!」
「うるさいっ! 魔法エクスプロージョーン!!」
 大きく開かれたシャルロットの口の奥に魔力の光が点り、そこから放たれる光の奔流が倉庫を木端微塵に爆散させる。

 塔の頂上に立ち、炎上している倉庫を眺めるシャルロット・タマエル。
「タマエルよ、そのジャスティススタンプは残りあと幾つだ?」
「残りあと34ニャ」
「楽勝じゃな!!」
 そう言いつつにっと豪快な笑みを浮かべたシャルロットに、タマエルも思わず笑顔になるのだった。
 ──かくして、ジャスティスシャルロットの戦いは続く! ハルケギニアを力ずくで平和にするために!! ジャースティース!!

『ジャスティスシャルロットが、魔法でシーワーウルフの人達をクジラにしてしまいました。「そんなにクジラが好きならクジラになればいい!」とシャルロットは高らかに笑い……、これは国際問題に発展し……』
 ……というニュースを映す「遠見の鏡」に、目の幅程の涙を流すタバサと満足そうに微笑むタマエルだった。
 ──たまにやりすぎちゃうけどね……。

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