あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔は四代目-06


「いや、からかってるわけじゃなくてな。本当に読めないんじゃ。今まで不自由なく話せておったからうっかりしておったわい。
してみると、今会話ができているのもルーンの力か?…いや、違うか」
「…違う?使い魔にした動物と会話ができるようになるのは珍しい話じゃないけど?ああ、勿論ただの動物とリュオを一緒にするわけじゃないわよ」
「わかっておるわい。そうじゃなくてじゃな、ほれ、わしが召喚された時の事を思い出してみんかい」
「…ああ、そういえば最初はリュオからコルベール先生に話しかけたんだっけ。…そうか、確かにあの時から言葉が通じてたわね。」
「そうじゃ、勿論その時はルーンなんぞ刻まれておらんかったしのぉ。すると、問題はそれ以前じゃな。すると…まぁ、どう考えてもゲートの方が原因か
…しかし、融通が効かんなぁ、どうせなら文字も分かるようにしてくれれば良かったのじゃが」
「…ちよっと待って、これって新発見なのかも。」

ルイズは少し考え込んだ。使い魔と会話ができるようになるのは刻まれるルーンのせいだというのが通常の考え方のはずだ。
しかし、リュオの話だと召喚された時点で会話が可能であり、契約は関係ない、という事になる。
もっとも、偶々そうなったという可能性もあるし、新発見ではあるかもしれないがそれが重要な事だとは思えなかった。
要は契約までの順番が多少前後するだけだ。大発見とは行かないか。
エレオノール姉様辺りならまた違った受け止め方をするのかもしれないが…。
しかし仮に興味を持ったとしたら、色々と細部まで追求されるのは明白である。
本人に悪気が無いのは一応分かっているが、迂闊に話せない秘密を抱えている以上、ぼろを出さずにやり過ごせるとは到底思えない。
それに、やっぱりその、なんだ、怖いし。やはり姉様には話さない方が良さそうだ。ルイズがそう結論付けた一方で、リュオもその事に興味を引かれた様だ。

「新発見.…?そうか、魔法の知識がある故の先入観じゃな。使い魔になったから言葉が分かるようになる、という。しかし実はそうではない、と。
ん?それを推し進めていけば言葉が分かるからこそ使い魔になる…いや、使い魔にするために言葉を分かるようにする、のか?
…まぁ、情報が少ないからこれだけでは何とも言えぬか。…いずれにせよこのサモン・サーヴァント…じゃったか?
相当癖のある術式のようじゃな…というか、お主等そんな良く分かってない術式なんぞホイホイ実行するんでないわ。変な物を呼び出したらどうするんじゃ」
「そんな事言ったって今まで何の問題も起きなかったわけだし…大体、変な物って何よ」
「ん?そうじゃな、…やまのようにおおきなまじんとか、とてつもなくおそろしいもの、とか?」

リュオの言う「変な物」とやらが余りに荒唐無稽だったので、ルイズはからかわれていると感じ、少々ムッとしながら抗議した。

「…ちょっと、適当なこと言わないで頂戴よね」
「適当じゃないぞ。そういった物を召喚できる呪文があるんじゃ。『パルプンテ』というんじゃがな。なんなら実演して見せても良いぞ。
まぁ、実際にそういう物を召喚出来るかどうかは分からんがな、
なにせ唱えた本人にも何が起きるかわからない呪文じゃから…本当、何の為にある呪文なんじゃろうな?」
「…私に言われても分かるわけないじゃないのよ。ああもう、どうせ冗談なんでしょうけど、本当にそんな物騒な物唱えたりしないでよね」
「そうかそうか、見てみたいか。よろしい。始原の名もなき無なる神よ、混沌の太古よりその姿なき姿を現したまえ。虚無の力をわが前に現したまえ。我に」
「だから止めてってば!…全く人を驚かすのが好きなんだからもう。大体、何が虚無…え?虚無?」

リュオの詠唱を打ち切らせたルイズは、その詠唱中に出てきた言葉、「虚無」の単語に何か引っかかるものを感じた。
リュオの今の話が本当だとすれば、今の呪文は虚無の力を使って凄まじいものを召喚できるようだ。
そして、始祖ブリミルが操ったと言う、四大系統魔法に分類されない今は絶えたとされる幻の系統、虚無。
どちらにも虚無が絡むのは偶然だろうか。そして、リュオの存在自体が充分に凄まじいものなのではないのだろうか?だとすれば…?
前例の無いコントラクト・サーヴァント。リュオの存在、虚無の力を利用した召喚の呪文、それらがおぼろげながら一本の線で繋がった、ルイズはそんな気がした。
…が、すぐに自分でそれを打ち消した。馬鹿な。それでは自分は虚無の使い手ということになる。
コモンマジックすら成功しない者が始祖ブリミルと同系統の虚無の使い手などと、自惚れにも程があるというものだ。
大体、今の会話の流れだとリュオが自分をからかうために即興でそれらしく呪文の体裁を整えて唱えてみせた、というのが本当の所だろう。
それを真に受け、他人が聞いたら間違いなく誇大妄想と笑われるような考えを一瞬でも浮かべた自分が恥ずかしく、ルイズは赤い顔でリュオを睨み付けた。

「ん?どうしたんじゃ?難しい顔をして睨みおってからに」
「…いや、なんでもないわ.。ていうか、誰のせいだと思っているのよ…もう」
「ふぉっふぉっふぉっ。いや、流石に冗談が過ぎたか。済まんかったな。
しかし困ったの。いずれは字を習わなければならんが…取り合えず倉庫を漁るときはルイズにこのリストを読み上げてもらうしか無さそうじゃな。
さて、その話はここまでにして…ルイズ、一応確認しておこうかい。この世界での使い魔の勤めとは何かな?」
「…やっと本題に入れたわね。脇道に逸れ過ぎよ.、全く…そうね、色々あるけれど、主人の目となり耳となる、
秘薬の材料等といった主人の望む物を見つける、主人を護衛する、といったところかしら」

その返答が概ね予想通りのものだったので、リュオは頷くと、言葉を続けた。

「うむ、やはり使い魔のやる事はどこに行っても変わらん様じゃな。なら話が早いわい。それで、わしの見てるいものが見えているのか?」
「…駄目ね。いつもと変わらないわ」
「そうじゃったのか?わしにはルイズの見ているものが良く見えるがのぉ…これ、冗談じゃ。そんな顔で見るでないわ。
しかし、感覚を共有するというのはそういう事じゃ。自分の見ている物をずっと見られるというのは監視されているようで気分が良いものではないじゃろ?
今ルイズがそんな顔をして見せたようにな。じゃから、物は考えようじゃ。お互いこれで良かったと言う事にしようではないか。
さて、二つ目の探し物じゃな。物が分かっていれば出来なくは無いだろうが、こっちの世界のことは良く分からんから余り期待は出来んな。残念じゃったな」
「…自分で言わないで… で、最後の主人の身を守る、と言う点についてだけど。これに関しては何も言う事はないわね」
「戦闘に絶対はないから油断は出来んがな。とはいえ、大抵の敵には遅れをとらんじゃろう。
じゃが、敵が多いようなら己の生き方を振り返ってみるべきだとは思うぞ?」
「そんな敵キュルケぐらいしかいないわよ!私が言ってるのはそういうんじゃなくって…」
「ふぉっふぉっふぉ、わかっておるわい。まさかわしの力を疑うわけではあるまいな?」
「勿論凄く強いだろう、ってのは分かるんだけど、比較できるものが無いからどのくらい強いと言うのかが今ひとつ良く分からないのよね」
「それもそうじゃな。ま、それはその時がくればわかるじゃろ。正直戦闘なんぞせずに済めばそれが一番じゃからそんな時がこない事を願いたいもんじゃが…ん?誰じゃろ?」

その時、ドアをノックする音が響いた。続いてドア越しに聞こえてきた声にリュオは聞き覚えがあった。

「ミス・ヴァリエール様。夕食をお持ちしましたが」
「来たわね。開いてるわよ。入って頂戴」

ルイズの許可を受け、メイドが二人分の夕食を乗せた台車を押しながら部屋に入ってきた。リュオの予想通り、そのメイドは昼間会ったシエスタであった。

「こんばんはリュオ様、昼間はどうも」
「うむ、こんばんは、じゃなシエスタ。何じゃ、ルイズが頼んだのか?」
「そうよ。だって昼間に騒動やらかしたばかりよ?食堂で色々クラスメートに説明する事になるのも面倒だしね。
…まぁ、明日の授業からは出来るだけ一緒に出てもらうから、時間稼ぎでしかないけれど。
…それはそうと、何よ、メイドなんかといつ知り合ったの…って、私が授業に出ている間しかないか」
「うむ。偶然中庭で出会ったのじゃがな。なにやら…うむ、その。何じゃ。凶悪なドラゴンが出たという噂に怯えていたのでな。わしが落ち着かせた」
「…え?凶悪な…ドラゴン?」

ルイズは、何か嫌な予感がした。

「ミス・ヴァリエール様、リュオ様って凄いんですね!凶悪なドラゴンを見事宥めたんだそうですよ。ああ、見たかったなぁ…」
「宥めた…って…ねぇリュオ、その…凶悪なドラゴンってもしか」
「はっはっは、ん~何の事かなフフフ」

図星だった。ルイズは内心頭を抱えた。薄々感じていた事だが、このリュオ、「話の分かる気さくな王」じゃなくて「ただ単に調子のいい王」なんじゃ…

「えぇ、まぁ、確かにその、色々と凄いメイジなのよ」

冷や汗を浮かべながらそう言ったルイズは、かなり扱いにくいけど、と内心で付け加えた。


「それはそうと、あー、あの、シエスタ、だっけ?リュオがそう言ったの?」
「はい。それだけじゃないですよ。怯えていた私を落ち着かせてくれて、厨房まで送ってくれたし、マルトーさんに怒られた時も庇ってくれたし…本当、リュオ様は素敵な紳士ですわ」
「…そ、そう、紳士、ねぇ」

どういう事なのよ?と口には出さず冷たい眼で問いかけるルイズにリュオは乾いた笑いを返した。

「…はっはっは、ルイズよ。そこら辺の所はその、何じゃ、軽く流してくれんか」
「あ、安心してください、ミス・ヴァリエール様。マルトーさん始め、厨房スタッフ総出で無礼のないよう歓待させていただきました!」
「…うむ、まぁ、そういう事だったんじゃよ」
「ああ、それで随分飲んでたのね。納得できたわ」

そう言った所でルイズはふと気付いた。このシエスタなら、リュオに好印象を持っているようだし、自分も面識はある。リュオに付けるメイドにするには丁度いいかもしれない。

「…そうね、貴女、シエスタだったわね?」
「え?そうですが… あの、私、何か粗相を?」

食事の支度の手を止め、怯えたように質問してくるシエスタを見てルイズは苦笑した。

「ああ、心配要らないわ。驚かせて御免なさい。実はこのリュオにつけるメイドを探していたんだけど、
シエスタならリュオに好印象を持っているみたいだし、丁度良いかと思ったの。
引き受けてくれるかしら?学院長の発案だからメイド長辺りには話が通っているはずだし、後の事は問題無い筈よ」
「おお、それは良いのぉ。わしもシエスタなら安心じゃ。無論、シエスタが良ければの話じゃがな」
「はぁ…それは構いませんが。そうなると、私はずっとここに詰めるような形になるのですか?」
「そこまでせんでええじゃろ。ルイズは授業もあるし…朝、出掛けるまでの間来て貰えば良いのではないか?
後は夜に少し来て貰って何か用があるならその都度やって貰う、そういう形でどうなんじゃ、ルイズ」
「うん、それで良いでしょ。確かにずっとここにいて貰うほどの仕事は無いと思うしね。じゃぁ、そういう形でよろしく頼むわ、シエスタ」

「はい、わかりました。では、早速明日の朝からこちらに伺えばよろしいのですか?」
「えぇ、それで頼むわ」
「わかりました、それではまた明日の朝伺います。それでは失礼します」
「うむ。明日からよろしくな」

深々とお辞儀をして退室するシエスタを見届けると、ルイズは口を開いた。

「さて、それじゃ冷めないうちに食べちゃいましょ。流石にお腹もすいたしね。
偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今夜もささやかな糧を我に与えたもうことを感謝いたします」
「え…ささ…やか…?」

豪華な食事を前にして祈りを捧げるルイズにリュオは言わずにはいられなかった。

「悪かったわね、生憎と学生の身だから質素な食事なのよ。そりゃ王族の食事のようにはいかないわ」
「…逆なんじゃがなぁ。まぁえぇわい。」

どこがささやかなんじゃ、竜王たる自分より余程贅沢な物食べてるわい、とリュオは多少切なく思ったが、美味そうな食事にケチを付ける気は無かったので黙っている事にした。

食事をしながらルイズは、リュオの事を聞きたがった。

「仮にも主人としては使い魔の事を良く知っておかないとね」

と、尤もらしく言ってはいたが、いかにも興味津々と言ったその表情からそれが建前であることは明白だった。
が、その事にはあえて触れず、リュオはアレフガルドで広く知られている英雄譚、そして自分とも深く関わりのある話…
つまり、ロトの子孫であるアレフが竜王から世界を救い出す戦いの話を披露する事にした。
それにルイズは眼を輝かせて、質問を挟みつつ聞き入った。
その様子を見ているだけで、リュオの中から先程感じた切なさは跡形もなく消え去っていった。

「…それで?その魔王の方の竜王と、リュオとどっちが強いの?」
「まぁ、実際会った訳でもないから比較しようがないがな、まずひい爺さんじゃろうな」
「…ちょっと待ってよ。そんなとんでもないドラゴンに、そのアレフは立ち向かったっていうの?たった一人で?」
「うむ、凄いじゃろう。伊達に勇者として延々語り継がれとらんわい。それでじゃな。ローラ姫は自分を救い出したアレフにぞっこんになってな。
まぁ無理も無い話じゃがな。『王女の愛』を授けたんじゃ。これはな…」

リュオは、どこと無く子供や孫が出来たような気分で話し続けていたが、ルイズが大きな欠伸をしたので、そこで話を止めることにした。

「なんじゃ、おねむの時間かい。確かに随分と夜も更けたし、頃合かの。続きはまた今度じゃ。
ところでルイズ…わしをどこで寝かせる気かな?」
「え、それは」
「一つ言っておくぞい。言った通り使い魔としての勤めはやってやらん事もない。
だからこそ今わしはここにいるわけじゃしな。じゃがわしにも竜王の一族としての誇りがある。
あまり馬鹿な事をさせると怒るからそのつもりでの。…例えば、床で寝ろとか」
「あああ当たり前じゃない…と言いたい所だけど生憎こんな事になるなんて思ってなかったから、ベッドは一つしかないのよね.…」
「そうじゃろうな。安心せい。わしとてルイズからベッドを取り上げて床で寝ろという気は無いわい。
まぁここは二人で一緒に寝るのが良かろう。…何じゃその目は。ワシは紳士じゃ、安心せんか」
「…一応聞くけど、ドラゴンの姿に戻って外で寝るってのはどうなの?あの姿なら寒さなんて感じないんじゃない?」
「ああ、それは良い案じゃな。夜が明けたら凄い騒ぎになりそうじゃ。それに最近風邪気味でな。
あの姿でうっかりくしゃみすると豪快に炎がなぁ。ま、ここは魔法学院じゃし耐火の魔法ぐらい」
「……一緒に寝るわよ。寝ます。寝させて下さい。寝れば良いんでしょう…」

「おお、見た目通りにふかふかじゃのう」
リュオは上機嫌でベッドに滑り込んだ。
「…はぁ…全く疲れるわぁ…」
ルイズはのろのろと着替え終えると、げんなりと横になった。

「ほっほっほ。娘っ子と一緒に寝るなんぞ何年ぶりかのう。これで『ぱふぱふ』があれば最高なんじゃが」
「…あまり聞きたくないんだけど、その『ぱふぱふ』ってなんなのよ」

その言葉にリュオはルイズを…詳しく言えばルイズの胸の辺りをしばし見つめた後に、気の毒そうな声で続けた。

「…悪かったのぉ。ルイズには縁の無い話じゃ。
……いや、むしろこれはこれでええと言う者もおるかのぉ。ふぉっふぉっふぉ」
「くっ……なにかすっごく馬鹿にされているような気がするわ…」

ルイズはしばらくぶつぶつ言っていたが、色々あって疲れていたのだろう。程なく眠りに落ちた。
リュオはその姿をしばし柔らかい表情で眺めていたが、やがて真顔に戻ると窓越しに空を見た。
リュオの視線の先には、煌々と輝き大地を優しく照らしだす、巨大な

「…二つの月か…果たしてこの地にルビスの加護は届くのかのぉ…」

少しだけしんみりとリュオは呟いた。

こうして、波乱の一日が終わったのである。そしてそれは、伝説の始まりであったのだが…
その事を知る者はまだ、誰もいない。


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