あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゴーストステップ・ゼロ-06.5


ルイズはヴェストリの広場から去った後、学院の廊下をヒューを引っ張りつつ歩いていた。
ヒューの肩には意識を無くしたギーシュが担がれている…傍目には死んでるように見えるが。

「お嬢さん、ルイズお嬢さん、ちょいと寄り道いいかい」
「何よ!」
「これこれ」

ルイズの目の前には、満足そうな表情で気絶しているギーシュの顔があった。

「ひっ!」
「おいおい、それはかわいそうだろう。ちょっと気絶しているだけだ。
 でだ、この人騒がせな男を医務室に寝かせた後も色々と用事を済ませないとならないんだが。」
「そうね、さすがにこのまま放っておく訳にはいかないし…。
 分かったわ、とりあえず用事が済んだら部屋に戻って来なさい…。それと今晩の食事は部屋で食べるから、その連絡もお願いね。」
「分かった、料理長に伝えればいいんだな?」
「ええ。
 逃げるんじゃ無いわよ?」
「分かってるって。」

そうして2人は右と左に別れていく。この後、ヒューは料理長に抱きつかれたり、シエスタに伝言を伝えたりと忙しかったのだが、そういった話は割愛する事にする。

だって今回の主人公はギーシュなのだから。



ゴーストステップ・ゼロ シーン06c “薔薇と香水”

    シーンカード:イヌ・Ⅲ(審判/事件の決着。逮捕。失われしものの再生、復活。蘇生。浄化。)



深い水の底から浮かぶような感覚と共にギーシュは意識を戻した。

(あれ、僕は確かヒュー・スペンサーなるスクエアメイジに殺されて…、ああここが俗に言うあの世とやらか。
 しかし、あの世というのは奇妙なものだ、学院の医務室にとってもよく似ている。
 父上は怒るだろうか、スクエアとはいえ決闘騒ぎを起こした上に死んでしまったのだから、それともよくぞ最後まで意地を通したと喜んでくれるだろうか…、喜んでくれると良いなぁ。
 死んだ上に怒られるのは勘弁してほしい。
 そうだ、ミスタ・スペンサーは伝言を伝えてくれただろうか。殺される前に自分の素直な気持に気付くなんて情けない事この上ないが、逆にあの状況だったから気付けたのかもしれない。
 モンモランシーには本当に幸せになって欲しい、本当は自分が幸せにしてあげたかったけど、死んでしまってはもう叶わない夢だ、せめて彼女に優しい夫ができる事をここから祈ろう。)

ギーシュがそんなとりとめもない事をつらつらと考えていると、不意にカーテンを開く音が聞こえてきた。
何と、天国にはカーテンがあるのかと思いそちらを見る。するとそこにはモンモランシーそっくりの天使が洗面器を持って立っているではないか。
天使の身を包むのは何故かトリステイン魔法学院の女子用制服で、驚いているのか表情から何から固まってしまっている。いやにサービス精神旺盛な天国だと思っていると、モンモランシーそっくりの天使の瞳にみるみる涙が溢れてきた。
ああ、泣かないでおくれ。モンモランシーにそっくりなその顔で泣かれてしまったら僕はどうしていいか分からなくなってしまう。

そんな疑問や思いも次の瞬間、聖地の果てへと吹き飛んでしまった。

何と!モンモランシーそっくりな天使は、感極まったのか、洗面器を取り落とすといきなり抱きついてきたではないか!ああ、いけない!君にそっくりだけど僕にはちゃんと心に決めた彼女がいるんだ!だけどもう死んじゃったしなぁ!待てよ?この天使の抱擁はあの戦いをやり遂げた僕へのご褒美じゃあないだろうか?そうだ!きっとそうに違いない!
それにしても僕という存在は何と罪深いのだろう!生きている頃には数多の少女達をただそこに居るだけで誘惑してしまい。死してなおこれ程までに可憐な天使を誘惑してしまうなんて!ああ、この身に宿る薔薇の宿命が憎い!

しかし、本当に天国なんだなぁ、姿かたちはもとより香りまでモンモランシーにそっくりではないか。
嗚呼!天国万歳!


「うおっほん!ミスタ・グラモン、ミス・モンモランシ。
 感極まっている所、申し訳無いのですが少々よろしいですかな?」

この世(?)の幸せを味わっていると、横合いから無粋な中年男性の声が掛けられる。
そちらを見てみると。

「うをっ!眩しい!目が、目が潰れてしまう!」

そこには光そのものがあった!何と!これ程の光を放つとは!もしやこの光こそ始祖ブリミル!?
何たる事だ!天使のみならず、始祖ブリミルにまで拝謁できるとは!このギーシュ・ド・グラモン生涯(?)の誉れ!

「くっ、申し訳ありません。始祖ブリミルの御前とはいえ恥ずかしき姿をお見せしてしまいました。」
「始祖ブリミル?いかんな。もしやまだ意識の混濁が残っているのか?」
「いえ、もう大…丈…夫………おや?ミスタ・コルベール?」
「ええ、そうです。ようやく目が覚めましたか…それはそれとして、いつまでそうしておられるのですかな?」
「は?え?わっ!」

コルベールの視線を辿ると、自分の腕の中には顔を真っ赤にしたモンモランシーがいる。
慌てて離れるとここが何処なのか、はっきりと理解できた。

「あれ?ここは…医務室?
 確か僕はミスタ・スペンサーに首を落とされて死んだはずじゃあ…。あれ?」
「ほほう、その様子だと自分が何をされたか気付いていないようですな。」
「え?ミスタ・コルベール、僕は一体…」
「君は意識だけ刈り取られてこの医務室に運ばれてきたのですよ、あまりにも鮮やかだったので殆どの人が君が殺されたと思い込んだほどでした。」
「何と…、あのじゃあ彼はミスタ・スペンサーは?」
「君をココに運んだ後。ミス・モンモランシー達に君からの言葉を伝えておりましたな。
 私は廊下で少々事情を伺ったのですが、彼は用があるからと今はミス・ヴァリエールの部屋におりますぞ。」
「あの、彼は何と…」
「彼…ミスタ・スペンサーですな?
 確か、大人気ない事をしてしまった、詫びといっては何だが伝言は伝えておく…と。
 ところで伝言とは?」
「いや、この件で色々と迷惑を掛けた女性達がいたもので…。」
「なるほど、そうでしたか。迷惑をかけたら謝る、これは貴族とかではなく人として大事な事ですぞ?」
「はい、僕自身今回の件で至らない所を自覚したつもりです、彼女達はもとよりミスタ・スペンサーにも謝罪をしようと思ってます。」
「ええ、それがいいでしょう。
 とりあえず、明日の授業は大事をとってお休みなさい、これはオールド・オスマンからの指示でもあります、よろしいですな?」
「はい、ご心配をかけてしまい申し訳ありませんでした。」
「ああ、それと禁止されていた決闘を行った事に関する処分ですが、色々と自分に足りないものを自覚しただろうからそれをもって処罰とするそうです。」

そこまで言うと、コルベールは微かに笑みを浮かべて医務室を後にした。

コルベールが医務室を辞すると、そこにはギーシュとモンモランシーだけが残された。
モンモランシーの顔は赤いままだが、ギーシュからは顔をそむけている。
ぴんと張り詰めた空気が医務室に充満していた。食堂の修羅場再びかと覚悟したギーシュだったが、何とはなしに違うと理解していた。
そういえば、先程ミスタ・コルベールにも言っていた事があることを思い出した。

「モ、モンモランシー」
「何よ」

返す彼女の言葉は氷の如き冷たさと固さを有していた。
ギーシュは思う。ああ彼女をここまで悲しませたのは自分なんだと、だからこそこの氷は溶かさなくてはならないのだと。

「謝っただけで許してもらえるとは思っていない、君が言うことなら何だって聞こう。
 あんな事をやっておきながら、何を今更と思うかもしれない。僕もそう思う、実際とても情けないし恥ずかしい。
 僕は自分が犯してしまった罪でかいた恥を、平民の少女をいたぶる事で誤魔化そうとした卑劣漢だ。
 モンモランシー、君やケティにしてしまった裏切り行為に至っては本当に万の言葉を費やしても謝罪しきれない位さ。
 ただ、これだけは理解して欲しいんだ、僕は君が好きだ…この世で一番君を愛してる。
 例え君が、他の誰を好きになろうともこの気持だけは誰にも譲るつもりはない。
 悲しい事に、僕にはもう君を幸せにする資格は無いんだけどね。「さっき」え?」
「貴方が気絶してここで寝ている時に、ルイズの使い魔が私の所に来たのよね。」
「みたいだね、ミスタ・コルベールも言ってた。」
「で、貴方が馬鹿な理由で決闘を仕掛けて、負けた事も聞いたわ。」
「あ、あはは…はぁ。」
「で、貴方の言葉も聞いた…、正直腹が立ったわ。」
「そ、そうなんだ…」
「そうよ!何で勝手に死のうとするのよ!私が好きなんでしょう?誰にも渡したくないんでしょう?だったら家訓なんて無視なさい!あんな伝言残された方の身になりなさいよね!
 あの人、ミスタ・スペンサーが身体に怪我はさせてないって言ってたけど、ずっと不安だったんだから!このまま目を覚まさなかったら、死んじゃったらどうしようって!生きてたらさっさと起きて私を安心させなさい!」

背けていた顔をギーシュの方に向けると、その顔は涙に濡れていた。そうして一気に言葉を捲くし立てるやギーシュの懐に飛び込み両手で彼の胸を叩き続けた。
ぽかぽかと悲しくなる位、弱い両の拳を優しく両手で包み込むと。モンモランシーに負けず劣らず顔を真っ赤にしたギーシュは自分のおでこを彼女のおでこにくっつけて目を閉じると、優しく問いかける。

「心配させてごめん。それじゃあ僕は君を好きでいていいの?」
「ええ」
「君を愛しても?」
「許してあげる、ただし浮気は許さないわ。」
「怖いね…」
「当たり前でしょう、今回は何とかなったけど、毎回こんな結果になるとかありえないんだから。」
「うん、そうだねもうしない。ミスタと戦って…いや教えられて分かったよ。
 じゃあ、君は僕の事どう思ってる?」
「好きよ」
「それだけ?」
「まさか、愛してるわ。この世界の誰にも負けない位にね。」
「うん、僕もだ、この世界の誰よりも君を愛してる。」
「ミスタと戦っても良い位?」

くすくすと笑みを浮かべながらモンモランシーが問いかける。

「そ、それは勘弁して欲しいなぁ。でも頑張るよ、ミスタが言った様にどんな手を使っても君を愛してみせる。」
「う、うん。ごめん意地悪言っちゃった。私も貴方を他の女に取られないよう頑張るわ。」
「信用ないなぁ…」
「あら、あると思ってたの?」
「ごめん、本当に反省してます。」

そうして、2人は瞑っていた目蓋をほぼ同時に開いて、ちょっと恥ずかしそうに微笑みあう。

「じゃあ行きましょうか。」
「え?」
「ミスタ・コルベールと約束したでしょう?
 まずはあの一年ね、それからとばっちりを受けちゃったメイドの子、そうそうミスタにもちゃんと謝罪しないと。」
「あ、あれは僕だけで行くよ、君には何の落ち度もないんだから。」
「いいえ、これというのも私が貴方の手綱をしっかり握っていなかったのが問題の発端だったのよ!
 貴方が誰のモノかちゃんと周りに知らせておけばもうこんな事は起きないでしょ。」
「そ、それはそうなんだけどね。ねぇ、モンモランシーちょっと急ぎすぎじゃないかい?」

モンモランシーはギーシュの言葉を聞こうともせず、腕を引っ張りながらずんずんと廊下を歩いていくのだった。
片や引っ張られるギーシュはというと、「ちょっと早まったかなぁ…」とほんの少しばかり後悔はしたものの、モンモランシーの幸せそうな笑顔を見ると、「まぁ、彼女が幸せならこれもいいか」と早々と彼女の尻に敷かれる事を楽しんでいた。

その後、ギーシュとモンモランシーは学院生徒公認のカップルになり、平民にもそこそこ受けのいい貴族として知られるようになる。



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