あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと波動 第8話


チュドーン!
チュドドーン!!
チュドドドーン!!!

リュウが『型』を行っている隣で連続爆破を続けるルイズ。
中庭の地面は既にそこらじゅう穴だらけになっている。
知らない者が見ればテロだと思われても仕方がない惨状だった。

「だあぁぁぁっ!なんでこうも毎回毎回爆発するのよ!」
どんな呪文を何回唱えても相変わらず爆発しかおこらないことに痺れを切らして叫ぶルイズ。

「乱れた心では何事も成せない。まずは落ち着いて集中することだ」
落ち着いた声で言うリュウは、先ほどから同じ動きを延々と繰り返している。

オスマンやコルベールの話では、ルイズには普通の魔法が使えない可能性がある。
それはつまり、今の練習をいくらやっても効果がないということだ。
しかし、リュウは確信している。
この世に無駄な努力などないことを。
一見意味がないように見えることも、後から振り返ってみれば必ず血肉になっているものだ。

「解ってるわよ!ファイアーボール!!」
チュドーーーン!!
リュウのアドバイスもどこ吹く風と荒れ狂うルイズ。というよりも、そもそもルイズが落ち着くなど無理だった。

「ああ!もう!こうも爆発が続くと流石に飽きるわね!一回でも成功してくれれば色々工夫できるのに!」
相変わらずプリプリ怒っているルイズ。

「ところでリュウ。あんたここ数日ずっと同じこと繰り返してるだけだけど、それって飽きない?」
気分転換にとリュウに話しかける。

「同じことを繰り返していても・・・例えば、ただ殴るという動作を繰り返しているだけでも一回ごとに常に新しい発見があるもんだ。飽きたりしないさ」
ルイズの質問にひたすら同じ動作を繰り返しながら笑顔で答えるリュウ。

「ふうん・・・あんたのことだから練習でも色々工夫してるんじゃないかと思ったけど、そうでもないのね」
「工夫は大事だが 基礎はそれ以上に大事だ 」
至極当然といった感じで答えるリュウ。

「リュウみたいな人でも基礎は大事なんだ・・・」
ルイズはぼやくのを止めると、再び呪文を唱えだした。


「しかし、あれだね、相棒に貴族の娘っ子に平民の娘っ子ときたもんだ。最近はここも賑やかになったもんだあね。」
木に立て掛けられたまま一人(一本?)呟くデルフリンガー。

リュウが夜中に中庭で修行しているのを知って以来、ルイズは毎晩リュウの隣で魔法の練習をするようになった。
それと、相変わらず建物の陰からこっそりリュウを見ながら練習するシエスタ。

「あの娘っ子もこっちでやりゃあいいのにね。どうせバレてることも気づいてるだろうに。それにしても、今日はいつにも増して賑やかだあね」
見れば寮の方から二人の人影が近づいてくる。赤い髪の長身の女と、碧い髪の小柄な少女。
ルイズは二つの影に気づくと露骨にいやな顔になった。

「ちょっと!何しにきたのよ!」
嫌な顔を隠そうともせずに赤い髪の女、キュルケに食って掛かる。

「あのねぇ。夜中にそれだけ騒いでおいてそういう言い草もないんじゃない?
ここ最近、やたらと煩いから何かと思って来てみれば・・・一人無差別テロごっこ?」
呆れた顔で答えるキュルケ。

「な・・・何よ!いくらなんでも寮まで聞こえるはずないじゃない!」
中庭と寮は結構離れているので、気になるほどの音が届くとは思えない。

「この子は風のメイジなの。だから風の流れとか音に敏感なのよ。寝不足になっちゃったら可哀想でしょ?」
そう言ってタバサの頭を撫でるキュルケ。
「で、どうなの?少しは魔法使えるようになった?」

タバサが音に敏感なのは本当だが、実際には『静寂』の魔法で外の音を遮断してしまうので、ルイズの爆音など関係ない。
単にキュルケがルイズを心配していただけなのだが、それをストレートに言うのも恥ずかしかったのでタバサを理由に使っただけである。
真相を知っているタバサは無表情のまま小さくボソッと「不器用」と呟いた。

「ばばば馬鹿にしないでよね!」
キュルケとしてはルイズを気にしているからこそ出た言葉だったのだが、当のルイズはそれを馬鹿にされたと思ってしまった。
だから、思わず言ってしまった。
「魔法ぐらい使えるわよ!!」

ただ、こういう言い方をされるとキュルケの方も悪戯心が鎌首をもたげてしまう。
「あら?それは頼もしいわね。じゃあ、あそこに転がってる石。なんでもいいからあれに魔法をかけてみてよ、歩く無差別テロリストさん?」
ニヤニヤしながら言うキュルケ。

「テテテテロリストが歩くのは当たり前でしょ!みみみ見てなさい!!」
意外とまともなツッコミを入れつつ、ルイズは数メイル先に転がる石に向けて、呪文を唱えながら杖を振った。
「ファイアーボール!!」

チュドーーーーーンッ!!

一際大きな爆音が轟く。
だが、石には何の変化もない。
変化があったのは学院の塔の上の方の壁。丁度宝物庫のある辺りだった。
壁がモウモウと煙をあげている。
しばらくして煙が晴れてみると、壁に大きなヒビが入っているのが見てとれた。

「あ~あ・・・」
大きく溜息をつくキュルケ。
「た・・・たまたま調子が悪かっただけよ」
それでも尚強気のルイズ。

「調子が悪いのは別にいいんだけどね。あれ、どうするつもり?」
自分のこめかみを押さえながらルイズを問い詰めるキュルケ。
それでも何か言い返そうとしたルイズだったが、それは適わなかった。
塔のすぐ傍の地面が盛り上がり、そのまま30メイルはあろうかという巨大な人影になると塔のヒビ割れた部分を殴りつけたからだった。


ドゴーン!
大きな音と共に塔の壁に人一人入れるほどの穴が開く。
すぐさま巨大な人影の肩の辺りに乗っていたマントとフードに包まれた誰かが穴の中に入っていった。

「クレイゴーレム・・・」
タバサが小さく呟く。

「噂の”土くれのフーケ”ね!?行くわよ!!」
キュルケが叫ぶと、リュウと3人の少女は駆け出した。




「あたしってばツイてるねぇ!どうしたもんかと思ってたら、なんだか知らないけど突然爆発とはね!」
壁の穴の中に入っていったのはキュルケの指摘通り”土くれのフーケ”。

色仕掛けでコルベールから得た情報では、宝物庫の壁はスクウェアクラスのメイジたちによって固定化がかけられているとのことだった。

スクウェアメイジの固定化がかけられている以上、トライアングルの自分の錬金ではどうにもならない。
が、自分のゴーレムなら物理攻撃で破壊できる。そう踏んでいた。

しかし、実際に目の前にしてみると固定化よりもその壁の分厚さ自体が問題だった。
いくら自分のゴーレムでもここまで分厚い上に固定化までかかった壁は流石に破壊できない。

どうしたものかと思案していると、突如壁の一部が、それも丁度宝物庫の辺りが爆破され、ヒビが入ったのだ。
フーケはこれ幸いにと急いでゴーレムを練成すると、ヒビの入った部分を思い切り殴りつけた。
さしもの分厚い壁もヒビが入っていればゴーレムで破壊できる。
めでたく穴の開いた宝物庫の中に侵入するフーケ。

「あったあった・・・」
宝物庫の際奥に保管されていた箱に書かれた『破壊の珠』の文字を見つけ、ほくそ笑む。
箱を開け、中から人の頭程の大きさの珠が連なった輪を取り上げる。
「これが『破壊の珠』だね・・・確かに頂戴したよ」

フーケは宝物庫の壁に『フーケ参上。破壊の珠は確かに頂戴した』
と書きなぐると、再び壁の穴から飛び出し、ゴーレムの手から腕を伝って肩に飛び移る。

「さてと、あのリュウとか言うのがこっちに来るまでに逃げないとね」
が、見ればリュウはすぐ近くまで来ていた。


「・・・って、やけに速いじゃないか」
基礎体力からして常人とは違う次元にいるリュウはフーケの予想を遥かに超える速さで走ってきた。
フーケは急いでゴーレムから飛び降りると、闇の中へと身を隠す。

「逃げるまで時間稼ぎしなきゃね」
ゴーレムで傍に生えていた10メイルほどの大木を引き抜くと、リュウたちに向けて狙いをつける。

「大丈夫、時間稼ぎしたいだけだから当てたりしないよ」
物は盗るが命は取らない。
それがフーケの美学だった。


「ファイアーボール!!」
ルイズが途中で立ち止まって呪文を詠唱し、杖を振った。
もちろん火の玉は出現しなかったが、突然ゴーレムの表面で爆発が起こる。
が、先ほどよりも遥かに弱い爆発しか起こらず、ゴーレムの表面が軽く焦げた程度でしかない。

「馬鹿!なんてことするんだい!!」
思わず叫んでしまうフーケ。
爆発はゴーレムにたいしたダメージを与えはしなかったが、しかしそれでもゴーレムの手元を狂わすには十分だった。

リュウの目の前に投げつけるつもりだった大木は大きく狙いを外れてずっと後方、
呪文を唱える為に立ち止まり一人離れた場所にいたルイズに向けて一直線に飛ぶ。

「え!?」
避けることすらできず、自分目掛けて飛んでくる大木をただ見ているしかできないルイズ。
ルイズを助けようとリュウが振り向いて走るが、あまりに距離が離れているのでとても間に合わない。

タバサも”エア・ハンマー”をぶつけて大木の軌道を変えようとする。
が、こちらも詠唱が間に合わない。

キュルケに至っては反応することすらできなかった。

ドウンッ!!
ルイズ目掛けて飛んできた大木は無情にも直撃し、辺りに激しい土煙が巻き上がる。

「嫌ぁぁぁっ!!」
キュルケの悲鳴。

杖をギュッと握り締め、きつく目を閉じるタバサ。


そして、リュウの瞳孔が開く。

―――おおおおおおおおおっ!!!―――

地獄から沸きあがるような雄叫びと共に、リュウの全身からあまりに濃厚な殺気が噴き出す。
それは、先日のギーシュと闘ったときとは比べることすら愚かしいほどの、果ての見えない、深い暗い殺意だった。
その殺気にあてられてリュウの周りの草花が半径数メイルに渡って一瞬で枯れていく。

赤黒く光る禍々しい瞳でゴーレムを睨み付けると両手を揃えて腰に据え、半身を捻る。
左手のルーンが、篭手の上からでも判るほど激しく妖しく光った。


―――滅・波動拳!―――

ゴーレムに向けて両手を突き出すと、合わせた両の掌からリュウ自身初めて見るほどの巨大な気の塊が放たれる。
放たれた気の塊は30メイルもあるゴーレムの腰から上全てを一瞬のうちに消し飛ばし、
そのまま微塵も勢いを衰えさせずにその直線上にあった塔の上部をも完璧に消し去り、空の彼方に消える。

―――ぬぅんっ!―――

奈落の底まで響き渡るような呻き声をあげると、信じられない速度で地面を滑るように移動するリュウ。
瞬きひとつの間に下半身しかないゴーレムの足元まで辿り着くと、無造作にゴーレムの足を殴りつける。

ゴバアァッ!!
拳の一振りでゴーレムの足が数メイルにわたり、大きく抉り取られた。
更に殴りつける。
再び大きくゴーレムの足が抉り取られる。

フーケのゴーレムには強力な再生能力がある。
周りに土さえあれば、破壊されても即座にその場所を修復できるのだ。
だが、そんな能力はあってもなくても同じだった。
上半身は既に消滅しているし、下半身にしてもどんなに高速で回復しようにも、破壊のスピードにまるで追いつかない。
たった数度拳を振るっただけで最早足をほとんど失った30メイルのゴーレムの下半身は自重を支えることができなくなり、膝から崩れ落ち始める。

目の高さまで落ちてきたゴーレムの部位を、手当たり次第に尚も殴りつけるリュウ。
 ・・・脚・・・膝・・・腿・・・腰・・・
全ての部位が、拳が触れた瞬間に塵芥と消え果てる。

「な・・・なんだい・・・あれは・・・」
盗賊の本能が勝手に身体を動かしてくれたおかげで、どさくさに紛れてその場から逃げることには成功したが、フーケは放心状態だった。

人を殺めてしまったこともあるが、それよりもリュウの化物としか表現のしようがない強さ。
そして何よりリュウの放つ殺気。それは生命の根源から湧き上がるような恐怖。
本能から来る恐怖に身体中が震えている。

「あの貴族の娘には悪いことしちまったね・・・それにしてもあのリュウって男・・・何者なんだい・・・」
呟くと、フーケはガタガタと震える身体を無理やり動かして闇の中に消えていった。



リュウの中に僅かに残った冷静な自分が全力で”殺意の波動”の暴走を止めようとしていた。
――何故だ?何故”殺意の波動”が勝手に!?・・・抑えられない!!ここで正気を失ってしまえば大変なことになる――
今正気を失えばキュルケたちを手にかけてしまうかも知れない。
理性が飲み込まれそうになるのを必死で堪える。



「お怪我はありませんか?ミス・ヴァリエール?」
大木が落ちた辺り、土煙の中から声が聞こえた。

リュウがかろうじて残る理性でそちらの方を見ると、収まりつつある土煙の中に二人の人影が見える。
一人は腰を抜かしてへたり込んでいるルイズ。
そしてもう一人は、大木を手で支えているシエスタだった。
シエスタが誰もいない方に向けて支えていた大木を手放す。

ルイズの無事を確認したリュウはそのまま意識を失った。



キュルケとタバサもルイズの無事を確認すると、安堵の溜息をつき、
ルイズの方は大丈夫だと判断してリュウの介抱に向かう。

キュルケは地面に座り込んで自分の膝にリュウの頭をそっと乗せてやると、額の汗を拭ってやった。
「あなた・・・何者なの・・・?」
意識のないリュウから返事が来るはずもないが、誰に言うでもなくつぶやく。

ドットメイジであるギーシュならともかく、トライアングルクラスのメイジが作ったと思われる
30メイル級のゴーレムですらリュウの相手にはならなかった。

そもそも、あの手から出た術のようなものは何だったのか。魔法ではないようだったが・・・
底の見えない強さを持つこの男は、一体どこまで強いのだろう。
そして、その天井知らずの強さに驕ることもなく深い優しさを湛えた瞳を思い出す。

「やばいなぁ・・・本気で好きになっちゃったかも・・・」
隣にいたタバサでも聞き取れないほどの小さい声を漏らすキュルケだった。





建物の陰から見ていたシエスタは、リュウたちが爆発のあった方に走っていったのを後からこっそり、見つからないように距離を離して追いかけていた。
そこで見たのはルイズ目掛けて一直線に飛んでくる10メイルはあろうかという大木。
慌てるシエスタ。
「おじいちゃん!わたしに力を貸してっ!!」
シエスタは全力で走るとルイズの前に飛び出し、大木を受け止めたのだった。


「あ・・・ありがとう・・・大丈夫よ・・・」
腰が抜けたまま、なんとか言葉を紡ぐルイズ。
「とにかく、間に合って良かったです。走るのが速いのも、力が強いのも、たまには役に立つんですね」
シエスタが微笑んだ。



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