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ゼロの戦闘妖精-05


Misson 05「全系統使用不可」(前編)

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、貴族である。
由緒あるヴァリエール公爵家の一員として生まれ 幼い頃より 貴族の掟・貴族の誇り・貴族のあるべき姿を教えられて育った。
全てが身についたとは言いがたいが、彼女の基本的人格は こうして形成された。

魔法、神が始祖に授けたとされる力。それを使う者、貴族。尊き血に連なる証。
魔法を使えない貴族。『ゼロのルイズ』。己が己である事を証明出来ない少女。力(魔法)への渇望。
そのルイズが手にした力、使い魔 『雪風』。
圧倒的な攻撃力を持った 最速の翼。
しかし、それは『魔法』ではなかった。魔法でないにもかかわらず、魔法以上の『力』をもつモノ。
雪風の存在によって、ルイズの内的世界に 価値観のパラダイムシフトが起きようとしていた。
魔法の意味。力の意味。そして、貴族の意味。
全てが変容する中で それでも彼女が変えようとしなかったもの、遠い日に 誰かから聞いた言葉。
『力には 責あり。大いなる力は、必ず大いなる責務を伴う。』

ルイズは考える。
ただの少女には手に余る 雪風の力、その使い道を。
雪風は異世界の兵器だった。となれば その力を十分に発揮するのは、『戦争』だろう。
だが、戦争など 何処にあると言うのか。身近に起きるものなのだろうか。
目を閉じている者には 何も見えない。 
日常と言う狭い世界から 少しでも先に視線を向けたなら『戦争』は、すぐそこに在った。

隣国アルビオンは、クーデターによる内戦状態だった。
『レコンキスタ』を名乗る『貴族派』と 現在のアルビオン王家『王党派』の対立、燎原の火の如く勢力を拡大する反乱軍に、敗走する王国軍。
大勢は見えている。もう間も無く 貴族派による新生アルビオンが誕生するだろう。
レコンキスタが『聖地奪回』を旗印とし、その為に『ハルケギニア全土の統一』を表明している以上、戦争の拡大は避けられない。
手始めに狙われるのは、おそらくトリステインだ。

学生であるルイズが、(雪風の手助けがあったとはいえ)ほんの数日調べただけで これだけの事が判明した。
雪風が地形探査飛行に平行して実施した 各国軍事拠点への偵察でも、いずれの国も兵力増強に努めていた。
トリステインでは、ゲルマニアとの軍事同盟の噂はあるが、自国の軍備増強は未だ進んでいない。認識が甘いと言わざるを得ない。
雪風の世界の歴史に よく似た状況があった。ナチスドイツ、ポーランド侵攻、WWⅡ・・・戦渦は世界を巻き込んでいく。
瓦礫の山、屍の大河、滅びの風。忌まわしき未来。 雪風は 事実に基づき 確度の高い予測をする。不確かな『予感』等ではない。
そんな未来、変えてみせる! ルイズは決意した。雪風を召喚したのは、きっと その為だ。

では 具体的に どうするか?
雪風一機で戦争を食い止める、これは無理だ。
雪風の弱点の一つが 継戦能力である。武器・弾薬の補給が見込めない現状では、全力での戦闘は 1ソーティだけしか出来ない。
弾薬切れの状態でも 他の能力を活かすためには、軍組織に所属する必要があるだろう。それも、空中戦を主体とする部隊。
その上で ある程度の自由裁量を認めてもらえる事。それが出来なければ 雪風の性能は活用しきれない。
まぁ、ただの新兵がそんな事を要求しても 通る訳が無い。
となれば、何か強力なコネでも使うしかないのだが、さて、そんな都合の良いモノが・・・・・・
ないこともなかった。

まずは『マンティコア隊』。ここならば ルイズの身内に 極めて強い影響力を持った人物がいる。
かなり我儘な要求でも通りそうだが、問題は、その人物を説得するのは、ほぼ不可能であると言う事。
ルイズ自身、
「そんな事をするぐらいなら、エルフの軍団に一人で突っ込んで行くほうがマシ!」
だと思っているので、この案は却下。
もう一人 『グリフォン隊』に、身内と言うか 将来身内になるハズの人物がいるのだが。
なにせ ルイズの幼い頃、酔っ払った父が冗談半分に交わした口約束が根拠であり、ここ数年は相手の任務が忙しく 時候の挨拶すら途切れている。
「賞味期限切れ」と言われてもおかしくない位だ。しかし 他にアテはない。
ルイズは、策を練ることにした。

今日は虚無の曜日、休日である。
街へ買い物に行くため ルイズが雪風の格納庫に到着すると、先客が待っていた。
「はぁい。街に行くなら 付き合うわ。アタシも乗せて!」
キュルケだった。
そこに舞い降りる もう一人と一匹。
「きゅいきゅい 今日こそ追い抜いて見せるのね!」
シルフィードは、このメンバーに対して 既に風韻竜であることを隠そうとしない。
初顔合わせのあの晩以降 彼女は周りに人目が無いのを確認するたびに、雪風に対して
「いっしょに飛ぶのね!
 競争、競争、シルフィ 本気なら負けないのね!」
と 無邪気に挑発をしてきていた。
人目を気にしていたのは タバサの言いつけを守って偉かったが、いかんせん雪風の『Data-Link能力』を理解していなかったようだ。
当然 ルイズに筒抜けとなり、タバサにこっぴどく叱られた代わりに 秘密解禁となった。
使い魔の『最速チャレンジ』に関しては、タバサも、
「・・・新しい風の結界形状を試してみたいから、ヨロシク。」
と 結構ノリ気だったりする。
とにかく 今日も『秘密結社 雪風組』中枢メンバー全員集合である。

道中、ルイズは後席の友人に聞いてみた。
「ねぇ キュルケ。
 貴女、卒業後の進路とかって 考えてる?」
「えっ 進路ぉ?
 そうねぇ ウチの一族って言えば、まず『軍人』か『商売人』のどっちかなんだけど、
 流石に 女軍人ってのは勘弁して欲しいから、やっぱ商売のほうかなぁ。
 でも、雪風みたいなのを知っちゃうと、
 『誰も見たことの無い様なモノを 自分の手で作り上げる』
 なんてのにも、魅力を感じちゃうわね。
 でも、どうしたの、急に?」
「うん、ちょっとね。
 私は、魔法の方は相変わらず『ゼロのルイズ』でしょ。この先も どうなるか・・・
 だとしたら、活かすべきは 雪風の力よね。
 だから・・・・・・軍の方へ進もうかと思ってるの。」
「ふ~ん。
 まっ、アンタが自分で決めた事なら アタシはそれでイイと思うけど、『伝統重視』のトリステイン軍じゃ、雪風は使いこなせないわよ、
きっと。
 割と『何でもアリ』な ゲルマニア軍ならともかく・・・
 ねぇ いっそ雪風ごと ウチに『亡命』しない?」
「ちょっと、『ツェルプストー』。本気なの? 私は、『ヴァリエール』なのよ!」
「あら、イイじゃないの。
 そうなればアタシも、『ヴァリエールの女を口説き落とした、ツェルプストーの女』ってことで、両家抗争の歴史に 名前が残せるわ。」
「プッ。」
「アハハハハハハハ。」
幸い このバカ話は、機外にもれる事は無かった。

学院から馬で数時間の道のりも、雪風なら数分 シルフィに合わせてゆっくり飛んでも数十分である。
町外れの開けた場所に雪風を着陸させ、町の入り口まではシルフィに乗っていった。 

ルイズが「武器屋に行く」と言うと、キュルケが驚いた。
「さっきの話じゃないけど、剣術の稽古でも始めようっての?」
「しないわよ。
 そうじゃなくて、正攻法で入隊しても 雪風を生かしきれないのは私も判ってたから、一芝居打ってみようかと思うの。
 その為の『小道具』を買おうと思って。」
「いいわ。『武器』の事なら、アタシもそれなりに詳しいつもりだから、まっかせなさい!」
キュルケは ルイズとタバサを引っ張って、ずんずん町を進んでいく。
ブルドンネ街の中央通りを外れ、二つほど奥の通りで武器屋を探す。
表通りの店のように スッ堅気ではないが、裏社会専用とまでは行かない 微妙なエリア。そこに一軒の武器屋があった。
「この辺でイイわ。」
「ねぇキュルケ、途中にもっと奇麗な店があったじゃない。なんでこんな汚い店 選んだの?」
「あのね、途中の店は、一軒目はオーダーメイド専門 二軒目も騎士専用で アンタなんか門前払いよ。
 それに 武器ってのは、アンタが考えてるより ずっと高いの!
 見てなさい。 この店のオヤジが涙目になる位 値引きさせてやるから!」

武器屋の店主は驚いた。
  • 貴族の
  • 美少女が
  • 三人も
自分の店に入ってきたからだ。 どう考えても、開店以来初めての出来事だった。
だが こんな事でオタオタするようでは、この界隈で商売は出来ない。
脈拍の上昇を隠し、来店に気が付かない振りをしながらダガーを磨いていると、
「ねぇ ご主人~ん。」
先頭の赤毛の少女が擦り寄ってきた。
「アタシ 剣が欲しいの。アタシにピッタリの剣が。
 でも 剣なんて買った事が無いから、どんな剣が欲しいのか 自分でもよく判らないの~。
 だから 選んでぇ、アタシにお似合いの カッコイイ剣を。
 オ・ネ・ガ・イ!」
オヤジ、口元から涎を垂らしてヤニさがる。普段のコワモテは何処へやら。
ピチピチの美少女に豊満な胸をグイグイと押し付けて『オネガイ』されては、男としてはその要求に屈する以外の選択肢は 無い。
いそいそと店の奥に入って、手にして戻ったのは、店秘蔵の大剣!
「お嬢様、コイツは かの高名な ゲルマニアの『炎の錬金鍛冶』シュペー卿の作でごぜえやす。
 惚れ惚れするような黒鋼に 白く輝く濡れ刃、ちょいと貴女様にゃデカすぎるかもしれませんが、
 振り回す必要など ありゃしませんて。
 お嬢様が お構えになる それだけで、
 チンピラ盗っ人や幻獣の畜生ドモは、
 尻尾丸めて逃げてくに決まってまさぁ。
 振ったら振ったで 又スゴイ!
 真っ直ぐブンッ!っと振るだけで、鉄の兜も真っ二つ!
 何せ魔法が掛かってる。驚天動地メイジのチカラ!
 ってこれはそちらのご専門でございやしたね。
 加えて語るとするならば、散りばめられし宝石の数、
 その数何と三十四個!
 鞘より出でて 初めて判るその豪華さに、
 敵も味方も目を奪われるって寸法でさ!」
このオヤジ、元は露天商の叩き売りでもやってたんだろうか?口上に 妙に熱がこもっている。
だが 出された剣を見て、キュルケの表情が変わった。  

「へ~ぇ、『シュペー卿の作』ですって。
 これ 卿自ら打たれた『一本モノ』かしら?
 それとも 工房でお弟子さん達が作っている『数打ち』?
 あと、この宝飾だけど、シュペー卿といえば 赤のルビーを流れるように配置するのが特徴よね。
 こんな 黄色や緑のクズ石を センス無く並べただけの駄剣、この店に『シュペー卿の作』として持ち込だバカがいるなら、
 一体何処の誰なのか 教えて欲しいですわ!」
豹変した相手に、驚く店主。
「アタシはキュルケ・フォン・ツェルプストー。
 シュペー卿の新作を 独占販売させて頂いております『ツェルプストー商会』の、末端に連なる者。
 以後 お見知り置きを。」
「はっ はは~~~~!」
平伏する店主。水戸の黄門様が印籠を出したようなモンである。
「主。貴方も自ら武器を商う者とはいえ 卿の逸品など、実際目にした事は無いのでしょう。
 アタシにこの剣を選んでくださったのは、まこと好意からのもの、騙す意図など無かったのでしょうが、こうしていらぬ恥をかいた、
 これも事実。
 ならば、名誉挽回の機会を差し上げましょう。
 後ろに居ります私の友も 今日 武器を求めに参りましたが、本当にズブの素人。
 彼女の求めに応じて 良い剣を探してやって下さいますか?」
「もっ もちろんでゴザイマスゥ~!!!」
「さ、ルイズ。これだけヤっとっきゃ 後はどんな要求したって大丈夫よ!」

「おでれーた!
 そんな娘ッ子にやり込められるなんざ、ザマーねえな オヤジ!
 いっそ 店をタタんで、坊主にでもなっちまうか?」
突然、後方から掛けられた声に 三人娘は驚いて辺りを見回す。
「おい!デル公。
 でぇじなお客様なんだから、テメェは黙ってろ!て言うか 頼むから余計な口出ししねぇでくれ。」
これ以上の失敗は なんとしても避けたい店主 半泣き。
「ひょっとして インテリジェンスソード?」ルイズが訊ねる。
「そうなんですよ、お嬢様。
 小汚いボロ錆剣じゃありますが、最初は『ウチの目玉商品』になるかと仕入れたんですがね。
 ところが これがもう、性格悪い 口悪い、来る客来る客あんな風にアヤつけやがるから、買い手なんぞ出やしねぇ。
 今じゃ 捨て値処分品入れの大樽のヌシでござんすよ。」
その樽の近くにいたタバサが、特売品の束に腕を突っ込み、一本の剣を引っ張り出す。
「・・・たぶん、これ。」
「おう、デルフリンガー様よ!
 んっ? 
 おい 娘ッ子、オメエ 見かけによらず腕が立つみてぇじゃねぇか。どうだ、俺を買え!」
早速 売込みを始めたボロ剣に タバサは、
「・・・『インテリジェンスソード』
 超高度な錬金技法により、意思と知能 言語能力を付加された剣。
 ただし・・・
 実戦においては『役立たず』。」
と にべも無い。
「おきやがれ!
 お前ぇみてぇな青二才にゃ、俺様の六千年の戦闘経験ってヤツが 必要なんだよ!」
「戦闘中、集中力を削ぐようなアドバイスは無用・・・むしろ邪魔。」
「それじゃぁ・・・」

意外と相性のイイ?剣と青髪の少女は とりあえず置いといて、こちらは店主とルイズ。
「で お嬢様、いかような武器をお求めでごぜえますか?」
「そんなに特別な要求じゃないの。
 とりあえず 剣か槍。
 見た目はボロで構わないわ。切れ味もどうでもいいの。でも、地面に突き刺さらないようなのは論外ね。
 重要なのは 頑丈なこと。お城の塔の天辺から落としても折れないぐらい。
 あと 特徴がはっきりしてるのがイイ。絶対 他の剣と間違えたりしない様なヤツ。」
店主は以外だった。 普通 素人に「どんな剣がご希望ですか?」と聞けば、
『ダァーっとしたの』とか
『ギギューーンと斬れそうなの』
『ズバババーーーンとカッコイイヤツ』
てな具合に 抽象的になり易いのだが、ルイズの注文は具体的だった。
そのくせ 剣に切れ味を求めないなど、常識に反するようなところもある。
具体的な目的を持ってはいるが、その目的は 恐らく非常識なもの。
素人ではあるが、一筋縄ではいかない少女。
店主は、俄然 目の前の少女とその目的に 興味が湧いてきた。
「ところで、あのインテリジェンスソード、今の条件に照らし合わせると どうかしら?」
「はぁ、アイツは錆びちゃいますが 表面だけで 芯まで腐ってる訳じゃござんせん。
 『塔から云々』は 試してみない事にぁ判りませんが、アイツの『自称:六千年』を話半分以下としても
 、なげぇこと使われ続けた代物ですから、頑丈なのは間違いねぇでしょう。
 それと あんなバカ剣は この世に一本しかありゃしませんよ。それも間違いねぇ。」
「じゃ アレで良いわ。で、おいくら?」
「あの樽の中のヤツは どれも一本 金貨百枚でごぜぇやすがね。
 今回は、ゲルマニアのお嬢様との件もありましたんで、タダってのも考えたんですが、それじゃ商売じゃねぇ。
 あっしにも 商売人の意地ってのは ありやすからね。
 そこで、金貨一枚 ただし条件付とさせていただきやす。」
「条件?」
「へぇ。 後日、お嬢様に再度ご来店いただき、あのデル公が どんな酷い目に会ったのか、それを聞かせてもらいてえんで。」
ニヤリと笑う店主、それを不敵な笑みで返すルイズ。
「判ったわ。
 そっちの方は 期待してもらってもいいかもね!」

購入を済ませて店を出る時点で ルイズは初めてデルフリンガーを手にした。それまでずっとタバサが持っていた。
店内では何か言い合いをしていたようだが 途中からぱったりと静かになった。どうしたのか聞いて見ると、
「やかましいので 『サイレント』を使った。」とのこと。
移動した事で やっとしゃべれるようになったデルフリンガー、
「ヒデーよ 青髪の嬢ちゃん、アンタ 腕も立ちそうだが 性格もスゲーな!
 で、新しい持ち主ってのが、ピンクの嬢ちゃんかい。
 お前さん、俺様を振り回せるような腕力もねぇ癖に・・・
 んっ!おでれーた!! 嬢ちゃん、アンタ『使い手』?
 イヤ んな訳ゃねぇ!嬢ちゃんはメイジだ。メイジが『使い手』に、使い魔になれる道理がねぇ!
 だのに 何で『相棒』の気配がするんでぃ?!」
《マスター:報告
 所持の剣より、プログラム『ガンダールヴ』用プラグイン、『デルフリンガー』を確認。
 なお 同ソフトウェアと マスターの魔法発動プロテクトの間に パターン類似性を検出。》 
「なななっ、なんでぇ 今の『声じゃねぇ声』は!」
驚くデルフに、ルイズの目が爛々と輝いた。
「あらっ デルフリンガー、貴方 雪風の声が聞こえたの?
 へえ~ そうなんだ。コレ 本当に掘り出し物だったのね。
 さあ、デルフ!それじゃ あんたの知っている事 洗いざらい語ってもらうわよ!」

ブルドンネ街の中央通りに戻り、冷たいスイーツが有名な『凍れる果実亭』店頭のオープンカフェで、昼食を兼ねた『デルフリンガー尋問の会』が始まった。

「そうするとアンタは、始祖ブリミルの使い魔『ガンダールヴ』の剣だったって言うの?」
「・・・眉唾。」
キュルケとタバサは どうにも信じられないようだ。
「その辺は信用しても良いみたいよ。
 『ガンダールヴ専用武器』って言ったのは、こいつじゃなくて雪風だから。」
「じゃぁ 始祖がアンタを作ったの?」
「知らね。
 俺っちは 人間と違って 赤ん坊で生まれてくる訳じゃねぇ。気が付くと 或る日突然存在してたのさ。
 人間だって 自分の製造過程を見てたヤツなんざいねぇし、見たいとも思わねぇだろ?
 まぁ 人間にゃ、人間を作るためにヤル行為を 覗き見すんのが好きなヤツは いっぱい居るがな。」
「・・・『使い手』って 何?」
「忘れた。
 多分 ガンダールヴ本人か その紋章を受け継いだ者だろうよ。
 他にも何か意味があったかもしれねぇけど、忘れちまった。」
「紋章を受け継いだ者って、何人いたの?」
「さあねぇ。いっぱいいたような気もするんだが ほんの数人だったような気もするしなぁ・・・
 思い出せねぇんだけど、一人だけってことぁねぇな。」
本心なのか、韜晦か、肝心な事はさっぱり答えないデルフ。
「使えない剣ねぇ。
 ちょっと炙ってあげたら、ちゃんと喋る気になるかしら?」
呪文を唱え 掌に火球を出現させるキュルケ。
「・・・頭を冷やせば、思い出すかも。」
同じく 氷塊を出現させるタバサ。
「おわぁ、嬢ちゃん達 ちょっ ちょっと待ったぁ!」
「そうよ、もっとイイ手があるわ!
 雪風、デルフリンガーのメモリに対し 強制検索を実施!」
《RDY》
《デルフリンガー:警告
 『強制検索』により メモリーサーキット内に過負荷が掛かる危険性アリ》
「おい相棒 何だよその『強制なんたら』ってのは!
 うっ、ガッ・ぎ・グゲッ・ごおぉぉぁ~!」
テーブルの上で 悶絶するデルフ。

《マスター:調査結果
 『魔法吸収能力』ならびに『緊急時身体制御・駆動能力』他判明。
 未解読領域あり。
 デルフリンガーのメモリー本体に 欠損は認められず。
 メモリープロテクト等 確認できず。
 記憶管理プログラムの呼び出しルーチンに 経年劣化バグがある模様。
 修正不能。
 類似検索:老人性痴呆症》

「そうよねぇ デルフって、六千歳のお爺ちゃんだものねぇ。ボケが進んでても仕方ないか。」
「ううっ なんか ヒデー事された上に、ヒデー事言われてるような気がする・・・」
「じゃ これ今回最後の質問にするから、しっかり思い出しなさいよ!
 アンタと共に戦った『使い手』ってのが何人か居たとしてよ、
 それが皆『ガンダールヴ』だったんなら 『御主人様』が居たはずよね。
 ひょっとして その人達って、『虚無の・・・
そこまでだった。デルフ尋問会は、突然の爆発音によって中断された!

爆発したのは、ルイズ達のいる店から通りをはさんだ 向いの宝飾店だった。
煙を上げるその店から、五人の覆面男が現れ それを追うように血塗れの店員が這い出してくる。
「ごっ 強盗だぁぁぁ!」
賊の一人が 叫んだ店員に杖を向ける。エアカッター発動。首が飛ぶ。
「ギャー!」
「殺されるぅ!」
「逃げろぉぉぉ!」
白昼の王都トリスタニアに パニックが広がる。
タバサがテーブルを倒して盾にする。ルイズ、キュルケも杖を構えた。
だが 彼女等が攻撃するより早く、賊と彼女達の間に 大通りを塞ぐ黒い巨体が舞い降りた。
ワイバーン。竜の亜種で、その凶暴性から飼い慣らすのは難しいとされる。
通常の大きさは3~5メイルだが、目の前のそれは10メイル近くあった。『黒ワイバーン』と呼ばれる ガリア北方の山岳種だろう。
すかさず、盗賊が戦利品を抱え その背に駆け上がる。力強く羽ばたいて 飛び立つワイバーン。
この間 爆発から僅かに五分弱の早業。城下の警備兵等は 未だ影もなし!
いやっ 否!
『盗賊めら、逃がすと思うてかぁ!』
風の魔法で増幅された大音声が 天空より響き渡り、エアカノン(エアハンマーの収束率強化版、より遠方への攻撃が可能)がワイバーンを襲う!
そして飛来する 五騎のグリフォン、魔法衛士隊だ!

離陸直後のワイバーンが、攻撃を受けて身を捩る。
乗っていた賊の一人が振り落とされ、フライを唱える間も無く地面に叩き付けられるが、残った盗賊団は 仲間を見捨てて飛び去る。
落下した男は、腰を強打した為動けなかった。迫る衛士隊に 錬金の核(コア)二個を投げる。
出現するドラゴ・ゴーレム 二体。体長五メイルの地竜を模したゴーレムで、土ゴーレムながら 竜鱗を模したその表皮は
金属ゴーレムに迫る強度を持ち、火のブレスを吐く事も可能な代物。どうする!
「ユーゴ、貴様は逃げた賊を追え!サジマの別働隊がおって合流する。
 残りの者で あの狼藉者を始末する!
 手間取るでないぞ、これ以上 街に被害を出してはならんっ!」
「「「「はっ!!!!」」」」
隊長の指示が飛ぶ。
部隊最速(の逃げ足?)を誇る『脱兎のユーゴ』こと ユーゴ・ムラーキチュが賊を追うが、ワイバーンも中々に速い。追いつけるか?
(雪風、緊急発進。逃走するワイバーンを追って。
 グリフォン隊士が追いつけないようなら 足止めを実施。撃墜の必要なし。)
《RDY》

ドラゴ・ゴーレムに対する隊員三人は、グリフォンを降りて、地上で 前1後2の陣形を組む。先頭の者は杖を高く掲げ、
後ろの者は前の者の肩に杖を乗せる。
唱えるのは ブレードの呪文。杖を中心に 魔力の刃を形成し剣とする術。だが それではゴーレムの巨体を切り倒す事は出来ない!
詠唱が終了、三人が声を合わせて叫ぶ!
「「「ブレード エクステンション!」」」
出現する巨大な風の剣。三名の術者の魔力を合わせる事で可能となる 三メイルを越える刃。それを 袈裟懸けに振り下ろす。
肩から胴に掛けて ばっさりと切断され、ドラゴ・ゴーレムは土に還った。

もう一方のゴレームと グリフォンに騎乗したまま対峙する隊長。しかし その鋭い目が見つめているのは 動けなくなった賊の男の方だった。
「魔法衛士隊 グリフォン隊隊長、ジャン・ジャック・ワルドである。神妙に縛に付けぃ!」
男に代わり、ドラゴ・ゴーレムがブレスを吐いて抵抗の意思を示す。難なくそれを回避するグリフォン。
ワルドが杖を構える。五十サント程の金属棒で 下部には紐を編んだグリップと房 中央やや下の辺りにはL型の突起が付いている。
『十手』と呼ばれる、東方からの流入品とも 場違いな工芸品の一つとも言われている逸品である。
唱える呪文は 部下と同じブレード エクステンション。
三人がかりの術を一人で発動させ、なおかつ部下よりも巨大な刃を造る、なんと言う強き魔力!
真っ向から振り下ろした大剣は、相手を真っ二つに切り裂いた。
勝負アリ! だが、賊の男は近付くワルドに向け ナイフを投げてなおも抗った。
ワルドはそれを杖で撥ね飛ばし、エアカッターで男の右腕を切り落として 言った。
「命だけは助けてやる。
 貴様等の アジトの場所を聞き出す迄はな!」

「いやー、流石は『グリフォン隊』」
「いよっ、『トリステイン最強部隊』!」
「『閃光のワルド』様は、王都の守護神ですな。」 

ゴーレムは倒され、それを操っていた賊も捕えられた。城下の民にも安心が広がって 其処此処でグリフォン隊やその隊長を称える声が上がっていた。
実は、それを聞くのが ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵にとって 至福のひと時なのだった。 
没落貴族の子供として生まれ、病気の母の薬代すら侭ならぬ極貧の日々を送った彼は、幼少の頃よりグレて悪の道を進んでいた。
日々、嘲りや憎悪の言葉 説教や罵詈雑言を浴びて育ったため、他人から『誉められる』という事がほとんど無かった。
あるきっかけからグリフォン隊に入隊し、厳しい訓練の末に正規の隊員になった際 当時の隊長から掛けられた
「よくがんばったな!」の一言、
初めて賊を捕えたときに 被害者の家族から送られた、感謝の言葉、
「ありがとうございました。」
その時の なんとも言い表せない気持ちの良さを、ワルドは今も忘れられない。
子供っぽいと笑わば笑え、彼はただ、『誉められたくて』犯罪取締りに励んでいるのだ。

そもそも 王都周辺の治安維持任務は、三つある魔法衛士隊による 月代わりの輪番制なのだが、隊長就任以来、
ワルドは受け持ち月以外でも 積極的にこの任務を継続してきた。
目的は『実戦訓練』。
「盗っ人どもに遅れをとる様な隊員では、本来の敵、侵略者から国を守る事など出来ない」だそうだ。 
また 他の魔法衛士隊が、事件発生に当たって おざなりに犯人検索を行うのに対し、グリフォン隊は 
徹底した捜査や密偵まで使って犯人を追う。
これにも目的がある。『諜報活動』だ。
「戦いは、奇麗事だけではない。清廉な騎士の魂に、汚れ仕事をする覚悟を併せ持ってこそ、真の強者」とのこと。
だか 先にも言った通り、本当の理由は
「住民達の目の前でカッコイイ所を見せて、褒め称えてもらいたい!」からである。
根は真面目なワルドゆえ、カッコだけつけて仕事は手を抜く等という事も無く、かといってバリバリの正義漢でもないため 
やむにやまれぬ理由があっての犯罪には しばしば温情を持った裁きが下されることも。
それがまた 住民達の人気を呼ぶと言う好循環が出来上がり、トリスタニアは ある意味で理想的な警備責任者に守られているのだった。

そんなワルド隊長の視野に、とある人物が映った。
魔法学校の生徒だろうか? カフェーにいる 三人の少女の一人。
そのピンクブロンドの髪が、懐かしい記憶を呼び覚ます。

大恩ある ヴァリエール公爵、その御三女。
勝気で 生意気で、そのくせ泣き虫な おチビさん。
まだワルぶって ツッパっていたあの頃の自分が、唯一 優しく接する事が出来た子。
厳格な母と キツい性格の姉に責められていたのを、よく慰めてやったっけ。
そう言えば 忙しさにかまけて、もう何年も挨拶にすら行っていなかった。
こんな義理を欠くような事をしてては、あの約束は もう・・・

通りの向こうから 少女が駆けて来る。
(大きくなったなぁ)
既に『女の子』ではない。その身体は『女性』である事を主張し始めている。
(まぁ 隣の赤毛の娘に比べると・・・かなり発育不足かな)
でも あの笑顔は昔のままだ。
思いにふけるワルド、その胸に 速度を落とすことなく飛び込んで、
ルイズは言った(衆人環視のド真中で)。

「逢いたかったよ、『ワルドおにいちゃん』!」

          〈続く〉


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