あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Louise and Little Familiar’s Order-14



「済みません。馬車なんて手配してもらって……」
「別に気にすることじゃないわ。本当は竜籠の方が良いけどお金がかかるし……」

時刻は午前六時を少し過ぎた頃、朝靄のかかるトリステイン魔法学院の正面門には一台の御者付き二頭立て馬車、そして四つの人影があった。ルイズとミーとシエスタ、そしてヒメグマである。
今日はミーがシエスタの帰省に同行する約束の日であった。
見送るルイズはいつもの制服姿で、シエスタはいつものメイド服とは違う簡素な色合いの服を、そしてミーは以前虚無の曜日に買ってもらったという優雅な他所行きの服をしている。
しかし服の意匠なども手伝ってか、見ようによってはミーが実家に帰る人間で、シエスタが御付きの者という風に見られなくも無かった。
御者と駿馬付きの馬車に関しては、二人がなるたけ早く帰って来れるようルイズが手配したものである。
本当はシエスタでも御者を務める事は出来るのだが、彼女の帰省に自分の使い魔も付けるのだからと、ルイズが見栄を張った結果だった。別に親切心からきた物ではない。
それに……国内事情の深刻さを知っているルイズにとっては、二人が出かけている数日間で何がしかの不測の事態が起きた時に、直ぐ自分の所に戻って来れるよう考えて取った最善の処置だった。

「それでは……行ってまいります。」
「ふぁ……いちいち断るようなもんじゃないわ。それに今行かないと野宿することになるわよ。」

深々とお辞儀をするシエスタに対し、ルイズは欠伸混じりの眠そうな返事をする。普段は今のような時間にはまだ目覚めていないからだ。
だが数日前、図書館にある地図で確認したがここからタルブの村までは、馬車に乗って行っても三日はかかる距離がある。
それから陽は未だ山の稜線から完全に出きっていなかったが、行程は弾丸旅行その物なのでそれでも急ぐ必要はあったのだ。
そしてシエスタは、眠りこけているヒメグマを抱え、先に馬車に乗る前に、もう一度ルイズに声をかけた。

「あのう、いいんですか?」
「何が?」
「ミーちゃんと十日だけでも会えなくなるんですよ。その……何も、言わないんですか?」

何も何年間も会えなくなるというわけではあるまいに。それに別れ際の挨拶をどうするかなど人の勝手じゃないか。
ミーに関して色々と恩義があるとはいえ、メイドにそんな事を指摘されるとは思ってもみなかったルイズの表情は、忽ちにして曇っていく。
しかしミーは、何かを言ってほしい様な表情をルイズに向けたまま。
仕方なくルイズはミーに対してやっと聞こえるくらいの小さな声で、しかしぶっきらぼうに「いってらっしゃい」と言った。
すると、ミーも同じくらいの大きさの声で「いってきます」とだけ答える。
傍から見れば物凄くぎこちない挨拶だったが、その様子に少しは満足したらしく、シエスタはミーの手を取って馬車に乗る手助けをする。
それから直ぐに馬車は走り始め、一分としない内に見えなくなっていった。
十日間、十日間だけ二ヶ月くらい前の状態になる。ルイズはそう思いながら寮に戻るために元来た道を引き返し始めた。

Louise and Little Familiar's Orders「Secreted factories in Tarbe」

白の国とも称されるアルビオンには幾つか軍工廠が立ち並ぶ町が存在している。ここロサイスもその一つであった。
首都ロンディニウムの郊外に位置するその町は、特にアルビオン空軍にとっては重要な町である。
今、正に町はこれまでに無いほど活気付いている。路地には各地から木材という木材が運び込まれ、製鉄所を象徴する巨大な煙突群からは大量の煙が出ている。
だがそれもこれも、空軍の発令所の近くに並んでいるある物に比べればなんてこと無い物に過ぎない。
そこにあったのは全長320メイル、全幅50メイルはある巨大戦艦であった。
見る者に否応無く威圧感を与えるそれは、嘗て王党派の旗艦『ロイヤル・ソヴリン』として華々しい活躍をしていた。
だが今は『レキシントン』と名が改まり、操る者達も王党派から『レコン・キスタ』に変わっている。
盤木に乗せられ改修工事が急ピッチで行われているその『レキシントン』のすぐ側で、四人の男達が視察を行っていた。

「これはまた素晴らしい艦じゃないか!このような艦があれば世界を手中にすることも出来そうだ!そうは思わんかね?艤装主任?」
「我が身には有り余る光栄ですな。」

少々興奮気味に話す男の名はオリヴァー・クロムウェル。
緑で統一された衣服を纏った、腰の低い聖職者のような出で立ちの彼はレコン・キスタの総司令官でもあり、一応現アルビオンこと神聖アルビオン共和国の皇帝に当たる人物である。
そしてそのクロムウェルの問いに素っ気無く答えたのは、艤装主任のサー・ヘンリ・ボーウッド。
彼は元々、内心の心情としては王党派、しかも武人として政治には関わらないという姿勢を持っていたのだが、上官が王家に反旗を翻したため、已む無く王家の簒奪者である『レコン・キスタ』につくという形となったからだった。
そしてすぐ隣には年にして20代後半くらいという、羽帽子を被った口髭の凛々しい精悍な顔立ちの若い男が立っている。
その男の名はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。祖国であるトリステインと婚約者のルイズを裏切り、名誉ある魔法衛士隊の地位まで捨ててまで『レコン・キスタ』側についた人物であった。
クロムウェルの話を聞きながら資料に一通り目を通したワルドは、艤装主任のボーウッドに内心浮かんできたある疑問を投げかける。

「ですが『レキシントン』の元の大きさは全長200メイル。これだけ大きく改修すればここから浮上させるだけでも大量の風石が必要になると思われるが、それを調達出来る当てはあるのですか?」
「なに、ワルド君。それには及ばんよ。技術主任によれば……」

その言葉の後を引き取ったのは残った一人の男だった。

「両翼に二発ずつ取り付けられた回転する羽が、水蒸気機関による動力によって高回転域に達した時に出港したなら、必要とされる風石の量は、150メイル級戦艦一隻がトリステインまで往復するのに必要な量と等しい程度で済みます。
加えて巡航速度は一般的な戦艦の倍近くあるので、目的地へも可及的速やかに向かう事が出来ます。」
「おお、そうだったな。技術主任どの!」

ワルドは技術主任に当たる男を見つめる。
自分より10サントほど背が低く髪の色素も薄い。おまけにハルケギニアのどこにも見られない妙な服を纏っている。
だが、狡猾さも伺えそうな整った目鼻立ち、引き締まった体躯は簡単に自分とほとんど変わらない年齢を想起させた。
訝しげに技術主任を見つめるワルドを余所に、クロムウェルは尚も上機嫌に話し出す。

「彼は東方の『ロバ・アル・カリイエ』からやって来たのだ。そこで得られた知識……我々にとっては未知の知識も同然だが、それを元にこの『レキシントン』の改修に着手なされたのだ。
それだけじゃない!20リーグ先まで射程に収めることの出来る50サント型カノン砲に、焼き討ち船の数を従来の半分ですませることの出来る、画期的且つ強力な焼夷弾も開発し設計の主任もなされた!
勿論それらは『レキシントン』に搭載される予定だ。更に、そうした艦を今後六ヶ月の間にあと四隻建造することをもう議会は決定したし余も承認した。
それだけすればこのハルケギニアで我等に逆らおうなどと言う不埒な輩は存在しなくなるだろう。
残った国家を余す箇所無く統一し、にっくきエルフ共を成敗した後、聖地を奪還した暁には私は君をハルケギニア大王に推挙するだろう!」
「いや、そこまでお褒め頂くほどの事ではありませんよ、閣下。それに先程閣下が仰られた技術は私の使っていた様々な道具の祖先的な物から片鱗とも言える部分を再現しただけです。
何分この世界……いや、この国には技術も人も少な過ぎますので。」

技術主任は謙遜した感じで恭しく頭を垂れる。
終始黙って話しの内容を聞いていたボーウッドは、ちらとすぐ近くの様子を見つめた。
確かに四つ横に等間隔で並んでいる盤木の内、一つには既に『レキシントン』と同じくらいの大きさを持つ戦艦のキールが全体の半分近くまで組みあがっている。
そしてもう一度『レキシントン』を見返した時には、彼の心の中である感情が湧き上がっていた。
小回りの効く強襲用前衛としっかり構える支援用後衛の運用バランスは均等でなければならない。となれば当然ながら、戦艦はこれ以外の小規模な物も作っていかなければならなくなる。
その条件を満たすために、今後どれだけ必要な物が出てくるのであろうか?金、木材、人員……消費される物を考え出せばきりが無い。
そしてそれらの何れか一つが欠けるような事が起きれば戦争の継続なぞ不可能なのだ。
そして、そうしたかかる負担が貴族も平民もなしに、アルビオン国民全員にかかる事になるのだ。首脳陣はそれを全て承知の上で、今後一切の計画表を作っているというのだろうか?
それに戦争に限らず、物事には常に不測の事態というものが付き纏う。今でこそ居丈高な態度をとっているが、今後その計画表と符合しない事実が出て来た時にどう振舞うつもりなのか?
ボーウッドは悟られないよう、改めてクロムウェルを軽蔑の眼差しで見つめる。
するとワルドが、そんなボーウッドの心境を推し量ったかのような言葉をクロムウェルにかけた。

「しかし、共和制を布いている我が国への賛同意見は未だ一国からもありません。何がしかの策が無ければ統一は順風満帆とはいかないのではありませんか?」
「それに関しても当座の間は案ずることは無い。
ゲルマニアは我々が持っている技術を最大の餌にしてやれば、トリステイン王家との一件込みで懐柔できる望みはあるだろう。
ガリアには現政権に不満を持つ者が多い。そこで我々に賛同する者達を極秘に、しかし大量に送り込み、時が来れば合図と同時に内部から反乱を起こし、切り崩していけば可能性はある。
それからロマリアは宗教国家だ。聖地奪還を掲げている我々を足蹴にするつもりはないだろう。上手くすれば聖堂騎士隊を貸与してもらえるかもしれん。
さて、我が国から最も近い位置にいるトリステインに関してだが、あれは最早死に体だ。子爵が見つけてくれた件の手紙以外にも、大義名分を翳せば幾らでもつけ入る隙はある。
余は当初ガリアと同じ手段を行使しようとしていたが、技術主任殿がここにいる事から方針を変えた。
この方法なら他国に対しての脅しにもなる、『レキシントン』を始めとする諸戦力の効果的なデモンストレーションにもなる、しっかりとした橋頭堡を築くことも出来ると良い事尽くめだ。
尤も、それを計画・立案したのも技術主任殿だがね。えー、あの戦法名はなんと言ったかな?」

ワルドは若干の驚きをもって技術主任と呼ばれた男を見る。マントを羽織っていない事からメイジでもない、軍工廠にいる一介の技術者が、国政の一端にまで口出し出来るとは一体どういうことなのだ?
そんな視線を気にすることも無く、その技術主任は澄ました様に答えた。

「電撃戦ですよ、閣下。」


学院を出発してから三日後のイングの曜日の夕暮れ時。シエスタとミーを乗せた馬車はタルブの村の領地内に入った。近くには領主でもあるアストン伯の邸宅も見える。
昼食時以来、特に何もする事が無く長いこと馬車に揺られていたためか、ミーはシエスタの膝元に頭を預け軽い寝息をたてている。
シエスタはそれを退ける事も無く、ただ微笑ましげに見つめている。こういう事は昔から実家でも幼い弟妹達相手に何回とやってきたからだ。
そんな昔の思いに浸りながらシエスタはミーの主人、ルイズの事をふっと思い出す。
彼女にとっては、何故彼女があそこまでミーに対して酷な扱いが出来るのか、不思議でならなかった。
彼女の家の素性をシエスタはよく知らない。まあ、シエスタとは反対に‘下に誰もいなかった’というのなら、子供のあやし方もよく分からないという理由付けくらいは誰にだって出来る。
だがシエスタはそれ以外に、人には向き不向きがあるのではないかと考えるようになった。
ルイズと深く関わるようになったのはここ数週間程の事。だが、あの素直になれない面、結構短気な面を持ち合わせていた上で子供をあやすのは難しい。
それならば、どうあっても周りがフォローなりサポートなりしてやらねば、上手くいく物も上手くいくまい。本人がそれを拒まなければ尚良いのだが。
そんな事をぼんやり思っている内に馬車は止まり、年若い御者から「着きましたよ。」という元気そうな言葉が出る。
見ると村の中央広場に少し入った辺りで自分達は止まっていた。囲むようにして建っている家々の戸口や窓からは村人達が、一体どこのお偉いさんが来たのだろうというような顔をこちらに向けている。
シエスタはミーを揺り動かして起こし、一言礼を告げてから馬車を降りる。するとシエスタの家族を中心に、村人達がわあっと出て来た。

「あれまあ、どこの貴族様かと思ったらシエスタだったのかい!随分とまあ立派な馬車に乗って一体全体どうしたんだい?」

最初にシエスタの母が吃驚仰天といった感じでシエスタに駆け寄る。少し戸惑ったような調子でシエスタは事のあらましを説明した。
すると母親は「今時豪放な性格の貴族様がいたものだ」としきりに感心していた。
その内、村人達の興味の対象はミーとヒメグマに移る。
ミーは知らない人達に囲まれておどおどとした感じであったが、誰も自分に対し敵意を向けてないという事が分かると、訥々と質問に答えるようになった。
ヒメグマはというと、可愛い物好きなちびっ子達に余程気に入られたのか、よってたかってもみくちゃにされている。
一頻り再会の喜びに浸った後、シエスタの父が本題とばかりに話しかけてきた。

「ところでシエスタ、この子なのかい?手紙で話していた‘ポケモンの事を知っている人’とは?」
「ええ、そうなの。この馬車を貸してくれた貴族の方の使い魔でもあるの。
ねえ父さん、曾御祖母さんの形見と私達の家族が守ってきた工房をこの子に見せてあげたいの!何か分かる事があるかもしれない!」
「ほお、そうか!だが、まずは長旅の疲れを癒した方が良い。今頃着くだろうと見当をつけていたから、風呂も食事もちゃんと用意してあるぞ。さ、こちらに来なさい。」


空に浮かぶ双月が、煌々とした光を部屋の中に送り届ける。その部屋にいるミーにとって今日はこの世界に来て以来初めての暖かで長閑な一日となった。
風呂場ではシエスタと一緒に背中の流し合いをしたし、家族の人達といろいろな事を話しながら晩御飯も楽しんだ。
シエスタの家族は、みな一様にミーの事を快く受け入れてくれた。まるで本当に家族が一人増えたかのような……そんな感じだ。
ずっとここにいればいいのにとも言われもしたので、ミーは幼子なりにそうしたいと言いかけた。
だが、そんな事をすれば主人のルイズが必ず連れ戻しにやって来るだろう。この場所のことは話してあるので分からないという事は無いだろうし。
そもそも何故ルイズが自分を独占しようとするのか。
しょっちゅう怒鳴ったり、鞭で叩いたりして自分から嫌われるような事をやっているにも拘らず、手元から離れようとすると強引にしてでも自分の元へ引き戻そうとする。
キュルケやギーシュといった学院の生徒なら、その理由の想像は容易につくだろう。
しかし、今は周りにそんな人はいない上に、この世界の構造や仕組みどころか、人生経験があまりにも無さ過ぎる5歳のミーにとってその理由は全く分からなかった。
やがて夜も遅い事に気付いたミーは寝巻きに着替えて眠ろうとする(ヒメグマはすでに寝ていた)。だがその時、『コン、コン!』と扉を軽く叩く音が聞こえた。
誰だろうと思いながら扉を開けると、戸口にはシエスタとその父親が立っていた。二人ともまだ昼間の格好のままである。

「どうしたの、お姉ちゃんとおじさん?」
「ミーちゃん。ちょっと見せたい物があるんだけど来てくれるかな?」

シエスタに頼まれたミーは「うん」と小さく頷く。それから直ぐに、三人は廊下の突き当たりのところまで歩き出す。
そこに着くと、シエスタの父が暖炉で使う火掻き棒を廊下の隅から持って来て、それの尖った方を床のある部分に向けて引っかけた。
そしてそれをゆっくり上の方に持ち上げる。するとそこに、地下に向かう石造りの隠し階段が姿を現した。
それからシエスタが、持ち上げられた床板を完全に外し、自分の隣にあった壁に立てかける。
その事を確認したシエスタの父は、ゆっくりと目の前にある階段を降り始める。シエスタとミーもそれに続いた。
光が先まで届かない事もあって階段は長いように思われたが、意外にも地下一階と二階の間ぐらいのところで一枚の扉を前に終わっていた。
そこに着いた時、シエスタの父が簡素なランプの明かりを頼りに、ポケットから小さくいやに錆びついた一つの鍵を取り出した。
それを扉についている鍵穴に入れ捻る。すると、長いこと油を差していない事が分かるような甲高い音をたてつつ、ゆっくりと扉が開いた。
当然の事ながら中は真っ暗で何も見えない。そこでシエスタの父が扉のついている壁にある松明にランプの明かりを移した。
どうやら松明は等間隔で幾つも壁にあるらしく、シエスタが残ったそれに明かりを灯していく。するとそこには、地上に建っている家の総面積より広く感じるほどの部屋があった。
部屋の中には、様々な色の木の実や難しい言葉で書かれた書類、珍しい科学実験の道具に錆び付いた工具など非常に沢山の雑多な物がある。
しかし、それらはきちんと分類分けされているので、不思議と散らかっているといったような印象はなかった。
始めミーはその様子にキョトンとしていたが、一つの台に乗っている籠に入った木の実に駆け寄ると驚いたような声を出した。

「ぼんぐりだ!!」

ミーは眠くなっていたのも忘れて木の実を眺めた。その様子を見ていたシエスタと父親は、わが意を得たりというような顔をしてお互いに顔を見合わせる。
それからシエスタがミーの元に駆け寄り、静かな声で訊ねた。

「ミーちゃん、この木の実は何なの?」
「これはね、ぼんぐりっていうの!これでモンスターボールを作れるんだ!」
「もんすたあぼうる?」

シエスタにとっては生まれて初めて聞く単語である。だがミーはきらきらとした目でそれを見つめている。
他の村人達からは一緒くたに‘がらくた’と呼ばれ続けていたが、それでもこれらの品々は一家が長きに渡ってきちんと管理しながら守り続けてきた物である。
今やっと、隠されていたベールが剥がされる時が来たのだった。



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