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ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王-13


「おーっほっほっほっほっほっほ、ほ……む!」
 女王の甲高い笑い声が止んだ。
「ぬおぉぉおっ!」
 女王が唐突に声を荒げた。
 首を反らした彼女の頭が逆さになって真後ろを向いた。
 すると、先ほどまで女王の額があった位置に突然激しい爆発が起こった。
(これは、まさか……!?)
 その爆発から感じ取れる魔力に女王は覚えがあった。
「何者だ!!」
 女王は目を見開くと椅子から立ち上がり、血相を変えて辺りを見渡した。
 周囲には女王が生やした茨があるばかりで女王に襲い掛かるような者は見当たらない。
「ぬぅ!?」
 女王の首元で再び爆発が起こった。
 しかし、その爆発は見かけの派手さと規模の大きさに比べて破壊力は小さかった。
 被爆した部分に熱が残ったものの、女王は全く傷を負っていない。
「下からだね」 
 女王はその爆発から魔力の発信源を突き止めた。
 そして同時に、彼女は恐れていた事態が起きていないことを確信した。
 最初に女王が謎の爆発から感じ取った力は、彼女の世界における高等魔法、"大魔法"の力に似ていた。
 だが、彼女の知る大魔法とは破壊と創造を司る封じられた禁術であり、例え彼女といえども、その力をまともに受けて無事で済むようなものではなかった。
「おぉぉまえかあぁぁぁああ!!」
 下を向いた黄金色に輝く巨大な眼球には、杖を上に向けたルイズの姿が映っていた。
 ルイズは両足の震えを抑えながら、女王の顔に向けて火炎弾の魔法を放っていた。
 ところが、彼女の唱えた魔法は全て失敗する。
 彼女は特殊なメイジだった。
 どんな魔法を唱えても暴発した魔力による爆発しか起こらない、それがルイズというメイジだった。
「どうせ殺されるくらいだったら、私は戦う! 私は貴族としての誇りを最後まで…・・・絶対に捨てないわ!!」
 覚悟を決め、ルイズは自分の信念を高らかに宣言した。
 後には退けない状況と限界を超えた恐怖感が彼女を一層奮い立たせていた。
 それは、他のどの学生よりも貴族としての在り方を重んじていた彼女だからこその行動だった。

(この目! 自分の正義を信じ、それを貫き通すその目は、まるで……)
 女王はルイズの瞳の中に一人の男を見た。
(アンパンマン!!)
 女王の全身に寒気が走った。
 目の前に居るちっぽけな人間が見せるその勇気が、女王をこの上なく不愉快にさせた。
「無駄なことはやめろ!! そんな小さな体で何ができるというのだ!!」
「うるさい!!」
 ルイズは女王の言葉に構わず魔法を唱え続けた。
 連続で起こる無数の爆発は女王の全身を包み続ける。
「えぇい!! 私に刃向かうな!!」
 細長い十本の指の先から黒い雷が発せられた。
 青いオーラを纏った稲妻がルイズの周囲に落とされる。
「私が望めばお前ごとき! 容易く消し去ることができるのだぞ!!」
 ルイズの周りにいた生徒達は黒い鉄像と化していた。

 女王はルイズの心を折ろうとしていた。
 圧倒的な恐怖さえも克服させるルイズの勇気――その存在を女王は許せなかった。
「お前が私に逆らったからそこの屑共は黒くなったのだ! お前の独りよがりの勝手な行動が、そいつらの未来を奪ったのだ!!」
 十体の鉄像の中にはキュルケもいた。
「うるさい! うるさいうるさいうるさい!! 私はただ! 私はトリステインの貴族として……!!」
 鉄像と化した彼らに対して、ルイズは責任を感じていないわけではない。
 しかし、トリステイン貴族としての彼女は、国や王女のため、また貴族としての誇りのために、その命が尽きるまで戦わねばならないという義務も同時に感じていた。
 自分のせいで命を奪われた者達に対する罪悪感と国家に対する忠誠心、それら二つの間で板挟みにあった彼女は泣いていた。
 目を赤くしながら、ルイズは大声で泣きながら魔法を唱え続けていた。
「貴族貴族ぅ……? ハッ、何が貴族だ! なぁにが誇りだ!」
 ルイズの信じるものの意味が女王にはわからなかった。
「下らない! あぁー下らない、そんなもの」
 失敗魔法による爆発を受けながら、女王は呆れるような声で呟いた。
「力こそ全てだ! 見ぃるがいい!」
 女王が語気を強めそう言い放つと、女王の左手がそのすぐ前に出来た闇の中に沈んでいった。
 そして闇の中から何かを取り出すと、女王はそれをルイズの目の前に投げつけた。
 それは一体の黒い鉄の像だった。
 砲弾のような勢いで飛んできた鉄像は足の部分から地面に衝突すると、そのまま腰の位置まで地面にめり込んだ。
「既にこの国は私のものだ! お前がそんなに貴族としての誇りとやらを大事にするなら、私の前に跪け!!」
 ルイズは自分の前に置かれた鉄像の顔に見覚えがあった。
「ア、アンリエッタ……姫、殿下……」
 その鉄像の正体は、国王が不在のトリステイン王国において実質上の女王とも呼べる少女、アンリエッタ・ド・トリステインその人であった。
 幼少より彼女と親しい間柄にあったルイズは、その変わり果てた姿に言葉を失った。
 詠唱を止め、アンリエッタの像を見つめるルイズの焦点は定まっていない。
「ほほほ、お前達が学院の中にいる間にね、私はちょーっと街まで遊びに出掛けていたんだよ」
 鉄像の頬に手を寄せたまま動かないルイズを見て、女王の顔に笑みが戻る。
「その小娘が女王なんだって? 悪い冗談だねー本当に」
 嘲るように語る女王の言葉はルイズの耳には届かない。
 鉄像と瞳を見合わせるルイズの瞳は淡く濁っていた。
「まぁ、お前達みたいな屑ばかりいる今までのこの国には、お似合いの女王様だったろ~けどねぇえー」
 女王はおどけた口調でトリステインを罵った。
 ルイズの心を完全に壊したという自信が女王にはあった。
 そしてそれ故に、彼女はルイズが小声で詠唱をし始めたことに気がつかなかった。
「ほーっほっほっほっほ!」
 ルイズが今唱えている呪文はこれまでの呪文とは大きく異なっていた。
 虚ろな目でルイズが唱える呪文のスペルは異常な程に長かった。
「さぁて、そろそろお前の、そのケバケバしい色も見飽きてきたねぇ」
 一頻り笑い続けると、女王は左手をルイズにかざした。
 女王は心の壊れたルイズにはもう構う必要が無いと判断していた。
 既に女王の目には、桃色の髪をしたルイズはただ目障りなだけの存在としてしか映らなくなっていた。
「黒くおなり……!」
 女王は人差し指の先に魔力を集中させた。
 指先からは青いオーラが迸しっている。
 その時、黒い稲妻がルイズの頭上に落とされた。
 しかし稲妻がルイズに命中する直前、ルイズが握っている杖の先端から凄まじい光が発せられた。
 球状に膨らんだ眩い光が女王を包み込む。
 輝きを増した白い光は、瞬く間に森中に広がっていった。


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