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ゼロの騎士団-19


ゼロの騎士団 PART2 幻魔皇帝 クロムウェル 9 「到着と再会」

「……ここは?」
かき消えそうな声と共に、ニューは目を開ける。
(どうなっているのだ? ……私は確か、ソーラ・レイ撃った後、意識を失って倒れた筈だ)
自分が目を開ける事があけたことへの事実と共に、意識が途切れる前の事を考える。
少なくとも、ニューが気絶する寸前の視界に、真駆参がマチルダを連れていく所が映っている気がした。
おそらく、二人は退避したのだろう。
その後、こうやって起きていると言う事。真駆参達は撤退して、ニューに止めを刺さなかったのだろう。
(恐らく、あの時の一撃で撃退できたのだろう。しかし、倒れるとは……あの時と同じだ)
視界は天井の白い壁に塞がれている、と言う事は屋内だと言う事は起動し始めた頭でも理解できた。
しかし、体の方は自分のすべき命令を理解出来なかったようだ。
「いっ!」
激痛に声を漏らす。
腹に力を込めて起き上がろうとするが、筋肉を引きちぎるような感触に襲われる。
「この程度で済んだと考えるべきなのか?」
体のストライキを理由にニューは納得するが、そのままと言う訳にも行かなかった。
本当なら背中に当たる柔らかなベッドの感触を感じていたかったが、優先すべき事を体に命令する。
視線を地面と平行にし、ゆっくりと状況を確認すべく身を起し辺りを見回す。
そこで、隣に複数のベッドがあるのを確認する。
医務室なのだろうか? そう思い、ベッドに居る人物を見て、ニューは言葉を失う。

ニューの絶句した理由を理解できるのが、この場に居るとすればそれは一人の少女であった。
ルイズもまた、ニューと同じ場所に居て、ニューと同じ様に絶句する。
彼女の視界には起きたばかりのニューが居た。

そして、その隣には、まだ寝ているニューが居た。

(どういう事、ちょっとニュー! これ一体どういう事よ)
とりあえず、訳が分からなくなり、ニューに声をかけるがその声に反応している様子は無い。
起きた方のニューに近寄り詰め寄ろうとするが、ルイズはそこで足を止める。
(何故、私はこれを見ているんだ……)
ニューの声が脳内に聞こえ、その声には驚きが含まれている。
ベッドの上のニューはそんな二人に気づかずに、未だに寝ている。
(これは! 私が初めてギガ・ソーラを撃った時の事じゃないか)
ニューが何かを思い出したようだ。
(え!)
はっと顔を見上げて、ルイズは黙ってニューの方を見る。
ルイズはその言葉を瞬時に理解する。ここ最近、夢の中で彼女はニューの事をよく見ていた。
自身の剣の才能がない事を知り嫌々ながら家を出た事。
ゼータに剣で負けた事。
魔法を習っている事。
そして、敵に囲まれた際にギガ・ソーラを使い倒れた事。
(この間の夢の続きなの? あ、目を覚ました)
気付いて目を向けると、未だ寝ていたニューの方も目を覚ました。
目を開けた後、もう一人のニューもまた、身を起して部屋を見回す。
(無事だったんだ)
過去の出来事とは言え、ニューが倒れた所を見ていただけに、彼が無事である事に安堵する。
そして、もう一人のニューが部屋の内装から自分達の居城、
アルガス城に居るとこに気がついた所で、部屋に入る者が居た。
その顔をルイズは覚えていた、ニュー達の団長であるアレックスである。


アレックスはニューが起きている事に気付くなり、嬉しそうに彼のベットに近づいた。
「ニュー、気がついたのか……良かった、三日間眠り続けていたから心配したぞ」
(あれから三日も眠っていたの!)
ルイズもその言葉を聞いて驚く。
確かにすごい魔法であったが、あの時三人で魔法を使ったのに、
それでも三日も眠るとはルイズも思わなかった。
その言葉を聞いて、ニューは倒れる前の事を思い出したらしい。
「アレックス殿、ムンゾ帝国の敵はどうなりました!? それに、タンク殿やメタスは!?」
彼にとっては先程までの状況をアレックスに確認する。
自分達は確実に危機にあった。
そして、魔法を撃った後、敵はどうしたのか?
自分と同じ様に魔法を使ったタンクやメタスはどうなったのか?
「少しは落ち着け、魔法により敵は全滅した。
そして、タンク殿とメタスはあの後、お前同様に倒れたが、次の日には目を覚ましたよ」
アレックスは落ち着いた声で、ニューの疑問に答える。
ニューとしては結末を見ていなかっただけに、それは彼等にとっては最も望ましい結果であった。
(そう、敵は全滅していた、そして、次にアレックス殿が言った言葉は今でも覚えている)
二人のやり取りを見ながら、自身の過去をトレスして、もう一人のニューが呟きを漏らす。
ルイズもニューの言葉が気になったのか、二人に視線を戻す。
ちょうど、アレックスがニューに対して何かを話そうとしている所であった。
「今回全滅を免れたのは君のおかげだ、ありがとう」
「いえ、そんな事無いですよ、無我夢中でやっただけです」
直前まで自分に出来る訳ないと思っていただけに、アレックスの言葉に対して、ニューは謙遜する。
アレックスはそれを聞いてから、考えていた事を伝える。

「ニュー、私は君を騎馬隊から外し、法術隊へ行ってもらいたいと考えている」

良く通る声でその言葉は部屋に響いた。
ルイズは驚いていなかった、それは、今のニューを知っているからだった。
しかし、目の前のニューは明らかに驚いていた。
「法術隊は常に慢性的な人手不足であり、その事で悩んでいた、
それを補強する意味でも君には法術隊に入ってもらいたいのだ」
「そんな、無理です! あの時は偶然上手く行っただけです!」
ニューはいきなりの転属を切り出され戸惑っていた。
(もし、法術士になったら、本当に騎士の道を閉ざす事になる)
ニューはこの時既に、転属の意味に気付いたのだろうか、ルイズはそんな事を考える。
しかし、アレックスはそれを聞いても言葉が足りなかったのだろう。
「今は偶然かも知れない、しかし、修行を積めば君は僧侶、いや、法術士にもなれるかもしれないのだ……頼む!」
団長が下の物に対して、頭を下げるなど普通は考えられない。
しかし、アレックスはニューに対して頭を下げていた。
それを見て、口を数秒あけた後、ニューは口を開いた。
「……少し考えさせて下さい、整理がつかないのです」
絶対の拒絶は出来なかった。
「すまない、まだ起きたばかりだったな、ゆっくり考えてくれ」
もう少し何か言いたそうであったが、
アレックスもそれを聞いて何か考え込んだ後、部屋を出る事にする。
アレックスが出ていくのを見届けた後、無言で俯いているニューを二人は見る。
そして、部屋の沈黙を破るように声が流れ始めた。
(あの時、ルイズには騎士の道を閉ざす事になると言った……だが、法術士になる事を躊躇ったのはもう一つ理由があった)
それを聞いて、ルイズは目をもう一人のニューに移す。
彼女に気がつかないまま、ニューは独白を続ける。
(……私は恐ろしくなったのだ。ギガ・ソーラを使った事が、一瞬でたくさんの命を奪った事実が)



「ルイズ、大丈夫かい?」
その声をかけたのはニューではなく、帽子をかぶった髭の男であった。

「……ワルド?」
無意識と意識の狭間で、ルイズはその男の名前を呼ぶ。
それは当たっていたらしい、ワルドは安心した顔をする。
「ここは?」
ニューのソーラ・レイを見た後、船に乗った安心感と泣きつかれた疲労感から、
大した時間を経たず、ルイズは部屋で寝た気がした。
状況が分からず、先程とニューと同じような感覚で、辺りを見回す。
気のせいか自分と居た部屋と違うような気がした。
その事を言おうとして、ワルドを見ると、彼は申し訳なさそうな顔をしていた。
「ルイズ、不味い事になった……この船は空賊に占拠された」
少し間を置きながらの発言は、それに見合うものがある。
しばらく起きたばかりで事情がつかめなかったが、ルイズは驚きの言葉を探す。
「え!どういう事!?」
突飛でも無い言葉に対する模範的な反応にワルドは一息ついてから、語り出す。
「君が寝てから、深夜に空賊に襲われた、暗闇で気付かずに接近されたらしい。
どうやら積荷を狙われた様だ、僕達は奴らのアジトに連れていかれる」
そう言ったワルドの顔には疲労の色があった。 
自分が寝ている間、警戒を怠らなかったのか? ルイズはそのような事を考えていた。
「どうするの、私達は姫様の命を果たさなければならないのに」
(せっかく、ニューが足止めしたって言うのに)
ニューの行いが無駄に成るのでは無いか? そう思うと、ルイズは無意識に胸が詰まる。
それを見て、ワルドが諭すように、説明する。
「落ち着くんだルイズ。ここは船の上だ、どの道逃げ場はない。
奴らのアジトに着いたら隙を見て逃げ出す、いいね?」
まだ、アルビオンは見えていない。その状況で小舟を奪うよりは、
アジトに着いた空賊達が安心した瞬間を狙い脱出する。
ワルドはそう考えていた時、扉が開くのを感じる。
中から、髭面のいかにも空賊の様な男が現れる。
近付いただけで、嫌悪を満たす体臭がルイズに非常事態を教えていた。
「来てもらおう、お頭がお呼びだ」
親指で部屋から出る事を促す。
ルイズはワルドの顔を見るが、ワルドは抵抗するのは無理と言う表情を浮かべていた。
(ニュー、どこにいるの……)
自身の状況の悪さを感じながらも、心はどこかにいる自身の使い魔の事を考えながら、部屋を後にした。

杖を取り上げられたルイズとワルドは男に連れられて、部屋の中まで来ていた。
男はその容姿からは似合わないノックをしながら、部屋の中に確認する。
「お頭、例の貴族を連れてきました」
「おう」
短い言葉だが、ルイズには声は若い男に感じられた。
そして、その印象は当たった。
部屋の中には机を隔て、一人の男が居た。
賊達の様な簡易な服装とは違うどこか大将を思わせるような格好であった。
顔は髭で覆われていて詳しくはわかりにくいが、それでも目元などからワルドよりも若く思えた。
(……あんまり怖そうじゃないわね)
そんな事をルイズは考える。何となく汚らしい大男か眼つきの鋭い老人等を予想していただけに、
目の前の男はそう言った威厳を感じなかった。
「アンタ達かい、あの船に乗っていた貴族様は?」
男の声は、やはり最初聞いた印象を覆す事は無かった。
ルイズは考える、自分達はどうなるのだろうか? 
船に乗っていた中で連れてこられたのは感じられる限りでは自分達だけの様だ、
二人は高価な物はあまり持ち合わせていない。
唯一、アンリエッタから渡された指輪だけだ。
自分を慰み物、あるいは人買いに売るのだろうか? 
しかし、少数とはいえあの船には若い女は居たが、それを連れてきた形跡は感じられない。
一番考えられるのはレコン・キスタだろうか? 
最低限の情報を与え、ルイズ達を捕獲しレコン・キスタに売る。
ルイズがいろいろ考えていると、ワルドが頭の相手をするように一歩前に出る。
「お前達は何が望みだ?」
「俺達に力を貸してほしいのさ、今ここら辺は貴族派が睨みを利かせているから、
最近厳しくてな腕の立つやつが欲しいのさ」
男は半笑いを浮かべながら、こちらを見ている。
話から察するにレコン・キスタや貴族派とは関係ないようだ。
「そっちの嬢ちゃんはともかく、アンタの方は腕が立ちそうだしな、
軍人さんか何かだろ?嬢ちゃんは変装までして、ここに何の用だい?」
ワルドの杖を弄びながら、男はワルドを見る。
恐らく自分達がアルビオンに何かしら用があって来た貴族と思ったのだろう。
ルイズの格好は平民であるが、杖を持っていたし、ワルドの格好は平民にはとても見えない。
これでは変装した意味がなかった。
「断る。お前達に協力する理由はない」
「そうだよな、けど、アンタが協力する理由は充分だぜ、そのお嬢ちゃんを保護しているんだからな」
男は保護の部分を強調する。
その言葉を聞いて、話の筋がルイズにも掴めて来た。
戦力が欲しいなら、ワルドだけを連れてくれば良い。
しかし、当然のことながらワルドは首を縦に振らないだろう。
ならば、理由を作ればよい、簡単に理由を作れる物がある。
ルイズである。
彼女を押さえておけば、ワルドは簡単には断れない。
そして、ルイズ達の目的を果たす上で、ルイズが持っている水のルビーは、どうしても、持っていなければならない。
そんな事も知らずに、男は答えが解っているかのように嬉しそうにワルドの言葉を待っていた。
しかし、ワルドの言葉を待たない者がいた。


「ふざけんじゃないわよ! なんで、あんた達みたいな賊何かに手を貸さなくちゃいけないのよ! 
私達にはやる事があるのよ!」
(そうじゃなきゃ、ニューは何の為に、あそこに残ったのよ!)
ルイズは少し涙を浮かべながら机を叩きつけて叫ぶ。
それは、賊に対してと言うよりも、彼女の使い魔が、
命がけで任務を果たした事に対する、運命の報酬の非情さであった。
ルイズがいきなり叫びだした為に、男は少し唖然としていた。
それに構わず、ルイズは続ける。
「だから、アンタ達何かに手を貸すのは嫌! ついでに、私は何としてでも目的を果たす!」
(こいつ等に力を貸すのは嫌、けど、ニューや姫様の為にもなんとしても、任務はやり遂げる)
「ははは、ずいぶん都合のいい事を言うお嬢ちゃんだ」
支離滅裂とも取られ兼ねないルイズの言動を聞いて、男は笑いだした。
最初こそ笑い出したが、言葉の最後の方はその笑いが無くなっていた。
「けど、そう言う事を言うのは嫌いでは無い」
男はそう言いながら、髭に手を掛ける。少し力を入れると、男の髭は簡単に取れてしまった。
髭のとれた顔は、年頃の端正な男の顔であった。
「ようこそ本物の貴族の方、私はアルビオンのウェールズ・テューダー。
この空賊の首領を務めている者だ。なるほど、確かに君達の言う通りの人物だったな」
それはルイズがもっとも合いたい人物の名前であった。
挨拶をしながらも、なぜかウェールズがドア越しに声を掛ける。

入ってくる人物はルイズにとっては予想外の人物であった。

「なんでアンタがここに居るのよ!」
婚約者と礼を尽くさねばならない人物がいるにもかかわらず、
ルイズは驚きを持って、その人物を指差した。
「よお、ルイズ久しぶりじゃねぇか」
人――本来その表現が正しいのかは別として、
目の前には自分の嫌いな人物の使い魔が先程の緊張感のかけらも無い声で部屋に入って来た。
「よお、じゃないわよ! ダブルゼータ、なんでアンタが乗っているのよ!? アンタがいるって事は」
「はーい、久しぶりね、ルイズ」
扉が開き、目の前に自分が最も会いたくない人物が現れる。
そこには、女海賊とでも形容されるような格好のキュルケが居た。

状況に対して、説明がつかなかった。
キュルケ達が旅行でアルビオンに居る事は知っていたが、
少なくともルイズの前に現れるとは思ってもみなかった。
そもそも、既に帰っていると思っていた。
それだけに、目の前のダブルゼータを見ても再会の喜びよりも、理解不能の文字が脳を支配する。
「彼女達には私の部下を助けてもらってね。そのついでに、傭兵として協力してもらっているのさ」
ルイズの疑問に、ウェールズが答える。
ルイズの行動は、納得というよりも怒りを表していた。
「アンタ達、何をやっているか解っているの!? これは戦争なのよ!」
「分かっているわよ、あなたこそなんでこんな所に居るのよ? しかも、そんな立派な殿方と一緒に」
久方ぶりの会話。
学院で繰り返される会話。
しかし、お互いが得たい情報が多すぎて、やり取りする情報を間違えている。
それに気が付いた、部外者2名は苦笑いを浮かべていた。


「ところで、なんで此処に居るんだ。 それとニューはどうした?」
ルイズとダブルゼータの会話がやっと噛み合いだした所で、ダブルゼータが思った事を口にする。
自分とキュルケならともかく、ルイズの元にニューが居ない事に気付いて疑問を口にする。
それを聞いた途端、それまでの強気な顔が崩れる。
「おいおい、どうしたんだよ急に、何か悪い事聞いたか、喧嘩でもしたのか? アイツは口が悪いからな」
「そうよ、ニューがあなたの事を桃色攻撃色小娘とか、寸胴空洞無反動ナイムネ砲とか言うのは珍しい事無いじゃない」
2人の言葉は的を射抜く気が無い射手であった。
軽い気持ちで聞いただけに、ルイズの顔が変わったのが二人を焦らせる。
「違うわよ! ニューは……ニューは私達を船に乗せる為に一人で……」
言葉が途絶えがちになり、最後には嗚咽が交り出す。
2人は理解できなかった。
そして、答えを求めて、目の前の男に視線を動かす。
これにより、場が動く事を2人は直感する。
「それについては私から説明しよう。初めまして、ウェールズ皇子。
私は魔法衛士隊隊長のワルドと申します。
この度はアンリエッタ王女の命を受け、このルイズの護衛としてまいりました」
ワルドが名乗り、今回アルビオンに来た目的を説明する。
それを聞いて、ウェールズは何かを悟ったような顔を浮かべた。
「そうか、あの手紙か……わかった、今ここには無いので城に帰ったら渡そう。
それに、君達を客人として持て成さねばならない」
一瞬、暗い顔を浮かべながらも、するべき事、
そして、人に対して向ける仮面を被り直しウェールズはルイズ達に微笑みを浮かべた。
その中で、ワルドの話を聞いたダブルゼータは、ぼんやりと窓を見ていた。
「アイツなら大丈夫だろうぜ……何たって、この俺を何時のろま扱いするんだからな」
ルイズを励ます訳でもなく、だが、絶対の自信がある訳でもない。
ダブルゼータの心情を現すかのように、雲の中に見え隠れする黒い影が濃くなる。
雲を抜け、窓から差し込む日の光が視界を遮る。
数秒の後、ダブルゼータはここ数日で見慣れた場所を見下ろしていた。
雲の中から、表れたような大地――アルビオンを。

男のその日の最後は乗船者の確認であった。
それは毎日の日課と言う訳では無く、その船〈キング・リーヴェル〉は、
鉱石等を主要とした輸送船であった。
こう言った輸送船は本来、積載量に影響する為一般人の乗船を嫌う。
なので、乗る為にはそれなりの方法がある。
一つは客船の数倍の金額を払う事。
男は目の前のフードをかぶった二つの影を見る。
「この船に乗せてもらう予定の者よ。ロングビルの名前で話は通って居る筈だけど」
フードを深くかぶった一人が出した名前は、男の聞いていた名前と一緒だった。
フードから時折垣間見える表情が女である事が分かる。
(船長や誰かとコネのある人物だよな)
酔って昔話――商船の船長とは思えない様な自慢話をする船長の客人としては、
これ以上ないくらい適人に思えた。
この船は、時に船長の“昔馴染み”を乗せる事がある。
今度も恐らくその類であろう。
だが、後ろに居るもう一人は?
ローブを被っているので完全には把握できないが、
隙間からフルアーマーの鎧――それも、ハルケギニアでは見た事のない鎧を着た小男に見えた。
こちらの方は素顔を全く見る事が出来ずにいた。
鎧もおかしいが、それ以上におかしいと思えるのは、小男は自分と同じくらいの袋に包まれた何かを涼しい顔で背負っている。
正確には解らないが小男の荷物は明らかに軽い様には思えず、何よりそれを背負っている状態でも、
ふら付いたり、力を込めている様子は見えず、事もなく持っている。
(嘘だろ、重くないのかよ)
仕事上、力自慢が何も自慢にならないような環境で生きている自分ですら、それには驚くものがあった。
この仕事に就いて堅気の人間ではない者達を幾人か見て来たが、
目の前の二人はその中でも特に異質に見えた。
気に留めつつも、男は仕事をこなす事にする。
「あぁ、話は聞いている。第二船倉を使ってくれ」
「船室じゃないのかい? こんなホテルのサインみたいな真似をさせて」
渡された紙に名前を書き、女が自分に渡してくる。
「この船には、そんな上等な物は無いぜ。なんなら、俺の部屋に泊まるか? 
俺のベットはクラリッジにも劣らないぜ」
「クラリッジはいつから王家に星を返上したんだい」
この船に乗る人間との冗談のやり取りの一種である。
女の顔は不満を持ちながらも、結局はすべてを理解していた。
「じゃあ、遊覧飛行でも楽しみますかね」
「窓は付いてないぜ、見たけりゃ外に出るんだな」
男の言葉を聞いて、女は軽く舌打ちしながらも船倉に続く階段に向けてゆっくりと歩き出す。
それに続いて、後ろの小男も無言で歩き出す。
すれ違いざまに、男は背負っている布の紐が少し解けているに気づく。
「おい、アンタ、紐がほどけているぜ」
「そうか」
小男は短く呟き、いったん袋を置いて、紐を縛ろうとする。
だが、視界が悪いのかもともと不器用なのか、その作業は思ったより時間がかかっていた。
「手伝うか?」
男はそれを見て声を掛ける。
手伝うと言うよりも、本音を言えば男の荷物が何なのか少し気になったのだ。
「いや、構わない。こう言った作業は苦手でな」
男の意図に気づかないのか、それとも気付かない振りをしているのか、
小男は特に気に掛ける事もなく答える。
その言葉の通り、最初の苦戦して居た様子から、
段々とコツを掴んできたのか紐の曲線が増えてくる。
本来なら、そのままにしておいてよかったのだが、その時、何故か動いてしまった。
「おっと! 倒れそうだったぜ、本当に大丈夫なのか?」
そう言いながら、小男の視界から隠れるようにして荷物を支える。
だが、それは嘘であり、男は近づいた時に、開いた袋の中を盗み見る。
「済まない……もう、大丈夫だ」
集中して居たのだろう、社交辞令の様な礼を述べつつ、もう一度紐を強く結ぶ。
「行くよ、マークスリー」
自分の後を付いて来ないのが気になったのか、階段を降りかけた女が声を掛ける。
その表情には、少しだけ苛立ちの色が見えた。
「わかった」
再び、荷物を背負い階段を下り始める。
それを振り返る事もなく、男の耳に、重たそうな足音が聞こえ、段々遠くなっていく。

男は言葉が出無かった。
袋の中には形は違えど、小男とよく似た鎧が入っていたのだから。

「38 お前達には協力してもらうぜ」
海賊 船長
若い男のようだ。
HP 440

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