あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

確率世界のヴァリエール-11


トリステイン魔法学院の地下深くに、低く強い発電機の唸りが響く。

「異世界文化研究室」と記されたその扉の奥では、コルベールが狂喜の笑みを浮かべ
「初めての工作キット:水中モーター」と書かれた紙箱を手に取っている。
そしてその隣、「異世界文化研究室・分室」と記された扉の奥で。

「すっごく似合うわ! シエスタ!!」
モンモランシーが喜びの声を上げ、タバサとケティがうんうんと満足げに頷く。
隣室から引かれたケーブルの先にある液晶モニタは大怪球フォーグラーの威容を映し、
その前にはポップなジャケットのDVDソフトがうず高く積まれている。
マンガ、アメコミ、バンドデシネにライトノベルにスラッシュノベル、
翻訳用の辞書辞典に不適切なタイトルの薄い冊子で満たされた本棚に囲まれた部屋の中央。
水兵風の上物と丈の短いスカートを着せられたシエスタは、困惑の笑みを浮かべていた。
その太股には何やら物騒な4本の刃物まで取り付けられている。
「あ、あの、皆様、これは、、、?」
「そうそう、最後の仕上げを忘れてたわ」
モンモランシーが口紅を取り出すと、鼻の稜線を横切る様にシエスタの顔に朱線を引く。
「さ、ここでさっき教えたキメ台詞よ、シエスタ!」

「は、臓物をブチ撒けろぉっ!!」

感嘆の拍手に包まれる中、シエスタは涙目の引きつり笑顔でフリーズするが、
ケティは無邪気にはしゃぎ回り、タバサは無言でインスタントカメラのシャッターを切る。
「良いわシエスタ! すっごく良い! 次はこれに着替えてみて!」
モンモランシーが鼻息荒くさらに露出度の高そうな妙にテカテカした衣装を差し出す。

「キメ台詞はこうよ。 『そうしろとささやくのよ、私のゴーストが』」



 確率世界のヴァリエール
  - Cats in a Box - 第十一話



「枢機卿自らお出ましとはせいの出ることじゃな、鳥の骨」
「やかましいわ老いぼれめ、送ったものに目は通したか?」
午後の学院長室、小さなテーブルを挟みオスマンとマザリーニは椅子に座っている。
ワルドが差し出した紅茶を一口すすると、オスマンはふむう、とため息をつく。
「この戦争、勝ったな」
「やはりか」
その言葉とは裏腹に、二人の顔は晴れない。

「武力が均衡しアルビオンの戦況は膠着。
 クロムウェルは神聖アルビオン共和国の初代皇帝への即位を表明、
 貴族派の連中は正式に「レコン・キスタ」を名乗りこれを支持、か。
 マッチポンプも良いトコじゃが、こりゃあ停戦交渉への前フリじゃろな」
「反乱軍のままでは格好もつかんからな。 しかしそれでも間が悪すぎよう」
「となれば今更「レコン・キスタ」を名乗る理由は一つ、尻尾切りじゃろうて。
 あの貴族派連中が潰れればそれで「レコン・キスタ」は消滅、表向きはな。
 後ろで糸を引いておった連中はまんまと逃げ切りという事じゃろう」
「やはりおぬしもそう思うか」
マザリーニが腕を組む。

「潜っておった間者達はどうなったんじゃ?」
「深く潜っておったものは、この子爵を除いて全て連絡が途絶えた。
 貴族派連中の所に潜っておった者はそのままよ」
「ふん。 顔は立ててやるからこちらも手を引け、という所じゃろうな」
「腹立たしいが、こちらもそれに乗るほか無い。
 後ろ盾の消えた貴族派連中を潰して、この戦争は幕よ」
「窮鼠猫の諺もあるぞい」
「分かっておるわ、説教くさいジジイめ。
 首尾は上々よ。 のう、子爵」
マザリーニの後ろに立つワルドが会釈をし、小さく微笑む。
「は。 全ては来週、虚無の曜日に」

「ふん、いよいよこのトリステインも戦に加わるというわけか。
 ああ、嫌じゃ嫌じゃ。 生臭い連中じゃ」
オスマンがしかめっ面でパタパタと手を扇ぐが、
マザリーニは嫌味を受け流してふてぶてしく笑う。
「ふん、何とでも言え。
 このトリステインの国土を戦場にさせぬ為よ」
「物は言い様じゃな、これじゃから戦争好きは、、
 ん? そう言えば来週の虚無の曜日といえば、
 日食の日ではないか。 何とも不吉な日を」

「確かに不吉よ、貴族派の奴めらにとってな。
 そうそう、虚無といえば。
 虚無の魔女殿はどうしておられる?」
「息災にしておるぞ。
 顔が割れてしまったことも、ミス・ヴァリエールの為には
 かえって良かったのかも知れん。
 今更言うのも何じゃが、裏の世界の泥にまみれるには
 あの娘はまだ幼な過ぎる。
 ここからの汚れ仕事はわしら老いぼれだけで充分よ」
オスマンが目を細め、窓の外に目をやる。

「確かにな」
マザリーニが席を離れ、窓辺に立って光さす中庭を眺める。

「友と過ごす若者の日々は短く儚い。
 だからこそ、大切なものよ。
 だからこそ、わしらが守らねばならん。
 、、、例え、どのような事をしようともな」
遠くを見やるマザリーニの低いつぶやきに、
オスマンとワルドは黙ったままそれに応えた。

  。。
 ゚○゚


「はあ? パーティ?」
突然の誘いにルイズは怪訝そうな顔をキュルケに向ける。

「そ、パーティ。
 ほら、もう来週から学院も夏休みに入るじゃない?
 それでさ、タバサ達が張り切っちゃってんのよー。
 アンタどうせ任務クビになって今ヒマなんでしょ?」
食堂外に設けられたカフェテラス。
その横の芝生ではフレイムとシュレディンガーが仲良く昼寝をしている。
向かいに座ってコーラを飲んでいるキュルケの話を聞きながら、
ルイズはソーセージが溺れるほどケチャップとマスタードをかけた
ホットドッグにかぶりつくと、ソーダフロートでそれを流し込んだ。
添えてあるポテトフライにも救命胴衣が必要な程のケチャップがかけてある。

「クビじゃ無いわよ!
 戦況が落ち着いてきたから、任務を一旦停止してるだけよ」
「敵の親玉に顔見られたって話じゃない?」
「あ、あれは不可抗力よ!
 っていうか、なに堂々と守秘義務違反してんのよ」
「神経質ねー、誰も聞いちゃ居ないわよ」

キュルケはタコヤキを頬張ると、中庭に並ぶパラソル付きのテーブルを見回す。
確かに、あちこちのテーブルで学生達がそれぞれの話題に花を咲かせているが、
誰もみな自分達のおしゃべりに夢中でこちらを気にしている様子は無い。
ルイズはため息を一つ付くと、キュルケが食べている青ノリまみれのソレを睨む。
「、、、何それ」
「これ? 案外イケるわよ、一つどう?」
「、、、パスするわ」
ルイズは自分達の周りのパラソルの中を覗き見る。
向こうではシェイクを飲みながら甘いソースのかかったポップコーンをつまんでいる。
その隣は生の魚介を使ったスシロールだ。 飲み物はペリエの様だが。

シュレディンガーが向こうの世界の食べ物を持ち込んでからというもの、
厨房ではちょっとしたルネッサンスが起こっている。
バリエーションが増えるのは結構だし、テラスでのランチも気持ちの良いものだが、
いかんせん安っぽいメニューが多すぎる。
物珍しいからって仮にも貴族としてそれはどうなのよ、と思いながら
ルイズはもう一口ホットドッグをかじった。

「大体人のことクビだのなんだのって。
 キュルケなんて何にもやってないじゃない」
「あーら、私はアンタみたいな荒事はやんないの。
 出来るエージェントは任務をクールにスマートに、
 そしてセクシーにこなすものよ?」
「、、、何よ、最後の「セクシー」って」
「聞きたい?」
自慢げに眉を上げるキュルケに辟易としている所へ、一人の女性が近づいてきた。

「ここに居られたか、ミス・ツェルプストー。
 おや、ミス・ヴァリエールもご一緒か」
鎧姿も凛々しい若騎士にルイズは見覚えがあった。
「ああ、貴女は姫殿下の護衛の、えーと、、」
「あらー、アニエスじゃない? 今日はどうしたの?」
彼女に気付いたキュルケが声をかける。
「枢機卿の付き添いでな。
 それと、その、、先日の礼を言いたくてな、ミス・ツェルプストー。
 貴殿のお陰で憎きリッシュモンをこの手で始末することが出来た。
 あれは我が故郷のかたきだった、貴殿には感謝をしてもし切れぬ」
「まあ、アニエス。
 哀れなリッシュモン様はあくまで「事故」でお亡くなりになったのよ?
 駄目よー? 今から国内で団結しようって時にそんな物騒なこと言っちゃ」
「ああ、そ、そうだったな。 すまぬ」
アニエスがなぜか頬を赤らめキュルケから視線を逸らす。

「しかし、任務の為とはいえ、本当に申し訳ない。
 レコン・キスタとの内通の証拠を得る為とはいえ、、
 あのような裏切り者と、その、、、」
「ふふ、あなたが謝るような事じゃ無いわ、アニエス。
 私が好きでやった事よ」
キュルケがアニエスの手を優しく取る。
「う。 そ、それに、追っ手を巻く為とはいえ、、
 その、成り行きとはいえ、、、
 私なぞと、ああいう事に、、、」
「あら? 残念だわー、アニエス。
 私はてっきり貴女があの夜の続きを
 しに来てくれたのかと思ってたのに」

「あー。
 アンタがさっき言いかけた任務の話だけど、、
 聞かなくてもどんなか大体分かったわ、キュルケ」
呆れ顔でルイズが二人を眺める。

その視線に我に返ったアニエスは慌てて襟を正す。
「と、ともかくだ! ミス・ツェルプストー。
 貴殿には大きな借りが出来た。
 私に出来ることがあれば、何でも良い。
 遠慮なく申し出てくれ!」
まだ照れを残しながらも、アニエスが無骨に微笑む。

「んー、それじゃあ、、、」
キュルケがかわいらしく頬に指を当て考え込む。


「パーティがあるんだけど、今晩空いてる?」

  。。
 ゚○゚


「こ、、れ、は、、、!」
アニエスは自分のあまりの格好に、羞恥の表情で立ち尽くす。
「まあ! トレビア~ン!
 と~っても良くお似合いよ、妖精さんったら!」
野太くくねる声が店内に響く。

トリステインの王都トリスタニア。
そのチクトンネ街にある『魅惑の妖精』亭の入り口には
「本日貸し切り」の札がかけてある。

「うん、アリね」
「ギャップ萌えですねー、タバサ姉さま」
すでに着替え済みのモンモランシーとケティが、感心しきりに
スポットライトを浴びるステージ上のアニエスを見つめる。
タバサは無心にシャッターを切り続ける。

脂肪どころか余計な筋肉一つ無いそのしなやかで強靭な四肢は
なめされ束ねられた革の鞭を思わせ、あちこちに走る古傷は
その鍛え上げられた肉体が紛れも無い「実用品」である事を誇示している。
まとっているビスチェはサイズが少々合わなかったのか、
引き締まった腹筋と慎ましやかなおへそを外に晒してしまっている。
アニエスはそれを頑なに両手で隠しているが、過剰に付いたフリルや
頭のカチューシャと相まって、却ってその仕草を可愛らしく見せる。

「ミミミ、ミス・ツェルプストー?
 ここ、これはさすがに、、」
「駄~目、みんなおそろいの格好してるのに
 貴女だけそのまま、な~んて通らないわよ~?」
かぶりつきではしゃぐモンモランシー、ケティ、タバサはもとより、
アニエスに声をかけるキュルケ、そしてルイズとシュレディンガーも
それぞれの髪色に合わせた色とりどりのビスチェを身に着けている。

「さ! これで全員着替え終えたかしら?
 妖精さんたち、『魅惑の妖精』亭へようこそ~!
 今夜は貸し切りだから好きに使っていって頂戴ね!
 可愛いシエスタのお友達ですもの、
 う~んとサービスしちゃうわ~!」
店長のスカロンが腰をくねらせ満面の笑みで挨拶をする。
その横では娘のジェシカが従妹であるシエスタにサムアップする。
(ナイスよシエスタ! 新規顧客開発でお得意様ゲッツよ!)

「どーせこんなこったろうとは思ったわよ」
どうこう言うのをすでに諦めたルイズは、早くもテーブルについて
一人でワインを開けている。
「いーじゃんルイズ、せっかくなんだしー」
「アンタは良いわよシュレ、こういうカッコ似合うし」
笑顔でフリルのスカートをフリフリさせているシュレディンガーに
ふてくされた表情で皮肉を言う。

「そんな事は無いよ、僕の小さなルイズ。
 とっても似合っているよ」
背後からの優しい声にルイズが慌てて振り返る。
「ワワワ、ワルド様!?
 い、い、いらしていたんですか!?」
「学生ばっかってのもなんだし来て頂いたのよー、保護者ってやつね」
モンモランシーが声をかけてよこす。
「おや、迷惑だったかな?」
「めめ、迷惑だなんてそそそんな!!
 でもでも私、こういう格好ちっとも似合わないし、
 胸だってその、、、」
ワルドが優しく笑いかける。
「さっきも言ったろう? ルイズ。 君が一番素敵だよ。
 はっはっは。 
 時に店主、お手洗いはどちらかな?」

ルイズが照れるやらうっとりするやらで自失していると、
突然入り口の戸が叩かれた。
「モンモランシー。
 僕だよー。 君のギーシュだよー。
 今着いたよー。 開けておくれー」
「あら、もう着いたの? 早かったわね」
モンモランシーがフリフリと入り口へと向かい、外へ呼びかける。
「本当にー? 本当に本物のギーシュなのー?
 本物のギーシュならこれができるハズです。
 マリー・アントワネットのものまねー」
「誰だよ! 知らないよ!!
 冗談はやめて開けておくれよモンモランシー!」
「ノリ悪いわねー、ハイハイ」
扉を開けると、外には衣装ケースを両手に抱えた
ギーシュとマリコルヌが立っていた。

「ちょ、何で二人が来てるのよ!
 ていうかギーシュはまだ判るけど、なんでマリコルヌまで居るのよ!」
「ひどいなあルイズ。
 この日の為に用意したコスを持ってきたんじゃないか。 
 僕だってタバサ達と同じく異世界文化研究会の一員なんだよ?
 今日はその発表会なんだから。 って、こ、これは、、、」
中の様子を覗き込むなりマリコルヌは鼻の下を伸ばす。
「ああ、素敵だモンモランシー! ケティもとっても可愛いよ!」
ギーシュも入ってくるなり顔をゆるめる。

「全く、どいつもこいつも、、ちょっとはワルド様を見習いなさいよ!
 ホラ、賢者の様に悟りきった顔をしてるじゃない」
ルイズはそう言ってすっきりとした顔でカウンターに座るワルドを指差す。
タバサが無言でその表情をカメラに収めた。

「ああー、それがタバサが言ってた例のアレ?」
モンモランシーが衣装ケースをテーブルの上に置き開いてみせる。
「そ。 キュルケ、あなたの分もあるわよ」
「あら、そうなの?
 私らはこのフリフリだけじゃ無いの?」
「このビスチェはこのお店の衣装なんですよ、キュルケお姉さま。
 せっかくだからスカロンさんに貸してもらっちゃいましたけど、
 本番はこちらなんですっ」
ケティが得意げに胸を張る。
「じゃあー、まずはこれからね!」


十数分後。
「私が死んでも替わりはいるもの。」
「ほーっほっほ! アンタバカぁ!?」
出てきたタバサとキュルケはぴったりとしたボディスーツに着替えている。
それぞれ白と赤とを基調とした光沢のあるスーツはボディラインも露わなもので、
特にこの世界では見慣れない透明な生地が使われた赤いキュルケの衣装は
やたらと露出度の高い仕上がりになっていた。
「ほらケティも! 3人揃って1セットなんだから!」 「にゃ、にゃ~ん!」

「はっはっは、3人とも可愛らしいね。
 時に店主、お手洗いはどちらだったかな?」


さらに十数分後。
「ガンダムにおヒゲはありますか!? ありません!!」
次に現れたモンモランシーはパラソルを持ってつばの広い帽子をかぶり、
白地にブルーのラインの入ったブラウスとスカートを着ていた。
「台詞が逆。」 「キエル・ハイムからキエル・ハイムへ、、、」


さらに十数分後。
「あたいったら最強ね。」
青いリボンを頭に付け、同じく青のワンピースを身にまとったタバサの背中には、
ウィンディ・アイシクルの魔法によって作られた氷の矢がきらめいている。
「な、なんかノリノリね、タバサ、、、」 「⑨。」


「うぇ!? 私の分もあるの!?」
「当ったり前でしょルイズ。 さ、こっちいらっしゃい」

さらに十数分後。
「あ、これ結構可愛いじゃない」 「でしょでしょ!?」
白地のスカートつきレオタードに紫のインナー、それに黒い子悪魔風のシッポ。
丸くて大きな白帽子には、シッポとおそろいの黒い羽根飾りが付いている。
くるりと回るとスカートがひらりと舞い、シッポが可愛らしく揺れる。
「このキャラのキメ台詞は~、」
「あ、やっぱそういうの有るんだ、、、」
「ん? 何か有ったっけ? タバサ」 「特に無い。」
「そう言えば無いですねー、お姉さま。 「リトリトー♪」とかですか?」
「じゃあそれで、ルイズ」 「、、、」


「じゃあ次はシエスタね!」
「モ、モンモランシーさん、私もやっぱりまたやるんですか?」
「当~然! 二着とも持ってきてるわよ~♪」
「わ、そうなの? 見たい見たい!」
「もう、ジェシカまでー」
「それじゃせっかくだしジェシカさんと一着づつね!」
「え? 私もいいんですか!? やったー!」

  。。
 ゚○゚


「じゃあー、次は次はー」
ノリノリで衣装ケースを漁るモンモランシーを
カウンター席でギーシュがニコニコと見守る。
「いやいや、皆が喜んでくれて嬉しいよ。
 小物を作る手伝いをした甲斐があったというものさ」
「へー、ギーシュの錬金で? 再現度高いよ、やるね」
隣の席でマリコルヌが感心する。

「何コソコソ話してんのよソコー、いっやらしーわねー」
ワインで程よく出来上がったルイズがカウンターの二人を指差す。
「い、いやらしくないだろルイズ!
 僕はただ純粋にコスプレの完成度を」
「鼻の下伸ばして何言ってんのよ、デブのくせに。
 大体あんた達二人だけ、な~んで制服のまんまなのよ」
「い、いやいやルイズ? だってホラ、僕らは衣装もないし」
「あら~、ギーシュ? シュレちゃんだって
 きちんとドレスアップしてるじゃない。 ねえ?」
「ねー?」
「キュ、キュルケ!?」
「そういえばそれも不公平ねえ」
「モンモランシーまで!」
さっきまでギャラリー気取りだった二人を
ビスチェ姿の妖精たちがやんやと囃し立てる。

「そー言う事ならお任せよ!!」
出番とばかりにスカロンが腰をくねらせやってくる。
「いや、店主? 僕らはこういう事は、、」
「あらいやだ、初めてなのね! 怖がる事無いのよー?
 お姉さんが優しくリードして、あ・げ・る!
 ジェシカ! シエスタ! いくわよ!!」


そして十数分後。
スポットライトの照らすステージにスカロンが現れる。
「はあーい、お待たせ致しましたー!
 このお店の新しい妖精さんを紹介しちゃいまーす、
 ギーシェちゃんとー、
 マリコレーヌちゃんでーす!!」

シエスタとジェシカに手を引かれてステージ上に現れた二人を
皆が拍手と喝采で迎える。
「わ、割とアリね」
「アリ。」
「大アリですねー、お姉さま」
かぶりつきの三人組が目を輝かせる。

「ギ、ギーシェ、です、、、」
覚悟を決め切れずに赤面したギーシュが金髪ロングストレートのウィッグを
いつものクセでかき上げる。
男子生徒の中では細身のタイプとはいえ黄色いビスチェから出た広い肩は
大人へと成長する過程の力強さをしっかりと示しており、端正な顔立ちとの
アンバランスなギャップが何ともいえぬ危うさを醸し出している。
その倒錯的な魅力にキュルケは自分の中の野獣が頭をもたげるのを感じ、
思わず唇を舐める。

「マ、マリコレーヌでぇす♪」
空色をしたセミロングパーマのウィッグをつけたマリコルヌは、
そのふんわりとした髪とふくよかなボディラインも相まって
まるで違和感なく淡いブルーのビスチェを着こなしている。
照れながらも満更でもなさそうなその表情は、恥じらう乙女そのものだ。
とても男性とは思えないそのきめ細やかな肌と豊満な胸に
ルイズも思わず息を呑む。

  。。
 ゚○゚


「はーい妖精さんたち、クックベリーパイが焼けたわよー」
「スカロンさんありがと! それ私大好き!」
スカロンとジェシカが運んできた焼きたてのパイにルイズがかぶり付く。
「ん~、おいし」
「あ、あふい」
熱々のパイを持て余すシュレディンガーの向こうでは、
ギーシェとマリコレーヌを三人組がいじり倒している。

「なんのかんの言って、来て良かったでしょ?」
「ま、ね」
隣のキュルケに返事をしつつ、伸びを一つする。
「ここんトコ、色々と忙しかったからねー。
 あちこち飛び回って、船落っことして、要塞潰して、
 シュレと一緒に、いろんな所を見て回って、、、」
ネコ舌を火傷して涙目になりながらもパイをかじる猫耳頭を眺める。
「な~に急にしんみりしちゃってんのよ。
 おヒマもらって気が抜けちゃった?」
キュルケが肘でルイズをつつく。
「ふう、そんなんじゃないんだけどさー、、、
 もうすぐ夏休みだし、しばらく皆とも会えないんだな、、、って」
「ぷふっ、ルイズらしくないわね~、夏休みなんてあっという間よ。
 アンタのバストが10分の1サント膨らむ間も無いって」
キュルケがぺたりとルイズの胸に手を当てる。
「あら? ごめんなさい。 こっち背中だっけ?」

思わず腕で胸を隠し立ち上がる。
「な゛っ!! 誰の胸が背中よ!
 膨らんでるっつーの! 日々成長してるっっつーの!!
 アンタは大体あれよ昔っから!
 おちちが大きけりゃ偉いってもんじゃ無いでしょ!!」

「偉いか偉くないかは知らないけどぉ~、
 貴女みたいなお子ちゃまよりは、女らしくは、あるわよねぇ」
キュルケが自信満々に立ち上がり、ビスチェからこぼれる
たわわな果実をルイズの前に見せ付ける。
「アンタのは「女らしい」じゃなくって「はしたない」でしょ、
 この淫乱牝牛!!」
「ま、まあまあルイズさん落ち着いて」
「ぬぐっ、ア、アンタも敵よシエスタ!
 おちちの大きさで女の価値が決まるとでも思ってんの!?」
うっかりなだめに入ったシエスタにも飛び火する。

「ああーん、壁のように立ちはだかる運命に立ち向かう
 乙女の姿って、いつ見ても美しいものねえ」
スカロンがうっとりと腰をくねらせる。
「むしろ壁のように立ちはだかった膨らみにこそ
 乙女の美しさがあるとは思わないかね? 店主」
「と、特殊な趣味をお持ちなんですね、子爵様」
拳を握り力説するワルドに、ジェシカがあきれ声をかける。

「と、とにかくあんたらおっぱいおばけに
 私たちは負けないわ!」
「ちょっとルイズ、何よその「私たち」って。
 何さらっと私を貧乳組に入れてんのよ!」
心外だとばかりにガタリとモンモランシーが立ち上がる。
「アンタだって似たようなもんでしょモンモランシー。
 どー見たってマリコルヌより小さいじゃない」
「アンタよりマシよ!
 って、何笑ってんのよマリコレーヌちゃあん!?」
「ぼぼぼ僕は別にあふぅんっ!?」
突然に豊満な胸を鷲掴みにされたマリコルヌが艶っぽい声を上げる。
鷲掴んだタバサは神妙な顔でマリコルヌと自分の胸を揉み比べる。
その横でケティも羨ましげにじりじりと手を伸ばす。

「ママー、やってるー?」
やたら緊迫した空気の中、入口の扉が突然開いて陽気な声がホールに響く。
皆が振り向くと、ほろ酔い顔の二人の男が店内を覗き込んでいる。
「あらー、御免なさい。 今日は貸切なのよ。
 男の子達が入って来た時に鍵をかけ忘れちゃったのね」

「ちょっと待って、スカロンさん。
 いいえ、ミ・マドモワゼル」
キュルケがにんまりと笑ってスカロンの手を止める。
「ルイズ、女の価値はお乳の大きさじゃ決まらないんでしょう?
 だったらこの殿方達にどちらが女としての魅力があるか、
 公平に決めてもらおうじゃない?」
「はああ゛!? なな、何言ってんのよ」
「あらら、御免なさいな。
 やっぱり止めておきましょう、スカロンさん。
 こんな結果の見えてる勝負なんて、余りにフェアじゃ無いものね」
「なにが結果が見えてるってのよ!
 私がアンタなんかに負けるって言うの!?」
「そうねー、貴女みたいなお子ちゃまや、
 衣装を着ただけで満足しちゃってるモンモランシーよりは、、、
 ま、自信はあるわね」
モンモランシーがゆっくりと振り返る。
「ほほーう、言うじゃないのキュルケ。
 そういうのって、レイヤーとして見逃せる発言じゃあないのよね」

ルイズ、キュルケ、モンモランシー。
仁王立ちのままの3人が、火花を散らして睨みあう。
「良いわ、誰が一番売り上げを上げれるか勝負って事ね。

 『魅惑の妖精』亭、開店よ! ミ・マドモワゼル!!」

  。。
 ゚○゚


「いらっしゃいませ、ご主人様。」
「いらっしゃーい!」
シエスタのメイド服を着込んだタバサとシュレディンガーが会釈をする。

「いやー、初々しいねえスカロンさん」
タバサにお酌をされている席の男が鼻を伸ばす。
「うふふ、今日の妖精さんはみーんな研修中の新人さんなのよー。
 優しくしてあげてねー?」
スカロンが声をかけると忙しげに他のテーブルへ向かう。
「しっかし思ったよりやるねえ、あの娘」
慣れぬ皆のフォローをするジェシカが、思わずタバサに感心する。
「ああいうのが受けるのかしら? 参考にしなきゃ」

「うーん、思わぬ強敵ね」
早々に酔っ払いを殴り飛ばし待機中のルイズがタバサを眺め唸る。
「アンタは論外でしょ」
同じく客に水を引っ掛けベンチ待機のモンモランシーがため息をつく。
「ルイズさん、モンモランシーさん、
 ケティさんのテーブルにヘルプお願いしまーす」
両手で器用に料理を運ぶシエスタが二人に声をかける。
「よっし、リベンジよ!」

「逞しいねえお姉ちゃん、普段何やってんの?」
「いや、あの、その、剣術を少々、、、」
何が何やらまだ飲み込めないアニエスがこわばった顔で答える。
(せ、戦場で剣を振っていた方が、どんなに気楽な事か、、、)
隣のキュルケに目で助けを請うが、Sっ気たっぷりの笑顔で拒否される。
「御免なさいね~、この娘ったら殿方との触れ合いに慣れていないんですの」
火照った顔で微笑み、キュルケが客にしだれかかる。
「さ、それよりもう一杯」
「そうねー、頼んじゃおっかな!」 

「ぽっちゃりして可愛いねえ君、なんていうの?」
「マ、マリコレーヌでぇす!
 よろしくね、おじさま」
「あ、お水が無くなってるね。
 ぼ、私がお水を取ってきますわ」
席を立とうとするその腕を涙目のマリコルヌに掴まれる。
「何逃げようとしてるのかな? かな? ギーシェちゃあーん」

「今どんな調子かしら~? ジェシカ」
調理場のスカロンがお盆を下げてきたジェシカに尋ねる。
「そうね、やっぱり強いのはキュルケちゃんね。
 明日からでもウチに欲しいくらい。
 でも2位につけてるのがタバサちゃんってのが意外ね。
 あとマリコレーヌちゃんとシュレちゃんが結構来てる。
 あの二人、ビジネスチャンスの香りがするわ」
腕を組んだジェシカが不敵に笑う。
「トレビア~ン! 我が娘ながら目ざといわね。
 はい、出来あがりよ。 コレ2番テーブルにお願い」
「はいなっ!」

またも客に手を出しベンチ入りのルイズにシエスタが声をかける。
「ルイズさん、いけます?
 あちらの奥の女性のお客様なんですけど」
「女性~? むー、まあ良いわ。 お客はお客よ!」
シエスタからお冷を受け取ると、奥のテーブルへのっしのっしと向かう。
「い、いらっしゃいませー、お客さまー」

「おお、魔女殿。 久しいの」

どがしゃ。
ルイズが派手にすっ転び、隣のハゲに水をぶちまける。

「あああ、アンタがナンでココに!?」
悠然と椅子に座る白づくめの少女を睨みつける。

「いやなに、しばらくヒマだったからあちこちうろついておったら
 何やら覚えのある気配を感じての」
「どーしたのルイぶうっ!?」
駆け寄ったシュレディンガーが思わず噴き出す。

「で、ここでやろうっていうの? アーカード!」
ルイズがストッキングに隠した杖を後ろ手でまさぐる。
「相変わらず物騒じゃの、魔女殿。
 私は次に戦場(いくさば)で会う時に、と言うたろ?
 こんな所で杖を抜こうとは。
 やれやれ、ここは戦場ではあるまいに」
アーカードがやれやれと肩をすくめる。
「あ、アンタが言うな!」
怒鳴りつけるルイズを、後ろからの手が押し留める。

「何処の誰かは知らないけれど、それは聞き捨てならないわね。
 ここはね、女のプライドをかけた、まごう事なき戦場なのよ!」
モンモランシーが胸を張ってアーカードに言い放つ。

「ほう、そうか、、、
 ここは戦場(いくさば)か」
アーカードが小さく笑いながら、ゆっくりと立ち上がる。
「ちょ、バカ! モンモランシー!」
モンモランシーを後ろ手に庇い、隠した杖を抜き放つ。

「それでは、あの時の約束を、、果たさねばならぬのう、、、」
ざわり、とアーカードの長い髪がうごめく。

「みんな、伏せて!!」
叫び身構えるルイズの目の前でアーカードがゆっくりと宙に浮き、
優雅に蠢く髪の毛がまるで繭のように全身を包み込む。
その場の全員が驚きの声と共に宙に浮いたその繭を見つめる。

繭が脈動と共にひび割れ、中から眩い輝きがこぼれ出した。
皆が息を呑み見守る中、その繭がついに割れる。
舞い散る白い羽根と共に現れたアーカードは
その身に純白のビスチェをまとっていた。

「はああぁ~~!?」
ルイズが素っ頓狂な声をあげ、店内が喝采の渦に包まれる中、
ふわりとアーカードが舞い降りる。
ルイズの着ているピンクのビスチェとデザイン自体は全く同じだが、
毛皮の帽子はそのままで、床に届きそうなファーを首からかけている。
純白の羽毛が舞い散る中、ファーを巻いた腕をルイズに差し出し
うっとりと微笑みかける。

「さあ、戦争の時間だ」


 †


「さ、3番テーブルにボトルもう一本はいりまーす!」
「ちょっと、アレ反則でしょ!」
ルイズがジェシカを呼び止めて、でっぷりと太った貴族の横で
足を組んでゆったりと哂うアーカードを指差す。
「さあ、もう一本だ」
「し、しかしね、アーカードちゃん」
「問題ない」
「で、でもねえ」
「なにも 問題は ない」
その指先で貴族の唇をなぞる。

「そうねえ! 問題ないねえ!
 おーい、アーカードちゃんの為にもう一本追加だ!」
巨体を揺らし、でれでれとした声で貴族が注文を入れる。
「ホラあれ! 絶対エロ光線か何かよ!!」
必死に訴えるルイズの両肩にジェシカが手を置く。
「悲しいけどコレ、戦争なのよね」
きっぱりと言い切ると嬉々とした表情で厨房へ駆けていく。
「ボトルもう一本追加でーす!」

「マズいわ、女云々じゃなくマズいわ。
 このままアーカードに負けたら、
 何というか、人間として駄目な気がするわ」
ベンチ席で歯噛みするルイズの手にそっと手が重ねられた。
涙目で見上げたルイズの目に、優しい微笑みが映る。
「心配しないで、可愛いルイズ。
 この私が居るじゃあないか」
「ワ、ワルド様!」


「さあ、ボトルをもう一本追加だ!
 皆、今日は私の奢りだ、存分に飲んでくれ給え!」
沸きあがる歓声に応えながら、隣席を不敵に見下ろしつつワルドは悠然と席に着く。
「ほう、チクトンネの帝王と呼ばれたこのチュレンヌに
 喧嘩を売るとは、何とも物を知らぬ田舎騎士が居たものだ」
「ほほう、貴方があのチュレンヌ様でいらっしゃるか。
 徴税官の立場を使いタダ酒をあおるのに慣れておいでなのでしょう?
 申し訳ないが、このワルドの相手ではありませんな」
「貴殿が鳥の骨の腰ぎんちゃくか! いやいやこれは失敬。
 だが、この私を舐めてもらっては、困る」
チュレンヌが手を叩くと、部下がドチャリと金貨袋をテーブルに置く。
「ボトルを追加だ!!」

店内にチュレンヌコールが巻き起こる。
「ワ、ワルド様!?」
「はっはっは、だ大丈夫だよ僕の可愛いいルイズ。
 時に店主、ツケは」「利きません」

「どうしたね? もう終わりかね?」
ニヤ付くチュレンヌへ颯爽と向き直ると、
ワルドは自分の袖口のボタンを一つ千切り、テーブルに置く。
「ん? 何のマネ、、、これは!?」
「職務上、旅先で物入りな時の為の非常用に、ね」
ボタンの中央には光り輝く大粒のルビーがはめ込まれている。
「そこの君、これを換金してきてくれまいか?
 そしてその金で、、、ボトルを追加だ!!」
まさかの返し技に店内が沸き返る。


チクトンネの全ての酔っ払いが集まったかの様な喧騒と歓声の渦の中、
漢たちの魂の絶叫が店内にこだまする。
「もう一本!」
「もう一本!」
「もう一本だ!」
「もう一本じゃ!」
「くっ、もう一本!」
「えーい、もう一本!」
「もう、もう一本だぁ!!」

そして、オーダーストップを告げるスカロンの声が響く時、
明らかに一店舗のストック量を超える膨大な数の空ボトルに囲まれて
真っ白に燃え尽きた二人の男に、惜しみない拍手が送られた。


「ええ゛~~、同点?」
不満げなルイズをよそに、ホクホク顔のスカロンが伝票を読み上げる。
「そ、ピッタリカッチリビタ1エキュー変わらず同じよ。
 という事で、この売り上げ勝負の優勝はあ~、
 同率一位でルイズちゃんとアーカードちゃ~ん!!
 とってもとっても、トレビア~~ン!!」

「な、納得いかないわ!」
「ま~ま、もうどうでも良いじゃ無~い」
すっかり出来上がったキュルケがルイズに抱きつく。
「そうよ~、大体アンタ何もしてないじゃない」
モンモランシーも呆れ顔で死屍累々たる店内のザマを見回す。

「魔女殿、中々面白い余興だったぞ。
 それではまた会おう」
アーカードはそう言うと帰りを惜しむ酔っ払いたちの拍手の中、
ファーをなびかせてビスチェ姿のまま夜の街へと消えていった。

「アーカード、次は負けないわ、、、」
シリアスな顔で決めるルイズにアニエスがおずおずと声をかける。
「すまぬが、ミス・ヴァリエール。
 ずっとあの少女の名前が気になっていたんだが。
 もしかして、あれはあの報告書にあった、、、」

「うんそう、『死の河』」
「やっぱり」
得体の知れぬガッカリ感にまみれながら
アニエスは心に強く思うのだった。


(、、、早く帰りたい)

  。。
 ゚○゚




新着情報

取得中です。