あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

第3話 『初めての着替え(一回休み)』



早朝、ルイズの部屋にノック音が響く。
早起きの生徒は起き出している時間ではあるが、低血圧で寝坊すけなルイズにとってまだまだ甘美な眠りの時間であった。
先にミュズがそれに気付いて目を醒まし、すうすうと寝息を立てるルイズを揺すって起こそうとする。
「マスター、起きて下さい。シエスタが呼んでいます」
「はえ?そ、そう……。って誰よあんた!」
ルイズは寝ぼけた声で怒鳴った。
ふにゃふにゃとした顔で眠そうにしている。
「ミュズです」
「ああ、使い魔ね。そうね、昨日、召喚したんだっけ」
ルイズは起き上がると、欠伸をした。
そして、ミュズに聞く。
「シエスタ…。ああ、昨日のメイドの事?で、そのメイドがどうしたのよ」
その時、再度、扉の外からノックとルイズを呼ぶシエスタの声が聞こえる。
「すみません、ミス・ヴァリエール。昨日、御依頼された件でご相談が…」
ルイズはシエスタに待つ様に返事をすると、ミュズに命じる。
「服」
ミュズに椅子に掛かった制服を手渡されると、ベッドの隅に置き、ルイズは怠そうにネグリジェを脱いだ。
「下着」
「どこにあるんですか?」
「そこのクローゼットの、一番下の引き出しに入っているわよ」
ミュズはルイズが指したクローゼットの引き出しをあけ、適当に下着を取り出すと、ルイズに渡す。
下着を身につけたルイズが、再び怠そうに呟く。
「服」
「さっき渡しませんでしたか?」
「着せて」
下着姿のルイズがベッドに座って、気だるそうに言う。
「平民のあなたは知らないだろうけど、貴族は下僕がいる時は自分で着ないのよ」
ルイズは唇を尖らせてさらに言った。


「そうなんですか」
理解した様に大きく頷くと、ミュズはベッドの上にある制服のブラウスを手に取り、のたのたとルイズの腕に袖を通す。
初めて人の着替えをする様でたどたどしいが、これから教え込ませれば良いと、ルイズは目を閉じて考えていた。
そうしていると、首筋にがさがさとした違和感を感じる。
目をパチッと見開くと、正面でミュズがブラウスのボタンを、んしょんしょと”内側に”掛けていた。
ボタンを一つ違いに掛け違えしているのはご愛顧としても、更にブラウスが裏表逆なのは、”いつもより早く起こされて”機嫌の良くないルイズの堪忍袋の緒を易々と切ってしまった。
「何やってんのよ!あんたは~!!」
その怒号は扉の向こう側で待っていたシエスタが跳びはね、女子寮全体に響き渡る程に大きな物であった。
「服はこうやって着るのよっ」
ルイズは、裏っ返しのブラウスの中に片手を突っ込んで内側に留まったボタンを外し、ブラウスが表になる様に翻すと、素早くボタンを上から順にピッタリと留めた。
スカートを手に取ると、ズバッズバッと細い脚を入れ、腰の留め金を掛け、ループタイを五芒星の飾りで固定すると、黒いマントを羽織る。
そして、どうよと言わんばかりの顔で、胸を張り腰に手を当てて、ミュズを睨み付ける。
そんなルイズの姿をミュズはまじまじと見つめて、「なるほど」と知らなかった事を知って感服した面持ちだった。
「ミス・ヴァリエール。どうなさいました?」
そこに、ノック音と共に扉の向こうから、中の様子を気にするシエスタの声が聞こえた。
「なっ、なんでもないわよ」
ルイズはちょっと恥ずかしいポーズを決めている事に顔を赤らめ、慌てて返事をする。
「そんな事、気にしないで入りなさい」
扉の鍵をガチャリと開けて、怒鳴り声を上げたのを誤魔化しつつ、ルイズは部屋にシエスタを入れた。
「で、何よ。相談って」
ルイズは椅子に腰掛け腕組みをして、シエスタに尋ねる。
「それがその…、」
シエスタは機嫌の悪そうなルイズの様子を見て、怯えて身体を震わせながら恐る恐る声を絞り出すと、頭を深々と下げる。
「申し訳ございません。お預かりした布に鋏が通らなくて、上手く仕立てられませんでした」
シエスタは面を見せないまま、謝罪の言葉とその訳を告げる。
「えっ、どう言う事?」
ルイズはイマイチ意味が分からない様で、シエスタに疑問を投げ掛ける。
裁縫や服飾に詳しい訳では無いが、公爵の息女であるルイズは平民と比べると触れた布の数や種類では数倍も多い。
あの布を触った感じから、織り目自体は細かいが地は薄くて堅い印象を受けなかった。
学院内のメイドに任せても一晩で服が出来上がる物だと思っていた。


「ご覧になって下さい」
シエスタは持っていた籠の中から、鋏を一丁取り出してルイズに差し出す。
学院からの支給されている鋏には教員の土メイジによって固定化かけられている筈で、その刃が毀れてボロボロになっている。
「これは酷いわね。それで服の方はどうなったの?」
ルイズは鋏をシエスタに返しながら、あの真っ赤な布がどうなったかを訊く。
シエスタは籠からルイズから預かった赤い布を広げ、言った。
「どうにか着れる形にはしたのですが…」
一見するとワンピースのドレスの様だが、肩を掛ける所が片方しかなく、縫われているのはその反対側の腰だけで、そこ以外の体側はバックリと開いていた。
鋏もそうだが、針で縫うのも侭ならない様子であった。
「それ、着られるの?」
シエスタはルイズの許可を貰い、二人のやり取りを聞いていたミュズに着替えさせ始めた。
着ていたワンピースを脱がすと、赤い服をミュズに潜らせる。
二つ付いている胸の留め具を左右の脇から通して背中で固定し、胴のコルセット状のベルトを巻き、縫われていない方の腰に開いている穴に長いベルトを着ける。
着替え終わったミュズが嬉しそうにクルッと回るがはだける事もなく、ワンピースとして様になっていた。
ただ、脚の両側のスリットは深く、ほぼ両肩が出て、胸元が開いている。そんな格好を好んでするのはゲルマニアの女ぐらいだ。
「留め具も元々付いていたものでしか布にくっつけるが出来ませんでした。胴のベルトは手持ちの似たような色合いの布と留め具を無理矢理、縫い付けて使ったのですが、如何でしょうか?」
「まっ、まあ。良いじゃないの」
ミュズが服を着た様子を見て、ルイズはシエスタが『上手く仕立てられませんでした』と言ったものの、それなりに形になっていたので妥協する事にした。
その言葉に表情を曇らせていたシエスタの顔がパアッと晴れる。
「ありがとうございます、ミス・ヴァリエール」
「それで。また、頼みたい事があるんだけど…」
「はい。なんなりと」
「この娘に使用人としての作法や技術を仕込んで欲しいの。どうも、世間知らずと言うか常識が無い所があるから」
「わかりました」
シエスタはにっこりと微笑んで即答する。
「じゃあ、よろしくね」
「それでは失礼いたしました」
シエスタは深々とお辞儀をすると、ルイズの部屋を慌てて出て行った。
シエスタを含むメイド達には、今の時間は朝食の準備があるので、大変なのである。
シエスタが去っていった所で、ルイズは部屋を出る仕度を済ませる。
「それじゃ、私達も行くわよ」
体をねじらせながら嬉しそうに服の様子を見ているミュズに、ルイズは声をかけて、ドアノブを掴んで扉を開けた。

(※注:この話でミュズの足のサンダルも含めて格好が、原作批准になりました)


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