あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと波動 第2話


「で、使い魔ってのは具体的に何をすればいいんだ?」
リュウが召還された夜、ルイズの部屋で二つある月にひとしきり驚いた後――ここで初めてリュウはこの場所が地球ではないことを悟り
いよいよもって大事になってきたと自覚し、本格的に元の場所に戻る方法を模索する覚悟を決めた――訊ねた。

「使い魔の仕事は大きく分けて3つあるわ。まず一つ目、使い魔はご主人様の目となり耳となるの。使い魔の見たもの、聞いたものはご主人様にも見えるし、聞こえるのよ」
「で、見えてるのか?」
しかしルイズの目や耳には一向にそれらしき情報は入ってこない。

「・・・どうやら見えないみたいね。アンタは平民だし、そういうこともあるのかも、まあいいわ。次二つ目、秘薬の材料になる珍しい鉱物や薬草なんかを集めてくるのも使い魔の仕事よ」
「食べられる野草なんかを見つけるのは割りと得意な方なんだが、流石にここまで知らない土地だと見つけようにも見分ける知識がないな」
「使えないわねー。じゃあ、三つ目、これが一番大事なんだけど、使い魔はご主人様を身を挺して守るものなの。で、アンタは強いの?」
「俺が強いかどうかは解らんけどな、ルイズを守るというのなら、多少はなんとかなるかも知れん」
「もう、頼りないわね。まあいいわ。明日もあることだし、もう寝ましょう。アンタはそこで寝るのよ」

今日召還する”はずだった”幻獣のため、あらかじめ用意していたのだろう、部屋の片隅の藁束が敷かれている一角を指すと、ルイズは着ていた制服を次々と脱ぎ捨て、リュウに投げてよこす。
「こ・・・こら!何をしてる!?」
いきなり目の前で服を脱ぎ始めた少女に狼狽するリュウ。
「何をしてるって、寝るから脱いでるのよ。これ、明日の朝、洗濯しときなさい」

さっさと制服を脱ぎ捨てて下着姿になると、大きなベッドに潜り込むルイズに諭すリュウ。
「年頃の女の子が男の前でそんなことするもんじゃない」
「男ったって、アンタ平民じゃない。犬と一緒よ。犬相手に裸を見られて恥ずかしがる人なんていないわ」

犬と同列の扱いを受けて思わず絶句したリュウは昼間ルイズに聞かされたことを思い出した。

貴族は魔法が使え、平民は使えない。
そして貴族と平民の間にある絶対的な立場の差。

まさかとは思っていたが、ここまで徹底しているとは・・・

リュウはかつて拳を交えた仮面の貴公子と呼ばれる男を思い出しつつ、藁束の中に身を沈めた。

なかなか寝心地は良いな・・・などと思いつつ。


ルイズはベッドの中で考えに耽っていた。

ルイズは魔法が使えない。
両親は共に、特に母親などは若かりし頃には”烈風カリン”と呼ばれたほど才に溢れたメイジだ。
二人の姉もその血を色濃く次いだ優秀なメイジである。

そんな中、ルイズだけが何故か一切魔法が使えない。
どんな魔法を使おうとしても必ず爆発――失敗してしまうのだ。

屋敷の使用人たちが「いい気味だ」だの「魔法も使えないのになんで自分が仕えないといけないのか」
だのと陰口を叩いているのを偶然聞いてしまい、こっそりその場を離れてベッドに突っ伏し、一晩泣き明かしたこともある。

最初の頃は両親も姉たちも「気にすることはない、そのうち使えるようになる」
と励ましてくれたし、魔法学院にも入学させてくれた。

だが、今はそれすらも言わない。
気を使ってその話題自体出さないようにしてくれているのだ。

ルイズにはそれが痛いほど解っていた。
だから、勉強した。
夜遅くまで机に向かい、図書館に篭り、虚無の曜日には朝から晩まで魔法の練習をした。
しかし、ただの一度も成功したことはない。

それでも猛勉強のおかげで実技以外の成績はすこぶる良かった。
入学当初、周りの生徒たちも「流石はヴァリエール家の息女」と一目置いていたが、それも実技が始まるまでの短い間だった。

授業に実技が組み込まれるようになってから、ものの数日でルイズの評価は地に落ちた。
「あれだけの家柄でありながら、魔法が使えない」
「魔法の才能ゼロ」
「ゼロのルイズ」

皆がからかうようになった。
魔法は使えなくてもプライドは人一倍高いルイズ。
からかわれる度、その全てに噛み付いた。

そのうち、からかわれる機会も減った。
先祖代々の仇敵であるツェルプストーがからかう以外には誰もルイズに話しかけなくなった。

こうして、ルイズから友達はいなくなった。

それでもルイズは構わなかった。
元々魔法を使えるようになる為に入学したのだ。
友達なんて別にいなくたっていい。
そう思っていたし、それでいいと思っていた。


だが、リュウという男に出会ってしまった。
彼は確かに平民だが、ルイズに普通に接してくれる。

そして、出会ってからまだ半日しかたっていないというのに
彼のそばにいると不思議なことに大きな安心感を得ることができる。

自分が人一倍我侭なのは知っている。
それでも、そんな自分にリュウは普通に接してくれる。
それがルイズには嬉しかった。

ただ、元来の性格からそれを素直に表現できない。
どうしても毒づいてしまう。

それに、不安もあった。
まだ出会ってから半日しかたっていない。
リュウは自分のことをほとんど知らない。

自分が魔法を使えないと知ればリュウは軽蔑するだろうか。
他の人たちと同じように、自分から遠ざかってしまうのだろうか。
リュウに限ってそんなことはないと信じたくても、どうしても不安になる。

ルイズは生まれて初めて、他人に辛く当たってしまう自分の性格――本人は気づいていないが、それは魔法が使えない劣等感が生み出した性格だった――を呪った。




翌朝、太陽がようやく顔を出し始めた頃にリュウは目覚めた。
大きくひとつ伸びをする。

「さて、洗濯か・・・」
それにしても人のものを洗濯をするなど、いつぶりだろう。
かつて、師匠であった剛拳の胴着を毎日洗っていたことを懐かしく思い出す。

ひとしきり感慨に耽ると、昨晩ルイズから受け取った服を持ってとりあえず建物の外に出ることにした。

水場を探して辺りを歩くリュウの前を一人の少女が横切る。手には洗濯籠を持ち、大量の洗濯物が山のように詰め込まれている。
「すまない、ちょっと聞きたいんだが」
「きゃっ!」
突然声を掛けられて驚いたらしい少女は大荷物を持っていたこともあり、バランスを失って倒れそうになった。
それをリュウが右手で支えてやる。

「え!?」
こんなところに手すりなんてあったかしら?と怪訝に思いつつ見てみると、それは人の腕だった。
大量の洗濯物と共に全体重がかかったにも関わらず、微動だにしなかったので手すりか何かと間違ってしまったらしい。
「ああ!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
慌てて飛びのき、ぺこぺこと謝る黒い髪に黒い瞳の少女。

「いや、こちらこそ驚かせてしまってすまない。キミが洗濯物を持っていたから、洗濯できる場所を尋ねようと思ったんだ」
ようやく謝るのをやめた少女はにっこりと微笑むとまじまじとリュウを見つめた。

「あの・・・失礼ですけど、もしかしてミス・ヴァリエールが召喚された平民の使い魔って、貴方ですか?」
「ああ、そういうことみたいだ。キミもここの生徒なのか?」
「とんでもありません!私はここで使用人をさせていただいている平民で、シエスタって言います」
「そうか。俺の名はリュウだ。それにしても、よく俺が召喚された使い魔だと判ったね」
「そりゃあ、もう、私たちの間でも噂になってますよ。ミス・ヴァリエールが人間の平民を召喚したって。それに、私と同じ黒い髪に黒い瞳なんて珍しいですから」
嬉しそうに答えながらシエスタはリュウを洗濯場に案内する。

リュウは案内してもらう代わりにシエスタが持っていた大きな洗濯籠を持ってやった。
最初シエスタは「これ、結構重いんですよ、それに貴族の使い魔さんにそんなことさせられません」と断ったが、リュウは笑いながら「これぐらいのことはさせてくれ」と言ってシエスタから籠を受け取る。
毎日こなさなければならない力仕事なので、持ち方のコツを覚えているシエスタは女性とはいえ、かなりの重さの洗濯物を持っていた。
それをリュウは事も無げに片手で担ぐ。


「そういえばここに来てから黒髪に黒い瞳に会うのはキミが初めてだな。そんなに珍しいのか?」
改めて思い出して見れば、こちらに呼ばれてから出会った人間は皆、桃やら赤やら青やらとやたらカラフルな頭をしていた。

「そうですねー・・・少なくとも、私が今まで見てきた中では私の従姉妹と私の祖父ぐらい・・・と言っても、私の記憶にあるおじいちゃんは白髪で真っ白でしたけどね。
でも、おじいちゃんも若い頃は黒かったそうです。それ以外では黒い髪の人はリュウさんだけですね。
だから、なんだか他人の気がしません・・・さ、着きましたよ、リュウさんの洗濯物も貸してください。一緒に洗っちゃいます」

弾けるような笑顔で答えるシエスタ。
「いや、自分の分くらいは自分でするさ」
「大丈夫ですよ、これだけたあれば今更少しぐらい増えたって一緒ですし。それに・・・」

シエスタがリュウの洗濯物に視線を落とす。
「それに、男性の方が女性の下着を洗うのはちょっとどうかと・・・」
今まで他人の洗濯物といえば師匠の胴着しかなかったリュウはここで初めてその事実に気づいた。
「た・・・確かに・・・すまないが頼めるかな・・・」
ばつが悪そうに頭を掻くリュウ。
「任せてください!これからもリュウさんの洗濯物は私がやっちゃいますから、いつでも言ってくださいね」
「助かるよ」

シエスタは袖をまくり、可愛らしく「むんっ!」と腕を曲げて力コブをつくる真似をすると、洗濯物に取り掛かった。
その横でリュウは座禅を組んで目を瞑る。

「それって『ザゼン』ですか?うちのおじいちゃんも生前「自然と一体となる」とか言って、”カタ”っていう踊りみたいなのと、その”ザゼン”っていうのをよくやってました。私には何のことだかサッパリでしたけど」
「ああ、こうやって精神を落ち着かせて自然と一体となるんだ。そうすると大地の力を感じ取り、風の声を聞くことができるようになる」
目を閉じたまま答えるリュウ。

「キミのおじいさんはきっと強かったんだろうな。一度お会いしてみたかったものだ」
「私がまだ小さいときに亡くなりましたから、あまり記憶には残ってないんですけど、とんでもなく強かったそうですよ。なんでも、村を襲ったオーク鬼の集団を素手で簡単に蹴散らしたとかなんとか・・・。
尾ひれがついて話が大きくなってるんでしょうけど、オーク鬼に勝ったのは本当みたいです。なんとなく雰囲気がリュウさんに似てましたよ」
懐かしむように遠い目をするシエスタ。


シエスタは知らない。

自分の祖父が本当に十数匹に及ぶオーク鬼の集団を素手で葬り去ったことを。




小一時間ほど瞑想したリュウはシエスタに別れを告げ、ルイズを起こしに部屋に戻った。

「ほら、ルイズ、朝だぞ」
肩をゆすってもムニャムニャと言うだけで一向に起きる気配がない。

無理もない。
ルイズはリュウが眠ったのを確認するとベッドから起きだし、明け方近くまで机に向かっていたのだ。
もっとも、ルイズは気づかれていないと思っていたようだが、リュウは気配でそれを感じていた。

「勉強熱心なのは結構なことだが、それで寝坊したのでは本末転倒だな」
リュウは多少荒っぽい方法をとることにした。
寝ているルイズの両肩を掴み、ひょいと持ち上げて無理やり座らせると、正面に立って中腰に構えた。

座らされたまま、いまだ夢の中のルイズ。
右の拳を腰に据えると「フンッ!」という気合と共にルイズの眼前に突き出す。
右の拳に押し出された空気は突風となってルイズの顔を叩く。
メイジが見れば、きっと”エア・ハンマー”の亜種だと思ったことだろう。
もちろん、リュウは”エア・ハンマー”など知らないが。

「ぎゃんっ!?」
顔に突風を受けたルイズは奇声と共に後ろに2回ほど転がった。

「ななななに!?何があったの!??」
一気に夢の世界から現実世界に連れ戻されたルイズは頭に大量の「?」を浮かべる。
どうも身体がくるくる回ったような気がするが、別にどこも痛くはない。

「夢でも見てたんじゃないのか?それよりも、そろそろ起きる時間だと思うが」
「そ・・・そうね・・・」
いまだ頭に「?」を浮かべたまま、もぞもぞとベッドから這い出る

「じゃあ、着替えさせてちょうだい」
ベッドに腰掛けると、さも当然のように下着姿のまま無い胸を反らす。

「何言ってるんだ。小さい子じゃあるまいし、それぐらい自分でするんだ」
リュウはタンスから制服を取り出すと、ルイズに向けて放り投げた。

「昨日も言ったでしょ!貴族は召使がいるときは自分で着替えたりしないのよ」
「ダメだ。そんなことでは碌な大人にはなれんぞ」
思わぬ強い口調のリュウに一瞬気押されたが、それでも言い返す。

「ななな何よ!!わわわ私は貴族なのよ!へへへ平民のアンタの説教なんかかかか」
「俺は貴族のことはよく分からん。だが、自分でできる最低限のことすらせずに、ただ威張り散らすのが貴族なのか?」
言葉に詰まるルイズ。

「魔法を使える者が貴族で使えないものが平民ということは解った。だが、魔法が使えないだけで人間性まで否定するのか?魔法を使えない者の言うことからは何も学ぶことはないのか?」
至極マットウな意見に何も言い返せない。
いや、普段ならそれぐらい言われても「平民のクセに!」で片付けるのだが、強い意思の光を湛えたリュウの目で真っ直ぐに見つめられるとそれができない。
理由の無い反論は逃げているだけで、してはいけないような気がする。

「俺はお前の倍は生きてる。年長者の言うことは聞くもんだ。さ、俺は外に出ているから、さっさと着替えるんだ」
固まったまま何も言い返してこないルイズを見て、リュウは表情を和らげて締めくくった。
「わ・・・解ったわよ・・・」
なんなのよアイツなどとブツブツ言いながら、それでも言われた通り、おとなしく自分で服を着替えたのだった。



リュウが扉の前で待っていると、ほどなくしてルイズが出てきた。と同時に隣の部屋の扉も開く。
中から出てきたのは燃えるような赤い髪と瞳を持ち、よく日焼けした褐色の肌の、美女と言って差し支えない女性だった。

「あら、おはよう、ルイズ」
制服に収まりきらない胸をシャツから半分ほど飛び出させて、これ見よがしにルイズに見せ付ける。

彼女はルイズの天敵だった。
先祖代々においても仇敵であったし、ルイズ個人としてみてもやはりこの女は敵だった。

何よりも、魔法が使えない自分と違ってこの女は魔法の才に長けている。
悔しいが学年でもトップクラスのメイジだ。
その上、ことあるごとにニヤニヤ笑いながら自分につっかかってくる。
腹立たしいことこの上ない女。
それがツェルプストーだった。

「おおおおおはよう、ツェルプストー」
しまった、よりによってこんなヤツと出くわすなんて・・・などと思いつつも一応、仕方なく挨拶を返す。
キュルケは自分の足元にいる大型のトカゲのような生き物の頭を撫でながら嬉々として話を続けた。

「見てよ、これがあたしの使い魔のフレイムよ、この尻尾の炎は間違いなく火竜山産のサラマンダーね、好事家に見せたらきっととんでもない値がつくわよ」
やっぱりきた!使い魔自慢。ああ、早くどっか行ってよねまったく・・・
負のオーラ全開のルイズを気にするでもなく続けるツェルプストーと呼ばれた女性。

「あら?そこにいるのは、昨日ルイズに召喚された彼かしら?」
「ああ、リュウだ、よろしく頼む。ええと、ツェル・・・」
「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ、親しい人はキュルケと呼ぶわ。貴方もキュルケって呼んでくれていいわよ。リュウ」
「そうか、よろしく頼む。キュルケ」
そう言って笑顔で右手を差し出す。
妖艶な笑顔で握手に応えたキュルケはリュウの手に触れた瞬間、不思議な感覚に陥っていた。
とてつもなく大きく、優しく、穏やかななにかに包まれているような感覚・・・

「ちょっと!そんな乳だけ女と仲良くしてないで、さっさと行くわよ!リュウ!」
ナニよ!あんな乳だけ女にニヤニヤしちゃって・・・いや、まぁ、顔はニヤけてなかったけど・・・
きっと内心はニヤニヤしてたわちょっとは良いヤツかもと思ったけど所詮は男ねまったくなってないんだからブツブツ・・・

またもブツブツと、それもかなり勝手なことを言いながらスタスタと歩き始めるルイズ。


「あら、つれないわねぇ」
さして気にした風でもなくルイズに向かってヒラヒラと手を振るキュルケ。

「あの娘は礼儀がなってない。ちゃんと躾んといかんな。無礼は俺が代わりに詫びる、許してやってくれ」
キュルケに向かって頭を下げるリュウ。

「別に謝らなくていいわよ。気にしてないわ、いつものことだもの」
キュルケはケラケラと笑いながら答えていたが、不意に真面目な顔になって言葉を続けた。

「最初は平民が召喚されたのを見て、またあの子が馬鹿にされると思って心配だったけど、実際に喋ってみると召喚されたのが貴方で良かったのかもね。
ルイズってば愛想は悪いし我侭だし自分勝手ですぐ癇癪起こすし背は低いし胸は幼児並みだけど、悪い子じゃないのよ。あの子のこと、よろしくね」

後半に至っては本人の努力ではいかんともしがたい悪口ではあったが、慈愛に満ちた目でルイズの後姿を見送るキュルケにリュウの顔もほころぶ。
が、ひとつ気になることがあった。

”また馬鹿にされる”とはどういうことだろう。

ルイズは皆から馬鹿にされているのだろうか。多少とっつきにくいところはあるが、夜遅くまで勉強しているところ見ると勤勉なのも確かだろうし、快活で可愛らしい少女ではないか。
キュルケの言葉がどういう意味か考え込もうとしたリュウだったが、しかしそれはかなわなかった。
ルイズから視線を外したキュルケがリュウの分厚い胸板にしなだれかかってきたのだ。



――やはり勘違いではなかった――リュウの胸板に触れた瞬間、大きな安堵感がキュルケを包みこむ。
その安堵感の正体が解らないまま、うっとりとした顔でキュルケがつぶやく。
「それにしても、貴方、よく見るといい男ね・・・逞しい男って好きよ」
リュウを見つめるキュルケの瞳が急に潤い始める。

突然の展開だったのと、終生のライバルであるケンとは違って元々異性関係には疎かったこともあり、どうしていいのか解らずにたじろぐリュウ。


「ちょっと何してるのよ!早く行くわよ!」
リュウがおろおろとしていると、タイミング良くルイズが戻ってきてリュウの手を引っ張った。

「助かった」と漏らすリュウを連れて、ヅカヅカと食堂に向かいながら言い捨てるルイズ。
「ツェルプストー!人の使い魔にちょっかいかけないでくれる!?どうせその気も無いくせにすぐ手を出すんだから!リュウもリュウよ!あいつは先祖代々の仇敵なんだから、デレデレしないの!」
「おお、怖い怖い」
肩をすくめるキュルケ。振り返りもせずにずんずん進むルイズ。

「その気も無い・・・ね・・・」
自分の右手とひっぱられていくリュウを見比べながら一人つぶやくキュルケだった。


「たいしたもんだな」
それが朝食をとるためにルイズと共にアルヴィーズの食堂に入ったリュウの第一声だった。

特大のホールに何十メイル(ここでの距離の単位らしい。リュウの感覚ではメートルとメイルはほぼ同じ長さと思って間違いないようだ)もあるテーブルが3つ並んでおり、
その上には豪華絢爛な料理が所狭しと置かれていた。

それぞれのテーブルには色の違ったマントを羽織った生徒たちが座っている。
どうやら学年別にマントの色が決まっているらしい。

空いている席のひとつにルイズが座る。
「俺はここに座ればいいのか?」
ルイズの隣の席に座ろうとするリュウ。

「そこは貴族が座る席よ、アンタはこっち」
ルイズが指差したのは床。
そこには小さな鶏肉が一つ浮かんだスープが一皿、床に置かれているだけだった。

「使い魔は本当は食堂にすら入れないんだから、有難く思いなさい」
何か言い返してきたら、「仕方ないわね」などと言って自分の食事を分けてやろうと思っていた。
が、現実は違った。

「・・・使い魔というよりも、これでは奴隷だな。わかった。外で適当にイノシシでも捕まえてくる」
無表情で言い捨てると食堂を出て行ったリュウを見て、流石にやりすぎたかと後悔するルイズ。
でも時既に遅し。

「な・・・何よ、せっかく分けてあげようと思ってたのに・・・使い魔のクセにご主人様の言うことが聞けないなんて・・・」
口では悪態をつきながらも、ルイズの顔は焦っていた。

今のでリュウに嫌われたらどうしよう・・・せっかく私にも普通に接してくれていたのに。
リュウに嫌われたら、またひとりぼっちになってしまう。
どうすればいいのか解らない。
リュウを追いかけて謝ればいいのだろうか?
でもなんて謝ればいいのか解らないし、そもそもリュウがどこに行ったかも解らない。

結局、たっぷりとられた食事の時間中にリュウは戻ってこなかった。
並べられた料理は初めと同じ状態で、その前にはただ俯いているルイズが座っている。
そのうち料理は次々と下げられ、代わりにデザートが運ばれてくる。
自分の目の前にあった手付かずの料理がデザートと交換されるのを、ルイズはただじっと見つめていた。



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