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ヴァナ・ディールの使い魔-04


「食堂へ行くわよ」

キュルケとの一件で大分機嫌を悪くしたルイズの後を追っていたプリッシュが何処へ行くのかと尋ねると、彼女はムスッとしたままそう答えた。
それを聞いてプリッシュは昨日召喚されてから自分が何も口にしていないことに気が付いた。
途端にプリッシュの腹の虫が鳴き始め、彼女の体は完全に腹ペコモードになっていた。
ルイズが言うには、この学院の食堂は広く、料理も豪勢でとても美味しいらしい。
それを聞くと、プリッシュの口から思わず「じゅるり」と涎がこぼれていた。

食堂へ向かう道中、プリッシュはルイズからキュルケとの確執について説明されていた。
どうやら、キュルケの祖先がルイズの祖先の恋人を代々寝取っていたらしく、それを発端にこの両家は仲が悪くなったそうだ。
その因縁は今でも続いており、それに加え当人同士の相性もあってルイズはキュルケを敵視しているのだという。
プリッシュは適当に相槌を打ってはいたが、頭の中は食べ物でいっぱいだった。
その為、ルイズの話は右から左へと聞き流されていたのであった。

やがて食堂へ着くと、プリッシュの目には想像以上の光景が飛び込んできた。

まず目を引くのが、絶妙な火加減で焼かれた極上の肉。
ソースの匂いと混じり合った芳醇な香りが食欲を誘う。
そして、これまた絶妙な火加減で焼かれた上等な魚。
見た目は生っぽいが、匂いを嗅げばそれがちゃんと火を通したものだと分かる。
きっと口の中に入れたら、不思議な食感なのだろうと想像するに難くない。
それ以外にも豊富な野菜を使ったサラダに、色取り取りのフルーツ。
そして、多種多様なスイーツ。
正に豪勢を絵に描いたような光景を見て、プリッシュは目を宝石のように輝かせた。

「うおおおお、俺の胃袋も限界だぜ!!早く食わせろ!!」

その言葉が思わず声となって出ていた。
周りの生徒たちがそれを聞いてクスクスと笑う。
ルイズが恥ずかしそうな顔でプリッシュを睨み付けた。
しかし、プリッシュは気にする素振りも無く、席に座ろうとする。
それをルイズが制止した。

「ちょっとアンタ!ストップよストップ!」
「…?何だよ?」
「アンタはこっちよこっち」

ルイズが指差した方を見ると、そこにはパンとスープの入った小皿が地面に置かれていた。
パンは見るからに固そうで、色も良くない。
スープはほぼ水と言ってもおかしくない程薄く、完全に冷めている。
まるで囚人が食べるような食事であった。
それを見たプリッシュは顔を引き攣らせながらルイズに尋ねた。

「おい、ルイズ。まさかとは思うが、これって…」
「そうよ、アンタの食事よ」
「ぶっ!!」

プリッシュはずっこけそうになるのを何とか堪えた。
そして、済ました顔で席に座るルイズに抗議する。

「おい、いくら何でも目の前にこんなご馳走がある前でこれはねぇんじゃないのか!?」
「…アンタねえ、何か勘違いしてない?」
「勘違い?」
「本来ならここは貴族だけが入れる場所なのよ?使い魔が入るなんて厳禁もいいとこなの。ここに入れただけでも光栄と思いなさい」
「ま、マジかよ!?」

プリッシュは思わず頭を抱える。
プリッシュにとって食事とは何よりも好きな冒険に次ぐ楽しみなのである。
それなのにこの仕打ちとは、流石に想像さえしていなかった。
ショックも覚めやらぬ内に、ルイズたちが何やら唱和しながら祈りを捧げ始めた。
そしてそれが終わると同時に皆が食事を始める。
先程プリッシュの目を奪った極上の肉はあっという間に他の生徒たちの腹の中に収まっていった。

「あ~…あ~!!」
「うるさいわね、食事中は静かになさい」

ルイズが鶏肉をフォークとナイフで切り分けながら言った。
プリッシュは仕方なしにパンを一口頬張った。

固い。
味がしない。
パサパサしている。

次にプリッシュはスープを一口飲む。

予想以上に味気無く、冷めているから美味しいわけがなかった。

(…閉じ込められていた時だってもっとマシなもん食ってたぞ!)

プリッシュは次第に苛立って来た。
そして、とうとう立ち上がって歩き出す。

「ちょっと、何処へ行くのよ?」

ルイズの言葉を無視して、プリッシュはどんどん歩く。

(…ここにいたら俺はどうにかなっちまうぜ)

そんな風に思いながら、ルイズ一人を残して食堂を後にした。
そうして食堂を出たはいいが、これから何をすればいいのか分からない。
かといって、今更食堂内へ戻ることも出来ない。

「くっそ~、腹減った~!!あんなんじゃお腹いっぱいにならねぇっての!!」

愚痴愚痴言いながら廊下を歩いていると、見慣れた影を確認する。

「ん…?あれは、博士じゃねぇか?何してんだ、こんなところで?」

シャントットは何やら考え込みながら廊下をてくてくと歩いていた。

「おーい!博士ー!」

プリッシュが思わず声を掛けると、シャントットはすぐに彼女の方へと振り向いた。

「あら?プリッシュ。こんなところでどうしたのかしら?」
「博士こそ、こんなところで何してたんだよ?」
「わたくしはちょっと…それよりプリッシュ、随分苛々しているけど何かあったのかしら?」
そうそう、聞いてくれよ博士!!」

プリッシュはこれまでの経緯を身振り手振りを交えて説明した。

「…これこれこういうわけなんだよ」
「そうですの。お腹が空いた、ねえ…」

シャントットはじっとプリッシュの顔を見つめる。

「あなたは本当にお腹が空いているのかしら?」
「…?いや、もうペコペコもペコペコ、正に腹ペコマンボだぜ」

イマイチ質問の意図を飲み込めないプリッシュがそう答えると、シャントットは何やら考え込むような表情をしてブツブツと呟いた。

「元の世界の記憶を植え付けられた人形…。記憶がなければその体はただの器…。その記憶さえ曖昧…。果たして空腹なのは彼女の体か、それとも記憶か…」
「…?」
「彼女が空腹を感じたのはこの世界へ来た影響?それとも…」
「悪ぃ、言ってる意味がよく分からねぇよ博士」

自分の世界に入り込んでいるシャントットを見て、思わずプリッシュは首を傾げた。
共にコスモスに召喚されてから、それなりに長く付き合ってきた筈であったが、こんなシャントットを見るのは初めてであった。
シャントットは困惑気味のプリッシュを見て、一先ず考えることを止める。

「…失礼。今のは聞かなかったことにして頂戴な」
「…何か今日の博士は変だぞ?」
「ええ、確かに今日のわたくしはいつものわたくしではありませんわね」

そう言うと、シャントットは「オホホホ」といつもの高笑いをした。
そして、一言告げる。

「この先は厨房だから、そこで賄いを貰えばよろしいのではなくて?」
「おお、流石オバ…いや、博士だぜ!!じゃ、行って来るなー!!」
「プリッシュ!またあなたは…」

シャントットが言い終わらない内にプリッシュはその場から猛ダッシュで消え去った。
やれやれと肩をすくめると、再び一人になったシャントットはまたも考える。

(…わたくしもまた元の世界の記憶を植え付けられた、ただの人形。といったところかしら?それよりももっと気になるのは、
 仮初の存在でしかないわたくしたちがこの世界で何で存在し続けていられるのか…ですわね)

今ここにいるプリッシュもシャントットも実はオリジナルの存在では無い。
彼女たちは本物の記憶を元に作られた全く別の存在なのだ。
故に、記憶の相違や性格の不一致が発生する。
そのことをシャントットは二柱の神々が永遠の闘争を繰り返すあの世界にいる時から密かに気付いていた。
プリッシュはあの世界において、闘争が永遠に繰り返されていることには気付いていたが、この事実には気付いていなかった。

この大き過ぎる事実は自分の胸の中だけに仕舞っておこうとシャントットは思っていたが、この世界へ召喚されるとその考えに揺らぎが生じた。
仮初の存在である自分たちが何故この世界に居続けることが出来るのか。
シャントットは『虚無』の魔法にその秘密があるのではないかと睨んでいた。

(…プリッシュに刻まれたルーン、それにあの娘…まさかとは思いますが)

確信には至らない仮説。
だが、彼女の中ではそれが唯一の解答としか思えなかった。
シャントットは何かを思いつくと、そのまま踵を返す。

(まだ図書室の中で閲覧出来ていない本がありましたわね。さて…)

シャントットは先程コルベールから教わった学院内の位置関係を思い出し、歩を進める。
彼女が向かうのは学院長室がある方向だった。


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