あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの黒魔道士-28


「あの、ね、ビビ。王宮には私が報告に行くから、ここでちょっとだけ待ってて欲しいの」
「……え?ついてかなくて、大丈夫なの?」
事件から一夜明けて、ボク達はトリスタニアにいたんだ。
「えぇ。せめて――報告だけは私にさせてほしいの」
ルイズおねえちゃんは、昨日ずっと黙っていた。
ラ・ロシェールで治療されてたときも、晩御飯のときも、今朝シルフィードに乗ってたときも。
なんとなく、自分を追い詰めてるって、そんな感じがした。
もしかしたら、今は1人になりたいってそういうときなのかもしれない。
「……うん、分かった。じゃぁ、これ、『風のルビー』……あと、王子様からの伝言は……」
「分かってるわよ!一言一句、ちゃんと記憶にあるから!――じゃ、ちょっと行ってくるわね」
そう言って、少しだけ笑ってお城の門まで小走りに駆けていくルイズおねえちゃん。
……ちょっとだけ、危なっかしい感じがしたんだ。

―ゼロの黒魔道士―
~第二十八幕~ 涙の数だけ強くなれるよ

「相棒~、良かったのか?」
「ん~……ルイズおねえちゃん、色々ショックだったろうし……1人になりたいんじゃないかなぁ?」
お城の前の広場、噴水のある辺りでのんびりとルイズおねえちゃんの帰りを待つ。
思えば、今回の旅って本当に衝撃的だった。
ルイズおねえちゃんに婚約者がいるって思えば、
そいつが裏切り者で、
ラ・ロシェールで大勢に襲われるし、
デルフがトランスして……
「……そういえば、デルフ?なんでまたサビサビに?」
「ん?あぁ~、やっぱしこの方が落ち着くしな!なんつーの?長いことこの姿だったしよー」
デルフは、あの後、すぐに元の錆びまみれのボロボロの姿に戻っちゃったんだ。
でも、鞘を自分で出したり閉ったりできるようになったから、ちょっと便利かもしれない。
……鞘が自分で抜けるぐらいに、ボクがもうちょっと大きかったらなぁって思う。
「ボロボロの方が落ち着くんだ?変なの……」
「変っつーなよ、相棒ぉ~!愛着とかわくってぇもんよ!」
「ふ~ん……」
空はあんなことがあったのに、青くて高くて広かった。
シルフィードやタバサおねえちゃん達は、先に学院に戻ったんだ。
なんか、「無断欠席の言い訳をしておく」とかなんとか……
とすると、学院へ帰るときは馬に乗るのかな?
今度は急いでないから、あんまりトバして揺れないといいなぁ、とかそんなことを考えていたんだ。

「お前、見ない顔だな?」
「……え?」
ボーっとしてたら、声をかけられた。
銀髪の、ポニーテールの、活発そうな男の子。
「――お!お前、でっかい剣持ってんじゃん!」
「あ、う、うん……」
なんか、人懐っこくて、パック王子を思い出す。
その男の子は、デルフを持って、しげしげと舐めるように見ていた。
「あー、でもボロボロだなー?ほらよ!あ、剣持ってるってことは、お前も『先生』に?」
「わ、わたたた……え?せ、先生?」
デルフを見るのに飽きたのか、男の子がポーンとデルフを投げて返す。
『先生』って……学院の、かなぁ?
「『先生』、すっげーからな~!まさに達人っての?よし!じゃ行こうぜ!遅刻するわけにはいかねぇしな!」
「え、あ、ちょ、ちょっと待っ……」
その子の勢いに流されてそのままズルズルと引きずられてしまった。
えっと……どこ行くつもりなのかなぁ?
「――相棒、ちっとは抵抗とかしろや」

――――

ピコン
ATE ―風に揺れている花のように―

「――『生きていてくれ』、それが、あの方の伝言なのですね?」
「――はい」
ルイズはアンリエッタの私室にいた。
衛兵と一悶着はあったものの、『水のルビー』を見せれば、案外すんなり通してくれた。
そして今、目の前の姫殿下は『風のルビー』を握りしめ、悲しみに耐えていた。
最後に見たウェールズ殿下の姿と言葉を、そのまま伝えるのは思いのほかこたえるものだった。
本当に、何もできなかった。ルイズはそう痛感していた。
元婚約者の裏切りを止めることもできず、友人である姫の恋人を亡命させることも叶わず、
せめて、起こったことの報告ぐらいはと考え、一人ここに来たものの、
改めて、己の無力さに気付かされるだけである。
今の自分には、目の前の姫の心を癒すことすらできないのか、と暗く沈んだ姫の表情を見て思う。
しばらく、沈黙が場を支配した。

「ルイズ、あなたと、あなたの使い魔には酷いことをさせました、まさかあのワルドが――」
「いえ――まず、私が気づくべきでした」
そう、まずは自分が気づくべきだったのだと、ルイズは自ら悔いる。
道中でのワルドの言動、あれは明らかに何かを焦っていた。
そこでワルドの企てに気づいてさえいれば。
「~たら」「~れば」が頭でいくつもいくつも浮かんで消える。
またも沈黙が場を満たす。

「――ルイズ、手を、出してください」
「――え?はい――」
沈黙に息が詰まりそうになったころ、姫殿下が場の空気を両断するように凛とした声を出す。
その声は、悲しみに震えるものではなく、怒りに満ちたものでもなく、
決意に溢れる堂々たるものだった。
「この、『水のルビー』――貴女がお持ちなさい。せめてもの、報酬です」
「そ、そんな!これは、王家の――」
焦るルイズ。
「いえ、これは、私なりのケジメです。
 姫として、そして、貴女の友として――今後も名乗って良いものならばですが」
一方、慈愛に溢れた笑みを湛え、これに答えるアンリエッタ姫。
その左手には、先ほどまで強く握りしめていた『風のルビー』が輝いていた。
「――あの方は、私に『生きろ』と言い、自分は勇敢に立ち向かったのでしょう、運命に。ならば――」
愛しき人への想い出を、かみしめるように目をつぶる姫殿下。
それを市井の平民のごとくただ見ることしかできないルイズ。
「――私は、生きて運命に立ち向かいましょう。あの方の想い出に、答えるために」
そして今を見据えるかのように見開かれる姫の目。
ルイズは、またも『強く、大きい背中』を見てしまった。


部屋を辞し、ドアを閉じてしばし佇むルイズ。
また、『強く、大きい背中』を見ることしかできなかった。
せめて、姫殿下の友として、互いに嘆き、傷の舐めあいをしたかった。
率直に言ってしまえば、ここに一人で来たのもそんな情けない理由だ。
しかし、そんな浅はかな考えを、姫殿下はアッサリ乗り越えてしまった。
そして、来たる明日のために、自から今に立ち向かおうとしている。
ルイズが憧れとしていた、文字どおり『貴族らしく』である。
自分は、とルイズは自問する。
まだ肩を並べて歩く資格すらないのか、と問いかける。
誰かの背中を見るだけで、隣に立ち、共に歩くことすら無理なのかと問いかける。
ポロリ、ポロリと王宮の廊下に涙の雫。
握った『水のルビー』がそれを淡く照らしていた。


「あぁ、そこの君、アンリエッタ姫殿下はご在室かな?今度のご婚儀のことで――」
どれくらい、時間が経っただろうか。
どれくらい、今の自分の顔はグシャグシャなのだろうか。
声をかけてきた老人が、ルイズの顔を見て戸惑った表情を見せる。
「――あ、え、す、すいませんっ!ひ、姫殿下はご在室です!えぇ、間違いなく!」
慌ててハンカチを取り出し、顔を隠すルイズ。
だが、目の前の老人は部屋に入ろうとせず、ドアで耳をそばだてているだけである。
「――ふむ、確かに。だが、今は入らん方が良さそうですな」
溜息混じりの苦笑で、ルイズの顔を見ないように答える老人。
やっと、その老人がマザリーニ枢機卿であること思い出すルイズ。
はて、入らぬ方が良いとは?
枢機卿にならい、ドアに耳を当てて中の音を聞こうとする。
「――グズッ――うぅ――」
ドアの厚みで音がくぐもるも、内容は容易に想像がつく。
姫殿下も泣いている。部屋で一人。
「困ったものですな、人の上に立つ者が、感情に任せ涙を流していては
 ――最も、誰彼かまわず人前で泣いたようではないですし、昔よりはマシになりましたかな」
その言葉に、赤い目をきょとんと丸くするルイズ。
昔より?
ルイズの知るアンリエッタ姫は、
昔からお転婆で、どちらかというと好き勝手に生きているという印象の方が強かった。
姫殿下は、姫殿下も、何度も何度も泣いたのだろうか?
「ま、人は泣けば泣くほど強くなると言いますし、今は好きに泣かせますかな。
 風に揺れる野花も、踏まれて強くなると申すことですし」
マザリーニ枢機卿は、独り言とも、説教ともつかぬ、穏やかでゆっくりとした口調で語る。
それは市井で『鳥の骨』と揶揄される男には似合わぬ、
まさに枢機卿という肩書どおり、聖職者のごとく包み込むような慈愛のこもった言葉だった。
「泣きたいときは、泣いてもいいでしょう――時と場所は選んでいただきますが。
 ですが、泣いたら、それだけ前に歩きだしてもらわねば。
 涙は、そのための栄養ですからな。涙もタダではありません」
その言葉が、ルイズ自身に向けられていると気づくのに、少々の時間を要した。
肩の荷が、ほんの少しだけ、降りたような気がした。
「あ、あの――お、お見苦しいところをお見せいたしまして!!!」
慌てて最後にもう一度顔をぬぐってからハンカチをしまい、一礼をするルイズ。
だが、それにマザリーニ枢機卿は答えなかった。
「はて、何のことですかな?年を取ると独り言が多くなってかないません――」
自然と、微笑みがどちらの顔にも浮かぶ。


涙は前へ進むための栄養だ。
だから、泣いたら明日は前へ進もう。
ルイズは新しい何かを得て、王宮を後にした。


――――

「いいか、お前達!」
「「「「はい、先生っ!!!!」」」」
「は、はい、先生……」
なんで、こんなところにいるんだろう……
「お前たちは、まだ、たまねぎすらまともに切れぬひよっこだ!いや、お前たち自身たまねぎだ!」
「「「「はい、先生っ!!!!」」」」
男の子に引きずられてきたのは、街外れの広場。
そこにいたのは他の3人の子供たちと、
鎧を着た『先生』……女の人だった。
「だが、たまねぎでも何度も刻み、何度も涙を流し、そうしてはじめて一人前の剣士となる!それを心得よ!!」
「「「「はい、先生っ!!!!」」」」
そう、この女の人、アニエス先生って言うらしいんだけど、この人は剣の先生なんだって。
そうさっきの男の子、ルーネスって子が教えてくれた。
(ちなみに、他の子はアルクゥ、レフィア、イングズって言うらしい)
ルーネスによると、アニエス先生は名の知れた賞金稼ぎで、
大物強盗だろうと、メイジだろうと、何人もの犯罪者をその剣で捕らえたすっごい人、らしい。
で、ときどきこうやって平民の子供たちに剣の技を教えてくれているんだって。
何でも、「いざというとき貴族はアテにならないから」らしい。
……なんか、大変だなぁ、こっちの平民の人たちって……

「――しっかし、おっかねぇ女だなぁ~!鬼教官ってぇのがしっくりくる感じだぜ」
デルフの言うのがちょっと分かる。
つりあがった目に、ガッシリした鎧。
さらにその口調。
鬼教官って言葉がこれぐらいピッタリくる人をボクは他に知らなかった。
「そこぉ!!新入りっ!!私語は慎めっ!」
「わ!?は、ははははははいっ!!!」
で、あっさりデルフの声を聞かれてしまう。
デルフは口(はないけど)を閉じて知らん振り。
どうも、私語をしていたのはボクってことになってしまったみたいだ。
「ふん、自分の力量もわきまえず大剣を持参して、か――新入り!名前は!!」
「え、あ、は、はい、び、ビビです……」
あまりの迫力に、後ろに一歩下がりたくなる。
帽子をつかんで、そうならないよう必死に耐える。

「ふむ……今日の生徒は5人、か……ちょうどいい。
 4人は2人ずつ組を作り、練習開始!わたしは新入りの実力を見るとしよう」
「え」
なんか、すっごく嫌な予感がしたんだ。
「おっとぉ、おもしれぇことなってきたなぁ~」
デルフの小声で、さらにすっごく嫌な予感になったんだ。
「このわたし、アニエスが直々に鍛えてやる!かかってこい!!」
腰につけていた剣を抜いて、構えるアニエス先生。
その構えは明らかに冗談とかじゃなくかった。
「……どうして、こうなっちゃうんだろう……」
今日、何度目か知らないけど同じ言葉をつぶやいた。



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