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ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-44


44.フォンティーヌの休日

二人が落ち着いてしばらくしてから、姉妹は少し遅めの昼食を取った。
エレオノールがやって来たのは一時間程前で、
まだご飯を食べていなかった。そしてカトレアはずっとルイズを見ていたからだ。

「で、よろしいのですか?私の様な者も一緒で」

実家にあるテーブルと違い、円卓状になったそれの傍に立つグレイ・フォックスが、
主人であるカトレアに聞いた。

円卓のテーブルの意味はそこに座る者は皆同じであり、
貴賤の差無しという事である。
カトレアはこのテーブルで使用人と共に食事を取っている。

「構いませんわ。妹を運んでいただきましたしね」

ペコリと頭を下げて、グレイ・フォックスは貴族らしい、
ちゃんとした作法で座り、昼食を取る。

「しかし、まさかハーフエルフとはね。アルビオンにそんなのがいたなんて」

エレオノールはルイズから詳しい話を聞いている。
彼女のぎこちないながらも優しい笑顔なんて見たことが無いルイズは、
多少緊張した面持ちで話している。
まるで年の若い母親が娘に学校で今日何があったのかを聞いているようで、
とても微笑ましいものだった。

「で、でねエレオノール姉さま…」

自分の隣に座り少し顔を赤らめて説明するルイズは、
ほんの数ヶ月前までは考えられない程に、
良い目になっているとエレオノールは気付いた。
叱りつけた事しかなかったな――とエレオノールは思う。
可愛い妹だというのに。ふと無意識の内にルイズの頭に手が伸びる。

「ね、ねえさま…?」

優しく撫でられるルイズは、今何が起こっているのか信じられない目で、
エレオノールを見ている。明日は矢が降るわ。
いいえ、大砲かしら?そんな不届きな事を考えてしまう。

「いい、い、いままで悪かったわね。ここ、これからは、
 多少は優しくしてあげるから。か、感謝しなさい!」

ひ、とルイズは怒っているかの様な剣幕で、
まくし立てるエレオノールから身を逸らそうとしたが、
内容を頭の中で理解してから顔を真っ赤にした。

「は、はい!」

そんな、一風変わった昼食の風景をフォックスは見ている。

「エレオノール姉さまは、あの子をほめた事が無いのよ。
 さっきは上手くいってたんだけど。やっぱり素直になれないのね」

カトレアは笑顔でフォックスの疑問に答えた。
何も言っていない灰色狐は、は?と言いたげな表情でカトレアを見る。

「勘が良いのよ。シェオゴラス様譲りでね」

な、と叫びそうになったが、シェオゴラスに頭をやられたとしたら、
この城の事も理解できる。と自身を納得させた。

シェオゴラス信者はヤバイと聞いた事はあるが、
誰かを殺傷したという話は聞いたことがない。
大丈夫か。信者の数はタムリエルでも上位だし。
とフォックスはコロコロ笑っているカトレアに、
にこやかで生暖かい笑みを返した。

「あら?苦い慈悲をいただいただけよ。ラルカスもね」

楽な死を選ばずに、苦しくても生きる。
それが生きる者の義務だ。だが、真っ当に生きていけない者達はどうする?
それでも死んではならない。だから、狂ってでも生きるべきだ。
俗世を捨て、正気で生きていけぬ者を狂わせるのは慈悲だ。苦い慈悲だとも。

なんて事をシェオゴラスが言ったかどうかは知らないが、
彼は狂わせてでも生かすべきという考えで行動している節がある。
もっとも、彼にとって狂っているのはタムリエルの自称マトモな連中であり、
自分こそが正気なのだとも考えている。何が正しくて何が間違っているのか、
その判断は常に難しく、簡単に出来る事ではない。

「苦い慈悲?あまり意味が分かりませんが…」
「生かす為に、本来してはならない事をすることですわ」

はぁ。とフォックスは気のない返事をして食事を食べる。
シェオゴラスにせよその信奉者にせよ、
その心の内が常人に理解出来るはずがない。
適当に返事するか。と彼は美味しいご飯を食べることにした。


昼食が終わり、しばらく経った。
ヴァリエールの美麗三姉妹は城の外にいる。
カトレアは動物たちと遊んでいる。
ルイズとエレオノールはそれを近くの木陰で座りながら眺めて喜んでいた。

「ちいねえさま…ほんとに元気になったんだ」

エレオノールはふう。と息を吐いた。
喜んでいるには違いないが、何処か影の差す大人の笑みを浮かべていた。

「体の方は――アカデミーの技術力を結集させて薬を作ったから、
 病気が治ったら色々凄い事になるのよね」

「え?」

エレオノールは気まずそうに頭をかいた。

「あの子には相当負担を掛けたから…えーと、シェオゴラスだっけ?
 何かどっかの小国の王子様に諭されて、その後随分性格変わったけど。
 で、薬よ。病気の進行遅らせる為に体を無理矢理元気にさせたの」

「えと、ちいねえさまのお体って、それで無理矢理大きくなられたのですよね?」

「そ。で、まぁ…水の秘薬主体の薬なんだけど。
 あー…出所は聞かないでね?水の精霊の機嫌が悪い原因の一つだから。
 それで病気ってね、体が弱ければ弱いほど尚更悪くなるのよ。
 体の芯がどうしても治せないから、仕方なくそれ以外を強化してたってわけ」
そう言えば昨日ちいねえさまがそんな事を言っていたような。
とルイズが思い出していると、エレオノールが低い声で言った。

「だから、あの子の力は結構凄いのよ?
 熊とか普通に持ち上げてたし。
 その分相当体に無理をさせたのだけれどね。
 ルイズ。あなたカトレアが白い髪だったの覚えてる?」

コクリと頷いた。

「本当はあなたと同じ髪色なのだけれどね。
 薬の影響で体に相当な痛みが走っていたの。
 それが原因で髪が白くなって…それ以外にも色々あってね。悪い事をしたわ」

「あねさま…」

しんみりとした空気が二人にまとわりつこうとした時、
ごうと一陣の風が二人を包んで、空気ごと吹っ飛ばした。
上空100メイル近くまで吹き飛ばされるが、
レビテーションの魔法でゆっくりと地面に落とされる。
軽く当ててそんな空気はダメと言いたかったのだろうが、
加減が出来ないのは母親譲りだろうか。

「あら、ごめんなさい。弱くしたつもりだったけれど…」

やっちゃった。とカトレアは笑う。ルイズはエレオノールをじっと見た。
女史はあさっての方向を向いている。

「ねぇあねさま。これも薬の…?」

コホン、とエレオノールは咳をした。

「魔法についてはまた少し話が変わってくるの。
 あー…今から話すことは誰かに言ったりしたらダメだからね?」

ルイズが興味深げに頷いたのを確認してから、
エレオノールは語り出す。

「わたし達が知っている魔法の系統は全部で五つ。
 なのに、四つまでしか使えないのって、変だって思った事無い?」

「あるけど…残り一つは伝説だもの」

「そう。そこが問題なのよ。それのせいで皆本題からずれるのよ!」

ビシっと指を立ててエレオノールはまくし立てる。
ルイズは、ずれるの意味が分からなかった。

「虚無は伝説の系統。あるかどうかすら分からない。故に他のメイジは使えない……。
 だからメイジは四系統の魔法を使うわ。そこまでは何の問題も無いの。けど、
どうして最高でもスクウェアクラスまでにしかなれないのかしら?」

エレオノールの自信たっぷりな笑みを少々引きながらルイズは見ている。

「本当はそれ以降もあるし、ちゃんといるのよ。それ以降のスペルを一人で使える人が。
 ただ、その『伝説』を利用してスクウェアまでって事にしてるだけなの。
皆が使えるのは四系統までだから、四つまでしか系統を足せない。そういうことにしてるのよ。
カトレアも『スクウェアの先』へ到達した一人よ。けれどどうやったら到達出来るかは、
まだよく分かっていないの。そもそもクラスの変化がどの様にして起こるか、
そこまで解明されていないからね。精神の状態というか、気分というか。
そういう不確かな何かが大きく関係するみたいなのだけれど」

そういうのは理論で割り切れる物ではないからね。とエレオノールは説明を終えた。
ルイズは口も目もあらん限りに見開いて驚く。ふふん。とエレオノールは笑っている。

「そ、その「それ以降」ってもしかして…」

あり得る。というより母はスクウェアではない。そうでなければおかしい。
とルイズは何度も思ったことがあった。
そんな桃色の髪の妹はエレオノールの言葉に恐れを抱きながら、
一つの質問をした。

「ででで、では、母さまは」

「あれは仮に言うならオクタゴンクラスね…。
アカデミーの研究で何人か風のスクウェアに出会ったけれど、
 成体の火竜をドットスペルで気絶させる様な人はいなかったわ。
 まぁ、始祖の定めた法に外れるってことになっているから、今のは人前で言っちゃダメよ。
 異端呼ばわりされて、敬虔なブリミル教徒に何されるか分かったものじゃないわ。
アカデミーとか、そういった魔法研究の場じゃ一般的な事だけどね。
ところで、あなたどの系統に目覚めたの?」

カトレアは教えてくれなかったのよ。
と凄くぎこちない笑顔でエレオノールは言った。
同じくぎこちない笑顔でルイズは考える。
本当の事を言うべきかどうか。言うべきかしら。

「その…ええと…『虚無』なの。エレオノール姉さま」
「…ねぇおちび。冗談はほどほどにしときなさいよ?」

ルイズは錬金の魔法で辺り一帯を黄金色に変え、それから母親譲りのカッタートルネードを放った。
エレオノールは眉一つ動かさず、その様を眺めて――

「あねさま?」

ルイズが声を掛けるが返事が無い。とんとんと肩を叩くとそのまま崩れ落ちた。
気絶したらしい。まぁ、それもそうよね。と思いながら、ルイズはエレオノールに寄り添った。
風が草原を吹き抜ける。先ほどの疲れが現れたルイズは、
そのままエレオノールの隣で眠りに落ちた。カトレアは動物たちと一緒にその隣に座る。
そしてルイズを優しげな瞳で見た。

「良い日だわ。始まりの門出に相応しい爽やかな、ね。
 ルイズ、選ばれたのはあなたよ。何が起こるかまでは、
 本には書かれていなかったわ。あれは予言書じゃないし。けれど――」

ごう、と強い風が吹く。木がざわめき動物たちがめいめいに驚いて鳴いた。

「あなたがこれからを支えるの。それだけは間違いないわ。ね、『パラヴァニア』?」

鳶色の目を猫の様に細め、カトレアはコロコロと笑った。


そんなこんなで夕方が過ぎ、夜となる。
いい加減帰らないとマズイだろうとのことで、
ルイズは来たときの様に、風竜に乗って学院に戻る事になった。

「またね、ルイズ。今度はそのマーティンさんも連れてきてね」

カトレアは笑って手を振っている。ルイズも笑って手を振る。
先ほど気が付いたエレオノールはとても美しい笑顔で、ルイズに近寄っていく。
ルイズは立ちすくみ、顔を引くつかせて苦手な姉を見る。

姉の顔は見たことの無い程綺麗な笑顔だった。
ただ、それは妹に向けるものではなく、
何か自身の研究を躍進させる物を見つけたような、
最良の実験台的な、なにかを見つけたような。
そんな笑顔のまま、エレオノールはルイズを見つめている。

「夏期休暇中は絶対アカデミーに来なさい」
「ごめんなさいあねさまいやですその手はやめていひゃい!ふぉめんなひゃい!!」

地獄の悪魔っぷりを、エレオノールは纏い始めた。
誰に習ったわけでもない。おそらくそれは、エレオノールのどこかに眠っていたのだ。
今までは、レベルが低くて表に出なかっただけなのだ。
かつては無意識の内にこぼれるだけだった己の悪魔を、
エレオノールはルイズの反応を見ながら操り始めた。
サディストな笑みを浮かべ、まず右の頬を強くつねった。
それだけで、ルイズは音を上げそうになった。

それだけでは飽きたらず、頬をつねたまま手を左右上下に動かし、
それから左の頬をつねった。両の頬が引っ張られてルイズの顔の皮膚が伸びきり、
ルイズの美しい顔を描くラインが台無しになった。同時に軽蔑を多分に含んだ流し目を送る。
そうなるとルイズはもう、涙を流して許しを請うだけで精一杯になってしまった。
オブリビオンの精鋭デイドラですら震え上がるような、しかしとても静かな声で、
エレオノールはルイズに言い放った。

「もう一度聞くわ。来るわよね?」
「ひゃれ…わひゃりまひた!!いきまひゅ!いきまひゅかや!」

怖い。この姉ちゃんすんごく怖い。ブラヴィルのスクリーヴァくらい怖い。
と、シロディールの姐さんカジートを思い出しながら、風竜の上でフォックスは震えた。

「そう、良い子ね。あなたの使い魔も連れてくるように…良いわね?」

絶対零度よりなお冷たい声で、エレオノールは優しく言った。
ごめんなさいルイズ。やっぱり優しくなんて出来そうにないわ。
と、つねりあげる事でどこか心が高揚していく自分を感じながら、
ルイズの悲鳴を聞く。その顔は満ち足りていた。

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