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ゼロの双騎士 第三話

「…む、もう朝か…」

ルイズの私室の床で目を覚ましたパルパレオスは、寝起き爽やかとはいかなかった。
原因は、昨夜。
目の前で服を脱いでネグリジェ姿になるルイズに驚いて口をパクパクさせているパルパレオスに、ルイズはこう言い放った。

『明日の朝、服と下着を洗濯しときなさい。ちゃんと私も起こすこと。着替えも手伝ってもらうから。じゃ、おやすみ』

…ちょっと待て、男の前で服を脱いで、男に下着を洗濯させて、しかも男に着替えを手伝わせるだと?
我に返って文句を言おうとしたら、既にルイズは寝息を立てていた。
色々あったから疲れているのだろうと思って起こしはしなかったが…。
少女相手に男として見て欲しいなどとは思わない。
ヨヨは私より10歳近く年下だが、私はロリコンではないのだ、決して。
しかし、全く男と認識されていないのもそれはそれで複雑だ。

昨夜の言葉を思い出したパルパレオスは、鬱々とした気分を振り払うように脱ぎ捨てられたままのルイズの衣類を畳み、小脇に抱えて部屋を出た。
そういえばどこで洗濯すればいいのか分からない。場所さえ分かれば…。
上手くはないが、家事は一通りできるのだ。

親友サウザーが軍で高位を占めるようになる前、パルパレオスはサウザーと共に傭兵業で身を立てていた。
故郷、グランべロス帝国。帝国成立前はべロスという名の国家だった。
べロスというラグーンは土地が痩せ細っていて農業では食べていけない。
かといってろくな資源も無い。まさに不毛のラグーンだったのだ。
そこでべロスは傭兵業を発達させ、それで国益を得るようになった。
各国の紛争に際し、政府の要請を受けて傭兵を派遣し、見返りを得るのだ。
その中でサウザーは剣の腕と類稀な戦略眼とでのし上がっていき、皇帝にまで登り詰めたのだが、それはまた別の話である。
ともあれそんな生活だったから、一兵卒で召使を雇う余裕も無い頃は、家事を全て自分で行っていたのだ。

「さて、どこかに井戸くらいはあるはずだが…」

そう呟いて建物の周囲を歩き回っていると、一人の女性がいた。
カゴに入れた食材を運んでいるメイドだ。朝食の用意をしているのだろう。
丁度いいと思い、彼女に声をかける。

「すまない、少々尋ねたいことがあるのだが…」

「はい?あの、どちら様でしょうか…?」

きょとんとした顔で尋ねられた。そういえば名乗りが遅れた。
名前、ルイズの使い魔であること、洗濯場を探していることを話すと、すんなり納得してもらえた。



「あぁ、貴方がミス・ヴァリエールの…聞いていますよ、剣を帯びた平民を召喚したと」

平民ではないのだが、いちいち訂正していたらキリがない。
オレルスとハルケギニアでは常識が違うのだから、と納得することにした。

「洗濯場はあちらですが…良ければ私がやっておきましょうか?」

パルパレオスはこの申し出をありがたく受けることにした。
何故だろう、彼女が救いの女神のように思えてくる。

「ありがたい。洗濯くらいはできるが、女性物の服や下着を洗うというのはちょっとな…」

苦笑混じりに顔を少し赤らめている男を見て、クスリと笑う彼女。

「ふふ。あ、申し遅れました。私はこの学園のメイド、シエスタと申します。
 以後、宜しくお願いしますね、ミスタ・パルパレオス!」

…可憐だ…。
斬○剣を振るう某サムライのようなことを考えつつ、今後の学園生活に想いを馳せるパルパレオスであった。


+++++

「ルイズ…ルイズ、朝だ。起きろ」

部屋に戻ったパルパレオスはルイズを起こしにかかる。
しかしこれがまた難儀だった。
寝ている女性に手を触れるのは気が咎める。
かといって声だけでは中々起きないのだ。
うぅ~んだの、むにゃむにゃだの、あと五分~だの。

「起きろ!朝食に間に合わなくなるぞ!」

少し声を荒げると、起きた。
起きたのだが…問題は次の一言だ。

「ふぇ…?な…あ、アンタ誰よ!?」

ほぅ…アンタ誰、ときたか。
一方的に呼び出して一方的に使い魔をやれと言い出して一方的に家事を押し付けて、挙句の果てに「アンタ誰」。
流石にこれはカチンと来た。
だが女性、しかも子供相手に怒りをぶちまけるわけにもいかない。
こめかみに青筋を立てつつ、懇切丁寧に説明してやることにした。

「私の名はサスァ・パルパレオス。昨日ルイズに使い魔として召喚されて契約を交わした男だ。
 元帝国将軍兼皇帝親衛隊隊長、後にオレルス解放軍将軍を務めた軍人だ。
 昨夜のルイズの命令通りに服や下着の洗濯をこなして、今も命令通り主人を起こしているところだ。わかったか」

「…あぁ…そういえば使い魔召喚したんだっけ…」

やっと思い出したか全く。

「着替え出して…箪笥の一番下」

洗濯をこなしたこと、起こしたことへの礼は無く、無礼な言葉への詫びもなし、か…ふ、ふふ…。

「そのくらい自分でやりたまえ。私は外で待つ」

「ちょ、ちょっと!待ちなさいよ、こら!」

言い放って踵を返し、部屋を出て待つことにした。


+++++

「あら?貴方は確か…」

「ん?ルイズの友人かね?」

部屋を出て待っていると、隣の部屋から出てきた女性に声をかけられた。
燃えるように赤く、軽くウェーブのかかった長髪が印象的な女性だ。
歳不相応な色気を振りまいているな。
そういえば召喚の儀の場に居たような気がする。
後ろにいるのは…何だ?
赤く大きな蜥蜴のような生き物。尻尾の先に火が点いている。
こんなところにいる以上、恐らく使い魔なのだろう。彼女にも警戒している様子は見られない。
とりあえず危険は無いと判断した。

「私はパルパレオス。ルイズの使い魔だ」

そんなことを考えつつ、名乗る。
隣の部屋の生徒なら、今後接する機会も多いだろう。
隣人と仲良くしておいて損はない。

「あら、いい男じゃない…ふふ。
 私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
 二つ名は"微熱"、キュルケでいいわ。よろしく」

「宜しく頼む、キュルケ」

正直名前が長すぎて覚えきれないので、そう呼ばせてもらえるのはありがたい。

「ところで、こんなところで何してるの?」

「あぁ、今ルイズが着替えているのでな、ここで終わるのを待っているのだ」

「着替えを手伝えとか言われて逃げてきたんじゃないの?…ふふ」

…お見通しか。
苦笑混じりに肯定しておくと、しょうがないわねと言わんばかりに一息吐いてみせる。
そもそも貴族の子女とは皆こうなのだろうか。
そんな疑問など挟みつつ、しばしキュルケと言葉を交わす。
歳の割に大人びていて、話し上手なようだ。
余り饒舌ではない私からでも上手に話題を引き出し、膨らませてみせるのだ。
この学園にいるということは貴族の子女なのだろうが…気質はどうあれ、交渉ごとで身を立てられるくらいの才覚があるかもしれない。
などと思いつつ話しているうちに、ルイズの着替えも終わったようだ。

「全く…着替えも手伝わないなんて…って、何してんのよパルパレオス!」

いきなり怒鳴られた。何をしているって、見ての通りキュルケと話しているのだが。
当たり前のことを聞かれたので当たり前の返事を返しておくが、私を一瞥したルイズはキュルケにまで食って掛かる。

「人の使い魔にちょっかい出さないでよね!」

「あら、ちょっかい出されたくないなら見張っておくべきじゃなくて?」

「うるさいわね!…ところで、アンタの後ろにいるのは…アンタの使い魔?」

さっきも見た火蜥蜴だ。
大人しくキュルケの後ろに控えている。

「えぇ、昨日私が召喚した使い魔よ。…フレイム、挨拶なさい」

きゅるきゅる、と喉を鳴らしてみせる。

「よく人に慣れているな。大人しくて賢いようだ」

頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細めて見せた。

「これって、サラマンダー?」

「そう、火蜥蜴!火竜山脈に生息する正真正銘のサラマンダー!私の属性にピッタリよ」

種族名サラマンダー、個体名はフレイム、というようだ。
しかし、サラマンダーとはな…あいつとかぶっている。

「ふ、ふん…!パルパレオスのサラマンダーには敵わないわね!
 いくわよパルパレオス!」

悔しそうな顔で踵を返すルイズ。
腕を掴まれて引き摺られる。全く、何だというのだ。
とりあえずキュルケに一言挨拶しておかねば。

「すまないキュルケ…またな」

「えぇ、またねパルパレオス」

(パルパレオスのサラマンダー…?彼と一緒にいた竜のことかしら…面白そうね)

興味がある。場合によってはヴァリエールをからかうネタになるかも知れない。
そんなことを考えて、にやりと笑うキュルケであった。


+++++

「ここがアルヴィーズの食堂よ」

だだっ広い大広間へ案内された。
多くの生徒が、あるいは席に着き、あるいは席を立ち、皆同様に学友たちと会話している。
おかげで随分騒がしかった。

席は特別決まっているわけではなさそうだ。
空いた席を見つけて、椅子を引いてやる。

「あら、気が利くじゃない?」

これでも宮仕えをしていた身、しかも皇帝の側近だったのだ。
この程度の気遣いをできないようでは務まらない。
ようやく少しは認められた気がする。

「で、私の食事は?」

「主人の着替えも手伝わない使い魔はご飯抜きよ」

気がしただけだった。
戦場に出れば食事を取る暇もなく移動や戦闘を繰り返すことは良くある。
丸一日水だけでも戦えるくらいの鍛え方はしているのだ。
一食抜かれた程度でへばったりはしない。辛くはあるが。

「…では私は外で待つとしよう」

踵を返して広間を出た。
食事が得られないなら、余所で探すまでだ。
幸い、一つ当てがあるのだ。


+++++

「…という訳なのだが、少し食糧を分けてもらえないか」

「なるほど…私たち使用人の賄い食でよければお出ししますが、いかがでしょう?」

当てとはシエスタに頼んでみることだった。
断られても仕方無いとは思っていたが、快諾してくれた。やはりいい娘だ。

「ありがたい。頂こう。…代わりと言っては何だが、何か手伝えることは無いかね?」

タダ飯食らって平然としていられるほど恥知らずではない…などと筆者の傷をえぐるようなコトは言わないでおこう。
ともあれ、食事の分くらいは働かせてもらうとするか。
幸い、配膳の手が足りないようだったので、それを手伝わせてもらうことにした。
配膳の仕事をしたことは無かったが、ただ配っていくだけだ。
さほど難しくもなく、面倒な仕事ではない…はずなのだが。

「さぁ、決闘だ!!!」

難しくはないが、面倒は増えてしまった。

いかにも頭の足りてなさそうな小僧が格好つけて口上を述べている。
鮮やかな金髪に、口にくわえた薔薇の赤がよく映えている。
まぁ女から見ればそれなりに魅力的な容姿なのかも知れないが…どちらかと言うと気障だな。
自称「純情硬派」他称「完全軟派」の色ボケランサーの顔を思い出しつつ、そんなことを考えた。

全く、何故こんなことになったのか。


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「も、申し訳ありません!」

悲鳴混じりのシエスタの声が耳に届いて、ふとそちらへ目をやった。
生徒らしき金髪の少年がメイドに食って掛かっている。
…一体何があったのだ?
とりあえず割って入って、事情を聞いた。

「…それは君が悪いだろう、常識的に考えれば。
 そもそも君が二股をかけさえしなければ起こらなかった事態だ。
 シエスタに絡むのはお門違いの逆恨みだと思うのだがな」

「そうだギーシュ!お前が悪い!」

周りの生徒達が爆笑しながら野次を飛ばしている。

「…そうか、君は貴族に対する礼儀を知らないようだな…教育してやらねばなるまい」

顔を引き攣らせ、こめかみには青筋を立てている。
可哀想に、口にくわえた薔薇は噛み潰されて無残な姿になっていた。

「ほぅ、物の道理も知らぬ若造が私を教育とは…身の程を弁えぬ者は無様だな」

こういう手合いは一度痛い目を見せて叩きのめす必要がある。
感情が激しすぎて理屈が通用しないのだ。
そう考えて、挑発してみる。

「いいだろう…決闘だっ!!!」

…そら、乗ってきた。これほど沸点の低い奴も珍しいな。
叩きのめすくらい訳はない。魔法使い相手に何度も命のやり取りをしてきたのだ。
戦闘の無い平和な生活は穏やかとはいえ、刺激に乏しいのも事実なのだ。
たまには剣を振っておかねば勘も鈍る。

そう考えて、ギーシュと呼ばれた小僧を見やる。
怒髪天を衝くといった様子、すっかり気を散じてしまっている。
無駄に芝居がかった所作を見ても、実戦経験があるとは到底思えない。

「な、何て事を…!殺されてしまいますよ、パルパレオスさん!!」

恐怖に顔を青ざめさせたシエスタがそんなことを言う。
心配してくれるのはありがたいが、私は負けるつもりは無いのだ。

「平民は貴族には勝てないんです!貴族には魔法があるんですよ!!謝るべきです!」

「貴族の力が魔法なら、平民には剣という力がある。
 どちらも力ならより強い方が勝つのが道理。見ていろ、魔法を使えぬ者の戦いを」


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