あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと電流-02

 朝食を終えたばかりの食堂の裏。厨房に続く裏口のある側。

 じっと立ちつくし、微動だにしないザボーガー。
 その前に立っているのはルイズ。
 さらに少し離れた位置から隠れて見ているのはキュルケとタバサ。
 キュルケは自分から。そしてタバサはキュルケにつきあって。

「何をしているのかわかる?」

 キュルケはタバサに尋ねてみた。
 タバサは読んでいた本から顔を上げるとキュルケの顔を見て、そして興味なさげにルイズの方を見る。

「ゴーレム?」
「少なくとも、私たちの知っているゴーレムとは違うのよ」
「違う?」
「形が変わるの。あのゴーレムのお腹から車輪が出てきて、走り出すのよ。あと、名前はザボーガー。ルイズはそう呼んでるわ」

 タバサは首を傾げる。その目はあからさまに不信の目だ。
 確かに、あれは自分で見ないと信じられないだろう、とキュルケも思う。
 なにしろ、二つの車輪を前後にしたゴーレムっぽいものが勝手に走り出すのだ。
そのうえ、人型に変形するのだ。一体これは何の冗談だ、とキュルケでなくても言いたくなるだろう。
 一方、ルイズはそれどころではない。
 朝食を終えて気付いたのは、ザボーガーを置いてきてしまったこと。
 しかし慌てず騒がずメットを被り、

「ザボーガー、食堂前まで来なさい」

 確かにザボーガーは食堂まで来た。正確には厨房の裏手まで。
 ただし、オートバイ形態で。
 再びルイズが命令すると人型になる。
 人型の名前は電人ザボーガー。
 でもそれだけなのだ。
 人型になって動き出すかと期待したが、動く気配は全くない。
 いくら命令しても動かない。手を挙げようともしない。
 命令の仕方を間違えたかとも思ったが、バイクになれと言われればバイクになるのだ。人型になれと言われれば人型になるのだ。
 ルイズは、ヘルメットを被ったまま考える。
 ルーンが微かに輝くが、ルイズは気付かない。
 最初は、ヘルメットを被っただけでザボーガーへの命令の仕方がわかったのだ。もっと他のことだってわかるかも知れない。


「動かしかた、さっさと教えなさいよ!」
“怒りの電流”
「え?」 

 新しい知識が頭に流れ込む。
 それは、怒りの電流。
 どうやら「怒りの電流」というものによってザボーガーは動き出すらしい。
 が、しかし。

「電流って何?」

 “怒り”はわかる。
 具体的には、キュルケの胸を見ていると体奥から湧き出てくるものだ。というか、シエスタの胸でも。ミス・ロングビルも。ひどいときにはモンモランシーだって。
 湧き出てこないのはタバサくらいだ。タバサは仲間。ルイズは信じてる。
 というわけで、“怒り”はよくわかる。
 それなら、“電流”とは一体?
 ルイズはしばらく考えて、それは後回しにすることにした。図書室で調べればわかるかも知れない。
 一旦、ザボーガーをバイク形態に戻す。
 その直前からだ、タバサとキュルケが見ていたのは。

「今の見た?」
「見た」

 初めて変形を見たタバサの視線が鋭い。
 彼女の知っている最高品質のガーゴイルなら、命令に応じて行動することは特に難しいことではない。それくらいの能力はある。しかし、こんな変形をこなすガーゴイルなど彼女は知らない。彼女の想像しうるどんな技術でも不可能だろう。
そして、ガリアのカーゴイル以上のものをそう簡単に他の国が持っているとも思えない。ましてやこんなところにあるなんて。あるいは、まだ見ぬ東方で作られたゴーレムか。

「兜から命令している」

 タバサは気付いていた。ルイズの命令は全て、兜の横についた棒のようなものを介していることに。

「……本当。よく気付いたわね、貴女」

 見ていると、ルイズがザボーガーに跨った。スカートなのでかなりはしたない格好なのだが、本人は気にしていない様子だ。
 そしてそのまま、走っていってしまう。

「え?」
「……」
「なに、今の」

 呆然とするキュルケ。ザボーガーが走るのは知っていたけれど、まさかルイズを乗せていってしまうとは。
 それとも、ルイズが自分を乗せるように命令したのだろうか。

「授業」

 タバサは、キュルケの裾を引っ張ると、教室へと歩き始める。
 今更追えないキュルケも、仕方なくタバサと共に教室へ向かう。


 なのに、ルイズは教室にいた。
 どうやら、ザボーガーで教室の外まで先回りしたらしい。涼しい顔で座っている。
 ちなみに、兜はそのまま被っている。

 キュルケに監察されていることも知らず、ルイズは考えていた。
 ザボーガーの使い方がわかったのは、使い魔と主の繋がりのためだろうと考える。どちらにしろ、他に説明はつかない。
 ヘルメットから命令すると、ザボーガーは動く。
 人型になるけれど、人型のまま動くには“怒りの電流”が必要。
 他に何か無いのか。
 頭の中でヘルメットに尋ねてみる。
 “チェーンパンチ”
 “ブーメランカッター”
 “速射破壊銃”
 “ヘリキャット”
 “マウスカー”
 “シーシャーク”
 早速答えが返ってきた。
 最初の三つにはやっぱり“怒りの電流”が必要らしい。
 パンチはわかる。拳で殴るのだろう。チェーンは鎖。鎖パンチって何だ?
 ブーメランもわかる。そんな玩具があった。投げたら帰ってくる玩具だ。そしてカッターはエアカッターみたいなものか。だったら、母の魔法で見たことがある。
 待てよ? エアカッターが帰ってくるのか?
 怖い。それはとても怖い。そんなのが帰ってきたら全力で逃げるしかない。
 銃。聞いたことはある。平民が持つ武器の一つだが、魔法に比べると貧弱この上なく、さらに不便なものだったはず。そんなものが何の役に立つというのか。
 もしかして、強さという意味ではザボーガーは外れかも知れない、とルイズは思った。 あとの三つは、すぐに使えるらしいので試してみようとも思う。とりあえず、授業が終わって時間ができ次第。
 できれば人目のないところ。
 人型変形のように、やってみたはいいがその後どうしていいかわからない、という無様な真似は見られたくないのだ。

 というわけで、授業が終わると早速マシンザボーガーで出発。目的地は適当に人気のなそさうなところ、というわけでラ・ロシェールの森である。後が追えなかったキュルケが悔しがっていたが、ルイズの知ったことではない。
 ちなみに、当然だがルイズがオートバイに乗るのは初めてである。
 それでも、何故か乗りこなしている。ルイズ自身は特に不思議だとは思っていない。使い魔とはそういうものなのだろうと独り決めしている。


「ガンダールヴのルーンに間違いありません」

 ルイズが森へと向かった頃、コルベールはオールドオスマンに力説していた。
 片手には古い本。残った手にはルイズの召喚したヘルメットに印されたルーンを写したスケッチ。

「ガンダールヴと言えば、始祖ブリミルの従者じゃな? あらゆる武器を使いこなして敵と退治したという」
「はい」
「その、ミス・ヴァリエールの召喚した兜が?」
「考えてみたのですが」
「うむ」
「ガンダールヴの被っていた兜というのは考えられませんか?」
「ほう」
「被ると、ガンダールヴと同じ能力を手にするとか」
「そうすると、あのゴーレムはどう説明するのかね? 始祖ブリミルがゴーレムを操ったなぞ、聞いたことがないぞ?」
「そ、それは……」
「しかし、ルーンの形はまさにそっくりじゃのう」

 オスマンはコルベールの観察を認めながらも、大事にはするなと念を押す。
 大事にしたところで得をする者はいないのだ。
 今のところは静観である。

「第一、王室のボンクラ共に、大切な生徒を玩具にされてたまるか」
「同感です」
「この件、他言は無用じゃぞ?」
「はい」


 そしてその頃、ルイズは森に着いていた。
 電人ザボーガー、GO! のかけ声と共に電人を起動する。ただし、動かない。
 さて、と辺りを見回して。

「出なさい、ヘリキャット!」

 ザボーガーの頭がぱっくり開くと、あまりのことにルイズの口もぱっくり開いた。
そして現れる超小型偵察用ヘリ、ヘリキャット。

「えーと……何か探してくるのよ? いいわね」

 不明瞭な命令でも、それでも飛んでいくヘリキャット。
 すぐにルイズは気付いた。
 何かが見える。いや、目を開けているので見えるのは当たり前なのだけれど、自分の視界とは別に何かが見えるのだ。
 目ではなく、直接映像が頭に中継されている感覚と言えばいいのか。
 それは、使い魔との視覚共有である。
 そう。ルイズはヘリキャットからの視覚情報を直接受けていたのだ。

 空からの風景。レビテーションもフライも使えないルイズからすればとっても新鮮な光景である。

「あ」

 呟くルイズ。ヘリキャットが眼下に捉えたのは見覚えのある服とマント。学院の制服である。
 男の生徒と女の生徒。マントの色から判断すると男はルイズの同級生、女の方は下級生のようだ。

「……ギーシュ?」

 よく見ると、男はギーシュ・ド・グラモンである。
 女の方は知らない顔だ。
 ふと気付いたルイズは、試しに耳に意識を集中する。
風切り音が聞こえる。ヘリキャットと聴覚も繋がってはいるが、ギーシュたちとは距離がありすぎて聞こえないのだ。
 ルイズは少し考えて……

「お願い、マウスカー」

 ザボーガーの両足から、縦二分割された小型の車が現れ、合体して一つの車になる。
 超小型偵察車両、マウスカーである。
 これなら、気付かれずに声の聞こえる位置まで近づける。
 ヘリキャットから見える映像で、マウスカーが二人に近づいたのを確認すると、ルイズは目を閉じて耳に神経を集中する。


「ありがとうございます、ギーシュさま」
「いや、改まって礼を言われるほどのことでもないよ」
「だけど、お礼くらいは言わせてください。他にできることなんてありませんから」
「そうかな? 僕はこの、君の作ってくれたクッキーで充分だよ、うん、美味しい」
「ギーシュさま、本当に……」
「だから礼なんて要らないんだよ、ケティ」

 ケティ。
 一年生のケティ。
 どんな子かは知らないが、なにやらギーシュに礼を言っている。
 ギーシュは軍人としての名門、グラモン家の息子である。普段からそれなりに筋を通した行動を心がけている。数少ない、魔法が使えないルイズを……少なくとも表立っては……馬鹿にしない一人だ。
 そのギーシュのことだから、何か頼まれ事でも叶えたのだろう、とルイズは推察する。

「ギーシュさま?」
「ん? おや?」

 二人の口調が微妙に変わる。
 マウスカーが見つかったっぽい。

「空にも」
「む」

 ヘリキャットまで。
 急いで二機に帰還を命じるルイズ。
 そして戻ってくる二機。
 マウスカーの後ろから現れるギーシュとケティ。

「ルイズ? 何をやっているのかね、君は」
「あ、ギーシュ」
「まさか、僕たちを尾行していたとも思えないが……」
「それはないわよ」

 ルイズは素直に、ザボーガーの力を試していたのだと言う。
 覗き見の意図はなかった、というより、二人がいることすらついさっき知ったのだ。

「使い魔の中にさらに使い魔が三つ。面白いな」

 話を聞いてそう言うギーシュはゴーレム複数同時操作が得意なのだが、さすがに感覚の共有はできない。 

「悪いが、このことは皆に内緒で頼む。誤解されても困るからね」
「誤解って、何してたのよ。つきあっている者同士の遠乗りにしか見えないけど」
「ケティがこの森へ来たがっていてね。一人だと不安だというのでご一緒しただけさ」

 世間一般ではそれはデートではないだろうか、とルイズは思う。

「わかった、内緒ね。その代わり、私もちょっと手伝って欲しいことがあるの」
「なんだい?」
「貴女のワルキューレ相手に練習させたいのよ」
「君の使い魔がかい? 別に良いよ」
「“怒りの電流”が使えるようになったらお願いするわ」
「ああ、いいとも」


 話し合いは成立した。かに見えた。
 が、その翌日の昼食の席で……

「ルイズの使い魔って何ができるんだい?」
「走るしか能がないみたいだよ」
「なんだ、使い魔もゼロか」
「ゼロにはゼロが喚ばれるんだな」

 ルイズに対して直接言われたのではない。そして話していた当人たちもルイズに聞かせるつもりではなかった。
 しかし、聞こえた。

「私の使い魔はね、足と頭からそれぞれ別の使い魔を出せるのよ」

 現場を目撃したのならまだしも、初めて聞く相手には意味不明である。

「は?」

 そして、正面切って馬鹿にするつもりがなかった連中も、意味不明なことを正面から言われては別である。

「いや、わけわかんないよ」
「頭からって、どういうこと?」
「足から? 夢でも見たんだろ」

 だったら現物を見せてやる、とザボーガーを呼ぼうとして、今日は結構な重さがあるヘルメットを部屋へと置いてきたことに気付く。
 どうしたものかと見回すと、ギーシュの姿が。

「ギーシュ!」

 ギーシュはいつものように周囲に問われていた。いったい誰とつきあっているのかと。
 そしていつものように、薔薇の運命とは周囲の女性皆を喜ばせるものさ、と答える。
 ギーシュにしては、半分本気の半分社交辞令のようなものである。実際の所、本命はいるのだ。
 そこへルイズから声がかかる。

「貴方は見たわよね、ザボーガーの頭と足から出て来るのを」


 見たよ、と証言しかけてハタとギーシュは気付く。
 何処で見たかと聞かれれば、ラ・ロシェールの森と答える。それはいい。
 問題は、何でそんなところにいたとかと尋ねられた場合だ。
ルイズと一緒にいた、はおかしい。かといって正直にケティと一緒と答えるのも……本命に聞かれると拙いような気がする。
 アイコンタクトでギーシュは、ルイズに「黙れ」と伝える。
 伝わらなかった。

「ギーシュ、聞こえてる? 貴方も見たでしょ? ほら、あのとき」

 やめろ、ルイズ。それ以上追求するな。
 ほら、ルイズ、あ、ほら、後ろ、後ろにモンモランシーが!

「どうしたのよ、ギーシュ。ほら、あの時、ラ・ロシェールよ」

 ルイズストップ。それ以上行けない。

「ほら、ケティと一緒にいた時よ」

 ルイズぅううううう!!!???

「あら、どういう事かしら、ギーシュ」

 肩に置かれる冷たい手。

「も、モンモランシー?」
「ギーシュ、貴方、ケティと遠乗りに行ったの?」
「落ち着くんだ、モンモランシー」

 ルイズがモンモランシーの様子に慌てて、間に入る。

「モンモランシー、違うわよ、勘違いよ」

 そして向き直り、

「ごめんなさい、ギーシュ、口止めされてるの忘れてたわ」

 それはトドメであった。




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