あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-44


「何も読めんな・・・・・・」
ジョゼフはやや落胆したような声で呟いた。
土のルビーをその指に、始祖の祈祷書をその手に。
何度か祈祷書をパラパラとめくるものの、文字が光り浮かび上がる気配は一向に無い。
「俺にとってまだ必要な時ではない、と言うことか・・・・・・」
尤もジョゼフとしては読めないなら読めないで、それも構わなかった。
今覚えている呪文だけでも、充分過ぎる。新たな魔法を覚えなくても特に不都合はない。
「これで四の指輪と四の秘宝の内、五つが我が手にある・・・・・・か」
指輪が二つ、秘宝が三つ。と言っても、集めたからどうだというものでもない。
少しだけ興味が湧いたから、なんとなく収集している程度に過ぎない。

 ジョゼフは、人質である少女達に目を向ける。後ろ手に縛られ、身動きが取れない二人の少女。
「・・・・・・全く。片方はおよそ闘争に向く性格ではなく、もう片方は杖を落として持っていないとはな」
自分を含めて虚無同士戦わせ、戦おうと思っていた。
しかし虚無を使えないのではと、最早興味は半ば失せていた。

「正直ギリギリだったからね」
ウォルターは、悪びれる様子もなく言い訳をする。
ルイズを攫ってきた経緯は、既に報告済みであった。
タバサの裏切りから、虚無魔法により強化された剣でヨルムンガントを破壊された事まで。

 ――――――しかし、杖を落としたという報告は嘘であった。
ルイズは一度拾った杖を、混戦の中でも絶対に手放さなかった。
杖のないメイジが、どれほど無力で役立たずであるかをわかっているから。
例え片手を犠牲にしようと、両足を犠牲にしようと、杖だけは手放さない。
ルイズにはそれくらいの覚悟があった。

 実際には、杖は落としたのではなく――――――ウォルターに奪われただけであった。

「まあよい、まだロマリアが残っているしな。どの道、あのような小娘共に最初から期待はしておらん。
 それよりも・・・・・・ヨルムンガントの改良が必要だな。虚無で壊れているようでは、話にならんぞ?」

「わかっている。事が終わって戻り次第、早急に改良を進めよう」


 ルイズは考える。
杖を奪ったのは――――――最初は、呪文を唱えさせない為・・・・・・だと思っていた。
自分を捕えているガーゴイルを魔法で破壊されない為に、ウォルターが杖を奪うのは当然のこと。
しかし・・・・・・今も杖を持っているウォルターが、それを報告しないのがいまいち解せない。
ジョゼフは虚無の担い手と戦いたがっている。杖を渡してくれれば、自分はジョゼフと戦える。
そのジョゼフの意思を無視し、ウォルターが杖を渡さない理由・・・・・・導き出される帰結。

 つまり・・・・・・アーカードに零号開放をさせる為なのだ。
私という人質がなくなれば、アーカードは零号開放する必要はなくなる。
自慢の不死性で持久戦に持ち込み、ゆっくりと全てを殺していけばいいのだ。
だからこそウォルターは杖を奪い、私とガリア王ジョゼフと戦わせないようにした。
ジョゼフの強さはわからない・・・・・・が、私が死ぬにしてもジョゼフが死ぬにしても。
ウォルターにとって面白くない、望ましくない状況に陥るから杖を渡さないのだろう。

 故にルイズは杖のことを言わない。少なくとも、今はまだその時ではない。
まだ・・・・・・付け入る隙があるかも知れない。置かれた状況が絶望的となるまでは行動は起こさない。
ジョゼフと対決するのは――――――最後の手段だ。

 とりあえず、ウォルターからは敵意を感じない。
杖を奪われた時も、「悪いようにはしない」と言われた。
あの夜の会話からも、ウォルターはアーカードと心底闘いたいだけなのだと感じ入った。

 だから・・・・・・今はまだ、ウォルターの言葉を信用しておこうと思う。


 ウォルターは考える。
――――――自分は今、ルイズの杖を奪い、持っている。
しかしそれをジョゼフに報告はしないし、勿論渡すこともしない。
もし渡してしまえばジョゼフは虚無同士で戦いたがり、ルイズに杖を返すだろう。
ルイズの気性からしても・・・・・・もう一人の担い手とは違い、十中八九勝負を受けるに違いない。

 そうなれば勝つのは間違いなくジョゼフ。それだけジョゼフの虚無は強力だ。
ルイズに勝ち目はない。そして負ければ怪我は免れない、最悪死ぬことも有り得る。
そうなれば己の目的遂行に於いて、非常に困る事態となりかねない。
ルイズに危害が及べば、アーカードの気まぐれなど簡単に吹き飛ぶだろう。
なんとか零号開放させても、アーカードが自分とタイマンしてくれなければ意味がない。
死の河が敵を飲み込むその間に、適当にはぐらかされ、逃げられたらどうしようもない。
ルイズを完全な人質として扱い、闘わなければ殺すと言うこともやれないことはない。
だがそのようにして、強制的にアーカードと対決するのは・・・・・・最後の手段だ。
それにアーカードが、ルイズを助ける為ならば自分の命を懸けることすら辞さない心持ちなのかもわからない。

 そして・・・・・・少女ながらもアーカードの主人であるルイズに、少なからず畏敬の念を感じる。
インテグラと似ていて、それでいて別の・・・・・・人間としての強さ、その魅力を感じる。
あの夜の会話で、真剣に話を聞き、答えてくれたルイズに、多少なりと好意を感じている。

(・・・・・・悪いようにはしたくない)

 とは言え、そんな真意までペラペラと喋る程、自分はお人好しでもない。
情報が少ない中、疑問に思うことが数あろうに。
それでもルイズが杖のことを言わないところを見るに、なかなか聡明な少女だ。
己の置かれた状況を的確に認識し、決して取り乱さず、冷静に判断をしている。
先の闘争でもそうだった。・・・・・・もう一人の怯えてるだけのとは大違い。

(ホント・・・・・・アーカードがムキになるのもわかる気がする)
ウォルターは胸中で呟く。
鉄の女として完成されたインテグラとは違い、まだ発展途上。
だがインテグラと同じように、大成するだろうその器。
アーカードでなくとも・・・・・・、その将来に楽しみを覚えるというものだった。

 だから・・・・・・今はまだ、結果としてルイズに危害が加わるような真似はしない。



「・・・・・・そういえば、元素の兄弟はいないの?」
ウォルターはふと気付いて訊ねた。

 ガリア首都リュティスのヴェルサルテイル宮殿には、いくつもの花壇が存在する。
同時にガリアの騎士団は、それぞれ花壇の名にちなんだ名称を持つのである。
しかし・・・・・・北側には花壇が存在せず、表向きは存在しないという騎士団があった。
タバサも所属していた裏の仕事を一手に担う連中、『北花壇警護騎士団』。
殆どが所属している者同士の顔も名前も知らず、様々な厄介事・面倒事を請け負う実力派の騎士達。
その中でも珍しく、四人組の兄弟で仕事をこなす者達がいた。

「虚無の担い手の所在を、長期間調べさせていたからな。いい加減休みが欲しいそうだ」
ダミアン、ジャック、ドゥドゥー、ジャネットの四兄弟。
ウォルターの強さに比べれば、大多数のメイジはまるで相手になりはしない。
が、彼らは卓越した北花壇騎士団の面々の中でも、さらに随一の実力を持っていた。
四人組としても、個人としても。ハルケギニアでは数少ない、戦力として頼りに出来る連中。
元素の兄弟がいたのなら、色々と役に立つのだが・・・・・・いないのであれば仕方がない。

「ヨルムンガントは?」
「一体だけだが既に手配はしてある。そう時間は掛からずに届けられる筈だ」
ウォルターの質問に、ビダーシャルが答える。
トリステインから戻る途中に予め連絡を入れていた。
零号開放させるのに、今のところ集結しているガリア兵だけでは心許ない。
打てる手は全て打っておいた方がいい、当然ながらヨルムンガントがあって越したことはなかった。

「また破壊されたりせんだろうな」
ヨルムンガントは目下生産中。
一体破壊された今、現在稼動可能なのは今から届けられる一体のみであった。
それまで破壊されるのはあまり面白くない。
「虚無はこっちにあるし、大丈夫だと思うけど――――――」


(ヨルムンガントが・・・・・・もう一体!?)
ルイズの胸中が驚愕に染まる。
ウォルター、ジョゼフ、そしてエルフのビダーシャルは、対アーカードの打ち合わせをし始める。
もはや自分達は眼中に無いのか。お構い無しに話をし続けている。
ルイズは耳を澄まして、会話の内容を聞く。

 ――――――なるほど、要するにアーカードに零号開放させることを目的としているわけだ。
ウォルターがそうしたいのは、予想ついていた。
アーカードを倒す為に、拘束制御術式の零号開放は必須事項であるからだ。
が、ガリア王ジョゼフまで――――死の河を――――この世の地獄を見たがっているとは。

(・・・・・・エルフ)
ルイズは心の中で呟いた。ハルケギニアの人間にとって、最も恐るべき敵。
テファと違ってハーフエルフではない、純粋なエルフ。
会話を見聞きするに、エルフはあまり乗り気ではない様子であった。
が、それにしても人間と組むエルフなんて・・・・・・。通常考えられる事態ではない。
   ルイズはエルフを見つめる。ルイズの体が俄かに震えた。
実際に、戦ったわけでもない。その強力な先住魔法を、目の当たりにしたわけでもない。
それでも・・・・・・わかる。肌が敏感に感じ取る。心が理解する。
仇敵の秘めたる力に、メイジとして、虚無の担い手として、畏怖を覚える。

 そんなエルフにヨルムンガント、そしてウォルターの実力は言わずもがな。
さらに虚無の担い手であるジョゼフも・・・・・・恐らく戦力に数えられるだろう。
運ばれる途中で、空から見たアーハンブラ城とその周辺を思い出す。
ガリア艦隊は無いようだったが、布陣されている兵の数は、外にいただけでも相当数。
間違いなく・・・・・・アーカードが零号を解放せざるを得ない環境が作り出されている。
敵方が圧倒的物量を有し、同様に物量をぶつけねば効率の悪い状況。
且つ、私と言う人質がいる所為で悠長に殲滅する暇もない、時間的に差し迫った状況。

(アーカードが・・・・・・死ぬ?)
命を全て吐き出した状態のアーカードは、心臓を貫かれれば死ぬ。
そしてウォルターは、その殺せる状態のアーカードと闘うことを望んでいる。
虚無がなければ、反射の掛かったヨルムンガントを破壊する方法は無い。
もしウォルターとヨルムンガントとの波状攻撃を受ければ・・・・・・。
アーカードはきっと退かない。私を助ける為に。
退却しようとしたとしても、私に危害を加えると脅されたら・・・・・・アーカードは――――――。


(いえ・・・・・・アーカードなら、・・・・・・大丈夫)
信じるしかない。アーカードなら勝つ。
私が信じる私の使い魔なら、アーカードなら。
自分を助けてくれる。こんな奴らに負けるわけがない。
(でも・・・・・・出来るなら・・・・・・) 
私を助けに来なくても構わない。
アーカードが死ぬ可能性を考えるなら・・・・・・。
・・・・・・それに、ガリアとの戦争にもなりかねないのだ。
アーカードが助けに来るのは、様々な要素を鑑みるに好ましくない。
   そう、助けに来なくてもいい。
(それならそれで、自力で何とかして見せるから・・・・・・)

 ルイズはギュッと唇を結び、拳を強く・・・・・・血が滲みそうなほどに握り締めた。




 シルフィードを飛ばして学院へと戻る。
アーカード、タバサ、アニエスはそれぞれ軽やかに中庭へと降り立った。

「タバサッ!!アーカードッ!!」
すると待ち構えてたように走ってきた、燃える様な赤髪の女。
キュルケと、さらにコルベールが走って来た。
「ルイズが攫われたんですってね」
「・・・・・・オスマンから聞いたのか」
学院内で起こった事件。
ヨルムンガントの残骸の後始末も含め、責任者であるオスマンには王宮へ行く前に報告していた。
キュルケはコルベールと共にオスマンに問い質し、そしてこうして待っていたのだった。

「そっちの人は?」
キュルケの言葉にアニエスはフードを取る。
普段日差しがある時は、アニエスはフードを被っていた。
まだ他者の血を飲んでいない、真の意味で吸血鬼となっていないアニエスにとって、日差しは体を蝕むもの。
それ故に日中に出歩く時は、フードを被るのが常であった。

「アニエスくん・・・・・・」
「・・・・・・変に気遣われても煩わしい、普通にしていろ」
顔を見て気付いたコルベールの対応に、アニエスはそう言うとフードを被り直す。
既に復讐の件については決着がついている。今更あーだこーだ言及するつもりもない。
「あ・・・あぁ・・・・・・」
コルベールは申し訳無さそうに頷いた。


「・・・・・・助けに行くんでしょ?」
キュルケの言葉に、誰も答えない。その態度をキュルケは無言の肯定と察する。
「私も行くわ」
「・・・・・・足手纏いはいらん」
はっきりとアーカードは告げた。
「言ってくれるわね。お言葉ですけど、私とタバサのコンビネーションは身を以て知ってる筈よ?
 それにルイズは友達よ、助けに行かない理由はないわ。それにタバサのお母様だって助けなくちゃいけないでしょ」

 キュルケの言葉に、アーカードはタバサへと視線を向ける。
タバサは己の母親のことは何一つ言っていなかった。
自分の中だけで決着をつけるべきことであり、わざわざ言う必要はない・・・・・・ということか。
視線に気付いたタバサは、小さく答える。
「母もアーハンブラ城にいる、だから問題ない」
「そうか。それならばついでに救出できるの」
母がアーハンブラ城へ連れて行かれたこと。
その旨が書かれた手紙が、トリスタニアに行く前にタバサのもとに届けられていた。
ルイズを助けに行くと同時に、母親も助け出せる。
都合が良いのか悪いのか、その安否がわからない以上は何とも言えないが。


 アーカードは再度キュルケへと目を向け、理由を指し示す。
「確かにコンビネーションは素晴らしいが・・・・・・キュルケ、お前の実力はタバサにすら遥かに劣る」
「そうね、否定しないわ。でも連携するんだし問題ない、むしろ補って余りあると思うけど?」
キュルケの主張に対し、アーカードはかぶりを振って否定する。  
「言い方が悪かったな、連携がどうこうと言うわけでない」
「じゃあ・・・・・・どういうことよ」
「仲間思いは結構なことだがな。聞くがキュルケ、お前はいざという時にタバサを見捨てられるか?」
「・・・・・・そんなこと、できるわけないでしょ」
キュルケは質問の真意が分からないまま、眉を顰めつつ否定した。
「だろうな、それはタバサも同じだ。故にお前の存在が足枷になる」
アーカードは淡々と通告する。
タバサも反駁することなく、静かにそれを聞いていた。

「短期決戦での連携は買うがな、長期戦にならんとも限らない。魔力の切れた足手纏い二人を同時には守れん。
 となれば、自分の始末は自分でつけられる吸血鬼のアニエスを除けば、当然連れて行けるのは一人だけだ。
 まだアニエスは他者を守る程の余裕はない。そしてタバサよりも経験不足で弱いお前を守るのは、負担が大きくなる。
 シルフィードで向かうこと、戦力としてのカウント、そしてタバサ自身の因縁と・・・・・・その為すべきこと」

 アーカードは一拍置いて、射抜くようにキュルケを見つめた。
「その、いずれも・・・・・・お前に勝る」
キュルケは反論しようと思うが、口篭る。・・・・・・確かに、タバサと比べれば私は弱い。
戦闘経験は言うに及ばず、同じトライアングルメイジでもその魔法の威力も精度も段違い。
そして・・・・・・時に、友愛が足を引っ張ることになりかねないことも認識した。

 キュルケは一度だけ嘆息をつくと、観念したように口を開く。
燃ゆる強き瞳で、アーカードの紅瞳を見据える。
「・・・・・・わかったわ。そのかわり――――――」
「んむ、必ず皆で帰って来る」

 アーカードの言葉に、キュルケは安堵の息を漏らす。
変に意固地になられても困るし、はっきり言わないと納得しないだろうと、半ば取り繕った言葉だった。
実際にはルイズやタバサの母の安否は知れないし、誰一人帰って来れない可能性も0ではない。
とは言え・・・・・・その言葉を、決して嘘にはしない気負いはある。


 ――――――その時だった。

 空気が一変し、凍りつく。
急激に周囲の気温が下がるような錯覚に、誰もが囚われた。
                ・ ・ ・ ・
 アーカードは――――その人物が歩いてくる方向へと――――振り向く。
そしてその人物と同様に、アーカードは嬉々として殺意を剥き出しにした。
本来いる筈のない・・・・・・その人物が放つそれと、アーカードが放つそれ。
二つが衝突し、混ざり合い、空間を埋め尽くす程の圧迫感となる。
体中に鋭い針を・・・・・・何千本何万本も突き刺される、そんなような感覚に襲われる。

 アーカードは、思わぬ宿敵との再会に――――――酷く凶暴な笑みを・・・・・・浮かべていた。


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