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ゼロのしもべ第3部-5

「なんであんたがここにいるのよ。」
 王宮を訪れたルイズを出迎えたのは、口ひげを蓄えた優男……つまり孔明であった。
 孔明は従者と警護を連れて、広場へ粛々と現れた。ネクタイには百合の花をかたどった紋章をつけている。これをつけているものは
宮廷ではほかにマザリーニ枢機卿ぐらいのものであり、すなわち一国の丞相であるということを示している。
 丞相。宰相ともいう。いわゆる総理大臣のことである。
 これまで内外の諸問題を1人で担当していたマザリーニの強い推薦により先日孔明は、新設された右丞相の地位についたのであ
る。内政担当の右丞相を孔明が、外交担当の左丞相をマザリーニが任されている。
 本来の格からいえば、右丞相へはマザリーニが就任するはずである。しかしアンリエッタの女王就任を機に、宮中から自分の影響を
減らして行きたいというマザリーニの強い意向から、このような形になったのであった。
 一部では両者による権力闘争が展開されるのではないか、という見方もあったが……もともと今の身分に違和感を覚えていたマザ
リーニと、あくまで端末でしかない孔明が衝突するはずもなく、2人の関係は非常に良好と言えた。もっとも、いつの間にか二人が知
らぬところでできていた派閥が、互いににらみ合いをおこなっているのだが。
 そんな孔明がいきなり女王の名代として現れたものだから、ルイズが思わず「げぇっ!孔明」と叫んでも致しかたなかろう。
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!右丞相に対して無礼であるぞ!」
 従者、といってもかなりの身分のメイジだが、が朝の鶏のような甲高い声を上げて叱責する。ルイズはその一言で、孔明がいつの
まにか宮中において権力を握っていることを知り、青ざめた。普段足蹴にさえしている、アルビオンに眠っていたブリミルの使い魔、
今は一切後ろ盾を持たぬはずの存在が、いつの間にやらこの国の権力中枢へ入り込んでいるのだ。誰でも恐怖を感じるだろう。
 孔明はおそらくそんなルイズの心中を察しているのだろう。うふふ、といやらしい笑みを浮かべている。子供かお前は。
「ラ・ヴァリエール嬢。始祖の祈祷書については、陛下から問題なしとの指示をいただいております。このままおしまいください。」
 従者がルイズの提出した始祖の祈祷書を、進み出て礼にのっとって返却する。この返却は女王の意思によるもの、ということだ。
 つまり、あくまで貸与という名目はあるが、公式に祈祷書がルイズのものになったことを意味する。
「陛下が、貴公に対して内密に話があるとおっしゃっています。奥へと進まれよ。」
 まるで夢でも見ているような心持で、ルイズがふらふらとアンリエッタの部屋へ向かっていく。
 なにがなんなのか、ルイズはまったく状況がつかめなくなってしまっているのだ。戦争に勝った。ただそれだけのことで、宮中がこ
れほどまでに変貌しているとは、夢にも思っていなかったのである。

「なんであんたがここにいるのよ!」
 宮中での出来事に心身ともに疲れたルイズが部屋に帰ってきてみたものは、右丞相孔明その人であった。
 先日のタルブの戦いで虚無の光を用いて敵を屠ったことを、アンリエッタに知られていたルイズは、虚無であること全てを報告した。
アンリエッタはさもあらんと頷いた。始祖の残した四王家、その血を引くものに虚無を扱うものが現れる。そう伝承されていたのだと
いう。ヴァリエール家は王の諸子。虚無が現れてもおかしくはない。
 そして虚無のことは極秘にする、と互いに誓い合ったあの恐るべき力を、悪用する人間がいないはずはないからだ。孔明とか。
 さらにルイズは女王直属の女官へ任命された。いわば女王陛下の代理人(エージェント)、009である。その証として女王直筆の
権利行使許可書を拝領し、ふたたび広間で今度は女官就任式を行ったのである。
 そういうことで終わったときにはルイズは疲労しきっていた。もうこのまま道端に横になって眠りたい、とさえ思った。
 だが女官となった以上そんなことはできない。見苦しい姿を見せてはならない。そう思い懸命に馬を走らせ、ようやく学院にある自分
の部屋にたどり着いたのだ。
 が、よりによって出迎えたのは、さきほどまで宮廷で顔を何度も、緊張させながら、あわせた孔明その人であった。
 ルイズはあわてて口を押さえる。よりによって右丞相となった存在を、「あんた」呼ばわりしたのである。部屋に帰り着いて油断して
いたとはいえ、女王に対する不敬と言ってよい。
 が、孔明は気にした風もなく、
「ロデム様ならば往復1時間ほどの距離。そして私はバビル2世様のために働くコンピューターにすぎませぬ。」
 どうやら、こちらにいるときはいつもの通り接すればよい、ということらしい。一瞬気が引けるルイズ。トリステインの大臣を今までの
ように扱ってよいのだろうか。だが、今は眠くてたまらない。奥にいたバビル2世が
「コンピューターには無礼という概念はないし、TPOを考えて接すれば問題はないだろう。」
 というアドバイスを送ってきた。頭がぼんやりした状況で考えると、どうもそれが正しい気がして、
「わかったわ。」
 と答えると、着の身着のままベッドに潜り込んだ。
 やがて、ベッドの中からかすかに寝息が聞こえてくる。よほど疲れていたのか、のび太なみの就眠速度であった。
 ルイズが眠りについたことを確かめて、バビル2世が口を開いた。
「で、孔明。ラグドリアン湖というのは遠いのか?」
 孔明が頷く。
「そうですな。場所はトリステインとガリアの国境。ハルケギニア有数の保養地です。距離はロプロス殿で2時間ほどでしょう。」
「そうか。ならけっこう遠いのだな。」
 荷物をまとめているバビル2世。食料や着替えを積み込んで、紐で厳重に縛っている。
「まったく。モンモランシーも、とんでもないものを作ったものだ。」
 バビル2世は、はあ、と深いため息をつき、窓の外を見た。そこには、樹に抱きついて求愛するマリコルヌの姿があった。

 食後、沐浴をして部屋に戻ろうとするキュルケは、セルバンテスとすれ違った。キュルケはタバサと同じ部屋に泊まることになって
いる。何かあったら大問題と、強引にねじ込んだのであった。
 もっともセルバンテスははじめから別の部屋に泊まる予定であったらしく、気にしていないようだったが。
「ごきげんよう。」
 会釈をして通り過ぎようとするキュルケ。あのあとタバサとバンテスからジョークだと説明を受けたが、やはり腑に落ちない。どう考え
ても犯罪です、本当にありがとうございました。ではないかという疑念は未だに晴れていないのだ。
 このプロポーションからすれば、自分が安全な可能性は高い。しかし万一ということがある。警戒はしておくにこしたことがない。
「何も、聞かないのだね。」
 壁に背をつくセルバンテスが言う。
「……タバサが何も言わないのを、他人から根掘り葉掘り聞くなんてする気はありませんもの。」
 立ち止まり冷ややかに答えるキュルケ。いつもの微熱は嘘のように消えうせ、敵意をむき出しにセルバンテスへ向かっていく。
 だがその様子を見てセルバンテスは満足げに頷いた。
「ありがとう。君は、よほどシャルロット君を大事に思ってくれているんだねぇ。」
 丁寧に頭を下げるセルバンテス。そして遠い空を見るような目をして、
「あんなに穏やかなシャルロット君の顔を見たのは、本当に久しぶりだ。君のおかげだよ。」
 丁寧な物腰で謝意を述べる姿に、キュルケは意外そうな顔を浮かべる。社交界を優雅に舞っていたキュルケは、その人間が嘘を
ついているか、そうでないかぐらいはわかる。セルバンテスは本気でシャルロットを心配し、キュルケに感謝しているようであった。
「シャルロット君は、普段タバサと名乗っているのか……。」
 そしてそっと腕を差し出した。
「キュルケ君、と言ったね。よければきみに知ってもらいたいんだ。シャルロット、いやタバサ君になにがあったのかを。強制はしない。
けれども、タバサ君の親友である君に、この国で彼女の身に何が起きたのか、真実を知ってほしいんだ。」
 キュルケは素直にその手をとった。暖かい掌が、キュルケの手を包み込んで握り返した。

「晁蓋どの」
 ここは梁山泊の奥深く。忠義堂である。
 迷路のような水路と無数の罠、さらに断崖絶壁に囲まれ、無数の英雄豪傑好漢を有するこの山塞の中心部。ガリア王を呼び止め
るものの数は限られている。ましてや「ジョゼフ様」ではなく托塔天王晁蓋の名で呼ぶものは、9名の幹部以外にはいない。
 振り返った目に飛び込んできたのは、柔和な笑みを浮かべた丸坊主の男。懐に包みを抱え、学生服のような詰襟の服を着ている。
ぞくにマオカラーと呼ばれる服である。
「これはブレラントどのではありませぬか。いつお戻りに?」
「さきほどです。予定通り、ドミノ作戦の第1弾の実行に……。」
 大きくまん丸な目をパチパチッと瞬かせるブレラント。思わずつられて笑いたくなるいい笑顔だ。
「それともう一つ……晁蓋どのにお土産がありまして。」
 包みを開き、ガリア王に土産を渡すブレラント。包みの中を見たジョゼフの目が見開かれ、嗤いながら頷く。
「オルゴール、ですな。ようやく見つかりましたか。」
「いやあ、苦労しました。」
 照れたようにハンカチを取り出して額を拭くブレラント。
「わたくしのわがままを聞いていただいて、申し訳ない。」
「なにをおっしゃいます。普段から六面八臂の活躍をされている托塔天王どのの頼みごと。引き受けねば罰が当たります。」
「オウ、ブレラントか。なんだ、帰ってきていたのかぃ。」
 ぐびぐびと、ひょうたんから酒を直接口に注ぎながら大男が現れた。髭も髪も伸ばし放題だ。ザンバラ髪を孫悟空のような金属の
ワッカでまとめている。そんな髭と髪の中に、アクセントのように右目と左頬に大きな傷痕がついている。
 どう考えてもメイジではない。山賊の親玉のような男だ。
「おや、またお酒ですか。アルビオンにはビールなる麦酒しかございませぬゆえ、張飛様にとっては地獄ですな。」
「ぉおう。あそこに行けって言われたらよ、戦艦一隻を丸々酒樽にしなきゃ耐えられねぇよなぁ」
 ドッと沸く一同。へへへ、と
「さりとて酒毒なることばもございますゆえ、くれぐれもご自愛ください。いざバビル2世を目の前にして、酒に酔いつぶれて寝ていた
では示しがつきませぬからな」
 晁蓋の言葉に、てへへ、と恐縮する大男――張飛。
「それはそうと、後ろの方々は?」
「おお、そうだった」と背後の4名を指差す張飛。
「なに、次の幹部候補よ。右から神行太保、小李公、中条、鎮三山だ。」
 4名が頭を下げる。
「で、なんだいそりゃ?オルゴールか?」
 張飛がブレラントの抱えた箱を覗き込む。ずいぶんと古びた、汚いオルゴールだ。しかしよほど大事にされていたのだろう。丁寧に
全体が磨きこまれている。
「で、鳴るのか?これ」
 張飛が蓋をあけるが、うんともすんとも箱は言わない。
「……壊れてるみたいだな。」
 ブレラントが頷き、おそるおそる晁蓋に問いかける。
「晁蓋どの、本当にこれでよろしかったのですか?なんども試しましたが、音は一切鳴りませんが…」
 晁蓋が首を振る。
「いいえ、これでよいのです。これは真実を見つける鍵なのです。」
「真実?」
「ええ、真実です。わたしは、真実を知りたいのです。なぜこの世界には魔法があるのか。誰も気にしていない。虚無の魔法はなぜ
なくなったのか。誰も気にしない。聖地とはなにか、ブリミルとはなにものか、どこからやってきたというのか。誰も知ろうとしないでは
ありませぬか。」
 オルゴールを受け取り、晁蓋ことガリア王ジョゼフは高らかに言った。
「真実とは、問いかけることにこそ、その意味もあれば価値もあるのです。」

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