あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

zeropon!-09

第九話

『生命の芽』

ガ・ツーが取り出したのは巨大な鉄球のついた槌だった。
「なによ、あれ?大きすぎない?」
ルイズが小屋の影にキュルケを置き、タバサ、メデンと共にガ・ツーの戦いを見守っていた。
ガ・ツーが取り出したそれはどこに隠していたのかわからないほど大きい。柄の部分はルイズの腕ほど。
ヘッドの部分は振るう本人、ガ・ツーの半分ほどもあるのだ。
「あれは巨鉄球ギガント。ガ・ツーはアレをふるって傭兵「パタの団」の特攻隊長を務めていたのです」
それと同時にガ・ツーの頭から何かが伸びる。
パタパタとはためくそれは耳、垂れた犬の耳であった。垂れ下がったその耳はパタパタと噴出すオーラに煽られる。そして変化と共に光りだす使い魔のルーン。
オーラに包まれたその姿は、幽鬼の如し。
そしてガ・ツーはその一歩を踏み出す。
「いぬみみ」
そしてタバサも一歩を踏み出しふらふらと、犬耳に釣られて戦場に行こうとするのをルイズとキュルケが必死に止める。
「タバサ、ダメ!ダメだって!」
「後で触らしてあげるから!」
その間に再び立ち上がったゴーレム。そして再び修復された足、しかし今度はそれだけでなく、その体が銀色になっていく。瞬く間に全身を包む銀色。
フーケがゴーレムの体を鋼鉄に変化させたのだ。
相対する二つの巨体。
ゴーレムが拳を大きく振り上げ、そして振り下ろされる。
刹那、ガ・ツーの口からぎりりと歯と歯が激しく噛み合う音が響く。
「があっ!」
ガ・ツーがすさまじい速度で横なぎにその巨鎚を振るった。正面から激突する拳と鎚。
硬質な音と共に小屋の傍らを、高速で何かが飛んでいき、轟音と共に遠くの木々をなぎ倒す。
そして三度倒れたゴーレム。その腕は根元から根こそぎふき飛んでいた。
どん!
っという音と共に、ガ・ツーの巨体が空に舞う。
それはさながら、獲物に飛び掛る黒い犬。
パタポンの古き伝説に語られる狂戦士『パタセルク』そのもの。
刹那、空中のガ・ツーに、ゴーレムが倒れた姿勢のまま、その腕を振るう。しかしそれをガ・ツーはハエを払うかのように、空いた片手で払う。
ガインっ!
と、それだけで腕は目標をを大きく逸れ、ガ・ツーはそのまま倒れたゴーレムの胴体に着地。
「おおおおおおおおっ!」
雄たけびと共に振り上げられた巨鎚。はためく犬耳、そして一際輝きだす使い魔のルーン。
鉄と鉄の衝突によって生まれた火花はさながら閃光のようだった。
防ぐ事もできぬままそれを食らったゴーレムの胴体は大穴、というよりはほとんどなくなっており、穴の底は地面になっていた。
「「「すごい…」」」
それを見ていた三人は同じようにつぶやく。
「メデン…パタポンってこんなに…?あれメデン?」
ルイズがメデンに話しかけるも、気づけばメデンがいない。
見回してみれば、ヨイショヨイショと砕けたゴーレムによじ登っていた。
「おい、メデン。あぶねえぞ。まだこいつはしんじゃいねえ」
ガ・ツーの言葉と共に胴体の穴、腕が修復を始めていた。
「しってます。だから止めをさしにきたのですよ」
そう言ったメデンの手には黒い塊。
「あれ…『生命の芽』じゃない!」
それは育ちかけの球根のような姿。そして…
「ねえルイズ。なんかあの球根、パタポンみたいじゃない?」
キュルケの言うとおり球根のまんなかに『目』があった。まるでパタポンと同じような目が。
急速に修復されるゴーレム。まだ土のままだがどんどんとふさがっていく穴。しかしメデンは慌てることなく、
「育ちなさい、マテール」
と、それをその穴に投げ込んだ。それをとりこみつつ完全に修復されたゴーレム。
しかし…動かない。動き出さない。
いや、動けないのだ。
ぱきぱきといった音と共に、ゴーレムの銀色の表面が割れる。
ぴょこんっといった表現がよく合う感じで、『芽』が生えた。
そしてそれは爆発的な勢いで成長し、ゴーレムの端々から根を生やし、ゴーレムを取り込みつつ、一本の樹に成長した。その樹には葉も花も無いが、枝の先がくるりと丸まって、そして不思議な光を灯していた。そして完全に取り込まれたゴーレムは銀色の輝きを失い、そして土くれへと還っていく。
「メデン!」
ルイズが小高い丘のようになってしまった元ゴーレムを駆け上がってくる。
「これは?」
ルイズが見上げる。そこにあるのはまるで最初からそこにあったかのようにそびえる大樹。
「これは『マテールの樹』、パタポン達が生まれる樹。パタポン達の象徴です」
「さっきガ・ツーが覇王とかなんとか…」
「気のせいだ」
「え?でも…」
「みなさん!無事ですか!」
声のする方向をみれば森の奥からロングビルが帰って来た。
「ミス・ロングビル!無事でしたか」
「ええ…先ほどからの音、一体なにが?」
ルイズが事情を説明すると、
「そうですか…これが『生命の芽』の…しかしこれではもって帰れませんね。
とりあえず一度学園にもどりましょう。ミス・ツェルプストーの治療もしなければ」
「しかしフーケは!」
ルイズの抗議にメデンが割って入った。
「ルイズ様、キュルケ様のケガもございます。ここは取り戻せたことだけでも良しとしましょう」
メデンの意見に、多少考えたルイズだが、
「…そうね。ガ・ツー。キュルケを」
「わかった。ロングビル、馬車を頼む」
ルイズとガ・ツーはキュルケを手助けに向かう。
「それでは私も馬車を」
「あ、ミス・ロングビル」
メデンがロングビルを呼び止める。
「はい?」
「学園に着いて報告が終わった後、少々お時間をいただけませんか?
生命の芽の扱いについて、オールド・オスマンと話したいので、お力を貸していただきたいのですが」
メデンが尋ねる。
「ええ、わかりました。そうですね、では夜、私の部屋まで」
「ありがとうございます」
「それでは馬車を」
といってロングビルは丘を降りていく。
その背中を、メデンはすうっと目を細めながら見送った。

「そうじゃったか…アレは樹になったとはのう」
オスマンがしきりに頷く。学園に帰り着いた一行は、学院長室に揃っていた。
「オールド・オスマン…なぜ貴方があれを?」
メデンの質問にオスマンはキセルをふかせながら、懐かしそうに目を細める。
「十年ほど前か…ワシはある土地に霧に紛れ化け物が現れると聞いてな、その討伐をうけおったのじゃ」
ぷかりと煙を浮かすオスマン。
「霧にまぎれて現れたのは巨大な蜘蛛じゃった。霧に紛れ姿を隠し、襲ってくるそれにワシは苦戦しておった。そんな時、あらわれたのじゃよ。
一つ目の…そう。パタポン達が。
彼らは無数の矢と槍をそいつに降らし追い払ってくれたのじゃ。ワシは九死に一生を得た。
しかし彼らは何者かに追われていたらしい。切羽詰った様子でワシに言ったんじゃ。
『ご老体、もしこの事、恩と思ってくださるならば、これを預かってもらえぬか』とな、それがあの生命の芽じゃったという訳じゃ」
その話を聞いて一番驚いたのはメデンであった。
「なんと!私達以外にここに来たものがいたとは…して、彼らは?」
「ワシをそのまま逃がしてくれたのじゃが、後日そこに行ってみれば、最早、影も形も無く…な」
「そう…ですか」
悲しそうな目をしてしょげるメデン。
「メデン…」
ルイズがメデンの肩にそっと手を置く。
「ふむ、湿っぽくなってしもうたのう。褒章の話はまた後日としようか。
メデン殿、今日は舞踏会でのう、よければ皆で参加するといい」
「お気遣い、痛み入ります」
深々と頭を下げるメデン。こうしてフーケの騒動は終わりを告げる。
表では…。

こんこん こんこん
舞踏会が始まる少し前、外が薄暗くなった頃、ロングビルの部屋のドアを叩く音。
「はい、どうぞ」
入室を促す声の持ち主はもちろん、ロングビルだ。
「ああ、メデンさんですか?しばらくお待ちを、今書類を片付けますので」
背を向けたまま入室者に対応するロングビル。
顔を照らすほんのりとした明かりのランプ。
そんなロングビルの頭にすうっと、手がかざされた。
それはロングビルの頭をすっぽりと覆うほど巨大な鉄の手、節々が大きな石のような、まるで鉄のゴーレムのような手。
「動くな」
低く渋い声で放たれたそれは簡潔な要求であった。動いた後どうなるか、それは鉄の腕が放つ圧力が教えていた。
「うかつですね…凄腕の盗賊ともあろうものが油断していましたか」
こつこつと、杖をつきながら入ってくる音がする。今度こそメデンだろう。
しかし動くことができないロングビルは確認することができない。
「メデンさん、これは何の冗談…」
「演技は結構ですよ、無駄なことは省きましょう」
それはメデンの声、だが昼に聞いていたそれとはまるで違う、氷河の氷のような鋭利さ。
「…どこで気付いたんだい?」
ロングビルの返答、こちらも先ほどまでの理知的な話し方とは違う、粗野な言葉。
「それが本来の貴方というわけですか。…まあ単純なことです。
あの小屋、埃が積もってたせいで床に足跡があったんです…私、ルイズ様、ガ・ツー、そしてもう一つ、女物のヒールの足跡が」
それはロングビルの目撃証言、『小屋に入っていく男を見た』に相反する事実。
「…時間が無かったとはいえ、へまをしちまったもんだよ…で?どうするんだい?
このまま憲兵にでもつきだすかい?」
すうっと、ロングビルことフーケの横に出されたのは、熱気と炎をまとう剣だった。
「…これはパタポン族の武器『炎の剣』…これをどう見ますか?」
横目でそれを眺めたフーケは口を開く。
「…業物、しかも常時炎を出すほどの魔力を持つなんて、相当なものだね。
こんな状態じゃなきゃ盗みたくなるくらいだよ」
手の圧力を忘れるほどその剣は魅力的に映ったのだろう、軽口も叩くフーケ。
「ではあげましょう」
「はあ?」
メデンの言葉に驚きと訝しげを混ぜた声をあげるフーケ。
すうっと頭の上の手が消えた。ばっ、と振り返ればいるのはメデン一人。
「どういうつもりだい?」
「単純な取引です。貴方に期待するのは盗賊の際に培った情報網、そして見返りはパタポン族の宝。
貴族ばかり狙おうにも既に、貴方は警戒されている。リスクが高すぎることを無理にするのも馬鹿らしいでしょう」
「…ご名答、最近はどこも厳しくてね。お仕事のお誘いは嬉しいねえ…」
フーケはしばし考えながら、その手を胸元に入れる。
「だが、断…!」
ばっ、とフーケは胸元に隠し持った杖を取り出そうとした、が…
その顔の前に再び…鋼鉄の手がかざされた。先ほどまで向いていた場所から。
つまり正面。その手の持ち主はメデンとフーケその間にいたのだ。いたはずなのだ。
しかしフーケは全くそのような陰など見なかった。
そして今現在も、気配がわからないのだ。まるでその手だけが、そこにぽっかり浮かんでいるかのように、そこにいるはずの腕の持ち主の気配が無いのである。
ごくり、と唾を飲み込むフーケ。そのフーケの視界の端にはメデンがいた。
指と指の間から見上げるその目はフーケに向けて笑みを浮かべている。しかしそれは暗黒の微笑み。
「さあ?どうしますか?」
提示された選択肢は二つあったが、フーケに残された選択肢は一つだった。

「ルイズ・ふらんそわうふげらばあああ?!」
「シタ・パン・クラッシャアアアア!!」
きりもみ回転で頭から呼び出しの衛兵に突っ込むシタ・パンによってそれは始まった。
次々と会場を守る衛兵に突っ込むパタポンたち。程なく壊滅した衛兵、そしてオーケストラの面子はふんじばられて、暗がりに連れ込まれた。
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール神のおなああありいいい!」
ずんどこずんどこずんどこずんどこ、と勇ましい太鼓と共に舞踏会場に現れたのは、神輿に担がれたルイズであった。なんというかすさまじいまでの民族衣装で身を固めたルイズは、現状が認識できないなんともいえない顔で、神輿に揺られていた。
ゆられる神輿の下では十匹ほどのパタポンが槍やら剣やらをもってくるくると踊っている。
そしてなぜか祭壇の如くデコレイトされたステージに祭られたルイズは、ばっさばっさと、巨大な扇であおられ、口元に運ばれた食事をもぐもぐしていく。
他の生徒達は何事かとあっけに取られていた。
「それでは、ルイズ様を讃える舞踏を!!」
シタ・パンの一声でルイズの前に集まってきたパタポン達。
「我等はパタポン!歌と踊りを愛するもの也!いざ讃えん!神を!」
パタポン!っと皆が一跳ねすると共に始まった歌と踊り。
手にとった槍を一振り二振り、飛び跳ね回り、くるくる舞い踊る。
そんな光景は、なんともいえず幻想的だった。
いつしか他の生徒達も陽気な音楽と、楽しげな踊りに混ざりだし、舞踏会場はさながら宴会場になっていった。
楽しき夜は更けていく。
「あら?ルイズ。こんなところで黄昏てロマンチック?」
赤ら顔のキュルケが、バルコニーに腰掛けて月をみているルイズに話しかける。
同じくほんのり赤い顔のルイズはまだオリエンタルな格好のままだが、その表情はいまいち晴れてない。
対照的に中ではさながら無礼講、タバサが用意された食事の八割を食べているのが見える。
「…ねえ、キュルケ」
二つの月を見上げたままルイズが聞く。
「なあに?」
「私は…貴族なのかな?」
「どうしたの?突然」
顔を膝にうずめててルイズが続ける。
「んん、フーケも結局捕まえられなかったし、ガ・ツーにも、メデンにも迷惑かけて…
あいかわらず魔法もさっぱりだし…」
「ばーか」
つかつかとルイズにキュルケは近づいて、がばり、とその頭を胸に抱く。
「ちょっと!」
キュルケの胸に顔をうずめられじたばたするルイズ。
「さあ飲むわよ!こんなところでしんみりしてもだめだめよ!」
「あああああああ…」
手を取られたルイズはずるずると引きずられてバルコニーから会場へ連れ戻される。
バルコニーのドアに手をかけたキュルケ。ふと立ち止まるとルイズの耳元に口を近づける。
そしてささやく。
「ばかねえ。あなたが何だろうと、あなたは私のお・と・も・だ・ち・よ」
その言葉を聞いたルイズは一瞬ほうけた顔をし、すぐにぐすぐすとなきながらも席に戻り、キュルケと杯を交わし、タバサと杯を交わし、メデンや他のパタポン達と踊り、皆と歌い、笑った。
ーぱたぱたぱたーやぱぱらぱーやーー
宴は夜が明けるまで続いた。
この夜、ルイズは学院で初めて心から笑った。



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