あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのゴースト 1-E

 フーケ連行後、ようやくひと心地ついた四人だったが、休む間もなく学院長室へと出頭した。
 そこで待っていたオールド・オスマンが、事情を把握したように告げた。

「破壊の杖について、話は聞かせて貰った!
 人類は滅亡する!」
『ええっ!?』
「嘘じゃ。破壊の杖に関しては心配いらん。あれは偽者での。
 実はただの剣じゃ。本物は、既にこの世には無い。
 ……だから、その殺意を持った目はやめてくれんか、年寄りのかわいい冗談じゃ」

 コホン、と咳払いし、若者には辛い、老人の長い思い出話が始まった。


 要約すると、こうだ。
 オスマンが昔、森を散策していた時に、突然見た事がない魔獣の群れに襲われた。
 多数に無勢となった時に、『杖』を持った少年が現れ、人ならぬ素早さと力で切り伏せていった。
 少年の持っていた杖は、剣の形をしていたが、あるときはガントレット、また槍や斧などに姿を一瞬で変えた。
 その武器は、何十メイルもある巨人ですらも一撃で粉砕するほどの破壊力を持っていた。
 その少年はオスマンを助けた後、『この世界』に手出しし始めた『神』とか言うものを追い出しに行くと言い、去って行ったという。
 オスマンは、いつか『神』なるモノ、もしくはそれに類する脅威が現れたときの為に、いまだかつて見たことのない不思議な剣を覚えておく目的で『破壊の杖』(杖は剣が魔法のように変わったところから名づけた)のレプリカを作り、この学院で生徒育成をする事にしたという。

「それで、その『神』はどうなったんですか?」
「幸いな事に、姿も形も見えん。その未知の魔物も、それっきり報告も聞かん。
 まあ、平和であるにこした事はないのう」

 話を一区切りして、もう一度咳払いする。

「さて、よくフーケを捕まえてくれた。後日、二人にはシュヴァリエの爵位、ならびにミス・タバサに精霊勲章授与の沙汰が宮廷からあるじゃろう」
「ええと……レンには何も無いんでしょうか」
「残念ながら、彼女は貴族ではないからの」

 ルイズは憐の様子を横目で覗いたが、彼女は何も分かっていないのか、特に気にした様子も無さそうだった。

「あ、あの……オスマンおじいさん?」
「何かね? ヴァリエールの使い魔」

 孫娘のような可愛らしい声に、オスマンは思わず相貌を崩して答えた。

「後で、お話があるんですけど、いいですか?」
「うむ。だが、今日は舞踏会じゃ。色々トラブルがあったが、予定通り執り行えるじゃろう。
 今日の主役は君たちじゃ。楽しんできたまえ。ヴァリエールの使い魔よ、話はその後にしよう」


 今回の活躍者たちが部屋を去った後、オールド・オスマンとコルベールは再び怪しい悪の幹部の雰囲気で秘密を話し合った。

「あの白いゴーレムについて、分かった事は本当に『それ』なんじゃな?」
「はい、残骸の皮膚らしき金属に、『BS-OSA』との文字がありました」

 勿論、『この文字』はコルベールには読めないので、そのままをスケッチしたメモをオスマンに渡す。
 うむぅ、と唸るオスマン。

「まさか……伝説が本当にあったとは」
「伝説とは?」
「かつて我々人間が魔法が使えない頃、そしてエルフや使い魔が存在しなかった頃、人に代わって人を統治する『神のほこら』が五つあったそうじゃ。
 そして、その頃の人はトライアングルクラスの大きさのゴーレムを何匹も使役し、ゴーレムもスクエアクラスの攻撃が可能だったそうじゃ。
 しかし、人が争い過ぎるようになって、やがて文明や人は滅びたが、神のほこら自体は残っていると言うが……」
「もしや……」
「うむ。かねてより予測されていた、神との戦いが始まってしまうかもしれん。
 ミスタ・コルベール、これは未だ推測。無闇な不安を煽る訳にはいかん。他言無用に願うぞ」


***************


 舞踏会はつつがなく終了し、ルイズは少し飲みすぎで火照る身体を、ベッドで寝転がる事で冷やしていた。
 服をだらしなく着崩し、うつらうつらと眠りの世界に呼ばれていた。それを引き戻したのは、扉を遠慮がちに叩くノックの音だった。

「お姉ちゃん、いる?」
「う、ん……」
「入るね」

 足音も控えめに気配がベッドに忍び寄ってくる。その頃にはルイズも客の存在を正しく認識し、起き上がる。

「ん……レン、何?」
「あのね……お別れを言いに来たの」

 言われる事が重要な事だとは、何となく予想されていた事だった。フーケ戦の後辺りから憐の様子が何となくおかしいのは感じていたが、まさかの別れ話に、起き上がらざるを得なかった。
 こんなときに、眠りかけでぼおっとしている自分の頭が恨めしい。とぼけた質問しか出来ない。

「お別れって……?」
「思い出したから。私の、やらなきゃいけない事を」

 その瞳に映るのは、わたしより幼くて、だけど今までの能天気で天然で無垢な物じゃなくて、何かやるべき事を見つけた真っ直ぐな目。
 本当なら主は使い魔を従えるものとして、許すべきではなく、断固引き止める、いや拘束するべきなのだろう。だが、わたしはそんな事をする気にはならなかった。
 多分、わたしは実は甘すぎるのだろう。案外、子供なんか生まれたらだだ甘になるのかな? ちいねえさまに似ているのかなと思うと、安心するけど。

 そんな長ったらしい言い訳ごとを考えている間に、やっと頭がすっきりしてきた。すっきりしたはずなのに、今度は何を言えばいいのか考えすぎて言葉にうまく出来ない。
 だから、短くまとめた。

「……うん、頑張ってきなさい。ちゃんと、決着つけてきなさいよね」
「ありがとう、お姉ちゃん。
 あ、おひげのおじいさんに許可貰ったよ」
「オールド・オスマンの事?」
「帰る前に挨拶しに行ったら、進級は認めるから次の使い魔を召喚していい、って伝えてくれって」

 確認のために手を取る。確かに、ルーンは跡形も無く消えていた。

「ツェルプストーやタバサにも挨拶したの?」
「うん、ちゃんとしました」
「いいわ。いつ、行くの?」
「この挨拶が終わったら、すぐに行くつもり」
「そう。
 ……さよならは、言わないわ。元気でね。また、会いましょ」
「またね……お姉ちゃん」

 レンの姿が、窓の外から差し込む月の光に溶けるように、ゆっくりと消えて行った。余りにもあっさりしすぎていて、夢を見ているようだった。
 誰も、何もいない。思わず手を差し伸べても、何も触る事ができない。
 頬が冷たかった。泣いている? そんな事にも、気づかなかったなんて。
 どこか心の一部を持っていかれたように寂しい事に気づいた。心の働きが遅い。未だに現実かどうか、理解できなかった。どうして、泣くならもっと早く、引き止めて泣く事ができなかったのだろう?
 自分が甘いだの何だのと理由をつけていた癖に、結局は一緒にいて欲しかったのだ。

 『ゼロのルイズ』と呼ばれていた私に、素直に付き合っていてくれたから。
 レンがいたから、私は私でいられたのに。

 当たり障りの無い事を言って別れたのを後悔したままベッドに潜り込む。
 自分の感情が何なのか、どうすればいいかよく解らないまま、心のつかえを流しつくすように泣き、そして眠りについた。


**********************

 数日が経った。
 ルイズの二人目の使い魔召喚は一回で成功したが、出てきたのは平民の少年だった。
 サイト、と言う少年をルイズが事あるごとに、

「この犬!」

 と大声で追い回す様子は、その数日で名物になった。
 キュルケと話をする→この犬!→爆破、シエスタを見てデレデレしている→この犬!→爆破、誤ってタバサを押し倒す→この犬!→爆破、と追い回すその様子に、「あれって焼餅じゃね?」と噂する生徒もいるが、表には出さない。
 ゼロのルイズ相手といえど、あの結構痛い爆破を食らいたくは無いのであった。
 キュルケは堂々と正面から言う剛の者であったが。


 中庭で柔らかな風に吹かれながら、ルイズは寝転んでいた。少々追い掛け回しすぎで疲れたのだ。
 あの犬、女の子見れば右に左にふらふらふらふらと。次に見つけたらもっと厳しく躾けてやるわ。
 決して焼餅じゃないの。ご主人様として、ちゃんと下僕が周りに迷惑をかけないようにしてるだけなんだから。そんな思考こそが焼餅と言われている理由だという事に気づいていない。

「さて……行きましょうか」

 服についた草を払い、立ち上がる。
 そういえば、いつかあの子とこうして寝転んだ事もあったっけ。ほんの少し前のはずなのに、ずっと過去の想い出のような気がした。
 少しだけ強い風が吹いた。誰かに呼ばれたような、声が聞こえる風。

(お姉ちゃん……)

「レン?」

 ふと、中庭の向こうに影を見た気がした。
 小さくて、スカートが風になびいていて、大きなリボンが揺れていて……

「あれ……?」

 夢か、現か。
 どちらでもいい。未だ寂しさを忘れられない私を心配して、幻を見せに来てくれたのかも。
 だから、私は何も言わず背を向ける。そして、歩き出した。


***************


「どうして無視するの!?」
「って、ええええええっ!?」

 幻は質量を持って、私の背中に張り付いてきた。幽霊なのに触れる事に慣れてるのは最早どうかと思うが。

「え、ちょっと、戻ってきたの?」
「……ダメ?」
「ダメじゃないけど……それで、決着はつけてきたの?」

 うん、と憐は大きく頷いた。

「『向こうで』死んじゃったけど……何故かこっちに来れたから。
 ちゃんと死ぬ前にお別れを言って、こっちには今日来ました」
「そう……」

 ダメだ、戻ってきたって聞いて、言葉にならない。泣きたいけれど、泣かない。やっぱり、大事な存在なんだと気づく。
 もう、嫌だって言っても離さないから!

「これからは、ずっと一緒よ!」
「うん! お姉ちゃん!」

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