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ゼロの騎士団-16


ゼロの騎士団 PART2 幻魔皇帝 クロムウェル 6 「少女と仮面」

向こう側に見えるわずかな光が、まるで楽園の様に感じる。
少なくとも少女はそう思えた。
死は覚悟していた。
しかし、その言葉は正しくないのであろう。
少女は思う。
死を覚悟すると言う事は恐怖と戦わなくてはならない。
だが、目の前の恐怖に対して戦う事など無力な自分には端から無理だったのだ。
勇者や英雄と呼ばれる人間は少なからずそれと戦ってきたのだろう。
あるいは、その中にはこの恐怖に勝てなかった人間もいるかも知れない。
目線を少し上に見上げる。
更に恐怖を感じるだけだが、それでも確認しなければならない。
目の前に居る5メイル程の具現化した恐怖を。
それは、本来ここに居る筈のない存在。
トロール鬼 人が寄り付かない様な山岳地帯に住まう天然の殺戮生物。
獲物は自分だろう。自分を見る視線が教えてくれる。
(……申し訳ありません)
心の中であってもそれだけは言っておこう。
たとえ、ここで朽ち果てる無能であってもそれくらいは許されるべきだろう。
一体が前に出てくる。無力な自分に対するトロール達なりの礼儀なのかもしれない。
手には棍棒と言う表現が生易しいような石の塊が握られている。
振り上げる動作が時間が止まった様に見えたが、見えただけだった。
振りかぶった時点で、自分の足が一歩も動けない事がそれを告げる。
「ごめんなさい、母さん、父さん」
ありきたりな言葉だが、それが言えれば充分であった。
一瞬目をつぶり、振りかぶった棍棒を見る。
しかし、奇妙な感覚を覚えた。
何時まで経っても、振り下ろされない棍棒に違和感を感じる。
時間が止めっている? 今度こそ、そう感じるような気がした。
だが、それは違っていた。
目の前でトロールの上半身がバターの様に斜めに滑り落ちた時でも少女は理解できなかった。
「……魔法?」
少女は呟く。真っ先に思いついたのは風の魔法であった。
熟練者なら、目の前の怪物を斜め切りする事は可能だろう。
だが、聞こえる筈の詠唱は聞こえてこない。
代わりに聞こえて来たのは。
「うおぉぉぉぉ!」
獣と見間違うばかりの得体のしれない何かと、咆哮とも呼べる叫びであった。

それを理解できないのは仕方のない事であった。
彼らにもわずかながら思考がある。
だが、それこそが命を奪われる一番の理由であった。
獣の方向が聞こえる。
恐れる事は無い。そう思い振り向く。
目の前には奇妙な者がいた。
人より少し同じくらいで、自分達の3分の1程も無い。
これでは無い。何度も聞いてきた水のはじける音を思い出し、棍棒を振り下ろした。
しかし、聞こえて来たのは金属音であった。
「甘いぜ、化け物。俺はな……アルガス一の怪力なんだよ!」
下から寄せあげるような感覚がトロールを襲う。
それは、この世界の怪力を誇る者達の中で、暫定一位の怪力の持ち主であった。


離れてからダブルゼータは自分の本来の得物を取り出す。
「ついこの間まで持ってたのに久しぶりの感覚だぜ!」
嬉しそうに、獅子のレリーフがついた斧を見つめる。
獅子の斧――持ち主に何倍もの力を与える。この世界には無い筈の伝説の武器。
骨の髄から、力が溢れ出るような感覚が懐かしい。
自分との再会を喜ぶように、そして、再会の喜びを形で表現するかのように。
ダブルゼータは自分の全力で獅子の斧を横に振る。
ダブルゼータにはニューの様な魔法も、ゼータの様な技も無い。
だが、ただ斧を横に振るだけで必殺の一撃にしてしまう力があった。
先程の光景をトレスするかの様に、トロール鬼の上半身が崩れ落ちる。
少女はただ見ていた。
「あなた、大丈夫?」
不意に声をかけられる。
視線を自分の目の高さに落とすと、そこには胸元を強調する様な派手な私服を着た赤毛の女が目の前に居た。
「はい、大丈夫です」
何とか答える。それを確認すると、今度はダブルゼータに意識を向ける。
「ちょっと、ダブルゼータ! どうして一人で全部倒しちゃうのよ! せっかく、一体倒そうと思って呪文唱えていたのに!」
自分にかけた声と違い、ダブルゼータに向かって不満気な声を上げる。
「倒しちまったものはしょうがねえじゃねえか! だいたい、それならちゃんとした指示を出せよ、お前が俺をけしかけたんだろ!」
「アンタが一体倒している間に、私がもう一体を倒すつもりだったのよ!」
「先に言えよ!」
「そもそも、私はトロールがいる位しか言っていないわよ、アンタが勝手に飛び出して行ったんじゃない!」
辺りの闇に反比例するかのように、二人のやかましい声が続く。
どうやら、手柄の問題の様だ。
「あの、ありがとうございます」
「え、ああ」
礼を言うと、言い合いをしていた二人が自分の存在に気づく。
呪文――目の前の女はメイジなのだろう。
そして、瞬く間にトロール鬼を倒してしまった。人型のゴーレムの様なもの。
(この人達なら……)
少女は考える。
自分。そして、自分の主にとって必要な物。
(……よし)
少女は決意し、今も口論を続ける二人に割って入る。
「あの、私はリオネと言います。貴女方は」
そして、彼女達が何者なのかをさりげなく聞く事にした。


ホテル クラリッジ
コノート、バークレイと並ぶアルビオンにある、最高級ランクのホテル。
入口のロビーには、純金であしらった調度品が置かれている。
主な客層は貴族と有力な商人で構成され、とても平民が目の前で立ち止まる事すら許されない様な雰囲気すら感じた。
少なくとも、今居る部屋はリオネにとって当然初めてであった。
部屋は見た事が無い大きさのベットが二つと脇にソファーがあり、隣には10人が席に着けるテーブルが置いてある。
「いいんですかこんな所に? 私なんかを入れて」
「いいのよ、それに高いホテルはプライバシーと安全も価格に含まれている物だし、落ち着いて話すにはこの方がいいでしょう」
少女の態度をさほど気にせず、ソファーに身を投げる。
リオネもソファーに座ると、キュルケが話を切り出し始めた。
「さて、リオネだったわね。あなた、どうしてあんな所で襲われたの?」
問われて、リオネは彼女を見る。
ここに来るまでのお互いの自己紹介を思い出す。
彼女はトライアングルのメイジの学生であり、今現在アルビオンに旅行に来ている事。
トロールを倒したゴーレムは彼女の使い魔である事が解った。
艶やかな褐色の肌、燃えるような赤い髪、一流の彫刻家が作成した様な体の造形。
(この外見で私より年下なのよね、一流の傭兵メイジか何かだと思ってたわ)
ハニーナッツの様な髪の色、19歳で少女と形容される体つき。
自分とはまるで正反対であった。
「はい、私は貴族様にお仕えするメイドで、旦那様に頼まれた用事を終えた帰りでした。
そこを、偶然トロール鬼に見つかってしまい貴女方に助けられた訳です」
それは、間違ってはいない。
自分は貴族に使えるメイドで、偶然、トロール鬼見つかった事……あの場所に居た理由を除いては。
「偶然ね……アルビオンは初めてなんだけど、普段からあんなのが町中をうろついているの?」
キュルケが疑問を口にするが、リオネが気になったのはある一言であった。
偶然――口にしながらもキュルケは疑問を持っている。そして、それが考えに繋がる。
彼女は自分と言う存在に少なからず興味を持っていると言う事。
そうでなければ、自分を部屋まで連れてこないだろう。
話をするなら歩きながらか、その辺の空いている飲み屋にでも行けばいいだろう。
だが、何故それをしないのか?
盗聴、情報の漏えい――答えはそれだろう。じゃなければ、プライバシー等とわざと言わないだろう。
キュルケはこう言っている――ここなら安全だ、話を聞かせろと。
そうでなくても、キュルケの瞳にあるのは興味や好奇心がありありと見てとれた。
「はい、貴族派が実権を握ってから……でも、何でここまでしていただけるんですか?」
「そうねぇ、……とりあえず、そろそろ芝居を止めにしない? お互い、手札が見えているポーカーなんてつまらないでしょ?」
キュルケの言葉を聞いて、リオネは息を飲む。
どうやって切り出そうか迷っていただけに、相手から切り出してくれるのは有難かったが、同時にキュルケに対してある考えも浮かぶ。
「……気付いていたんですか?」
「あんなのがうろついている街中で、貴族が大事な用件を頼むのにあなたを使う訳が無いわ。
それに、この時間に相手を尋ねるのはよっぽど重要な事がある場合で、それだけ重要なら本人が出向くものよ……リオネ、あなた王党派の人間ね?」
キュルケからしてみれば、重要な用件をメイド如きに任せるとは考えていない。
それに、十中八九勝利を手にしかけている連中が、わざわざ小娘一人の力など借りないだろう。
(……そこまで気付いていたなんて)
事態が良い方向に向かって居る筈なのに、リオネにはむしろ得体の知れない感覚が湧きあがる。
自分は嘆願するつもりであった。
無力な平民が力ある貴族に協力を乞う。そして、報酬で自分の主に力を貸してくれる貴族を思い描いていた。
しかし、キュルケは自分が利用する考えを見抜いている。


「そこまで解っていたのですか?」
(……どうしよう)
キュルケは金銭では靡かないであろう。もともと自分達の財政も良い訳では無いし。
そもそも、このクラスのホテルに泊まっている人物が自分達の報酬で受ける訳ないのだ。
(この人は何を望んでいるのだろう)
リオネは考える。最大の条件で交渉できないとわかったのに、彼女は交渉を打ち切ろうとしない。むしろ、今度は自分の方から何かを持ちだそうとしている。
そんなリオネの思惑を知らん顔でキュルケは話す。
「自分の家でおどおどしているペットは居ないわ、するとしたら、他人の家。自分のテリトリーでない所に行った場合ね。今のあなたがまさにそうよ。今更だけど、私は貴族派の密偵とかじゃ無いから。
もしそうなら、あの時あなたを捕まえるか、それこそトロールに捧げているわ」
そうだろう、自分が持っている物は相手にとって不利に成り得る情報と益をもたらす情報だ。
自分を捉えて、拷問し情報を得る事位は造作もないであろう。
キュルケはこう言っているのだ――同じ舞台に立て。
目の前の女は自分が主導権を握っているのが気に入らないのだろう。
脳内で、見せる手札と見せない手札を素早く分け始める。
10秒の沈黙の後、リオネの準備は整った。
「はい、私はメイドをしながら得た情報を、ご主人様にお伝えする役目を担っています。さっきは、手に入れた情報をお伝えする為に向かう途中でした」
あらかじめ見せる手札を見せる。
「情報の内容は?」
「それは言えません」
これは見せない。現時点で味方に成り得るか確信の無い人間に、情報と自分の主は絶対に知られてはならない。
それこそ、さっき捨てる命を、もう一度捨てなくてはならない。
「どうすれば、教えてくれるのかしら? 私凄く気になるわ」
条件は解っている。だが、同時に思う事もある。
「誘い出しといて言うのもなんですけど、貴女はかなりのお家柄だと思われます。貴女の家にも迷惑がかかるかも知れません」
キュルケは外国の貴族それも、家は解らないがかなりの名家であろう。
そんな人間がいったいどこまで協力してくれるのか?
これが傭兵なら、事は簡単である。しかし、場合によっては国の問題に為らないと言う保証はどこにもなかった。
「それでも、必要なんでしょ? 傭兵達が言ってたわよ、負ける王党派何かに付きたくは無いって。それに、私は両親に半ば勘当されてるから、家の事は心配しなくてもいいわよ」
もっとも、ばれたら後で説教くらいは受けるだろう。
その時、蚊帳の外に居た人物が二人の芝居に参加する。
「俺の意見は聞かないのか? 危険な事に首を突っ込むのはどうかと思うぞ。それと、学校はいいのか?」
それまで聞く側に徹していたダブルゼータであった。ここで自分の立場を明確にしておかないと、参加が確定するからであろう。
しかし、それはあまり意味のない事かも知れない。
「嬉しそうに斧を握りながら何を言ってるのよ? 暴れるのはもう少し我慢しなさい」
キュルケがため息交じりに呟く。目の前の人物は今までの話を聞いて、感じた事は秘密をした恐怖でも、仕事の難解さでもなく、遊技場を与えられた子供の顔であった。
「俺はこれでも、争い事は嫌いなんだぜ? お前の方こそ、新しい男を見つけた時の顔みたいにじゃないか」
「その時はもっと嬉しそうにするわ。それに、ここって、全然いい男居ないじゃない」
二人は暢気に会話を始める。
「あの、お二人は参加してもらえるのですか?」
それは、参加の表明と言えるのか、リオネは確認する。
「え? ああ、良いわよ。さっそく案内して頂戴。あなたの主様の所に」
キュルケが彼女に促しながらも、ダブルゼータの方に意識を戻す。
これが、リオネの彼女達との出会いであった。


アルビオンの酒場
世間という物が最も関心を持たない。場末という表現が使われるその場所に、二人は居た。
「はぁ、これからどうすればいいのかねぇ」
何かに頭を悩ませているマチルダが居た。
空いた二つのジョッキが既に三杯目である事を現す。
酒に逃げる方では無いが、その日は不機嫌もあり、酒を進ませていた。
その声を聞いて、つまみの肴に手を伸ばしていた真駆参が答える。
「稼ぐしかないだろう。いいのか? もう出て来てしまって、ティファが悲しむぞ」
本来、妹と一緒の時間を予定より削られた事が、彼女の不機嫌な原因である事を真駆参は知っていた。
(お願い、姉さんの様子を見てきて欲しい・・・監視してほしいの)
彼女の言葉と、悲しそうな顔を真駆参は思い出す。
自分の主も、自分達の帰還を楽しみにしていたのだ。
(俺もアイツの為に稼げたら問題はないのだがな)
自身がマチルダとティファニアの力になる事が出来ず、真駆参も悩んでいた。
「仕方ないだろう、休暇をとって帰省と言う事であの娘には話しているんだから……それに、あの娘が何となく気付いているのは居づらいから」
マチルダが顔をしかめる。
ここ数日は姉妹というよりも、何か事情を持った人間を匿うそれであった。
(あの娘は私が危険な事をするのに反対している。だから、行かないように私を気遣ってくれた……)
そして、その事が彼女にとっては逆に家に居づらかった。
だから、休暇の終わりと言って、マチルダは家を出る事にした。
「で、これからどうするんだ? 学院とやらに戻る訳にはいかないのだろう?」
「当たり前じゃないか、いつもの通りさ」
そう言いながら、泡の飛んだ酒をあおる。それを見て、真駆参は溜息をつく。
(マチルダの腕なら問題はないだろう。しかし……)
真駆参は考えを口にする。
「俺がまた助けなくちゃいけないのか?」
「見くびるんじゃないよ、アンタはあそこに帰ってあの娘を頼むよ。仕事に集中できないよ」
マチルダにしてみれば自分ひとりで町を出ていく筈であったが、出る時にティファニアが真駆参を監視につけたのだ。
(コイツが居るんじゃ、仕事を受けにくいったらありゃしないよ)
ティファニアに自分の汚い所を見られている気がする。
視界を共有して居る訳ではないが、そんな思いがマチルダの心に浮かぶ。
「探すなら、短期で出来る傭兵なんかはどうだ、ここなら今、募集しているだろう? それなら俺も協力して良い。お前のゴーレムとでもいってな」
(根本的な解決ではないが、俺に出来る事はこう言った事しか無いからな)
自身としては不本意であるが、それでも盗賊に身をやつすよりは、まだマシだと思えた。
だが、それは建設的とは言えなかった。
「悪いけど、それはお断りだよ、特に王国軍には付く気はないよ」
酔いの醒めた、強い口調で否定し、マチルダが睨みつける。
(確かに、こいつにとっては王国軍に肩入れをする気はないだろう)
マチルダからしてみれば、それは絶対に受け入れる事が出来なかった。
真駆参はマチルダの反応が何を意味したのか、意味を理解していた。
「すまない」
「別にいいわよ……それに、反乱軍もお断りだよ、あいつ等も胡散臭いしね」
二人だけなら、この話題は終わる所であった。


突如、二人に声が掛る。
「しかし、その反乱軍は君に用があるのだよ、土くれのフーケ」
無意識に懐の杖を握り、真駆参は立て掛けた槍に手をかけ、声の主の方に視線を向ける。
振り向くとそこには、仮面をつけた長身の男が居た。
(気付かなかったの……)
酔っているとはいえ、自分と真駆参に気取られずに近寄った事に警戒を覚える。
「誰だい? ここは酒場だよ、仮装パーティーがしたいんなら他に行きな」
彼女は男を睨みつける。入口のドアの方に、首を動かし出てけとサインを送る。
「そう邪見しないでもらおう、君達の懐事情を救うかもしれない相手に」
だが、気にも留めず仮面の男は軽い感じを装って、空いていた椅子に座る。
近くのウェイトレスに注文し、下がらせる。
その様子を二人はずっと見ていた。
「生憎だね、最近仕事が終わったばかりで、懐は暖かいのさ」
少し事情を知る者から見れば、この酒場では最も安いつまみが置かれたテーブルを前にしてそのような事を言うのは寒い冗談だ。
しかし、それを聞いても、男はそれを指摘する訳でもなく。
「そうなのかい? モット邸で仕事をする前に撤退した君の懐が温かいとは、君の能力を過小評価していたようだね」
「!」
(コイツ、何でそんな事を!)
真駆参も知らないであろう事実を聞いて、マチルダは目の前の男に不信感を募らせる。
そして、目の前の男が危険である事を二人は確信する。
マチルダの驚いた表情を盗み見た真駆参が聞かれないように声を掛ける。
(どうする? 明らかに怪しいぞ)
(だからって、迂闊に動くんじゃないよ、仲間もいるかも知れないし)
二人は目配せする。周辺に仲間が居ないとは限らなかった。
「構え無いでもらおう。何、依頼は簡単だよ。数日後、アルビオンに向かう連中の足止めをして貰いたいのさ。報酬はこれだよ」
言葉と共に、どこから出したのか、いかにも重そうな金貨の袋が置かれる。
マチルダは置かれた物が本物かどうかを確認するふりをして、額を脳内で計算する。
(確かに、これだけあれば当分の間はあの子達が暮らしていけるね)
警戒とは裏腹に、払われるべきであろう報酬の高さには惹かれる物がある。
「確かに、報酬は魅力的だね。けど何で何だい、そんなのアンタがやればいいじゃないか?アンタは私より腕が立ちそうだしね」
マチルダは疑問を口にする。これほどの金額を払える人間なら、外部等に頼る必要もないだろうと踏んでいたのだ。
男は、ワインを軽く飲みながら、その疑問に答える。
「その厄介な相手でね、君を追い込んだ3人組の一人と言えば君も分かるだろう?」
(アイツ等かい、面倒な相手だね……)
マチルダは自分が相手をする人物の情報を教えられて、驚きを強くする。
名前を出す必要はない。それは、二人にとっては忘れられない相手であった。
「で……誰が相手何だい?」
「魔法を使えるのを相手してもらう、何でも先住魔法の類を使うらしい」
(つまりはニューとあのお嬢ちゃんって事かい)
相手を聞いて、マチルダは舌打ちする。
マチルダもニューの魔法を見ていただけに、相手をするのは気が引けたが
(一人だけなら何とかなりそうだしね……)
この前は六人を相手にしたが、二人なら何とかなるかも知れない……
「気楽に言ってくれるね、アイツはかなりの手錬なんだよ、これじゃあ安すぎるよ」
(どうせなら、釣り上げさせてもらおうか)
マチルダはそう考えて、賃金の値上げの交渉を開始する。
しかし、マチルダが額を言う前に、別の声が遮る。
「……気に入らんな」
それまで、沈黙を保ってきた真駆参が男を睨みつける。
「何でだい、傭兵をやれって言ったのはアンタだよ」
「そう言う事では無い……ただ、姿を現したらどうだ!」


マチルダには一瞬、何をしたのか理解できなかった。
真駆参は自身の槍で、仮面の男を突き刺したのだ。
男が崩れ落ち、地面に対して槍がまっすぐ突き刺さる。
それを見た、客やウェイトレスは悲鳴をあげる。
「静まれ!良く見てみろ、これは偽物だ」
しかし、真駆参は落ち着きを払って一喝する。
真駆参が槍で、もう一度仮面の男を突き刺す。すると、仮面の男は溶けるように消えてしまった。
「居るのだろう。本体が無事な内に出てきたらどうだ!」
真駆参は確認もせずに入口の扉に向かい声を投げつける。
その声に反応するように、扉が開く。
「驚いたな、まさか遍在に気付くなんて」
さっきまでと同じ仮面をした同じような男が入ってくる。
「昔、そう言った手合とは戦って来たからな」
男の驚きを含んだ声に、真駆参が不敵に笑い返す。
(しかし、最初は気付かなかった……これも魔法と言うやつか)
天宮(アーク)で戦った妖魔忍軍の刃流刃浪が使うような術を目の辺りにし、真駆参も内心では驚きを感じていた。
「それは失礼した……決めたよ、君も一緒に雇いたいんだ。これの3倍の金を払おう、どうかね?」
仮面の男は今度は真駆参に交渉を持ちかける。
真駆参は受けないだろう。
もっと強い言い方をすれば、再度切りかかるのでは無いか? マチルダはそんな事を考えた。
だが、予想とは違い、それを聞いて真駆参は考え込む。
(たしかに、これの三倍もらえれば、当分の間、マチルダはテファの所に居られる。
しかし、それでは、あいつ等と戦わなければならない事になる)
報酬は魅力的であるが、対峙した彼らに対して、自分の言った言葉が嘘になる。些細な事ではあるが真駆参にはそれが決断を鈍らせていた。
「ちょっと、真駆参! アンタにはあの娘を守ってもらわないといけないんだよ! アンタだって、こんな奴の依頼は受けたくないだろう!」
真駆参が自身を止めるどこか、結果的に報酬を上げる要因となった事で、マチルダも止めに入る。
それは、真駆参の耳にも届いていた。
(俺はティファを守らなくてはならない。しかし、それ以外にも出来る事があるとすれば……)
自身にとって、その行いは恥以外の何物でもないだろう。あの異世界の武者達や共に戦ってきた仲間は自分の行いを罵るかもしれない。

……しかし、それでも得られる物がある。

苦渋では無かった。
ただ、彼女――ティファニアの顔が浮かんだのが真駆参を躊躇わせたが、彼は決意した。

「いいだろう、その依頼引き受ける」
その言葉を聞いて、ある者は満足そうな顔をし、ある者は苦い顔をした。
その時、真駆参は自分がどんな顔をしているか分からなかった。


「34 扉が開き、不気味な仮面の男が現れた」
仮面の男
マチルダと真駆参を雇う
MP 800

ゼロの騎士団 PART2 幻魔皇帝 クロムウェル 

自身の魔法が見破られた事に、彼は少なからず驚いた。
(大した物だ、偏在に気づくとは)
偏在を通して興味深く見ていたが、今ので、より一層興味を持った。
彼らの種族の情報はある程度得ていた。
しかし、実際に能力を見るのは初めてであった。
(ガンダムか……つくづく楽しませてくれる)
彼は同じ仮面をかぶり、扉を開けた。

今回はこれで投下終了です。
ありがとうございます。

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