あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

悪魔の虹-04



「……どいつも目が良いやつばかりだねぇ」
 学院に戻っていく道中、フーケは溜め息を吐く。
 目的の代物を手に入れる事ができたのは良いが、それらはフーケの思い通りにはならなかった。
 破壊の杖は、今までに見た事の無い構造をした物で扱い方がさっぱり分からない。ここは、計画を変更しなくてはならない。
 そのために、一度森の奥の廃屋に破壊の杖を置いてきた。

 そしてもう一つ。……正直、これが悔しかった。
 フーケは懐から一緒に持ち去ってきた虹の卵を取り出し、それを見つめる。
 見た目が立派な宝石なのでどこかに誤魔化して高値で売り付けようかと思ったのだが、どこの宝石ブローカーも見る目が良いため、すぐに宝石ではないと見破られてしまった。
 もう少し目が悪そうな相手にでも宝石として売りつけなければ、こんな物を持っていても意味はない。
「どこかのメイジにでも売りつけようか……」
 幻獣などの研究をしているメイジになら、宝石などと偽らなくてもそのまま売れるかもしれない。
 だが、それはまず破壊の杖の使い方を知ってからの方が良いだろう。

 その翌日、学院内は騒然としていた。
 世を騒がすメイジの盗賊に魔法学院が狙われ、あまつさえ厳重に保管していた〝破壊の杖〟を奪われてしまった事は学院の名誉を傷つける事になってしまう。
 昨夜フーケが現れた際、その現場に居合わせていたのはルイズとその使い魔、サイト。そして、キュルケとタバサ。四名は学院長室へと召集されていた。
 ミス・ロングビルの調査でフーケは郊外の森の廃屋に潜んでいるという事が分かったのだが、その捜索を王宮に任せてはどうにもならない。名誉挽回のためにも何とか学院独自に破壊の杖を奪還しなければならなかった。
 しかし、その捜索隊を編成しようにも教師達は候補者が出る所か、当直の責任で揉めたりして言い争うだけであった。
 その様子にオールド・オスマンは深い溜め息をつきたくなるのを抑える。

 そんな中、一人だけ候補に挙がったものがいた。昨夜の現場に居合わせた一人、ルイズだ。
 彼女が杖を上げた途端、その場にいた誰もが驚く。
 教師達が生徒に任せる訳にはいかない、と今更ながらに言ってみても本人は「誰も杖を掲げない」とキッパリ言って退けた。
 結局、その後にキュルケやタバサも杖を上げ、ルイズの使い魔であるサイトは無条件で着いて来る事になってしまった。
 ルイズ、サイト、キュルケ、タバサ、そして案内役でミス・ロングビルがフーケ討伐に出向く事になった。 



「……して、間違いないのじゃな?」
「はい、やはりあの卵も破壊の杖と一緒に……」
 捜索隊の馬車が学院を出発した後、学院長室に残っていたコルベールはオスマンからの言葉に顔を顰めていた。
 宝物庫からフーケに奪われたのは、破壊の杖だけではない。
 ヴァリエールが召喚してしまった、幻獣の卵。あれも一緒に持ち去られていたのだ。
 恐らく、フーケは美しい宝石とでも間違えたのだろう。あれは物を見る目がない人間には、ただの宝石にしか見えないだろうから。
 しかし、それがもしもどこかに売られでもしていたらとんでもない事になる。売られたルートを突き止めないと取り戻せないし、そもそも中にはどんな幻獣がいるのか分からないのだ。
 もしかしたら既に何かが生まれている可能性すらあり得る。
 ちなみにヴァリエール自身はもうあの幻獣の卵に関心が無くなっていたようではあるが、もしもまだフーケが卵を所持していて、それを彼女らが奪還したら、また関心を抱きだしてしまうかもしれなかった。
 どちらにしろ、危険である事に変わりない。



 目的地の廃屋は徒歩で半日、馬車なら四時間程度で着く距離だという。
 ミス・ロングビルが御者として馬を操る中、才人ら四人は荷車の馬車に揺られていた。
 道中、キュルケが退屈だからとロングビルに話しかけて色々な事を聞きだしていた。御者は付き人にでもやらせれば良いという問いに、彼女は貴族の名を無くした身だからと答えてにっこり笑う。
 キュルケが興味津々になって問いただそうとすると、ルイズがそれを止める。
 そこから話はだんだんとずれていき、ついには口喧嘩にまで発展してしまったが、才人が間に入ってとりなす。
 その際、昨夜の二人の勝負に勝ったのはキュルケだという事なので、彼女が買ってきた剣を手渡されていた。
「そういえば、フーケに盗まれた物って破壊の杖だけじゃないそうね」
 突然、キュルケがそんな事を言い出す。
「それ、どういう事だよ」
「ええ。何でも、ルイズが召喚したっていう幻獣の卵まで一緒に持っていかれちゃったって話よ」
「それ、本当なの?」
 すると、ふてくされていたルイズは唐突に声を上げる。
「あら、ルイズ。まだ諦めていなかったの? 一応、あんたにはもう使い魔がいるじゃない」
 目を細め、呆れたようにキュルケが言う。
 ルイズは才人以外に、何かの幻獣の卵を召喚していたのを才人は思い出した。
 中身が何なのかは知らないが、ルイズ曰くきっとすごい幻獣が眠っているに違いない。そう言っていた。
 しかし、使い魔を二体も持つ事はできないという事で、あの卵はコルベール先生が預かったままだったのだが、どうやら宝物庫に入れられていたらしい。

 それにしてもルイズのこの反応。まだ諦めていなかったのだろうか。
 ここ最近は、自分の事を使い魔(不満だけど)としてしっかり扱っていて、すっかりその卵の事は忘れてしまっていたと思っていたのだが。
「……本当だったら、あっちがあたしの使い魔だったのよ。もう使い魔にはできないにせよ、中から何が生まれるか気になるじゃない」
「ま、それはそうよね」
「っていうか、最初からあの卵を使い魔にしてくれりゃ良かったのに……」
 才人としては、ノートパソコンの修理が終わって家に帰る途中だったのがいきなりこんな所へ呼び出されてしまったのは単なる迷惑に過ぎない。
「だから、あの時はあんたしかいないと思ったから仕方ないじゃない!」
 思わず顔を赤らめて反論するルイズ。
「でも本当に、何が生まれてくるのかしらねぇ。あの卵。……タバサ、あなたはどう思う?」
「分からない」
 今までずっと、無言のまま本を読んでいたタバサは一言、それだけを答えている。

「まあでも、あたしのフレイム程すごくはないでしょうね」
「そんな事ないわよ! ……きっと、きっとすごい幻獣がいるに違いないわ!」
 躍起になってルイズは叫んだ。コルベールにも言われたが、今更あの中にいるのがただの動物などと考えたくない。
 今までに見た事のない、宝石のような卵なのだ。きっと、キュルケの使い魔以上の幻獣がいるに違いない。そう思いたかった。
 もしも生まれたら、使い魔にできないとしてもせめて自分が名前を付けてやりたい。

「それはない」
 必死になって叫ぶルイズの言葉に、タバサはさらに一言つぶやいた。
 キュルケが「そうよねぇ」と同意を示してくるが、考えは違うのだろう。彼女は自分が召喚した使い魔よりも優れない幻獣が生まれると思っているのだろうが、タバサはそんな考えを抱いていなかった。
 先日、自分の使い魔であるシルフィードはあの虹の卵についての感想を難度か漏らしていた。
 ――「あの卵、とても怖いのが生まれてくるのね」
 二百年程も生きている風韻竜(と言っても、人間に換算すれば10歳くらいだ)ならではの本能的な警戒心から出てくるあの言葉が意味するもの。
 決して、幻獣などという生易しい存在が眠っているのではない。という事である。



 その後、深い森までやってくると、一行はそこから徒歩で森の中を進んでいった。
 その奥の開けた場所に、廃屋があった。あの中にフーケがいるのだろうか。
 中にいるのであれば、奇襲を仕掛けるのが一番である。そこでタバサが立てた作戦で、才人が偵察兼囮役となり、廃屋に近づいてみたが中には誰もいなかった。
 そして、ロングビルは辺りを偵察すると言って森の中に消え、後の三人は安全が確認された廃屋へと向かっていった。
 ルイズが外で見張りをし、中の三人がフーケが残した手がかりを探し始める。しかし、すぐにタバサがチェストの中から破壊の杖を見つけ出してしまった。
 破壊の杖を目にした才人が驚く中、ルイズの悲鳴と共に廃屋の屋根が破壊される。
 現れたのは、昨夜学院に現れた巨大なゴーレムだった。
 タバサとキュルケが魔法で攻撃しても、ゴーレムはビクともしない。そこで一時退却する事になったのだが、ルイズだけは逃げようとせずに自分の魔法(よりにもよって爆発する失敗魔法でだ)でゴーレムを倒そうと躍起になっている。
 危うく踏み潰されそうになった所を才人に助けられた挙句、平手打ちまで食らっていた。
 その直後、飛んできたタバサのシルフィードによって一度空へと逃げた。しかし、才人は残って戦闘を続けている。
 あまりにも苦戦しているので、ルイズは破壊の杖を使ってゴーレムを倒そうとしたが、何故か使えない。
 しかし、才人によって破壊の杖(彼の世界ではロケットランチャーというものだ)の力が発揮され、ゴーレムは木っ端微塵に粉砕された。
 その直後、偵察に出ていたはずのロングビルが現れた。彼女はその破壊の杖を取り上げ、四人に突きつけた。
 何とフーケの正体は彼女だったのだ。盗んだは良いが、使い方が分からない破壊の杖の使い方を、四人を利用して知ろうとしたのだ。
 しかし、その破壊の杖は使い捨ての代物(才人の世界ではM72ロケットランチャーという一発限りの武器)であったため、そればかりは知らなかったフーケは才人によって無力化されてしまい、捕縛されていた。

 例の虹の卵を、既にフーケは持っていなかった。
 売ってしまったのかと問いただしてみても、本人は何も言わない。
 実の所、彼女がゴーレムを操っている内に森の中で落としてしまったのだが、それを四人は知る事は無かった。

 ただ、森の中に落ちた卵はルイズが失敗魔法を発動する度に幾度か妖しげな光を放っていた。
 それも、先日より強く。



 フーケ討伐から戻ってきたルイズら三人とコルベールを先に学院長室から退室させ、さらに才人と会話を終えたオスマンは溜め息を吐いていた。
 破壊の杖は取り戻せたが、虹の卵の方は取り戻せなかったのだ。
 恐れていた結果になってしまった。所在がどこにあるのか分からないあの卵は、放っておいたらどうなるか分からない。
 だからといって、あまり大事にはできない。政府の者達にあの卵の存在が知れたら、研究材料として持ち帰るに違いない。
 さすがにどうすれば良いのか、オスマンは頭を悩ませた。
 それに、何だか胸騒ぎがする。……何かが起こっている。



 夜が更けた頃、昼間は戦いの場となった森の奥の一角に妖しい光が仄かに放たれている。
 フーケが落としていた虹の卵は、夕方頃には夕日の光が思い切り当たる場所に転がっていた。
 光が内部から発せられ、消える現象がまるで心臓の鼓動のように続けられている。
 その現象が繰り返される内に、光は強さを増していき、美しいオパールのような光沢と硬さだった表面がみるみる内に変貌していく。


 硬さを失い、生々しい醜悪な姿へと変わった虹の卵の中で、何かが蠢いている。


 徐々にその動きは活発になっていき、軟らかくなった卵の内側から中にいる何かが破ろうとしている。


 そしてついに、卵の中心がパクリと裂けた。内部からは、白い煙のような冷気が微かに流れ出てくる。


 裂け目から紫色のネバネバとした粘液が、地面の上にドロリと流れ出る。


 それと同時に、さらに大きく裂けた卵の中からトカゲのような姿をした生物が這い出てくる。


 紫の粘液が全身に付着したまま、そいつは眼を妖しく光らせていた。全身からは相変わらず、冷気のような煙が出ていた。


 その冷気にかかった地面が、近くの落ち葉が、枯れ木が、みるみる内に凍り付いていく。


 今ここに、新たなる命を授けられた悪魔が生誕した。


 その悪魔の名を、異世界のとある島の伝説でこう呼ばれる。 


 ―― 全てを消し去る悪魔の虹。生けるもの全てを凍りつかせる生き血を流すもの。


 ―― 千年に一度蘇る、大いなる魔獣。



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