あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロニスター-07


「ふー……」
 荒く息を吐きつつ包帯女はルイズ・ナックルスターを睨みつける。
「何睨んでんのよ、包帯女……。頭に石ぶつけられてむかついたのかしら?」
「その感情はじっくりと噛み締めな。私にボコにされる間際の人生で味わう最後の感情……」
 包帯女を指差しつつ、ルイズ・ナックルスターはゆっくり包帯女達の方に歩み寄っていく。
「あたしとやり合うのが嫌なら『メダル』を地面においてとっとと消えな。シエスタの分も含めてもうちょっと枚数を稼ぐ必要があるんでね」
 地面を指差したナックルスター、ルイズ、シエスタ、包帯女と順番に視線を向けて、飴姫はにやりと笑みを浮かべる。
(……今なら殺れるわ……、『4人』とも……!! 『サタニスター』……、『ルイズ』……、『シエスタ』……、そして『包帯女』……。そのまま睨み合ってろ……!! この位置なら4人とも殺れる……!! 私の殺人技『飴姫ブレード』でな……!!)
 そう心中で呟きつつ飴姫は服に仕込まれた水飴を両腕に纏わせ……、
「クキェーッ!!」
「がはっ!」
 次の瞬間、先程までルイズ・ナックルスターと退治していた禿頭の男が、背後から曲刀で飴姫の体を袈裟懸けに切り裂いた。
「!?」
「きゃあああ!」
「!!」
「あいつはっ……!!」
「ごぼ~っ!」
 ――ドサアッ
 一撃の元に致命傷を負わされた飴姫は、吐いた血と共に前のめりに倒れ伏した。
「クックッ……、私はなあ……、被害妄想がかなり強い方でなあー……。何人かが集まっていると……、『私を陥れるための相談をしている』と考えてしまうんだなあ。だが今回に関してはあながち妄想とは言えないはずだ」
 地面に倒れた飴姫の体を曲刀の切っ先でつつきつつ語る、禿頭の男。
「なあそうだろ、サタニスター。お前は私の恥ずかしい過去を知ってる人間だものなあ……」
「………!!」
 ルイズ・ナックルスター・シエスタの3人は目を見開いた。
 その視線の先にあったのは禿頭の男ではない。
「どうした、サタニスター。逃げないのか? 逃げてもいいんだぞ、先刻のように。ただし私はどこまでも追いかける。秘密を知っている者を生かしては――」
「消えてください……」
 そっと忍び寄ってきたカトレアが、禿頭の男を羽交い絞めにして口を塞ぐ。
「男の方に用はありません。私は女の子の肌に触れたいのです……。邪魔をしないでください」
「ぎっ……、ぎゃあっ!?」
 ただそれだけで禿頭の男の顔と右肩から白煙が上がり始める。
「わからないでしょう……、私の望みは誰にもわからないでしょう……!!」
「!?」
「あれはっ!?」
「奴の技ですっ!! 私も見るのは初めてですけど……、おそらくは何かの毒素!!」
「お……、おおお~っ!!」
 ルイズ・ナックルスター・シエスタが会話している間にも、禿頭の男の風化は進んでいく。
「奴はそれを使って私と戦っていたメンヌヴィルを消しています!!」
 ――ドゴオ!
「!!」
 倒れていた飴姫の腕が大きく振られ、液状の刃が白骨化した禿頭の男を両断し背後のカトレアまでも深々とえぐった。
「ちくしょう、忌々しい! ハゲ野郎も包帯女も……。いつもこうだ……、あたしの周りはあほな奴ばっかり……。メンヌヴィルは変身すると知能が下がるし……、サイトは機械でできた高校生……」
 最後の力を振り絞っての一撃を加えた飴姫は、口から血を吐きつつもルイズ・ナックルスターを睨みつけた。
「……あほな奴に囲まれてた点は同情するわ。あんたが招いた事態とも言えるけど」
「……死んだ後に祈りが必要かい?」
 ルイズ・ナックルスターが真顔で問いかけるも、
「サタニスター……!! てめーみたいなインチキシスターが……『祈る』だと……!! てめーを狙えばよかったよ、ど畜生があ~っ!! ごぼおお~っ!!」
 口内から溢れる血にも構わずそう吼えた後、飴姫は力尽きた。
 だが2人は地面に倒れた飴姫に視線を向ける事無くカトレアを一瞥し、
「……もっとも」
「今は祈ってやる余裕なんて無いようだけど……」
 カトレアは感情が読み取れない視線を向けつつ、ゆっくり3人に向かっていく。
「貴女がサタニスターですか……。悪魔寄りのシスター……、殺人鬼を狩るのが貴女の専門らしいですね……。貴女達は私を……、このカトレアを『狩る』つもりなのですか……!? 『何もしていない』この私を……」
「ああ!? 『何もしていない』!?」
「あんた、寝言は寝てから……!!」
 憤怒に満ちた2人の叫びを遮りカトレアは、
「私はただ触るだけです。病人が他人に触れば人殺し扱いですか」
「……!!」
 そしてカトレアは語り始める。業病に冒された自身の孤独な半生を……。

 カトレアは6歳の時から今の病気に侵されていた。
 学校はすぐに追い出された。彼女の姿をからかった同級生に触って死なせたからだ。
 その後アカデミーの研究材料となって、食事とベッドだけは確保できた。本や玩具も与えられた。
 だが彼女にとって食事や娯楽は人生の一部に過ぎなかった……。
 彼女の本当の望みは、少女と触れ合う事だった。

「性欲を前提に言っているわけではありません。私が望むものは人の肌の温もり。でも私が触った人は死んでしまう……。罪も無い人を自分のわがままで死なせるのはいけない事だと世間は言うでしょう。では私はどうすればいいのですか?」
 飴姫によってえぐられた腹部を押さえつつ、カトレアは呟きつづける。
「私は1つの結論に達しました。『罪のある人を死なせるのならどうでしょう?』と……」
「……!!」
「あんた……」
「まさか……!!」
 言葉の意味を察した3人の呟きを肯定するかのように、カトレアはにやりと目だけを笑わせる。
「ハルケギニア最強殺人鬼決定戦は、私にとってまたと無い機会なのです!! 集まる人は全て罪人、全員生きるに値しないクズ同然の人達です!! サタニスター!! あなた達も同様です!! 殺人鬼を自分の感情に任せて殺しているあなた達もね!!」
 カトレアはそう叫ぶと猛然と3人に向かって突撃してきた。
「私を同列に見なそうというの、カトレアとやら!!」
 殺人鬼と同類扱いされた怒りに任せ、ルイズは素早く回し蹴りをくり出した。
 しかしカトレアはそれを上手くかいくぐり、ルイズめがけて手を伸ばす。
「ミス・ヴァリエール、下がって!! 肌に触れられたら一巻の終わり……!!」
 シエスタの警告を後目に、ルイズは唾をカトレアの顔面めがけて吐きかける。
「!!」
 唾が目に入り、一瞬カトレアは狼狽する。
 その一瞬の隙を見逃さずルイズは、
「下がりな、カトレア~っ!!」
 ――ドゴン! ドゴン!
 杖をカトレアに突きつけて呪文を詠唱、容赦無く爆発を彼女に浴びせた。
 ――ドッシャア
 右腕が肩からちぎれ、頭部も少なからず吹き飛んだ無残な姿でカトレアは地面に倒れ込んだ。
「ミス・ヴァリエール……、杖……、持ってたんですか!?」
 先端から白煙を上げる杖を持ち直したルイズに、シエスタは驚愕の表情で尋ねた。
「ええ」
「持ってるなら何で初めから使わないんですか~っ!!」
「いやあ、これ使ったら負けかなって思ってたんだけど、ほんとに負けるくらいなら使うわ。持ってて、シエスタ。安心したら葉巻吸いたくなった」

「ぼっはあ~っ、うめ~っ」
「ああ、今度はウイスキーかアブサン呑みたくなってきたわ……」
 倒れたカトレアを眺めつつ、ルイズ・サタニスターは口から葉巻の煙を吐き出していた。
「何でそんな体に悪いものばっかり……」
「有害なものほど魅力があるって事さ」
「肉だって脂っこい方が美味しいでしょ」
「……死にますよ、お二人とも……」
 そこまで言ってシエスタはふと悲しげに顔を俯かせる。
「でも……、ミス・カトレアは何だか可哀想です……」
「何ですって?」
「だって健康な体に恵まれてさえいれば……、違う人生を歩んでいたはずですし……、ミス・ナックルスター達とも戦う事にはならなかったのでは……!?」
 その言葉を遮り、ルイズはシエスタの胸倉をつかんだ。
「いい、シエスタ……、不幸は誰でも背負ってるわ。腐った奴は大概そういう自分の不幸を言い訳に使うものよ。不幸を負いながら真面目に生きてる奴がいるにもかかわらずね!! その差はどこにある?」
「取り返しのつかないワルになるまでには、確実に本人の意思決定があったのさ」
「でっ、でも……、ミス・カトレアの負ってた不幸の重さは他の人とは次元が違うのでは……!!」
「私だったらやっぱり耐えられなかったと思います!! 世の全てを憎んでいたと思います!!」
 3人が言い争っている時、突然カトレアが目を見開いた。
「じゃああたしはどうすりゃよかったって言うんだい!!」
「あいつに同乗して、命を捧げればよかったのかしら!!」
 ルイズ達が自分に目もくれていない事を確認して、ゆっくり起き上がるカトレア。
「そんな事言っていないではないですか!! 彼女は敵でしたし、戦わなければ私達がやられていました!! 倒すべきでした!! でも……!!」
「悲しい人でした……。彼女の事を……、今まで倒してきた殺人鬼達と同じに考えるのは何か違うと思います……!!」
「同じに考えてくれてもいいのですよ……。なぜならあなたも『犠牲者』となるからです」
 突然の声に振り向いたシエスタの目の前には、瀕死の状態になりながらもよろめきつつ接近してくるカトレアの姿があった。
「最後の犠牲者……、私が人生で最後に触れる女の子の肌……」
「カトレア!?」
「まだ生きて……!! 化け物か!?」
 3人が行動を起こすより早く、カトレアは袖に覆われた腕でシエスタの首を押さえ込んでルイズ・サタニスターを制止させる。
「動かないでください、2人とも!!」
「ひっ!!」
「!!」
 シエスタの手からルイズが持っていた杖が落下するが、拾う事を許さない気迫を込めてカトレアは2人を睨みつける。
「私は……じきに死ぬでしょう。このダメージでまだ意識があるのは投薬の副作用でしょうが……、長くはもちませんね。でも最後に……、あと1度だけ少女の肌を……!!」
「シエスタ!! 逃げ……」
 声を上げるルイズ。
 しかし予想に反して、カトレアはただ自分の掌を虚ろな視線で眺めているだけだった。
「………!?(ど……、どうして触らないんですか……? 触ってほしいわけじゃありませんけど……)」
「私は……、何て愚かな女だったのでしょう……。自分が本当に望んでいるものがわからなかったとは……!!」
「え?」
「行ってください」
 そう言ってカトレアはシエスタをルイズ達の方に突き飛ばす。
「あいたっ」
「シエスタ!」
 自分に突き飛ばされて転倒したシエスタがルイズに助け起こされたのを確認したかのように、カトレアは呟きつつくずおれる。
「女の子の肌の温もり……。しかしいくらそれを得たところで……そこに相手の心はありませんでした。私が本当に欲しかったのは……、たった1人……、たった1人の理解者……ごぼっ! 1度だけ出会えれば……それでよかったのです……」
 切れ切れにそう言う途中で、カトレアの口から鮮血が吹き出る。
「………!!」
「私のコートのポケットに……メダルが入っています……。持っていってください……。枚数は十分にあります。私には……、もう……必要ありません……」
 そう言い終えたのを最後に、カトレアはぴくりとも動かなくなった。
「……ミス・ナックルスター、ミス・カトレアのために祈ってくれませんか?」
「ええ。でも飴姫みたいに拒まれてないといいけどね」
「……素直じゃありませんね」
「ミス・カトレアは拒まないですよ。私が言うんだから間違い無いです」


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