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ゼロの黒魔道士-60


2人だったウェールズ王子が、1人だけになっても、まだ光がうねっているようだった。
地面から湧きあがるような、虹色の光の渦。
何百、何千っていう蛍の群れが、飛び交っていて、そうした風景を作り上げてたんだ。
「あの……ウェールズ王子、なんですよね?」
ルイズおねえちゃんが真っ先に聞く。
水面に映る蛍のせいか、まだ夢の続きを見ているような、そんな感じだったんだ。

「あぁ、何時ぞやは世話になったね」
ウェールズ王子は、お姫さまを抱きかかえていたんだ。
親鳥が雛を守るように、優しく包み込むように。
「いえそのあの……失礼ながらご本人、でいらっしゃいますよね?」
「あぁ、本物さ……この想いも、全部」
ルイズおねえちゃんの質問に、船乗りさんの服を着ているウェールズ王子がポツンと答えたんだ。
どこか、寂しそうに、でも、誇らしげに。
「では、今先ほど消えた方はやはりレコン・キスタの……」
「いや、彼も……本物だったさ、間違いなく……」
王子さまの目から、あったかそうな涙が言葉と一緒にポツンと落ちた。
「え?」
「いや、わっけ分かんねーわ。流石に」
「……?」
でも、ボク達にはその意味が分からなかったんだ。
アンリエッタ姫が無事なのはいいことだし、
このウェールズ王子が本物なんだとしたら、いいことだと思うんだけど……

「ははは……何にせよ、皆に迷惑をかけ――ぶわっ!?」
風が、振り落ちた。
辺りを舞い続ける蛍のカーテンを切り裂くような、鋭い風だったんだ。
「コカー!」
真っ黒なその風が鳴いた。
それはボクの帽子よりも何倍も大きそうな……
「……カラス?」
「――!あのカラスは!!」
アンリエッタ姫が知っているみたいだ。
じゃぁ、誰かが飼ってたりするカラスなのかなぁ?
確かに、羽のツヤとかもテッカテカに光っているから野生っぽくはない。

「っ!?しまった、『風のルビー』か!!」
ウェールズ王子が杖を取りだす。
杖の差す先には、さっきのカラスが、溶けた夜会服の間をつつきまわっている。
そのクチバシには、輝くような2つの光が見える。
よーく目を凝らして見ると、それは輪っかになっているみたいで……
「2つの指輪?」
「『エア・カッター』!!」
風が、弾ける。
ザザザと流れるように、カラスをめがけてまっしぐらに。
「コカァーッ!」
それを悠々と、翼を一降ろしするだけで空に舞い上がって、カラスは避けたんだ。
「速っ!?」
タダのカラスじゃないみたい。でも、何で指輪を……?

「――逃さないよ!」
頭の中の「何で?」を吹き飛ばす、凍りつくような声がした。
「!?」
淡いスミレ色の光の弾が、カラスにきりもみしながら襲いかかる。
「カーッ!」
それを左右に器用に避けるカラス。
空中をジグザグに、ダンスするみたいに。
「コカカァーッ!!」
後一歩だったんだ。光の弾がカラスにぶつかるのは。
でも、その直前、丁度カラスの翼の大きさぐらいだからボクの身体ぐらいかな?
そのぐらいの大きな光の塊……いや、『穴』だと思うんだけど、
その光の『穴』がカラスの目の前に現れて、カラスを飲み込んだんだ。
それで、光の弾がカラスに追いついたところで……
シュポンッて消えちゃったんだ。
光の『穴』も、カラスも。カラスのくわえていた指輪も。
「き、消えたっ!?」

「――即興劇は苦手だよ。役者が皆好き勝手に動いてさ」
湖のほとり、森の奥から、そいつは現れた。
先に声がしたから、光の穴ほど唐突じゃなかったけど、
それでも、やっぱり突然の登場だと思ったんだ。
「お前は……!!」

見たく、無かった。
会いたく、無かった。

「――そういえば、お互い五体満足で出会うのは久しぶりかな?ビビ君――」
流れるような銀髪をかきあげて、まとわりつくような、凍りつくような声で、ボクを呼ぶ。
「クジャっ!!」
いくつもの「何で?」よりも先に、ボクはデルフを構えていた。


ゼロの黒魔道士
~第六十幕~ The Stage is Set


クジャがいる。
それだけで、何もかもの説明がつくとおもったんだ。
「クジャ、お前が……!」
タバサおねえちゃんのことも、さっきの2人のウェールズ王子も、
全部こいつが仕組んだこと、そう考えるたら、全部がぴったりおさまる。
こいつは、皆を苦しめるようなことを、このハルケギニアでもやっていたんだ!
そう思うと、ボクの中の何かが、メラメラと燃えるような思いがしたんだ。
こいつがここにいることが、何よりの証拠じゃないか!

「それにしても――『船長殿』、勝手に船から飛び降りるのは感心しないよ」
デルフを構えたボクを無視して、クジャがウェールズ王子に話しかける。
『船長』?ウェールズ王子のことかなぁ?
「それはその……すまない」
ウェールズ王子がしょぼんとした顔になる。
何で?何でウェールズ王子がこいつに謝るの?

「おまけに何だい?肝心の指輪は奪われて……
 せめて『彼』が無事なら、どういう魔法でゾンビ化させてたか分析できたものを……」
前も見たことがある、指揮者のような大げさな身振り手振りでクジャが言う。
「……君、まさかこうなることを予期していたのかい?僕を生かしたあの日に」
ウェールズ王子は疲れたように泣いていた。
……そうだよね。自分自身と戦うなんて、誰だって嫌だもんね……
「まさか!そこまで万能じゃないさ!こうも面白い事になるなら、もっと演出したよ!
 そうだな、王宮を使ったかもね。ここは綺麗だけど観客はいないし……」

『オモシロイコト』、クジャは確かにそう言った。
「クジャ……お前が、全部裏で……!!」
やっぱり、クジャが全部仕組んでたんだ。
もしかしたら、アルビオンの戦争や、タルブ平原の戦いも、こいつが引き起こしたことかもしれない。
許せないって、そう思ったんだ。
皆を苦しめる、ことが。それを引き起こす、こいつが。

「裏で全部操れてたら、こうも苦労しなくて済むんだけどねぇ」
クジャがこっちを見てふふんと笑った。
一瞬でも、ひるんでしまった自分が情けない。
デルフを握る手が、少しだけ震える。
「ビビ、あいつがクジャなの?」
「相棒~あいつ、そこまで悪ぃヤツじゃねぇぞー?」
ルイズおねえちゃんや、デルフの言葉は聞こえはするけど、
ボクはずっとクジャをにらみ続けていたんだ。
負けるつもりも、退くつもりも全然無い。
そんな気持ちで、ずっと。

「――これはこれは!トリステインの王女様であられますね!ご戴冠のお喜びを申し上げるのが遅れまして……」
クジャは大げさな身振りでお辞儀をしているところだった。
ウェールズ王子に抱かれた、アンリエッタ姫がうすぼんやりと立ち上がろうとしていた。
「……どちら様?」
「アンリエッタ、無理に立たなくても……」
ウェールズ王子の手を優しく振り払って、アンリエッタ姫は立ったんだ。
そして、クジャの顔を真正面から見つめた。
クジャの本性を、暴くような真剣な目で。
「大丈夫。私、そんなに弱く無いですから……それで、貴方は何処の誰なのです?」
「ふぅん。噂と違って、籠に飼われた鳥じゃないってわけだ……」
クジャがニヤリ、と笑う。
何だか寒気がするような、そんな嫌な笑い方だ。

「いや、自己紹介まで遅れまして!ウェールズ君の上司、になるでしょうか?クジャと申します」
「ウェールズの?」
「僕の命の恩人さ……ちょっと人使いは荒いけどね」
「えっ!?」
今、ウェールズ王子は何て言った?『命の恩人』?
「あぁ、ビビ君!あのときは世話になったね!
 そう、あの後……僕を救ったのは、このクジャ君なんだ」
クジャが、ウェールズ王子の命を救った……?
嘘だ、そんなの、クジャがするわけがない。
「う、嘘だっ!だって、だって……」
だって、あいつは、皆を苦しめるような、そんなことをずっと、ずっと……
「ビビ?」
「相棒、大丈夫か?」
あぁ、寒気が止まらない。
さっき刺されたところがまだ痛む。
やっぱり、体に穴が開くっていうのはきついみたいだ。
でも、ボクはクジャから目を離すつもりは無かった。
もし、ルイズおねえちゃんも苦しめるつもりなら、例えボクの体が壊れたって……

「んー?あぁ、怪我をしているようだね。ここの水魔法は遅効性だからねぇ。効果はあっても……」
クジャは、そう言うとフフフと笑いながらボクに近寄ってくる。
デルフをまっすぐ構えて、いつでも攻撃できることをボクは示した。
「あんまり暴れないで欲しいね。君が苦しむのを見てもおもしろくも何とも無いよ」
やれやれ、と首をふりながら、クジャはくるくると指を動かしたんだ。
例えて言うなら、普通の子供のお母さんとかが、
子供にやる『痛いの痛いのとんでけー』っていうおまじないをやるような、そんな指の動きだったんだ。
その指の動きに合わせて、小さな光の渦が、ボクの足元から湧いてくる。
振り払おうとしたけど、体が拒絶した。
くそっ、クジャは何をするつもりなんだ?
やがて光が体の中に浸みこんでいって……
「……え?」
体が、楽に動く?寒気も全然しない?
「『ケアルガ』、と。全快したかい?それとも、もう1回かけておこうか?」
『ケアルガ』、ボク達の世界の回復魔法だ。
それも、最上級クラスの……
「……どういうつもり?」
クジャが、ボクを回復した?
頭が、混乱しそうだった。
だって、こいつはクジャで、クジャはボク達の世界で皆を苦しめて……

「フフフ――姫と王子は真の愛を泉の畔で語りたり!恋愛劇は一区切りだけどね、まだ劇場は閉演前だよ!」
クジャの動きに合わせて、蛍が舞う。
空へ向かって大きく、大きく。
「舞台が全部整って、もうすぐ終幕のカーテンが開く、後は役者を待つばかり!
 あぁ、ビビ君、君がもたもたしているから、『虹』が出てきたじゃぁないか!」
「『虹』……?」
湖の表面が、グネリと動いたような錯覚がした。
蛍が相変わらず空に向かってチラリチラリと舞っていく。
あれ、さっきまでこんなに蛍、多かったっけ……?

『湖』がぐねりと持ちあがる。いや、『蛍』?いや、ただの『光』?
正体がまったく分からない。
とにかく、『それ』は天に向かって渦を巻くような、光の柱になって突然伸びたんだ。
蛍や水面の光を、全部飲み込んで。
歪むようないくつもの虹のような色とりどりの光の柱。
それは決して綺麗なものじゃなくて、この上なく不気味なものだったんだ。
グネグネと赤が青を切り裂いて紫のヒビを作れば、
黄色と緑がオレンジ色を埋め尽くすようにかき乱していく。
それぞれの色がそれぞれの色を憎んでいるような、そんな歪んだ光。
「な、何これっ!?」
「蛍……いえ、『幸運の帯虹』……!?」
『幸運』?いや、そんなものなわけがない。
ここから感じるのは……あらゆる嫌な感情をつめこんだような、そんな禍々しさ……
「流石は水精霊の住まう地、反応が一頭速いようだねぇ」
その禍々しい光を背に受けて、クジャは笑っていた。
禍々しい、あの凍りつくような笑顔で。

「クジャっ!何をたくらんでいるんだ!」
デルフを、構える。こんどこそ、まっすぐ、震えることもなく。
これ以上、何かするようなら……絶対に、許さない。
「わた、相棒っ!だからちょいと落ち着けよっ!?この兄ちゃんそんな悪くは……」

「アンリエッタ王女様、真に勝手ながら、ウェールズ君をもう少しだけ預からせていただきます。
 あぁ、それと、貴女の臣下であり友人である彼女達も……」
ボクの睨みを無視するように、クジャがアンリエッタにひざまずく。
彼女達って……
「え、わ、私もっ!?」
ルイズおねえちゃんと、ボクも?やっぱり、クジャは何かをたくらんでいる。
「アンリエッタ、すまない!帰ったら全てを打ち明けるから!!」
「――どうやら、事は私の知らぬところで動いていますのね?何が何やらさっぱりですが……」
アンリエッタ姫は、クジャから視線はそらさない。
でも、何か様子がおかしい。

「ご想像力がおありで助かります。ただ、事実は貴女の想うよりも悪い方向であるとお考えください」
「――分かりました。虚言は無いと判断します」
アンリエッタ姫は、クジャから視線を外して、ウェールズ王子に向き直ったんだ。
そこには、疑いや当惑っていったものはちっとも感じない。
クジャを信用している……?
だって……だって……クジャだよ?なんで、信用してしまうの?

「……ウェールズ。今すぐ愛を誓えとは申しません。それに、申せません……だから、せめて……」
「誓おう、アンリエッタ。必ず帰ってくると!」
そう言って手を取り合う王子さまとお姫さまから視線をクジャに戻す。
ボクは、せめてボクだけは、絶対に騙されるつもりは無い。
「クジャ!答えて!お前、一体……!」
「――真実を知りたければ、ついて来なよ。もちろん、その覚悟があればだけどねぇ?」
ボクの考えていることに答えているようで、全然答えていない。
ボクを見ようともせず、クジャは空の一点を見た。
「真実だって?」
「――そうさ!真実を求め、いざ旅立つとしよう!」
大げさな手振りで、空の何かを呼んだ、そう見えたんだ。
「うわっ!?」
風が巻き起こる。
湧き立つような虹の柱を尻目に、堂々とそれは舞い降りた。
カラスのように真っ黒で、いくつもの風を巻きつけたそれは。
「ふ、船!?」
船。そう、まさしくそれは飛空挺だった。
ボク達の世界にあるのに近い、でもちょっと違うけど、ともかくそれは飛空挺だったんだ。
「こいつぁー豪勢だなぁ」
デルフが口笛でも吹きそうな感じでとぼけてそう言った。
デルフは、何とも思ってないのかなぁ?
いつも、『嫌な予感がする』とか『おもしろくなってきた』とか言うのに……

「皆さま、終幕の舞台へご案内いたしましょう!暴かれる真実の終幕へ……」
少なくとも、ボクは嫌な予感がしたんだ。デルフじゃないけども……
クジャの舞台挨拶みたいな大げさな身振りと、闇夜のように真っ黒な飛空挺、
歪んだ虹色の光の柱、それと……『真実の終幕』っていうのに……



ピコン
ATE ~英雄と言ふものは~

「な、なんだこれはっ!?」
三百メイルも離れていないところまで、彼は来ていた。
英雄らしからぬことに、彼は出るタイミングを失っていたのだ。

「び、ビビ君?ルイズ?え、っと……それと誰だ、あれは?」
少々距離があるために、個人の特定まではできない。
英雄らしからぬことに、彼はそれ以上近づくことを躊躇っていた。

「大体なんなんだ、あの物体は!?風車か?」
ただ、この距離でも天に昇る虹光の渦と、漆黒の回転する羽を持ったそいつは見えた。

「乗り込んでいく……ってことは乗り物か。船のようなものか?」
トンガリ帽子の少年や、桃色の髪の毛の少女が、銀髪の人物に導かれて乗り込んでいく。
少なくとも、あれは乗り物である。
車輪が無いし浮いていることから、空を飛ぶ類の乗り物であることは彼も理解できた。

「……少なくとも、ただごとじゃぁ無さそうだな」
虹色の光の柱。
流石に頭の鈍い彼でも、それを『不吉』と直感できないほど鈍くは無い。
何かが起こっていることは理解できた。

「(モンモン、すまないね)」
そっと、恋人に謝る。
危険を直感したためだ。
そんな場所に愛する人を連れてはいけない。
つい先日だって、エルフとの戦いで危ない目に合わせたばかりなのだ。
もうあんな恐ろしい目で彼女を泣かせたくなかった。

だからといって、ここで退くわけにはいかない。
何故なら。
「ギーシュ・ド・グラモン!ビビ君のライバルとして!ここで行かねば男が廃る!」
ギーシュはメイジである。貴族である。そして何より、男の子である。
カッコ悪くなるようなことを進んでやるような男の子など、この世には存在しないのだ!

都合の良い(あるいは悪い)ことに、
彼女の恋人や、その友人でもある2人の学友はまだ青髪の少女の屋敷に残っている。
ギーシュは少々退屈になったため、一人散歩に出ていた。
つまり……今、彼の志を止める者は誰もいないのだ。

ギーシュは走った。
件の黒い巨大な乗り物が飛んでいく方向に。
「『錬っ金っ!!』魔導アーマー装着っ!!」
ギーシュは跳んだ。
足を『錬金』による魔導アーマーで強化して。
「とりゃぁあああああっ!!――おっとっとっととぉぉ!?わわわわっ!?」
ギーシュはしがみついた。
若干バランスを崩しながら、乗り物の翼の付け根に。
「ふ、ふふん!こ、この僕にかかれば朝飯前だね!」
ギーシュは笑った。
冷や汗をかきながら、ニッと笑って見せた。

英雄と言うものは、必ず遅れてやってきて、自分から事件に首をつっこむものだ。
どこかの誰かが、そんなことを言っていた。
それはまさしく、ギーシュ・ド・グラモンのことを差していた。

漆黒の船は闇夜を駆ける。
どこに向かうのか、何が目的なのか、ギーシュは全く知らないままに。


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