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第一話 二人の使い魔


第一話 二人の使い魔


「あんた達…誰?」

トリステイン魔法学院、昨日春の使い魔召還の儀式が行われていた場所で…
サモン・サーヴァントに成功したルイズは、自身が召還した二人に名を尋ねる
才人が答えようとするが、クラースが先に口を開いた
「人に名を尋ねる時は、まず自分から名を名乗るのが礼儀だと思うのだがな、お嬢ちゃん。」
「お、お嬢ちゃんですって!?」
貴族の自分をお嬢ちゃん呼ばわり…クラースのその言葉が、ルイズの神経を刺激する
だが、クラースは別に気にせずにその態度のままだった
「済まないな、何せ私は君の名を知らないものだからな…お嬢ちゃん。」
「ぐぬぬ…ま、まあ良いわ、無礼だけどあんたの一言も一理あるから、名乗ってあげるわよ。」
何とか怒りを押さえ込むと、ルイズはふんっとない胸を張った
「私の名はルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。」
どうだ、とばかりに態々フルネームで名乗るルイズ
彼女は自分に無礼な物言いをした二人が、ヴァリエールの名を聞いて驚くかと思った…
「成る程、ルイズか…私の名はクラース・F・レスター、ユークリッド村で学者をしている者だ。」
「お、俺は平賀才人…。」
が、二人は別に驚きもせずにそれぞれ順番に己の名を名乗る
何よ、ヴァリエールの名を知らないの、何処から来た田舎者よ…と二人の態度に内心呆れる
ついでに、品定めをするように二人を見て…やがて、おもむろに残念そうに溜息を吐いた
「はぁ…成功したと思ったら、何でこんな平民を二人も召還するのよ…しかも、片方は変な刺青してるし。」
「変な刺青だと…これはな、召還術を行う為に必要なペイントであってだな…。」
クラースが自身の文様について力説しようとする、ルイズはそれをスルーする
彼女は不満な表情のまま、コルベールの方へと振り向いた
「ミスタ・コルベール、やり直しを…もう一度召還をさせてください。」
「それは出来んよ、ミス・ヴァリエール…昨日から何度も失敗して、ようやく成功したのに。」
やり直しを求めるルイズだが、コルベールはそれを認めなかった
使い魔を召還した以上、それが何であっても契約しなければならないのがこの儀式の規則である
彼は、このまま二人と契約するようにとの指示を出す
「確かに、人間を…それも二人も召還するとは前例のない事だが、これは規則だからね。」
「でも、平民を使い魔にするなんて聞いた事がありません!!」
それでも、ルイズは納得出来ずに文句を言い続けた
そんな様子を見ながら、才人とクラースは顔を見合わせる
「クラースさん、契約とか召還とか平民とか使い魔とか…どういう事なんですか?」
「流石の私でも、この状況は…それより、一体此処は何処なんだ?」
過去、現在、未来…そのどれを通してみても、こんな所に来たのは初めてだった
クラースが此処は何処か考え込む中、才人はふと空を見上げる
時刻は夕方…夜がもうそこまで迫っており、空には月が二つ輝いていた
「シルヴァラントとテセアラだ……だったら、此処はアセリアなんですよね?」
「うーむ………それを判断する為にも、今は情報が足りんから何とも言えんな。」
此処は何処なのか、何故此処に来たのか…彼等から、聞き出さねばならない
クラースの視線の先にいるルイズとコルベールは、未だ話を続けている
が、コルベールの次の言葉で、会話は一気に終息へ向かった
「いい加減にしなさい、ミス・ヴァリエール…これ以上駄々をこねる様なら、退学処分になりますよ。」
「そ、そんなぁ……」
退学すると言われれば、もう反論出来ない…ルイズは従うしかなかった
話が一応纏まった所で、クラースが「すまないのだが…」と二人に声をかける
「我々は状況を完全に把握出来ていない…出来れば、我々が此処にいる事も踏まえて説明して欲しい。」
「おお、そうですね…いきなり召還されて戸惑っているでしょうから、説明しましょう。」
クラースの申し出を受け入れ、コルベールが説明を始めた

「……つまり此処はハルケギニア、トリステイン王国にあるトリステイン魔法学院か。」
「そうです、そしてお二人はミス・ヴァリエールの使い魔として、此処に召還されたのです。」
コルベールから大まかな説明を受け、クラースはふむと顎に手を当てる
「ハルケギニア、トリステイン…聞いた事がないな、それに貴族が魔術の教育を受ける学院…。」
ぶつぶつと独り言を続けるクラース…傍には、才人とルイズが並んで立っていた
やがて、クラースは一度思考を中断して、コルベールの方へ向きなおす

「では、此方から質問するが…ユークリッド大陸はご存知か?」
「いえ…聞いた事がありませんな。」
「アルヴァニスタ、ミッドガルドという国に聞き覚えは?」
「それも聞いた事がありません。」
「あの二つの月はシルヴァラントとテセアラか?」
「そんな名ではありませんが?」
「魔術はエルフの血を引く者しか使えないはず…此処にいる生徒達はエルフなのか?」
「そんな!?エルフは東の地に住む、先住魔法の使い手達ですぞ。」

それから色々と二人の会話は続く…才人の隣では、ルイズがぶつくさと文句を言い続けている
「全く…なんで私がこんな平民なんかを使い魔にしなきゃいけないのよ。」
「えっと、その…まああれだ、そう気を落とすなって。」
「誰のせいでそうなったと思ってるのよ!!!」
事情が未だに解らない才人は取りあえずルイズを励ますが、返ってきたのは彼女の怒りの声だった
どうしようか困っていると、クラースとコルベールの話し合いに一区切りがつき始めた
「まさか、此処は…才人君、こっちに…。」
一通り話を聞き終え、思うところがあったクラースは、才人の腕をとる
彼の腕を引っ張って、二人はルイズとコルベールから距離をとり始めた
「ちょ、ちょっと…どうしたんですか、クラースさん!?」
「良いから…少し話がある。」
ある程度彼女達から離れ、クラースは才人の両肩に手を置いて小声で語りかけた
「才人君、落ち着いて聞くんだ…私の予想が正しければ、此処は君の世界ではない。」
「何いってんですか、見れば解りますよ…で、此処はアセリアの何処なんですか?」
未だに才人は、此処がアセリアの何処かだと思っていた
クラースは一瞬迷ったが、敢えて自分が確信した事実を話す
「いや、言葉が足りなかったか…此処は君の世界でも、アセリアでもない。」
「えっ、それってどういう……まさか!?」
そこまで言われて、ようやく鈍い才人でも現状を理解できた

「ああ、どうやら私達はどちらの世界でもない、別世界に来てしまったようだ。」

「ど、どうして!?」
「恐らく、私が開いたゲートと彼女が開いたゲートが重なってしまったのだろう…それに引き寄せられて、この世界に来たらしい。」
どういう原理でそうなったのかは定かではないが、それが一番の可能性である
「帰る方法は!?もう一度、あれをやれば……。」
「あの術を使うのに、特殊な術具を使ったからな…この世界で調達出来るかは解らん。」
それはつまり、もう二度と元の世界に帰れないという最終通告のようなものだった
そんな…と、現状に才人はうな垂れるしかなかった
「俺、もう二度と帰れないのかよ…母さんの飯も食べられない、インターネットも出来ない、一生…」
「いや、それは…」
「ねえ、何時まで二人でこそこそ話してんのよ、契約してあげるから早くこっちに来なさい。」
その時、不満そうに二人を呼ぶルイズの声が聞こえる
ルイズとしては彼等を使い魔にするのは不服だが、進級の為にはしかたないと諦めたのだ
才人は振り返ってルイズを見る…こいつのせいで俺は帰れなくなったんだ

「お前…お前のせいで!!」

才人の中で悲しみが怒りへと変わり、それがルイズへと向けられる
つかつかと彼女の前まで歩み寄ると、その胸倉を両手で掴んだ

「な、何すんのよ、平民の分際で!?」
「やっと、やっと帰れる筈だったのに…お前が余計な事をしたから!!!」
拳を震わせながら、やり場のない怒りをルイズにぶつける才人
彼の事情など知らないルイズは、逆に怒りの炎に油を注いでしまう
「余計な事って何よ、私だってあんた達なんか呼びたくて呼んだわけじゃないわよ。」
「何だと…こいつ!!」
「ひっ!?」
ルイズの傲慢な態度に怒りを露にした才人は、相手が少女である事を忘れて拳を振り上げた
流石のルイズも、彼の行為に思わず怯える
「よせ、才人君!!」
「止めなさい、君!!」
ルイズに手を挙げようとする才人を止めようと、クラースとコルベールが割って入る
どうにか二人を引き離し、クラースは暴れる才人を押さえつけ、コルベールはルイズを遠ざける
「才人君、落ち着け…此処で暴れた所で、どうにかなるわけではないんだぞ。」
「五月蝿い、大体あんたが召還術なんかで俺を呼んだから、こんな事に…」
もう帰れないと思い込んだ才人は、その怒りをクラースにもぶつける
こうなった全ての原因である、クラースに…

「才人!!!!」

怒りで我を忘れている才人を、クラースは一喝する
その声に思わずたじろぎ、暴れるのを止めた
「才人…君の言う通り、こんな事になってしまった責任は私にある。」
「クラースさん……」
「だが、彼女を傷つけてどうする…彼女に八つ当たりした所で、帰れるわけじゃないんだぞ。」
それに、どうやら彼女はこの国において、随分身分の高い人間のようだ
そんな彼女に手を出しては、二人とも無事では済まなくなるかもしれない
クラースの説得に、才人は怒りを残しつつも、握っていた拳の力を緩める
「……クラースさん、俺達もう帰れないんですか?」
「何、こっちに連れてこられたという事は、逆も有り得るかもしれないだろ?」
正直な所、帰れる方法があるかはクラースには解らない…が、こんな所で骨を埋める気は毛頭無い
才人の不安を取り除くのも含めて、希望を指し示す
「でも…もし、見つからなかったら…。」
「それは探し終えた後で考えるさ…何なら、私がまた帰る方法を編み出してみせる。」
だから、私を信じろ…と、クラースは最初に会った時のように答えた
クラースの言葉に、ようやく才人は落ち着きを取り戻し、ゆっくりと頷く
「はい、解りました…すいません、喚いたりして。」
「それで良い…取りあえずは、我々は異世界にいる以上後ろ盾がないので…。」
チラッと、クラースはルイズ…自分達を召還した少女を見た
彼女も今は落ち着きを取り戻し、此方がどう出るかを不安そうに待っている
「彼女の使い魔…つまり従者となって、しばらく此処にいるしかないな。」
「ええっ、マジっすか!?」
「仕方ないだろ、先程言ったように情報が少ない今、此処から出ても行く宛がないんだからな。」
なら、彼女の使い魔となって、しばらく此処で情報を集めるしかない
「後、我々が異世界から来た事は秘密にしておこう…余計ないざこざを起こしたくはないからな。」
第一、信じてくれるかどうかも解らないしな…と、付け加える
クラースの提案に従い、才人は黙って頷いた

「話は纏まりましたかな?」

結論が出た後、コルベールが二人に答えを求めてきた…彼女の使い魔になるか否かを
「ああ、先ほどは彼が無礼で申し訳なかった…改めて、私達は彼女の使い魔になりたいのだが…。」
「そうですか、それは良かった…では、早速ですが契約を…コントラクト・サーヴァントを行いましょうか。」
「解った…それで、契約とは一体どのように行うのかな?」
異世界の召還術とその契約方法に、クラースは関心を寄せながら尋ねる
コルベールは、二人にコントラクト・サーヴァントについての説明を始めた

「……成る程、此方では契約はキスなのか。」
「いや、冷静に納得しいないでくださいよ、クラースさん。」
コントラクト・サーヴァントの方法を聞き、戸惑う才人に反してクラースは冷静だった
使い魔と召喚主が契約する為には、口付けを交わす…つまり、キスをしなければならないらしい
「はい…ですが、二人を同時に召喚とは前例がないので、貴方方のどちらかが代表で彼女と契約してください。」
どちらかがルイズと契約…才人とクラースは顔を見合わせた
しばらくして、クラースはポンと才人の肩を軽く叩く
「才人、此処は君に任せる…君が彼女と契約してくれ。」
「えっ…ええ、何で俺がこいつなんかと!?」
「そうよ、何でこんな無礼者なんかと!!」
クラースの言葉に才人だけでなく、ルイズも反論を唱える
才人にとって、帰還を邪魔した奴…ルイズにとっては、自分に狼藉を働こうとした卑しい平民
お互い、相手への印象は最悪だった
「これでも、私は既婚者だからな…契約の為とはいえ、ミラルドを裏切る事は出来ん。」
以前のクラースなら、然程意見も出さずにルイズと契約を結んだかもしれない
でも…と、ルイズは不服そうにクラースに何か言おうとしたが…
「それとも、私とキスするか?既婚者で30代のおっさんとしたいのか?ん?ん?」
「うっ…わ、解ったわよ、こいつと契約するわ、すれば良いんでしょ!!」
「(クラースさん…大人気ない…。)」
クラースの言い方に彼との契約を諦め、ルイズは才人と契約するべく彼の方を見る
才人もまた、戸惑いの表情でルイズを見ていた
「「………………」」
気まずい空気が才人とルイズの間に流れる
取りあえず、謝った方が良いかな…と、才人はルイズに頭を下げる
「ああ、えっと……さ、さっきは悪かったな、いきなり掴みかかったりして…。」
「ふ、ふん…本当ならあんたなんて手討ちにされても文句は言えないけど…今回だけは特別に許してあげるわ。」
本当ならもっと強気に出る筈のルイズだが、才人の怒りに触れたせいかそれ以上の追求はなかった
彼女は杖を掲げると、コントラクト・サーヴァントを始める

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」

「五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

詠唱が終わって杖を才人の額に置くと、ルイズはその顔を両手で掴んだ
最後の仕上げである、口付けを交わす為に
「あんた、感謝しなさいよね…貴族にこんな事されるなんて、普通は一生ないんだから。」
瞳を閉じて、ゆっくりと唇を近づけてくる…それが、何とも可愛らしく見えた
などと考えている内に、二人の唇は重なり…そしてすぐに離れた
「…これで終わり?」
「そうよ、これでコントラクト・サーヴァントは終了…後はあんたの体にルーンが…。」
ルイズが説明しようとすると、突然才人の体が熱くなった…思わず、悲鳴を上げる
「うっ…うああああああ、あ、熱い、熱いって!!」
「才人、どうした!?」
「大丈夫よ、今契約の証のルーンが刻まれているだけだから。」
突然の悲鳴にクラースが驚くが、ルイズはあっさりと説明する
当の本人は、そのあっさりには合わない程苦しんでいるようなのだが…
「そ、そうか、それなら……むっ!?」
そして、異変はクラースにも起こった…才人と同じように体が熱くなったのだ
彼のように悲鳴は上げないが、クラースもその場に蹲る
「ちょ、ちょっと、どうしたのよ!?」
「何だ、体が熱い……これは?」
ふと、自分の手を見る……そこには、見た事もない文様が刻まれていた
同じように苦痛から解放された才人も、自分の左手を見ていた
「クラースさん…これ……。」
そう言って、自分の左手の甲をクラースやルイズ、コルベールに見せる
そこには、クラースのものと同じ文様…ルーンが刻まれていた

「これは、何とも奇怪な…契約したのは彼なのに、貴方にまで同じルーンが現れるとは。」

先程から予想外の事が何度も起こっているにも関わらず、コルベールは驚いた
二人とも互いの左手の甲を見比べるが、どう見ても刻まれているルーンは同じであった
「何で、クラースさんまでこの変なのが刻まれたんですかね?」
「うむ…恐らくは私と君が『契約』していたから、主である私にもルーンが刻まれてしまったのだろう。」
失敗とはいえ、才人とクラースの間には召還した時から『契約』が交わされていたらしい
理屈は解らないがな…と、クラースはそう推測する
だが、その言葉を聴いて、ルイズは驚きの表情を表した
「契約って…まさかあんた達、メイジと使い魔だったの!?」
「此処で言うそれに我々が当てはまるのかは疑問だが…大雑把に言えばそうなるかな。」
「あんたがメイジ…胡散臭いわね。」
マントもしてないし、杖も持ってない…あるのは奇妙な格好と刺青だけ
信じられないといった口調で、クラースを眺めていた
「だとすれば、異国のメイジですかね…先程の話、それに貴方のその刺青の文様は、このハルケギニアでは見た事もありません。」
学者でもあるコルベールは、クラースのその体中にある文様に興味を抱いていた
その間にも、彼は才人のルーンをスケッチに写している
「それにしても……これは珍しいルーンだな。」
「コルベール教授、このルーンは珍しいものなのか?」
「ええ、少なくとも私は見た事が…いや、覚えがあった気がする…。」
はて、何処だったのかな…とコルベールは記憶の糸を手繰らせてみる
が、どうしても思い出せない
「まあ、此方で調べてみて、詳細が解ればお教えしましょう。」
「そうして頂けるのなら有難い、色々と興味深いしな。」
「では、今日はこれで解散としましょう、もう夜になってしまいましたからね。」
スケッチを閉じると、コルベールは解散の意を伝えてその場から去ろうとする
「おっと、その前に…ミス・ヴァリエール、使い魔召喚おめでとう、これを励みとして今後も精進するのですよ。」
「は、はい。」
コルベールはルイズに励ましの言葉を送るが、当のルイズは前例のない召還の為微妙な気分だった
彼は微笑んだ後、何かの呪文を唱え始めた
すると、クラース達の前で宙に浮かび、学院の方へ飛んでいってしまった
「飛んだ…あれも、魔法なのか?」
「ほう、此処の魔法は便利だな…ああやって自在に空を飛べるのか。」
飛んでいくコルベールを、興味深そうに見る才人とクラース
本当ならもっと驚く筈なのだが、箒で空を飛ぶハーフエルフを知っている為かそれ程驚かない
「あんた達、フライも知らないの?」
「まあ、私がいた所ではあんな魔法は無かったからな。」
フライも知らないなんて…本当にこいつメイジなのかしら?
それとも、本当に遠くから来た異国のメイジか…考えた所で答えは出ない
「まあ、良いわ…取りあえず、私の部屋へ戻るわよ、話はそこでするから。」
そう言って、ルイズは自分の部屋に向かって歩き出した
そんな彼女の行動に、クラースは疑問を抱く
「ん?ルイズ、君はコルベール教授のようにフライとやらで飛ばないのか?」
「あ、あんた達にあわせてあげてんのよ、さっさときなさい!!」
顔を真っ赤にしながら怒ると、ルイズは一人でさっさと先に行ってしまう
道に迷うわけにはいかないと、二人は早足で彼女の後を追いかけた

『異世界ハルケギニア』
クラース「ハルケギニアのトリステイン王国、貴族であるメイジが魔術の教育を受ける学院か…。」
才人「そんで、俺達はこいつの召喚術で使い魔として召喚された、って訳ですね。」
クラース「まあ、今の状況を纏めればそうなるが…タイミングの悪い時に召還されたものだな。」
ルイズ「あんた達の事情は知らないけど、この私の使い魔として召喚されたんだから、光栄に思いなさいよ。」
才人「何が光栄に思いなさい、だよ。こっちの都合無視して拉致っただけじゃねーか。」
ルイズ「仕方ないじゃない、使い魔は私が選べる訳じゃないんだから。」
クラース「何とも大雑把な召喚術だな…まあ、私も人の事は言えないが。」
ルイズ「兎に角、あんた達は私と契約したんだから、平民だろうが異国のメイジだろうが私の使い魔なのよ、解った?」
才人「へいへい、解りましたよ、貴族のお嬢ちゃん。」
ルイズ「お嬢ちゃんって呼ぶな、平民の癖に!!」
才人「いてっ、殴んなよ、この暴力女!!」
ルイズ「何ですって~~~!!!」
クラース「やれやれ…私達はこれからどうなるのだろうな?」

『帰れると思ったのに…』
才人「はぁ…やっと帰れると思ったら、今度は別世界に来るなんて…俺ってついてないよなぁ。」
クラース「すまないな…私が不甲斐ないばかりに、君に辛い想いをさせてしまって」
才人「いや、クラースさんが悪い訳じゃないですよ、あのルイズって女が邪魔したからで…。」
クラース「そのルイズだが…何故別世界にいる我々を彼女は召喚する事が出来たのだろうか?」
才人「さあ、そんなの俺には全然わかんないし…直接本人に聞くしかないんじゃないですか?」
クラース「それしかないか…まあ、別世界の事は隠して、それとなく聞いてみるとするかな。」

『使い魔召喚の儀式』
クラース「ルイズ、この学院では二年生になると使い魔を召喚する儀式を行うのだったな?」
ルイズ「そうよ、召喚した使い魔によって自分の得意な属性が決まって、今後学ぶ分野を特定するのよ。」
才人「ふーん…そう言えば、さっき人間が召喚されるのは例がないとか言ってたけど…。」
ルイズ「普通は、このハルケギニアに住む生き物が召喚されるのよ。人間なんて召喚されたなんて始めてよ、きっと。」
クラース「ハルケギニアの生物だけ…つまり、我々の召喚は異例中の異例という事か…」
才人「なあ、元の世界…じゃない、元の場所に帰れる方法ってないのか?」
ルイズ「ないわよ、そんなの…あったら、さっさとあんた達なんかすぐ送り返してるわよ。」
ルイズ「だから、あんた達はずっと私の使い魔なわけ…解ったら、さっさと行くわよ。」
才人「はいはい……結局、俺達はあいつの使い魔をやるしかないって事か。」
クラース「帰る方法が見つかるまでの辛抱だ…お互い、無茶しない程度にやろう。」

『俺の初めて』
才人「うぅ…俺の初めてのキスを、あんな女にくれてやるなんて…。」
クラース「才人、その歳でファーストキスはまだだったのか?」
才人「自慢じゃないですけど、俺17年間の人生で一度ももてた事ないんですよ。」
クラース「それは気の毒だな…まあ、彼女はアレだが中々の美少女じゃないか。」
才人「だからこっちに連れて来られたのを許せって…冗談じゃないですよ!!」
クラース「まあまあ…もしかしたら、ファーストキスから始まる二人の恋のヒストリーという展開になるかもしれんぞ。」
才人「何ですか、それ?」
クラース「いや、何…言ってみただけだ、気にするな。」

『私の使い魔』
ルイズ「何十回も失敗して、ようやく成功したサモン・サーヴァント……。」
ルイズ「なのに、何であんな平民を二人も召喚しちゃったのよ~~~。」
ルイズ「でも、あいつらメイジと使い魔だって言ってたし…。」
ルイズ「私の事やハルケギニアの事を知らないって言ってたから、余程遠い国から来たのかしら?」
ルイズ「………。」
ルイズ「まあ良いわ、あいつ等無礼だから、後で使い魔の作法について色々と叩き込んでやるんだから。」

「さて、今日からあんた達は私の使い魔となったわけだけど…。」

その後、ルイズに案内されて、二人は彼女の部屋へとやってきた
彼等の手には、ミラルドが餞別にくれたアップルパイがあり、夜食代わりに食べていた
「つーか、何でお前までミラルドさんのアップルパイ食ってんだよ。」
「あら、使い魔の物は私のものも同然でしょ…それにしても、これ美味しいわね。」
何処のガキ大将の理屈だよ…才人の思いも気にせず、ルイズはアップルパイを頬張る
彼女が食べ終えるのを確認すると、クラースは質問を投げかけた
「それで…私達は君に何をすれば良いのかな?」
「それをこれから説明するわ…まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるの。」
再びアップルパイを手にとりながら、ルイズは使い魔の役割について説明を始める
「えっと…どういう事?」
「つまり、私達が見聞きした事が君に全て伝わるというわけだな。」
感覚の共有…それが、契約した使い魔に与えられる能力の一つだ
よく理解できない才人に、クラースが付け加える
「そうよ、その筈…なんだけど、何も見えないし、何も聞こえないわ。」
ルイズの言う通り、彼女は二人と感覚の共有を行う事は出来なかった
使い魔が二人だから、感覚の共有も2倍に…とはいかないらしい
「次に、使い魔は主人の望む物を見つけてくるの…特定の魔法を使う時に使用する触媒とか。」
「魔法の触媒か…私達は此処の土地勘もないし、難しそうだな。」
「それ以前に、俺には魔法の触媒が何なのか全然解んないし。」
「まあ、あんたは平民みたいだから、最初から当てにしてないわ。」
悪びれもなくそう告げるルイズ…先ほどの件のせいか、彼女の才人への風当たりは悪い
どうせ、俺は当てになんないよ…と愚痴る中、ルイズは使い魔の最後の役割を告げた
「最後に…使い魔は主人をその能力で守らなくちゃいけないの。」
「へぇ、だったらクラースさん適任じゃないですか、魔王を倒した勇者だし…いてっ。」
うっかりそんな事を漏らしてしまった才人を、クラースは肘で小突く
疑問を浮かべるルイズだが、別に気にする事もなく話を続ける
「そう言えば、あんたメイジらしいわね…どの系統の魔法が得意なの?」
「此方の魔法が何なのかは知らんが…召還術というのを心得ている。」
「ショーカンジュツ?」
聞きなれない言葉に、ルイズは鸚鵡返しで尋ねる
「ああ、君達のサモン・サーヴァントのように、契約したモノを使役する術だ。」
「サモン・サーヴァントとはどう違うの?」
「君達は一度しか契約出来ないが、私は契約の指輪があれば何度でも契約出来るんだ。」
エルフとドワーフの合作によって生まれたという、契約の指輪
それにより、クラースは精霊だけでなく魔界の住人達とも契約する事が出来た
「何か信じられないわね…じゃあ、そのショーカンジュツとやらをやってみなさいよ。」
「ああ、解った…まずは、契約の指輪を出さないとな。」
そう言いながら、クラースは腰につけている袋に手を差し込んだ
そこには、彼が冒険の中で集めた契約の指輪が入っている
「……ん?」
…筈なのだが、入っている筈の契約の指輪は2つだけだった
一つは、闇の精霊シャドウと契約する時に使用したアメジストの指輪
もう一つは、シルフとの契約に必要なオパールの指輪である
「あれ、他の指輪はどうしたんですか?」
「可笑しいな、他の契約の指輪も此処に入れていたんだが……。」
体中を触ってみて他の契約の指輪を探してみるが、指輪は何処にもなかった
「参ったな…どうやら、此処に来る時に無くしてしまったようだ。」
「ええ、じゃあ召還術は使えないんですか!?」
「いや、オパールだけは残っているから、シルフは召還する事は出来る。」
残念ながら、シャドウとはダオスとの最終決戦後に契約破棄した為、呼び出す事が出来ない
「どうしたのよ、さっさとそのショーカンジュツってのをやって見なさいよ。」
「…まあ、この世界でも召還できるのか確かめなければならんしな。」
とりあえず、シルフを呼び出してみよう…クラースは精霊召還の為の詠唱を始める
聞いた事もない詠唱に、思わず眉を顰めるルイズだが……

「……シルフ!!!」

詠唱を終えてシルフの名を叫ぶと、彼らの目の前に風と共に一人の少女が姿を現した

『お呼びですか、マスター?』
風と共に現れた少女…シルフは、マスターと呼んだクラースを見つめる
本来なら、クロークを纏った可愛らしい少女の姿がシルフの筈である
だが、今目の前にいる彼女は剣を持ち、羽が生えた妖精のような姿だった
「シルフ…なのか?姿が違うのだが……。」
『恐らく、この世界のマナの性質が違うからでしょう…この姿は以前にしていたものですが』
「成る程…マナがあるという事は、この世界でも魔術や召還術は使えるようだな。」
取りあえずは召還術が使える事に、クラースは安堵する…これで役立たずにはならなくてすんだようだ
「な、何よあれ!?」
「へへん、驚いたろ…あれが、クラースさんが使える召還術なんだぜ。」
驚きのあまり、口が開きっぱなしのルイズに才人は得意げに説明する
そういう才人も、初めて見た時はルイズと似たり寄ったりだったりするのだが
「彼女はシルフ…風を司る、風の精霊だ。」
「風の精霊って…先住魔法?あんたエルフだったの!?」
先住魔法…それはエルフ達が使える、精霊の力を借りた魔法の事だ
「いや…私はれっきとしたただの人間だが?」
「嘘、精霊って言えばエルフが使う力じゃない。」
『彼はエルフではなく、貴方と同じ人間ですよ…お嬢さん。』
自分に向けられたシルフの言葉に、ルイズは驚いて何と言えば良いのか解らなくなった
その間に、クラースは他の精霊達について尋ねる事にする
「シルフ…他の精霊達の契約の指輪が何処かに行ってしまったのだが、何か知らないか?」
『この世界に来る際、指輪が散らばるのが見えました…恐らく、世界中にばらまかれてしまったのでしょう』
「それは厄介だな…契約の指輪がなければ、他の精霊達を召還出来んのだが。」
シルフ以外の四大精霊やそれを統括するマクスウェル、ルナ、オリジン…
それに、魔界の住人達を召還できないのは、今後の事を考えると少しばかり不安である
『時が来れば、貴方の元へ全ての精霊達は集まるでしょう…私達と貴方の間には確かな『契約』が交わされているのですから。』
「そうか…出来れば早くその時が着て欲しいがな。」
シルフの言葉に励まされると、クラースはスッと手を翳した
それが合図である事を知っているシルフは、その姿をクラース達の前から消した
ふぅ、と一息つくと、クラースはルイズの方を振り向く
「…これが私の召還術だ、これで君を守るのには十分かな?」
「す…凄いじゃない、人間なのに先住魔法が使えるなんて…私あんたの事見直したわ!!!」
クラースの召喚術を見て、ルイズははしゃぎまくった
人間なのに先住魔法を使える凄腕のメイジ…ハズレどころか大当たりだ
これで一日遅れを取り戻すどころか、皆を見返す事が出来る
「いや、これは先住魔法などではなく、召喚術だと……。」
「で、あんたは何が出来るの!?」
クラースの話を聞かず、今度は才人に対して期待の眼差しを向ける
彼の使い魔だから、こいつも凄い事が出来るかもと思った、のだが…
「えっと、俺はその…特に何も…。」
しかし、才人は現代社会から呼び出されたタダの高校生である…だから、特殊な力などはない
それを彼に求めるというのは、酷であろう
彼の問いに、先ほどまでテンションが上がっていたルイズは意気消沈した
「なんだ…あんたは唯のオマケなのね。」
「オマケ言うな、これでも掃除とか洗濯は出来るぞ。」
一ヶ月間、ミラルドやユークリッド村の人達に鍛えられたので、一応自信はある
しかし、その言葉が此処での才人の役割を決定付けさせる
「じゃあ、クラースは使い魔として、あんたは召使として私に仕えてもらうわ。」
「ええっ、何で俺がお前の召使なんか……。」
「オマケをタダで養うわけないでしょ、あんたの得意な仕事をやらせてあげるんだから感謝しなさい。」
そう言って、ルイズは残ったアップルパイを手にとって食べる
どう言えば良いのか解らず、才人は情けない声でクラースに助けを求める
「クラースさぁん……。」
「まあ、今は彼女が私達の主人だからな…それに従うしかあるまい。」
元の世界に帰る手段が見つかるまで、衣食住はルイズに頼らなければならない
それを踏まえた上の発言に、才人もまた納得するしかなかった

「じゃあ、明日も早いからもう寝るわよ。」

一通り説明やら話し合いやらが終わった後、ルイズはそう言って欠伸をする
時間はサモン・サーヴァントからかなり経っており、これ以上は明日に差し支える
「なあ、俺達は何処で寝れば良いんだよ。」
この部屋にあるベッドは一つ…まさか、三人で川の字になって寝るとは思えない
才人の問いかけにルイズはベッドの傍にある床を、指差した
「……床?」
「ああ、床だな…まあ、考えたらそうなるかな。」
「仕方ないでしょ、ベッドは一つしかないんだから…ほら。」
そう言って、ルイズは二人にお情けの毛布を投げてよこした
だが、二人で使うにはあまりにも小さかった
「おい、ふざけるなよ、これだけ…でぇ!?」
文句を言おうとした才人だが、目の前の光景に言葉を詰まらせる
彼女は男が二人もいるにも関わらず、寝巻きに着替える為に服を脱ぎ始めたのだ
「お、おいちょっと…俺達の前で着替えるなよ!?」
「何で?あんた達は使い魔なんだから、別に関係ないでしょ。」
彼女は二人の事を使い魔としてしか見ておらず、羞恥心などは見せない
才人は両手で顔を多い、クラースは帽子を深く被って見ないようにした
そして、ネグリジェに着替えると、脱いだ下着などを才人に投げてよこした
「それ、明日になったら洗濯しときなさい…お休み。」
そう言ってルイズは指をパチンと鳴らす…すると、ランプの火は消えた
どうやら、これも魔法の一種らしい…彼女はベッドの中に入り、すぐに寝息を立て始める
「俺達の前で着替えるなんて…羞恥心がないのか、こいつ。」
「それが貴族というものさ…さあ、我々も休むとしよう。」
クラースはあまり気にもせず、ゴソゴソと何かを出し始める
何処からか出したそれは、彼が冒険で愛用していた、寝袋であった
「クラースさん…それ、一体何処から?」
「細かい事は気にするな…私は毛布で寝るから、君はこれを使うといい。」
「えっ、良いんですか?」
「君はこういうのには慣れてないだろう?私は野宿とかが多かったから平気だ。」
じゃあ、遠慮なく…と、才人はクラースから寝巻きを受け取り、毛布を彼に差し出す
二人はそれぞれ寝袋と毛布に包まると、床で眠り始める

「(はぁ…やっと帰れると思ったのに、また別の世界に来るなんて。)」

寝袋に包まりながら、才人は心底自分の運命を恨んだ
母さん、俺はまだまだ帰れそうにないよ…と、心の中で母親にそう告げる

「(まあ、クラースさんが何とかしてくれるみたいだし…何時かは帰れるよな。)」

そう考えないと、やっていけない…いや、やってられない
一人だと不安だが、クラースさんならきっと…きっと何とかしてくれる筈だ

「(取りあえず、今日はもう寝よう…明日の事は明日考えればいいか。)」

そして、才人はこれ以上考えるのを止めて、眠る事にした
寝袋の寝心地が良いからか、彼の意識は深い眠りの中へと入っていくのだった

「……………。」

才人が完全に寝入って少し経った頃、クラースはゆっくりと起き上がった
クラースはルイズと才人、二人が寝ている事を確認する為、その寝顔を見つめる

「……二人とも、よく眠っているな。」

ルイズは可愛らしい表情で、才人はグーグーと鼾をかいてそれぞれ眠っている
二人が寝入っているのを確認すると、静かに部屋の外へと出た

………………

「やれやれ…まさか、異世界に来るとはな…。」
女子寮の外…そこで夜風にあたるクラースの姿があった
「しかも、召喚されて此処に来るとは…中々体験出来ない事ではあるな。」
召喚術士である自分が、召喚されて異世界に来る…何とも皮肉な事だろうか
「だが…これで、才人の気持ちも少しは解ったかな?」
着の身着のまま、自分がアセリアに召喚してしまった少年…
自分も何度か時を越えたり異世界に渡ったが、あの頃は仲間がいた
今回は共に戦った仲間達はいない…不安にならないと言えば、嘘になる
「アーチェ、そしてミラルド…今頃、心配しているだろうか?」
何せ、儀式の途中で才人と共に消えてしまったのである
また、ミラルドに心配を掛けさせてしまったな…と、クラースは溜息をつくしかなかった
「出来れば、才人の送還も含めて手早く帰る方法を見つけたいが…。」
そこで、クラースの言葉がつまる…彼は今、この世界に興味を抱いていた
そう、この…

「エルフの血を引かずに、魔術を使う事の出来る人間がいる世界…。」

に…
クラースにはかつて、夢があった…人間でも魔術を使えるようにするという夢が
エルフの血を引く者のみがマナを紡ぐ事で行使できる魔術、人間にはそれが出来なかった

「もしかしたら、この世界なら見つかるかもしれない…人間でも魔術が使えるようになる方法が。」

かつて、自分が求めていた夢…そして、今ではもう諦めていた夢
この世界の事を聞き、クラースの中でかつての夢への思いが蘇っていた

「帰る手段を探すのと一緒に、少しばかり探してみるかな?」

それに、無くしてしまった精霊達の宿った契約の指輪も探さなければならない
この世界で生きる為にも、元の世界に帰る為にも彼等の知恵と力は必要不可欠であろうから

「なんにせよ、明日からは新たな一日が始まる…だな。」

クラースは帽子のつばを摘みながら、夜空を見上げる
空には、この世界の二つの月が、寄り添うように輝いていた…


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