あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

『零』の使い魔-3

毛布で寝ていた双識は、眩しい光で目を覚ました。
一つ大きい伸びをすると、バネ仕掛けのように体を起こす。
目が完全に覚めたことを確認すると、双識はベッドに寝ているルイズを見た。
朝日に照らされたあどけない寝顔に、思わず例のだらしない表情になる。
双識がしばらくそうして眺めていると、ルイズの瞼がピクリと動き、ゆっくりと開いた。

「やあ、おはよう。今日も良い朝だよ。ルイズちゃん」

「ふに……おふぁよ…………あんた……?……ああ……使い魔ね……」

「そうだよ。忘れちゃったのかい。酷いなあ。私は悲しくて泣いてしまいそうだよ」

「……そう……そうだったわね……」

ルイズは小さい口でくあ、とあくびをすると、のろのろと起き上がり、ベッドのふちに腰掛けた。
体は前後にゆらゆらと揺れ、寝ぼけ眼には焦点があっていない。
まだ反対側の足が夢の中に入ったままのようだ。

「着替え……なきゃ………」

「そう!着替えだよ、ルイズちゃん!」

ルイズの言葉に過剰に反応した双識は、突然思いついたかのように手をぽん、と叩く。
それは余りにもわざとらしい仕草だったが、寝ぼけているルイズは気がつかない。

「……はえ?」

「いやほら、朝。朝ってことは、着替えをしなくちゃ、ね!」

ね、の所を不必要に強調して、双識はクローゼットを開け始めた。その目は爛々と輝いている。
その目にルイズは本能的な危機を感じる。
さっきまでルイズを支配していた眠気は、あらかたどこかへ飛んでいってしまった。

「――って自分でできるわよ!それぐらい!」

「使い魔は主人の着替えを手伝うんじゃないのかい?私は使い魔として――」
「とにかくいいの!後ろ向いてなさい!」

双識は不満そうに後ろを向く。
が、誰だって「うふふふ」と不気味に笑う目つきの危ない男に自分のクローゼットを開けられたら、危機感を覚えるだろう。
覚束ない手つきながらも着替えを済ませたルイズに連れられ、双識も部屋の外に出た。

ルイズと双識は長い廊下を歩いている。
どこに向かっているのか双識は知らないが、とりあえずルイズの後ろ数メイルをキープし、付いていく。
この学院の制服を着た生徒が、時折二人を追い越して行った。

「おはよう。ルイズ」

ルイズは嫌そうな顔で足を止め、声のした方向――真正面を見る。
挨拶の主は、ルイズと双識がこれから曲がろうとしていた通路の角に立っていた。

「……おはよう。キュルケ」

急に足を止めたルイズに転びそうになりながらも、双識はキュルケと呼ばれた少女を見る。
褐色の肌に赤い髪、見事なメリハリのある体。
双識の好みからは少し外れているが、魅力的な少女だった。
恐らく彼女もこの学院――トリステイン魔法学院の生徒なのだろう。

「あなたが平民を召喚したって噂を聞いてたんだけど、本当だったみたいね。さすがはゼロのルイズ」

「余計なお世話よ!それにこいつが勝手に召喚されてきたんだから!私が悪いんじゃないの!」

「負け惜しみ言っちゃって。どうせなら、あなたもこういうのを呼べれば良かったのにねえ?フレイム!」

キュルケがそう言うと、角で見えなかった暗がりから、赤いトカゲのような生物が現れた。
『のっそりと』現れたトカゲは、双識が思った以上に大きかった。
恐らくその体長は2メイルを下らないだろう。尻尾まで勘定すれば、3メイルに届くかもしれない。
その姿に少し驚いた双識だったが、魔法があるんだから未知の生物だっているだろうに、と強引に自分を納得させた。
ルイズが悔しそうに口を開く。

「サラマンダー……」

「そうよ。赤くて太い尻尾。この毛並み。正真正銘、火竜山脈のサラマンダーよ!」

「サラマンダーに毛なんか生えて無いじゃない!」

苦しい反論をするルイズを無視して、キュルケは双識に向き直った。
そして双識の顔や体を興味深そうに眺め始める。
「ふうん」「へえ」などと言いながら双識を眺めている様は、どことなく買い物中の主婦を彷彿とさせた。
一通り双識の品定めを終えたらしいキュルケは、双識に艶然と微笑みかける。

「あなたよく見るとなかなか格好いいじゃない。お名前は?」

名乗ろうと双識が口を開くと、ルイズが怒ったように遮った。

「答えちゃ駄目よ!キュルケ!あんた人の使い魔にまで手を出す気?」

キュルケは肩をすくめると、くるりときびすを返した。

「おお怖い怖い。馬に蹴られる前に退散するわ……じゃね。ゼロのルイズちゃん。おっほっほっほ」

高笑いをしながら去っていくキュルケ。後ろ姿に、勝者の余裕が漂っている。

「何よ!自分がサラマンダー召喚したからって!そんなのぜんぜん悔しくないんだから!」

どうやら敗北感を感じているのは間違いないようだった。
背中が煤けているルイズに、双識は昨日から気になっていた疑問をぶつけてみる。

「――きみは昨日から『ゼロのルイズ』と呼ばれているみたいだが――それはどういう意味だい?」

「あんたは知らなくていいの!」

肩を怒らせて歩いていくルイズを見て、双識は自分が地雷を踏んだらしいことを悟った。


(微熱のキュルケ――試験開始)

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