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ゼロの花嫁-12

ゼロの花嫁12話「品評会EXステージ」



ルイズが地獄を見た日から、半月程日々が流れた。
真っ白な灰となり、風が吹けば飛び散ってしまいそうな程にか細い存在と成り果てていたルイズも、既に何時もの調子を取り戻している。
宮廷は王位継承で連日大賑わい、ルイズ達の罪状も恩赦で無かった事に。
晴れ晴れした気分になれるはずのそんな日々を、より満ち足りた物にするイベントがルイズ達を待っていた。

「私達に芸を披露しろと?」
ルイズが呆気に取られた顔で問い返すと、コルベールは満面の笑みで頷いた。
「ああ、この間の品評会が特に好評でね、あれを王位継承祭の時に披露して欲しいと宮廷から打診が来たんだ。光栄な事だ、是非頑張ってくれたまえ」
その宮廷を散々騒がせた当人達に頼む事じゃないのでは。とか思ったが口にはしないルイズ。
上位三人、タバサとキュルケとルイズの使い魔を王都特設ステージで披露するという趣旨だ。
派手すぎるイベントはそもそも好まないタバサは無表情のまま、拒否オーラを出している。
キュルケは評価された事自体は嬉しいようで、面倒そうにしつつも悪い気はしてない模様。
そしてルイズ。声をかけてもらったのは嬉しいのだが、宮廷で目立つのはもう避けたいと思っていた矢先であるので、返答に困る。
「色々あったけど、それも含めての依頼だ。気にせず全力で披露してくるといい」
コルベールのそんな勧め言葉に、ルイズ達は頷くしかなかった。


「ふれいむうううううううううう!!」
泡を噴きながらぴくぴくと震える愛する使い魔を抱きかかえながらキュルケが絶叫する。
すぐ隣ではタバサの使い魔シルフィードが、同様に痙攣しながら引っくり返っていた。
ルイズ、キュルケ、タバサの三人はそれぞれの使い魔を伴い早めに会場入りしていた。
引率のコルベールが王室付きの医師を呼んできて、倒れた二体の使い魔の症状を見てもらうと、何らかの薬物中毒であるとの事。
すぐに治療した為大事には至らなかったが、魔法を持ってしても回復には丸一日かかるそうだ。
ひとしきり憤慨した後、さてどうするかとなった。
使い魔抜きでは芸の披露など出来ない。
コルベールは運営委員会に事情の説明をして、今回は出場を見合わせるといった旨の発言をするが、三人は納得しなかった。
あれから更に練習を重ねて練度を上げてきた珠玉の芸である。
何より、これが事故ではなく誰かの故意によって引き起こされた事態であると思われた事が四人を頑なにしていた。
ルイズは額に皺を寄せっぱなしである。
「冗談じゃ無いわ。何処の何方様か知らないけど、そんなに私達の芸が嫌だっていうんなら、絶対にやりきってあげる」
完全に戦闘体勢のキュルケ。
「犯人消し炭に変えるのは後よ。今はステージを成功させて奴の鼻を明かしてやるわ」
タバサもまた薬物の使用が余程気に入らなかったのか、顔に出さず激怒していた。
「……許さない」
誰一人止まってくれそうにない。それ以前にコルベールは剣振り回しながら犯人探しに行こうとする燦を止めるので手一杯である。
コルベール抜きのまま、どうするかの相談は続く。
たまたまその場に居合わせてしまった不幸な王室付き医師も巻き込んで、何とかステージのアイディアは纏まる。
細かい詰めに入る頃にはようやく燦も落ち着いてくれ、コルベールと燦も交えて突貫作業の準備が始った。



「な、何とか間に合ったわね」
肩で息をしながらルイズがそう呟くと、キュルケも壁にもたれかかって荒い息を吐く。
「間に合ったっていうのコレ? いやそれでももう、やるしかないんだけどさ」
「大丈夫よ、きっとウケるとは思うわ。というかこれだけやってウケ無かったら私暴れるわよ」
「そんな元気が残ってればね」
タバサと燦の方もどうやら終わったらしい。
最後の打ち合わせを終えると、コルベールは舞台天井に登ってスタンバイ。
「……何で私もココに居るのよ」
お祭りという事で遊びに来ていたモンモランシーが何故か付帯袖に居る。
ぶちぶち文句を言うモンモランシーを、逃げたら燃やすの一言で連れてきたキュルケはぴしゃっと言い放つ。
「うっさい、ギーシュはお兄さんと一緒なんでしょ? だったらどうせ暇なんだから付き合いなさい」
「もう充分付き合ってあげたでしょ! 何で私が大工仕事なんてしなきゃならないのよ……」
ぐちゃぐちゃ言った所で、既に会場は満員御礼。
前席の貴族席はもとより、外野席に当たる平民用の席も立ち見が出る程の大賑わいである。
モット伯の件は宮廷のみならず平民達の間でも有名で、そんな連中が一体何をやらかしてくれるのかと皆興味津々なのである。
モンモランシーもここまで付き合ってしまった為、引っ込みがつかなくなってしまっているのだ。

大きく深呼吸一つ。
ルイズは舞台袖で皆に気合を入れる。
「行くわよ!」
まずはルイズとキュルケの二人がステージへ出る。
この二人こそモット伯晒し者事件の主犯である。自己紹介が済むと後席の平民達がわっと沸く。
平民を守って悪徳貴族を懲らしめた、そう街中に広まっているせいかエライ人気である。
思わぬ好感触に、二人は気をよくしつつ芸の準備に入る。
二人が引っ張ってきたのは巨大な箱である。
下に車輪がついているおかげで、スムーズな移動が可能なそれを観客達の前で一回転させ、タネも仕掛けも無い事を示す。
何をするつもりかと観客達が見守る中、ルイズがその箱の中に入ってしまう。
箱の上部にある穴から首を出し、準備完了。
箱の大きさはちょうどルイズの体全体がぴったり収まる大きさで、中で身動きする余裕もほとんどない。
そこでキュルケが取り出だしたのは一本の剣。
ルイズとキュルケ、二人の視線が絡み合う。
「い、いいわよっ!」
「おしっ、遠慮無しでいくから覚悟決めなさい」

ぶすーーーーーーーーっ!!

宣言通り遠慮呵責無しに、深々と箱に剣を突き刺した。
箱の上部から飛び出しているルイズの顔が、見るも無残に変形する。
観客席、特に貴族の多い前席からは小さい悲鳴が上がるが、すぐにルイズがにこっと笑ったおかげで皆が安堵する。
もちろん芸はこれで終わりではない。
アシスタントモンモランシーが、舞台袖から剣を十本、重そうにしながら持って来る。
「ちょ! ちょっとキュルケ!」
洒落にならぬ気配を感じ取ったルイズは、顔中から嫌な汗が垂れるのを堪えながらキュルケに抗議する。
「一本や二本じゃ誰も納得しないでしょ」
「だったら最初っから言っときなさいよ!」
「何言ってるの。最初に言ったらアンタ嫌がったでしょうに」
小声でぼそぼそと言い合いながらも、キュルケは剣を受け取り、早々に構える。
「いや、それ死ぬから! 本気で死んじゃうってばあああああああっ!」
「舞台袖に王宮付き医師揃えてるんだから、即死以外は何とかするわよ」
「人事だと思って……ぎゃあああああああああああ!!」
ルイズの悲鳴に重なるように、キュルケはもうこれでもかという勢いでぶすぶすぶすぶすぶすぶすぶすぶすと剣を突き刺していく。
都度貴族のご息女とも思えぬ、もぬすごい顔になるルイズ。

そう、この手品。タネも仕掛けも本当に無いのである。
気合で耐えて、ステージが終わるなり舞台袖に控えている王宮付きの優秀な医師達に魔法で治してもらうつもりなのだ。
箱の底板から赤黒い何かがじわっと染み出てくる。
上部の板にはルイズが吐き出した血が放射状に飛び散り、舞台上まで血しぶきが舞っている。
キュルケは全ての剣を突き刺し終わると、一礼をしようとするが、箱を振り返ってこんこんと叩き、ルイズにも礼をするよう促す。
当然、剣が十一本も刺さってるルイズはそれどころではない。
頭がぐでーっと穴の縁によりかかるように寝転び、反応すら出来ない。
それを見たキュルケは肩を竦めて見せ、観客達に大きく礼をして締めた。

観客達の大爆笑を背にステージ袖まで箱のままルイズを引っ張っていく。
誰も大貴族ヴァリエール家の娘が、本気で自分に剣刺してるなんて思ってもみないのだ。
奥にはサイレントの魔法で音が外に漏れぬようにしてある、簡易手術室が用意されていた。
「早く! 顔が土気色になってきてるわ!」
医師達は呆れすぎて文句を言う気にもならないらしい。
「……すげぇ……本気でやりやがった……」
「馬鹿! ぼさっとしてる場合か! すぐに手術にかかるぞ! バカバカしいとか思うなよ!
 むしろその勇気を称えろ! そうとでも思わなきゃ治してやる気になんてなれんからな!」
「急所外せばいいってもんでもないだろ……うっわ、ひでぇなこりゃ。この出血でまだ息があるとかそれが既に奇跡だろ」

次なるはキュルケの出番である。
フレイムがやる予定であった火の輪くぐりをキュルケ自身で行うのだ。
流石に品評会の時のような精度を維持しつつアクションは無理なので、火の輪はコルベール作成の鉄の棒に藁を巻いて油を浸し、火を付けるようになっている。
が、実際に火をつけてみたモンモランシーは確信する。
『……こんなのくぐったら自分も燃えるわよ、絶対』
コルベールが油の量を誤ったのか、凄まじい勢いで燃え盛る炎。
実はこれ、自分だけ痛いのが許せないと思ったルイズが、油の量を倍に増やしていたのだ。
曰く「このぐらいスリリングな方がきっと盛り上がるわ! キュルケも私の配慮にきっと感謝するわね!」だそうである。
モンモランシーが舞台袖に戻ってくると、キュルケが水を頭から被っている所であった。
この時体に纏わり付いた水を、モンモランシーとタバサが魔法で操り、火からキュルケを守るというのがこの芸のタネであった。
「キュルケ、多分無理」
炎の勢いを見たタバサは即断する。
「何言ってるのよ! 今更引っ込みつかないでしょ! 二人共頼りにしてるんだから頑張ってよね!」
モンモランシーとタバサは顔を見合わせる。
「……あの氷の矢に耐えたキュルケだし、きっといけるわよね?」
「耐えられるとは思う。患者が一人増えるだろうけど」
三つ程用意されていた火の輪は、その全てが紅蓮の炎で燃え上がっている。
キュルケは、舞台袖から走り出して行った。
モンモランシーとタバサの目には、その背中がうすらぼんやりと透けて見えたような気がした。

いきなり飛び出してきたキュルケは、まず一つ目の火の輪に頭から飛び込んでくぐり抜けると、すぐに立ち上がって観客達に礼をする。
にこやかに笑うキュルケであったが、内心それ所ではなかった。
『何よこれ! 滅茶苦茶熱いじゃない! どうなって……』
一応危ないからと厚手の服を用意していたのだが、その随所から火が上がっている。
水の幕なぞ一瞬で蒸発してしまった模様。
『たばさもんもらんしいいいいいいいいいい!!』
一度引っ込んで再度水の魔法を、そう思ったのだが、観客達は先の芸と同じ芸風かと大笑いで迎えている。
既に引っ込みはつかない。
『ああもうっ! やればいいんでしょやれば!』
豊満な肉体を誇るキュルケの衣服が、炎で焼け焦げ、瑞々しい皮膚が外に晒される。
服の端から燃え尽きていく形になっているので、長めのスカートの端から少しづつ艶やかな太ももが姿を現す。
アクションの大きさもあって、絶対領域は確実に失われていく。
上着は端からではなく、はち切れんばかりに漲った胸部の上から黒ずみ、下の柔肌を露出させていく。
アクションのみではなく、得意の扇情的な仕草を交え、時に淫らに、時に激しく動いて観客達に応える。
キュルケはもう色んな意味でヤケになっていた。
きっちり台座に固定してあった火の輪を素手で掴んで、逆上がりまでしてみせる。
のんびり火の輪の中に座り込みながら欠伸をするなんて真似までやったキュルケは、最後にステージの前に出て会釈をした。
その頃にはもう全身が燃え盛っており、余りに派手な演出は、観客を存分に驚かせ、満足させてくれた。

ロクに前も見えない状態で何とか舞台袖に引っ込み、簡易手術室に駆け込むと、すぐさま全身に水をぶっ掛けられた。
「馬鹿か!? こいつら揃いも揃って発狂してるのか!?」
「普通熱くて動けなくなるだろ! 何で平気な顔してアクションとかやってられんだよ! おかしいだろコイツ!」
信じられぬといった顔の医師達を前に、キュルケはか細い声で言い放つ。
「……き、きあいとこんじょーよ……」
手を上げ、親指立てようとしたが、指が半ばから炭化していて動いてくれなかった。
「アホかあああああああ!! 気合も根性も使いどころ間違えすぎだろ! 誰が得すんだこれ! いやマジで教えてくれって!」
「何という病人。コイツが将来どうなっちまうのか、不安すぎて笑いが止まらん」
ちなみに魔法が無ければ間違いなく死亡である。
いかに火に慣れているとはいえ、全身に二度から三度の熱傷とか医師が匙を投げても誰も責めないレベルだ。

キュルケのステージ直後、大慌てで舞台の天井から降りてきたコルベールに、タバサは冷静に言った。
「あれならまだ治療が間に合う。ミスタ・コルベールがもしもの為に医療スタッフをと言った時、二人が反対しない所か諸手を挙げて賛成した理由をもっと考えておくべきだった……」
「しかしっ!」
「何を言ってももう遅い。次のステージは安全だから安心して」
キュルケもルイズも、この芸にはタネがあるとコルベール、タバサ、燦を騙くらかしていた訳で。
既にステージもラスト、今更中止した所で状況は変わらない。
「説教は私もする。とにかくこれを終わらせないと」
との言葉に渋々コルベールは従った。

最後は燦とタバサのステージだ。
直径3メイルを越える巨大な水槽を、タバサと燦の二人でえっちらおっちらとステージに引っ張り出していく。
コルベールは天井で待機。
しかる後、モンモランシーが人間サイズの箱を引っ張り出してくる。
箱の上部にはロープがついており、その上端は天井裏の簡易な滑車に繋がっていて、ハンドルはコルベールが握っていた。
極めて単純な芸だ。
箱の中に燦が入り、滑車を使って水槽の中に落とす。
箱には穴が空いており、観客の見ている前で箱の中へ水が入っていく。
水槽は箱より高い水位である為、水は箱の中を満たしてしまい、中の人間は溺れてしまうだろう。
が、中に居るのは人魚の燦だ。水を被ると人魚になってしまうが、溺れるという心配だけはない。
確実に中の人間は溺れ死ぬだろうという所まで放置した後、箱を引き上げ、タバサが魔法の布と言って乾いたタオルを箱の上から差し入れる。
それで水気を拭いた燦は人に戻り、扉を開ければ万事おーけいという訳だ。

最後の最後でまともな芸、これを見事に成功させステージで締めくくった二人は、協力者二人と共にステージ前面に並ぶ。
すぐに舞台袖からタンカに乗せられたままのルイズとキュルケも現れる。
それを見た観客達の爆笑を受けながら、六人は礼をし、ステージを終えた。
「ねえキュルケ。何かこう不条理じゃないこれ?」
「理不尽よね。私達だけこんな目に遭ってるのって」
どう考えても自業自得な二人の愚痴を聞いてくれる者は誰も居なかった。



後日、王都トリステインにとある噂が流れた。
例のステージ、あれ実は本当に大怪我を負っていたという噂だ。
出所も確かであったその噂は、しかし一笑に付された。
緊迫感もあり、スリリングなステージであった事は認めるが、まさか本当に刺したり燃やしたりする馬鹿が居るわけがない。
ましてや相手は貴族だ。そんな愚かな行為をどうしてしなければならないのか。
手品の世界では、まさか、という事を本当にやるからこそ客は驚き喜んでくれるという考えがある。
正にそれを地で行く展開であった。
命を賭した決死の芸は、長くトリステイン貴族に限らず平民にまで語り継がれる素晴らしいステージとなったのであった。
当然その後も出演依頼が殺到したのだが、生徒達に伝わる前に学園側が断固としてこれを拒否した。
無理からぬ事であろう。




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