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蒼い使い魔-34


「あ、バージルさん!」
朝食も終わり、シエスタは食堂で後片付けをしていると、
ふらりとバージルが入ってくるのを見て嬉しそうに声をかける。
「シエスタか」
見るといつもより元気がない…というよりかは機嫌が悪そうに見える。
「あの、元気がないみたいですけどどうしちゃったんですか?」
「別に何もない……」
やはり機嫌が悪い、そう察したシエスタはどうにか機嫌を取り戻してあげようと、
朝、バージルが食堂に来ていないことを思い出す。
「そうですか……、あ、そう言えば、今朝、食堂で見かけませんでしたけど、もう朝食は取られてますか?」
「いや……」
バージルが力なく首を振る。
「それじゃあ、すぐに用意しますね、賄いですけど」
シエスタはポンと手を叩くと厨房へと向かう、バージルはふらりと適当なテーブルにつき、頭を抑える。
「………」
シルフィードたった一人に振りまわされている自分に嫌気がさしているのか、深いため息を吐き目をつむる。
「俺は……何をしている……」
彼の苦悩は誰にも届かず……、食堂は静寂に包まれていた。

「はい、おまたせしました!」
「……あぁ」
にこやかな笑顔で賄いの料理を運んできたシエスタに少しだけ視線をよこすと
目の前に出された食事に手をつけ始める。
黙々と出された食事を口に運ぶバージルにシエスタは少しでも気分を和らげてあげればと明るく振る舞った、
「バージルさん、どうしちゃったんですか? やっぱりいつもより元気がないですよ?
いつものバージルさんなら……バージルさんなら……えーっと……」
そこまで言ったはいいが彼の様子はいつもと同じだ、いつも無表情の鉄面皮、
表情が変化したところを見たことがない。
ただ疲れている、というか機嫌が悪いということだけは嫌でも伝わってきた。
バージルはちょっと困ったように言い淀むシエスタを一瞥する。
「お前が気にするところではない、ただ疲れているだけだ」
短く言うとテーブルの紅茶へと手を伸ばす、そしてそれを口に運ぼうとした瞬間
「あっ! おにいさま! 見つけたのね!」
背後から突然聞こえてきたシルフィードの声に思わず紅茶を噴き出しそうになる、
「.......Damn it!」
呻く様に呟くバージルの背中にシルフィードが抱きつき頬ずりをする
「きゅいきゅい、捕まえたのね! もうっ! 目を離したらすぐどっかいっちゃうんだから!」
「離れろ、今は食事中だ」
努めて冷静に、今すぐ閻魔刀で首を斬り飛ばしたくなる衝動を抑えつつ、黙々と食事をとり続ける。
「むぅ~……お腹がすいてたのね、きゅい」
そう言うと隣のイスに腰掛け置いてあった食器を手に取るとバージルの口に食事を運ぶ。
「はいっ! あ~ん」
「やめろ鬱陶しい」
そう言いながらシルフィードを無視し食事を口に運んで行く、
シルフィードはつまらなそうにぷくーっと頬を膨らませながらあたりを見回す、
そしてあんぐりと口をあけ呆然と佇むシエスタと目が合うと、今気が付いた、と言わんばかりに口を開いた。

「むっ! おにいさま! また別な女の子に手を出そうとしてたの!? いけない人ね! きゅい!」
そういうやバージルの鼻の頭をちょんっと突く、それを鬱陶しそうに手で振り払う、
するとようやく我に返ったのかシエスタが顔を青くしながら、震える声でバージルに尋ねてきた
「あ……え……? あ、あの……バージルさん……えっと……その方は一体……?」
そんなシエスタにバージルは少々溜息交じりに答える、
「何を勘違いしているか知らんがコイツは――」
「恋人なのね!」
だがそれよりも先にシルフィードが声高だかに宣言しバージルの首に両手を回しガッチリとしがみつく
それを聞いたシエスタが手に持っていた皿を取り落とした、
重力に従い床に落ちた皿は粉々に砕け散り欠片があたりに散乱する。
「えっ……そ、そんな……う、嘘ですよね……バージルさん……?」
シエスタは今にも泣きだしそうなほど目に涙を溜め、ふるふると頭を振りながら必死に言葉を絞り出す。
「無論――むぐっ!?」
バージルが否定しようとそこまで言った途端、突如シルフィードが身を乗り出し強引に彼と唇を重ね口を塞ぐ。
「ん~~っぷぁっ! はぅ……乙女のファーストキス……捧げちゃったの……きゅい」
さすがにその行動は逆鱗に触れたのか
両手を頬にあて悦に入るシルフィードの頭をガシリと掴み、テーブルに向けガァン! と勢いよく叩きつける
頑丈なテーブルにヒビが入るほど強烈に叩きつけられたシルフィードはそれきりピクリと動かなくなった。
「いい加減にしろ貴様……シエスタ、コイツの言うことは鵜呑みに……おい」
「嘘です……嘘です……嘘です……」
バージルが視線をやるとシエスタがまるで壊れたレコーダーのように繰り返している、
目は虚ろになり焦点が合ってない。それもそうだ、いきなりあんなものを目の前で見せつけられて動転しないはずがない。
これ以上話しかけてもまともな反応は期待できないだ、そう判断したバージルは本日何度目になるか分からない溜息をつく。
「行くぞ」
「きゅぅ~……」
渾身のツッコミ(?)によりテーブルに突っ伏し目を回すシルフィードの襟首を掴むとズルズルと引きずりながら食堂を後にする。
「嘘……嘘……」
ただ一人食堂に取り残されたシエスタはうわ言のように繰り返していた。
その日の食堂は一日中、シエスタから放たれる負のオーラで満たされていたという……。

「まったくあのメイドの子ったら! おにいさまに色目を使うなんて!」
ズルズルと引きずられながらシルフィードが頬を膨らませ手足をばたつかせる。
太陽はようやく真上に来ている、そろそろ昼時だ、授業が終わり食堂へ向かう生徒達の姿がちらほらと見え始めた。
「おにいさまはシルフィだけのものなの! 誰にも渡さないのね!」
バージルは奥歯をギリッと鳴らしながら大声で宣言するシルフィードへと視線を送る。
「貴様は本当にタバサの使い魔なのか? 奴の慎ましさを少しは見習ったらどうだ……」
ペットは主人に似る……ではないがメイジの実力を測るには使い魔を見ろという言葉もある、
それを考慮すれば風韻竜を召喚したタバサの実力は推して知るべし、と言ったところである
だがこの性格の違いっぷりはどういうことだろうか、惚れ薬の影響にしてはいささか疑問が残る、
そこまで考えるとバージルは頭を振り思考を中断する。これ以上考えても無意味だ。
なんにせよシルフィードがこの状態では大幅に行動が制限されてしまう。
「そもそも、貴様があの薬を飲まなければ……いや、飲まなかったとしてもタバサが飲んでいたか……くそっ……」
どのみちこうなる運命だったのだろう、忌々しそうにバージルは吐き捨てる。
この世界にきて急に女難の相が出始めた気がする、
元の世界では悪魔相手に切った張ったの日常だったためにこういうことには慣れていない。
弟も弟で返礼よろしく額に銃弾を貰い、心臓を剣で刺されバイクを投げつけられと女難には事欠かないのだが……血は争えない。
寮塔へ戻る途中、シルフィードがきゃんきゃん騒ぐため、多数の人の目を引いてしまう。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔、
――バージルが美人でスタイルのいい恋人を学院に連れ込んだ……
そんな噂が学院中に広まるのに、時間はかからなかった

「お? 相棒、逃げるのはあきらめたのか?」
「……」
シルフィードの襟首を引っ掴み部屋まで戻ってきたバージルは茶化すデルフを蹴飛ばすと、
部屋の中に突き飛ばし、ソファへと腰かける。
学院内を歩けばもれなくシルフィードがくっついてくる、
かといって下手に撒こうとすれば、先ほどのように騒ぎになりかねない。
つまり、シルフィードが元に戻るまで、基本的に部屋に缶詰ということになる。
この状態があと一日、下手すると数日かかるかもしれない。
もちろんそうなった場合、あの巻き毛を生かしておくつもりはないが……。
「……何をしている」
バージルがせっせと服を脱ぎ散らすシルフィードを睨みつける。
「きゅい? だってきついんだもん! 苦しい! ごわごわする! 人間って不便なのね!」
身につけていた最後の一枚をポイっと投げ捨てると、バージルに飛び付き頬を摺り寄せる。
ますます頭痛が酷くなる、バージルは眉間に一段と深い皺を寄せながら窓を指差した。
「だったら元に戻ってどっか飛んで行け、ついでに戻ってくるな」
「やだやだ! おにいさまと一緒にいるの~!!」
そろそろ本格的に殺意がわき始めた、もともと気の長い方ではない……
というよりダンテに輪をかけて沸点が低い彼である、気がつくと閻魔刀の鯉口を切り刃を少しのぞかせていた。
バージルは必死に、それこそ強力な自制心によりなんとか刃を納める。
「(コイツは竜だ、人間ではない……)」
ここで殺してしまっては貴重な移動手段がなくなってしまう、そう必死に自分に言い聞かせる。
怒りを何とか収め、大きく息を吐き、ルイズのベッドからシーツを引きはがすと、シルフィードに投げつけた。
「体に巻いてろ」
「むぅ」
シルフィードは少し唇をとがらせると渋々布を体に巻きつけた。
窓の外を見るとようやく日が傾き始めている、バージルにとってこの一日は果てしなく長く感じたという。

「ねぇねぇ、おにいさま、おにいさま」
「…………」
「おにいさまおにいさま」
「…………」
「ねぇねぇ」
常に絡みついてくるシルフィードに対抗する手段が無視、
という結論にたどりついたバージルは徹底的に無視を決め込む。
「ぐすっ……おにいさまが相手をしてくれないの……」
シルフィードはバージルが自分には手が出せないことを知っているのかここぞとばかりに身体をすりよせ密着させてくる。
耳に熱い吐息がかかり、首筋や頬に柔らかい唇が触れる、さらに舌まで這わせてくる、
健全な男性なら鼻の下を伸ばしまくり、ともすれば押し倒してしまいそうにもなるシチュエーションだが、
バージルはこれ以上ないほど鬱陶しそうな表情でシルフィードの存在を全力で無視し……
時に無言でアイアンクローをかけながら魔剣文書の解読を進めていた。
「おにいさまおにいさま、何を読んでいらっしゃるの?」
「…………」
シルフィードがなんとかバージルの気を引こうと横から抱きつき、
彼に頬ずりをするように魔剣文書を覗き込む、
そして余白に書かれた注釈の部分を見るや頓狂な声を上げた。
「あっ! スパーダ! スパーダの本なのね! シルフィ、スパーダのこと知ってるの! 竜達の間で伝わる伝説なの!」
「……何だと?」
シルフィードから出た思いがけない言葉にバージルが顔を上げる
「やっとおにいさまのお顔が動いた。シルフィードのお顔をみてくだすったわ、うれしい!」
今まで無視してきたバージルがようやく反応を返してくれたことに感激したシルフィードがさらにぎゅっと抱きしめる、
それを鬱陶しそうに引きはがし、バージルはシルフィードに質問する。
「スパーダを知っていると言ったな? その話を聞かせろ」
「うふふ、おにいさまはせっかちなのね、それじゃあ教えてあげるかわりに………」
シルフィードはそう言うとバージルの耳元でぼそぼそと耳打ちし、顔を赤くしながら頬に両手をあてる。
「貴様……ならいい、正気に戻ったらゆっくり聞かせてもらう」
それを横目でジロリと睨むとバージルは小さく舌打ちし吐き捨てるように言った。
「もうっ! おにいさまったら! シルフィはいつでも正気! 本気なのね!」

「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ………あの雌竜ぅぅぅぅ!!」
「あらぁ、あの子ったらずいぶん積極的なのね……」
「我ながらすごい効果ね……」
「はっ鼻血が……!」
「…………」
図書館にてタバサの実況中継を聞いていたルイズ達は、一人は怒りで、残りは気恥ずかしさに顔を赤くしていた。
「しっかし、良く耐えたね、彼は…僕だったら絶対喜んで……グフォア!」
「何言ってんのよ……ギーシュ……!」
モンモランシーの拳をくらい顔を陥没させながらギーシュがぶっ倒れる。
「耐えたっていうより、もう受け流し方を心得たって感じがするわね」
流石は天然のロイヤルガード、
シルフィードの求愛をすべてジャストブロックで受け流している状況を見ると押し倒すということはなさそうである。
……それよりも、いつ閻魔刀によるRGゲージMAXのジャストリリースが放たれるのか、それが問題であるが……。
「……それにしてもモンモランシー、君はこんな強力な惚れ薬を僕に飲ませようとしていたのかね?」
ギーシュが鼻の頭を擦りながらモンモランシーに尋ねる、たしかあの時ワインに入れようとしてなくしたことに気が付いていた様子だった。
もしかしたらあんな風になっていたのは自分だったのかもしれない。
少々青くなるギーシュだったが、モンモランシーは自分を思って調合したのだと勘違いし一人感激する。
「モンモランシー……君はそんなに僕のことを……」
「ふんっ! べつにあなたじゃなくてもかまわないのよ? おつきあいなんて暇つぶしよ! でも浮気されるのは嫌なだけ!」
さすがはプライドの高いトリステインの女貴族、たいした高慢ぷりである。
「僕が浮気をするわけないじゃないか! 永久の奉仕者なのだから!」
ギーシュはがばっとモンモランシーを抱きしめる、そして彼女の頬に手をあてキスしようとする。
モンモランシーもまんざらではないのか目を瞑る。
「これ以上続けるならあの世でやりなさい」
ルイズは二人の間に杖を差し込み無理やり中断させる、目が本気だ。
それをキュルケがなだめながら口を開く、
「それにしても、モンモランシー、あなた大丈夫なの? 明日までに調合の準備を終わらせないと本当に殺されちゃうわよ?」
「だ、だから図書館で調べてるんじゃない! とりあえず必要なものはわかったわ、
手元にないものはメモにまとめておいたから、渡しておくわね」
モンモランシーはそう言うと必要素材の書かれたメモをルイズに手渡す。
「じゃあ、調合の準備をしてくるわ、殺されたくないからね」
そう言うとモンモランシーは席を立ちギーシュとともに自室へと小走りで去ってゆく、
「それじゃ、私達も行きましょ、ほらルイズ、早く戻らないと、ダーリンがシルフィードに食べられちゃうわよ~?」
「キュルケッ! 茶化さないでよ!」
からかうキュルケに顔を真っ赤にしてルイズが反論する、そんななかタバサがぼそっと呟く。
「抱きついた」
「うぅ~~っ!!?」
その言葉を聞くやルイズは即座に身を翻し図書館を飛び出して行った。
「まっ、ダーリンに限ってそんなことはないと思うけどね~」
キュルケは面白そうに呟くと、なにやらうつむいているタバサへと視線を送る、
「……? タバサ? どうしたの?」
「あの子……一ヶ月肉抜き」
タバサは顔を耳まで真っ赤にし、それだけ言い残すと倒れこむように机に顔を突っ伏す
「ちょっと! どうしたのタバサ! 鼻血が!」
どくどくと机に血だまりを作るタバサを抱え、キュルケも急ぎ図書館を飛び出して行った。

「バァァァァァジルゥゥゥゥゥゥ!!!!」
ドアを蹴破るように……実際蹴破りルイズが部屋の中へ飛び込んでくる
「むっ! 桃髪が帰ってきちゃったの! 帰れなのね!」
「どこへよ! ここが私の部屋よ! あんたこそ森へ帰りなさい!」
「シルフィが帰る場所は森じゃないのね! 帰る場所は……コ・コ♪」
そう言いながらバージルの胸板を人差し指でトントンと叩く、妙に色っぽいのがハラが立つ。
ギリギリと奥歯を鳴らしながら今度はバージルへと怒りの矛先を向ける。
「バージル! あんた一体何したのよ! あんたが恋人を連れ込んだって学院中の噂になってるわよ!?
それにシエスタが灰みたいになってたわよ!? っていうかなんて格好させてるのよあんたはぁぁぁ!!!」
「サイズがきついと脱いで騒ぐんでな、何も着せないよりマシだろう。それに、
噂など言いたい奴には言わせておけばいい、そんな事実はないのだからな」
一気にまくしたてるルイズをよそに、そんなもの露ほどに気にしてはいない、と言わんばかりにしれっとバージルは言う、
「そんなことより、明日調達する素材はわかったのか?」
バージルは顔をあげルイズを見る。もし進展がなかったら即座にモンモランシーを殺しに行く
そう目が語っていた。
「大丈夫よ、ちゃんと調べさせたわ、今モンモランシーも必死に準備を進めてるわ、はい、これがメモ」
ルイズはそう言いながらメモをバージルに手渡す、
それを受け取るとメモをしっかりと確認する、
「よし、明日は予定通り街へ行く」
バージルはそう言うとメモを懐に仕舞いこむ。
本来ならば今すぐにでも行きたいが日はすでに沈みかけている。何より、疲れた。
こんな馬鹿馬鹿しい茶番はさっさと終わりにして、魔界への手がかりを探したい。
そこまで考えると、バージルはもう数えるのすら面倒になるほどの溜息を、大きく吐いた。

「おにいさま、ぎゅうってして?」
「してくれないならこっちからするの!」
「シルフィねぇ、子供は10人くらい欲しいの! おにいさまは何人欲しい?」
恐ろしいセリフが次々シルフィードの口から飛び出していく。
当然横で聞いているルイズは気が気ではない。
「あぁもう!! シルフィード! ちょっと……いやもうちょっとどころじゃないわ! 本当に自重しなさいよ!」
「自重するのは桃髪の方なのね! 空気を読むこともできないの!? おにいさまとの甘い時間を邪魔ばっかりしてからに!」
「何が甘い時間よ! っていうかバージル! あんたもちょっとは抵抗くらいしなさいよ!」
「……コイツはもう相手にするだけ無駄だ、俺も殺意を通り越して呆れ果てているところだ」
バージルは呻く様に呟くとソファへと向かい倒れこむように横になった。
「きゅいきゅい、おにいさま? もう寝ちゃうの?」
「疲れた、寝る」
バージルは今日一日で我が身に降りかかった事態に心底疲れているらしく手を頭の後ろに組み、目をつむってしまった。
それをみて待ってました! といわんばかりにシルフィードがビッとルイズを指差す。
「ここから先はR指定なのねっ! 子供はさっさと寝るっ! さぁおにいさま! Let's Rock!」
「黙れ」
「きゃうん!」
そう叫ぶや横になっているバージルに飛び込むも、カウンターの蹴り(ある意味ジャストリリース)をくらい床に転がる。
「あいたたたた……、でもこれしきのこと! シルフィはめげないのね!」
シルフィードはすぐさま復活すると、再びソファへと近づいて行く、それをルイズが呼びとめる。
「ちょっとシルフィード! あんた、どこで寝るつもりなのよ!?」
「へ? どこって? おにいさまと一緒に寝るの! これは決定事項なのね!」
その言葉を聞きルイズは顔を真っ赤にして反論する。
「ダメったらダメ! 絶対絶対ダメ! バージルと一緒に寝るなんて絶対許さないわよ!」
「使い魔同士一緒に寝て問題おあり? というか、今日ここに来た時も気になってたけど、
どうしておにいさまはこんなソファで寝てるの? そんなに広いベッドを使ってるなら
半分くらいスペースをあげればいいのに! ひどいご主人さまなの!」
その言葉にルイズは苦々しい表情を浮かべ反論する。
「そっ……それはっ……わ、わたしだって一緒にベッドで寝ていいって言ったわよ!
でもアイツが断ったのよ! 椅子で寝るのが慣れたって! し、しょうがないじゃない!」
「ははぁ~ん、でもおにいさまは今、横になって眠っているのね、桃髪には魅力が足らないのね!」
ルイズの頭にハンマーを食らったような衝撃が襲いかかる、魅力が足りない? 意識されてない?
「でっ、でもっ! バージルは私のこと興味があるっていってくれたもん! 意識されてるもん!」
ルイズは目に涙を溜め地団太を踏みながら必死に否定する、
「あ、あんただってあんなに色仕掛けしておいてまるで相手にされてないじゃない!」
ルイズの必死の反撃もシルフィードはどこ吹く風、女性としての魅力は全て勝っている、そう確信したのだろう、
……変化を使っている時点では、だが
「おにいさま? 桃髪よりもシルフィの方が魅力的だと思わない? きゅい」
シルフィードがバージルへ顔を向けると既にバージルはソファの上で眠っていた。
「あらら、もう寝ちゃってるのね、ふぁあぁ~……シルフィも眠くなっちゃったの……」
そんなバージルを見てシルフィードが欠伸をした隙に、ルイズがバージルの上に抱きつく様に飛び乗った。
「あ、あんたなんかをバージルと一緒に寝かせるもんですか! 私はここで寝るの! あんたは床よ!」
「むっ! 桃髪! ずるいのね! おにいさまはシルフィと寝るの!」
シルフィードも負けじとバージルに抱きつく。
「離れなさいよ!」「そっちこそ離れるのね!」
きゃんきゃんと喚く二人をよそに、よほど疲れていたのかバージルは静かに寝息を立てていた。

夜、ルイズがパチリと目をあけ、眠っているバージルを見つめる、
シルフィードに対抗するため勢いでバージルに抱きついて現在に至るわけだが……
冷静になってみるととんでもないことをしていると気がつき、思わず顔が赤くなる。
こうしてバージルの顔をじっと見ているだけでドキドキと心臓が高鳴ってくる。
ルイズの現在位置から見て右斜め45度。(人がもっともカッコよく映るアングル)
バージルは世に言う美形の部類に入る。しかもかなりの高レベル、
凛とした気品溢れる立ち振る舞い、どこか影のある雰囲気に魅せられた女生徒も少なくないらしい。
学院内にもかなりの数の隠れファンがいるという噂だ。
この間一緒に街を歩いた時も、やたらと道行く女性の目を引いていた気がする、
実はその時ほんの少し優越感に浸っていたのであるが……
「(本当に格好いいんだけど……もうちょっと優しかったらなぁ……)」
ルイズはバージルの寝顔を見つめそんな事を考える、
そしてシルフィードが眠っていることを念いりに確認した、
「寝てる……わよね……?」
少し身を乗り出しバージルの顔を覗き込む、心臓が先ほどよりも激しく高鳴る、
ルイズは自身の心臓の音でバージルが目を覚ましてしまわないか不安になりつつも
ゆっくりと顔を近づける、そして、そっと彼の唇にキスをしようとしたその時、
タイミングがいいのか悪いのか、バージルがふいっと顔をそむけてしまった。
「……ばか」
ルイズは口を尖らせると、バージルの顔を手で抑え元の位置に戻すと静かに口づけを…、
「うっ……うぅ~ん……むにゃ……」
しようとした瞬間、突然シルフィードが身をよじらせる、
「こっ……この雌竜ぅ~……」
恨めしそうにシルフィードを睨みつけると呻く様に呟く、
今のでバージルが起きてしまうかもしれない、そんな不安を覚えキスはあきらめる。
ルイズは高鳴る鼓動を必死に抑えながら、ゆっくりと眠りに落ちていった。
――深夜
ふと自身にのしかかる妙な重さにバージルが目を覚ます、
なんだと思い視線をやると……
シルフィードが横から抱きつき静かに寝息を立てており、
さらにどういうわけかルイズまで上に乗っかり、しがみつく様に眠っていた。
「なんだこれは……」
バージルは呻く様に呟き、顔をしかめる
「……重い」
そう言うや、すやすやと寝息を立てる二人を床に突き落とし…再び眠りへ落ちて行った。


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