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ゼロの黒魔道士-40


「フハハハハハハハ!!踊れ踊れ踊れぃ!!」
「ク、クェェェェェッ!?」
「う、うわわっ!?」
よく、普通の人間の子供がやる遊びに、『鬼ごっこ』っていうのがあるらしい。
鬼役の子供につかまらないよう、他の子供たちが逃げるっていう遊び。
遊びじゃないって点を除けば、これはその『鬼ごっこ』に近い状況だったんだ。
……逃げるしかない。悔しいけど、空中戦はワルドの方が上だった。
「やっこさんブチ切れすぎだろ!?」
「ぼ、ボコ、大丈夫!?」
「クェェ~……」
詠唱速度の差や、身のこなしの速度はやはりあいつの方が勝っている。
立て続けに巻き起こる風の刃や矢からは逃れるので精一杯になってしまう。
加えて、チョコボが飛べない鳥なのが問題になっていた。
あいつが乗っているのは空を駆け巡るワシの頭をしたクァールみたいな猫っぽい生き物。
ボコは甲板を跳び跳ねるように避けるのに対して、
ワルドはマストの間を縫うようにすりぬけて迫ってくる。
間合いを自由自在に操る相手ってかなり厄介なんだ。
おまけに、この船が敵の物だから、ときどき敵の兵士がこっちを狙ってくるんだ。
……さっきから、何回『スリプル』や『ストップ』を唱えたか分からない。
息もあがってきて、呪文を詠唱するのもきつくなってきた。
「あぁ、やはりこうでなくてはな!やはり力とは、弱き者を睥睨するためのもの!」
ワルドの高笑いが、マストの上の方から聞こえてくる。
逃げていてもしょうがないって思ったのはこのときだった。
帆が何枚も目隠しになって、狙うときは今しかないって思ったんだ。
「違うっ!力は……」
ワルドの言葉を否定しながら、一気にボコを駆る。
折り重なる白い帆を貫くようにデルフを突き出して、狙いはワルドそのもの。
懐までもぐりこんで決着をつけるつもりだった。
「あ、相棒、前に出すぎだってぇのっ!!」
「誰かを守るためにあるものなんだっ!!」
それは、守りたいものを守るための一撃だった……

ゼロの黒魔道士

~第四十幕~ 守るべきもの


「ふんっ!!」
その一撃は、ワルドの腕の一振りでアッサリといなされる。
「クェッ!?」
「うぁああっ!?」
重い一撃。ただの義手とは思えないほど重厚な一撃だったんだ。
そのまま甲板に叩きつけられる。
甲板の木材が体のあちこちに刺さって小さな傷になった。
呼吸が無理矢理、体から引きはがされるように吐き出され、息ができない。
動こうにも、まずその苦しさに反応すらできない。
「悪くない義手だ!しかし、子鼠を痛めつけるには少々加減が利かぬのが難点か」
「く……」
辛うじて首を動かすと、ボコは少し離れたところでぐったりしている。
デルフは、手の届かない位置に転がっている。
なんとか、つかみたいけど、ワルドがそれよりも速く甲板に降りたっていた。
「ほぅ、手ごたえの割には持つな。流石は“神の盾”……だが、しつこすぎるっ!」
「う……が……」
禍々しい金色の爪をつけたその左手で、喉元をしめあげられる。
苦しい。目の前が歪みそうになるぐらい
「相棒ぉぉっ!?」
「あるいは、この左手をまず落としてやろうか?俺のようにな」
「わ……ワルド……」
杖を突きたてられて、声を絞り出すのが、やっとだ。
それでも、意識を手放したらそのまま動かなくなっちゃいそうだった。
だから、声を出すことに意識を集中した。
しゃべる内容は、ほとんど思いつきだ。
「死に際にまだしゃべるか?いいだろう、何を語る?」
「……お前は……何を、したいの……?」
ルイズおねえちゃんを裏切って、レコン・キスタに取りついて、ワルドの狙いが分からなかった。
目の前が真っ暗になりそうだけど、そこに納得がいかなかった。
「なかなか的を射た質問だな。教えてほしいか?冥土の土産にでも?」
「――ワルド殿っ!」
遠くで、駆け寄る足音が聞こえる。レコン・キスタの兵士なんだろうか。
「――やれやれ、余計な加勢が出てきたようだ。冥土の土産をやる暇は無いな。
 最も――はなからやるつもりなぞ、微塵も無かったがな!」
「う……ぁ……」
左手の義手で首をつかまれたまま、甲板に思いっきり叩きつけられる。
息をどう吸っていたかを忘れるほど、空気が恋しい。
クラクラして、『苦しい』って声を出すことすらできない。
「生きたまま捕えた方が勲功は大きいのだが――」
揺れる視界の中に、ワルドの突きつけた杖が見える。
「――ガキ共に虚仮にされた恨みは、勲功では贖えなくてな!」
左目と右目の真中の、杖の向こうに、ワルドの歪んだ、醜い笑い顔が見える。
「あの世で俺に詫び続けるがいいっ!!ガンダールヴよっ!!」
聞きたくない勝利宣言が、頭の中にグワングワンと響いた。


ピコン
ATE ~記憶の歌~

少女は黄色い鳥の上にいた。
顔色を言えば三日飲まず食わず寝ずで過ごした者と同程度に青白い。

メルカトール号の断末魔は、タルブからもやや遅れて聞こえた。
最初は祝福のための催しの一環であると考えていた。
しかし、直後シエスタの弟からもたらされた急報が、その事実を否定した。
同級生と使い魔の、少年二人が、戦乱の真中へ、鳥馬を駆って向かったという。

まず失ったのは言葉だったが、目の前の現実を失うのも、そう離れた時間ではなかった。
そして、言葉を発せないまま、報を伝えた少年からショコボと呼ばれる鳥を奪い取り、
焔色の爆発が見えた方向を目指したのも、わずかな間であった。

後ろで友が、認めたくはないが心の奥底で友と認めた者たちが止めようとする声が聞こえた。
しかしそれは足枷にはならなかった。
ある焦燥感が、少女の頭を満たしていたからだ。

私は、また置いて行かれてしまう。
また一人取り残されて、泣いたまま終わってしまう。
彼女の乗るショコボは、風を巻いて木々を駆け抜けた。

木々を抜け、現場に近づくにつれ、
大砲の奏でる空気の振動が肌で感じるほどに近づくにつれ、
焦燥感は不安へと変わっていった。

それは彼女と、今、物理的に彼女が追いつこうとしている二人の違いから来る不安であった。
もちろん、自分も彼らも、未だ幼い身であることは承知のとおりだ。
至らず、足りないものがまだまだ多い。

ビビに足りないものは速さだったのだろう。
彼はそれを強さで補った。
何よりも強い、その優しさを足した。

ギーシュに足りないものは目標だったのだろう。
彼はそれをビビに見出した。
カッコいい自分を目指すことで歩みを足した。

では、私は?ルイズは小さき胸に問いかける。
何が足りないの?何を足せばいいの?
いくつもの果てないハテナが浮かんで消える。

背が?力が?優しさが?目標が?
何もかもが足りない。
前を進む彼らには物理的に追いついたとして、
この私に一体何ができるというのだ?
私には、追いつけない。
追いつかせてくれない。

いつかは追いつくと思っていた。
共に並んで歩きたかった。
守られるだけは、もう嫌だったから。
できることは何でもやった。
暇があれば、優しくなれるように笑顔の練習だって内緒でやった。
目標も描いた。
毎日毎日、追いつけるように、走った。
毎日毎日、届くように、背伸びをした。

でも、追いつこうとすればするほど、彼らは前に進んでいる。
いつも見えるのは、小さいけれど大きいその背中。
手綱を握る手をじっと見る。
この小さな手では、何1つ、つかみ取ることがかなわぬと言うのか。
手綱を握る手が、ゆるゆると弛み、ショコボの速度が人の走る程にまで落ちる。

大声で、泣き叫びたかった。
情けないほどちっぽけな自分に。
揺れる鳥上で、目から溢れた雫が、頬を伝わり、
風に乗って後方へと流れていく。

泣くのは無駄だと、ルイズも頭のどこかでは考える。
涙で強くなれるというのなら、とっくに強くなっている。
だが、この感情をどう止めろというのだ?
溢れる悔しさが、小さい胸では納まりきらず、
あとからあとから涙腺を伝って流れ出てくる。

バカルイズっ!軽く自分の頬をひっぱたく。
涙で前が見えなくなった頃だ。
何て愚かな悩み事なのか!それでも貴族と言えるのか!
小さき苦悩でウジウジと、みすぼらしいではないか!
自分を奮い立たせる文句を、口で小さくつぶやく。

涙をぬぐって前を見よう。
私は臆病で、いっつも自分の影見てた。
今日こそ影に背を向けよう!
どんな坂道でも這い登って、追いついてやるのだ。
敵に背を向けない者を貴族と言うのだ。
だからといって、己の影ばかりが敵なのではない。
影を作る眩いばかりの光を、しっかり見据えてやる!
それが貴族として、いえ、私が私として、できることだ!
何ができるかではない、やるしかないのだ!
無謀ではある。だが、何もせずに泣くのはもっと嫌だから!
手綱を再び強く握りしめる。
もう、ゆるめない。一直線に追いついてみせる。
そして、勝手な真似をした二人を思いっきり叱ってやるのだ。全てが終わった後で。
滴る頬の水路をぬぐい、混沌と化す空の下を目指し、再び少女は風となる。

覚悟を抱いたルイズの左手、
涙をぬぐったその甲にはめられた指輪の宝石に、
己の小ささを悔やんだ涙が触れ合って、
微小な光の悪戯か、小さき虹を作りだす。
それがじんわりと広がって、懐に潜む白き本と呼応する。

遠い昔に賢人が、言ったとされる事実がある。

奇跡とは、決意の先に光る物。

覚悟を決めた少女が、奇跡の存在に気づき手を伸ばす。

「何なのよ、これ!?」

白い本が、虹色の光を発している。
光源は、無地であったはずの祈祷書に描かれた文字。
いかに秀才とはいえ解読に時を要する古代ルーンを、ルイズはいとも簡単に読み取った。
否、感じ取ったと言うべきなのだろうか。
それは、『序文』という簡素な言葉と、万物を司る四系統の説明からはじまる文面だった。

「神は我にさらなる力を……
 四の何れにも属せず。我が系統は……四にあらざれば零(ゼロ)。
 零すなわちこれ『虚無』。我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん……」

読めぬはずの文字を読む速度が上がる。
文面を書いた人物に思いを馳せれば、もっと感動的だったのだろうが、
その先の文言に、彼女の望む答えがあった。

『命を削る』という危険予告の文面や、
『指輪をはめなければ読めない』という注意書き内の注意書きは飛ばして読み進める。
彼女の視界に映ったのは、1つの呪文。
『初歩の初歩』とされている以下の呪文。

「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ……」

なんのためらいもなく、紡がれる文言。

「オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド……」

聞いたことも無い響き、だがどこか懐かしさを感じさせる。
そうそれは、母がかつて歌ってくれた子守唄のような。

「ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ……」

唱えるごとに、体の中の歯車がカチリカチリかみ合っていく感覚がする。
失っていたパーツを、足りなかった部分を、全て取り戻すかのように。

「ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル……!」

全てを歌いあげた後、ルイズは理解する。
自分のできること、やれること、そしてしたいことを。
彼女は全てを選んで破壊することができる。
彼女は自分の使い魔を助けることができる。
彼女は追いつけなかった背中を守れる。

能力と望みが合致し、彼女は迷うことなく、最後の言葉を叫んだ。

ビビを、ギーシュを、友を、国を、全てを守りたい!!
この呪文は、足りない何かを足す力!!
「エクスプロージョンッッ!!!!」

 ・
 ・
 ・
2つ目の太陽が、ルイズの願望と共に出現ししばらく経った後、
キュルケ、モンモランシー、シエスタが川原で見つけたのは、
満足そうに祈祷書を抱えて眠りこける少女の姿であった。




……目の前が、真っ暗になるものと思っていたら、
強い光が、ボクの瞼を通して瞳の中に入り込んだんだ。
「――なんだ、この光は?」
「十一時二十五分方向中心に光源っ、どんどん広がって――」
「そ、そこら中、光だらけですっ!雲の中のような――」
「――貴様か、ガンダールヴ!!何を、何をしたっ!?」
いくつもの叫びが聞こえる。
ワルドの握力を首に感じる。
でもそれ以上に、もっともっと強くて、優しい感覚を、光の中に感じたんだ。
「……ルイ……ズおねえちゃ……ん……?」
何故だか分からない。でも、ルイズおねえちゃんの歌が、聞こえたような気がしたんだ。

花火のような音が、それに続く。
いくつもいくつも重なって、まるで何かをお祝する祝砲のように聞こえる。
「なぁっ!?」
驚いたのか、ワルドの手が首から離れる。わずかだけど、息をする余裕ができた。
「そ、操舵部から爆発音!同時刻に動力部からも爆発音がっ!!」
「救難信号です!ハイウィンド号とエンタープライズ号が航行ふの――いえ!周囲の僚艦全てから救難信号がっ!」
「航行不能!航行不能!脱出艇に急げっ!」
「おのれ、貴様が、貴様がっ!この俺を!どこまでも邪魔を――」
さっき離れたワルドの手が、金色の爪が、思いっきりボクの左腕に……
「ぅっ……ぐぁ……」
鋭い痛みの後、軽さを感じる。大きな荷物を失ったような感覚。
そのちぎれるような音に、左腕がどうなったか見たかったけど、そっちに首を向ける力が無い。
「さぁ、次はその首を――」
影になってワルドの顔が見えない。
だけど、光の向こうから、マストが崩れ落ちるのが見えた。
「ぐはぁぁっ!!??」
ワルドの姿は、グズグズに崩れ落ちるマストと共に消えた。
そして、ボクの目の前も……暗くなった。
 ・
 ・
 ・
「おい、相棒、相棒!目ぇ覚ませよっ!おいっ!」
デルフの声が聞こえる。
聞こえるってことは、なんとか助かったんだろうか。
それとも、ここって空の向こう、なのかなぁ……?
「ゴメン……ちょっと……厳し……そう……かな……」
右腕がすごく痛むのに、左腕の感覚が無い。
あぁ、痛いってことは、かろうじて生きてるみたいだ。
マストは、ボクの体を避けて倒れたみたいだ。
……小さくて、良かったなってちょっと思った。
それでも、体を動かすのは少し厳しそうだ。
体に力が全く入らない。
「クェー?」
チョコボの悲しそうな目を、初めて見た。
視界いっぱいに、黄色い羽毛にくるまれた、潤んだ瞳が見える。
「……ボコ……ゴメンね、巻き込んで……」

「――“虹”が見えたら会おう、そう僕は思っていたが――」
静かな声が、今だ続く爆音の中に、微かに、でもはっきりと聞こえた。
「やはり、再会は晴れた空の下が一番だね――雑音が多すぎるのはいただけないけど」
「だ、誰でぇ、こらぁっ!剣一本でも相手すっぞ俺様!」
聞き覚えのある、声。
何かが腐ったような甘さを持った声。
「お久しぶり、ビビ君!会いたかったよ!」
「ク……ジャ……?」
焦点の定まらない風景に溶け込むように、そいつの姿が映っていた。
ボクを、ボク達を“作った”男の姿が。
黒魔道士を、ひどいことに使おうとして作った男の姿が。
「僕達の脚本を、君“達”は見事に砕いてくれた――フフフ、もちろん、良い方向にね!
 あぁ、なんと素晴らしい役者達なんだろう!最高の舞台だよ!」
「お……まえ……なんで……」
全てを滅ぼそうとして、ジタン達と一緒にやっつけた男が、そこにいた。
「さて、盛り上がってきたお芝居も、いよいよクライマックス!至高のショーは脚本家も意図できないものになりそうだよ!
 何だかゾクゾクしてこないかい?六千年分の集大成を特等席で観劇できるんだよ?」
いくつもの『なんで』や『どうして』が頭に浮かぶけど、それも段々ゆっくりになる。
視界が少しずつ狭くなってきたんだ。
「――だから、君“達”には演じてもらいたいんだ――」
目の前が真っ暗になる寸前、クジャの背筋が凍るような笑顔が目に焼きついた。
「――悲劇に幕を降ろす、重要な役割をね――」
ボクの記憶は……一旦ここで途切れてしまったんだ。
それは、深く、深く沈むように……


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