あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのパラサイト-01


ルイズはゆっくりと身を起こすと、見知った未知の部屋をグルリと見回した。
天蓋のついた豪華なベッドに、どれもこれも高級そうな調度品の数々。間違いなくルイズの部屋だ。

私は誰だ? ここはどこだ? 私は死んだのではなかったか?

手始めにオハイオ州の田舎町を侵略している最中、高校の生徒たちに正体を感づかれてしまった。
最後に残ったケイシーという少年に寄生しようとした瞬間、シークという少年が作った薬物を直接投与されて水分を奪われてしまい、干からびたはずだった。
万の位まで数を増やし、インフラを飲み込み、確実に地球を我が物にするはずだったのに、あの少年たちに邪魔されたのだ。
天変地異が発生して水を失ってしまった故郷を捨て、新たな楽園を手に入れるはずだったのに、失ってしまった。

いや、それは違う。私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……。

私は魔法が使えない貴族で、そのために誰かも蔑まれる劣等生が私であったはず。
烈風のカリンといわれたお母様、きついほうのエレオノールお姉さま、やさしいカトレア姉さま。
ここはトリスティン魔法学校で、私は使い魔を召還して……。
そしてどうなったのか、どうしても思い出すことが出来なかった。ズキリと頭が痛む。
その時の記憶は霧の中にあるようで、何度手で払ってもすぐに飲み込まれてしまうのだ。
だが、失敗したという記憶は無かった。何か分からないが、呼び出したような気がする。

「なら、まあいいか……。それより、喉が渇いた……」

ルイズはベッドの上から、届くはずの無い距離にあるテーブルへと手を伸ばした。
求めたのはコップと水差しだったが、それまでの距離は数メートル……いや、数メイルあり、人間の腕ならば届くはずが無い。
しかしルイズの右手は無数の蛇が寄り集まって出来たような触手へと姿を変え、その二つを器用に手繰り寄せてしまった。
コップに水を注ぎ、飲む。飲む。飲む。
満タン近くまで入っていた水差しはあっという間に空になってしまい、いつの間にか人間の腕に戻っていた右手を再び触手に変え、元の場所に置く。
ルイズは己の右腕が異常だと思いつつも、一方は実に自然なことだと思っていた。
なぜならば自分はヴァリエール家の三女で、別の星から来たエイリアンであって、ゼロと呼ばれる才能無しで、本来の姿は化け物なのだから。

「私、私は……」

自分は何者だろうか?  ルイズ? 人間? 化け物? 
エイリアンという単語は聞きなれない物だったが、なぜか理解できた。
再びズキリと痛む頭を抱え、ルイズはシーツを抱きしめて唸る。

「私は……私だ」

そう、私は私だ。別に他意もないし、それならば別にいいか。
きっと今混乱しているのは、変な風に寄生してしまったからなのだろうけど、私が私であるならば問題ないだろう。
寄生というか同化というか、ともかく自分の理解の及ばぬところだ。いまさら騒いでも遅い。
それに2度目のチャンスがやってきたのだから、今度こそ成功させないと。
あの時は"仲間"を増やす事ばかりに囚われ、危険分子を見逃してしまった。より慎重にやらねばいけない。

「まずは、使い魔ね。人目を引きたくない」

誰しも持っている使い魔だが、それを持っていないというのは不味かった。
すでにゼロのルイズとして多大な注目を受けている以上、さらに興味深い存在となるのは頂けない。
ルイズは己の左手を苦々しげに見つめると、そこに浮かぶ奇怪な模様を、皮膚を操作して何度も消そうと試みた。
しかしどういう原理なのか、そのルーンは一向に消えようとしない。魔法とはなんとも忌々しいものだ。
腕を触手の束に変えている間は分散して目立たなくなるが、それでは逆効果にもほどがある。
これでは使い魔を持ってきても、信用させるに足らないかもしれない。

「仕方ないか……」

ルイズは軽く溜息を吐くと、寝巻きを脱ぎ捨てていつもの制服に着替え始める。
窓の外はまだ夜明け前で薄暗く、授業どころか朝食の時間にすらなっていない。
つまりそれだけ人目が少ないということで、今のルイズには好都合だった。試したいことがある。
誰ともすれ違わないままに校舎の外に出ると、足早に門へと向かった。

「ちょっといいかしら?」

「これは貴族様。……申し訳ありませんが現在は真夜中、学校の外へは出られませんよ。規則ですので」

詰めていた平民の衛兵に声をかけると、落し物をしてしまったので申し訳ないが一緒に探してくれないかと頼む。
彼は一瞬だけ嫌そうに顔をしかめたが、貴族たるルイズの命令は絶対である。仲間に見張りの代理を頼むと、大人しくついてきた。

「どんな物か言うのは少し恥ずかしいから、人目につかない場所で……。」

哀れな獲物はルイズの思わせぶりな目配せを受けると、一瞬呆けた後で鼻息を荒くして頷いた。ロリコンの気でもあったのだろうか。
やがて二人は学校の端にあった暗がりに入り、彼はスカートを下ろしてくれというルイズの命令に従って体を屈ませ……。

「さすがにこれは使い魔にはならないわね」

ルイズの"子供"を耳の穴から入れられた男は、地面に倒れて死んだように動かない。
体の一部である寄生体を人体に進入させ、改変して住み心地のいい家に作り変えるのがルイズの力だ。
意志一つで動かせる"兵隊"となった彼らも"子供"を作ることが出来る。そして鼠算式に仲間を増やすのだ。
まさにルイズは女王蜂といってもいい生物だった。そうやって星の主導権を乗っ取るのが生態である。
もっとも、親木であるルイズが死ねば壊滅してしまうが。ちなみにルイズも原理は知らない。

「でも、まだ様子見……」

兵隊が子供を使って人間を作り変えてしまうと、記憶はあるものの、人間らしさ、というものを失ってしまうのだ。
失敗すれば性格が激変してしまったり、成功でも対応が機械的になったりと、親しい人間ならすぐに変化に気づくだろう。
それだけではなく保水力の低いそれらは、特に変わった直後など絶え間ない水の補給が必須となる。これだけでもバレてしまうかもしれない。
比べて親木から直接分離したものは、かつての性格をほぼそのまま残しているし、そういった弱点も控えめになっている。
以前は素早さを求めて爆発的に数を増やした結果、気づかれた人間に不覚を取ったので、この手は使う気になれなかった。
それを抜いても早急に動くのは不味い。ただでさえ、魔法という把握しきれない物が存在しているのだから。
この学校で魔法というものに慣れ、今後にうまく生かさなければなるまい。

「あなたは詰め所に戻って。今の事は忘れるのよ」

「は、い……」

ようやく立ち上がった衛兵はまだぼんやりとしていたが、どうにか歩き出すと詰め所へと戻っていった。
ルイズ自ら積極的に動いていき、寄生体を少しずつ潜伏させていくのが確実だろう。効率が悪いが仕方が無い。
小規模でも軍隊を作れるほど数が揃ったら、一気に開花させてしまえばチェックメイトだ。
電話やインターネットといった便利なものが存在しないこの世界なら、一度磐石な領地さえ築ければまず発覚しないはず。
そもそもルイズ単体では生殖行動を行えないため、それほど巨大なコロニーは必要ない。
何百人という仲間たちと共に来ていれば別だが、悪戯に数を増やす愚は身に染みて分かっていた。
最低限、ヴァリエール家に戻って領地の全てを我が物にすれば、それだけでもいいかもしれない。

「あの時はバカをやったものね……」

ルイズは過去の過ちを振り返って額を押さえると、酷く達観したかのような自虐的な笑みを浮かべた。
異分子である少年少女達の中に入り込むなど、今にして思えばあまりに危険だ。
自ら手を下さなくとも、あの時は大勢の兵隊を持っていたのだから、自分は引っ込んでいればよかった。
星の頂点に君臨するという魅惑に惹かれる姿など、光に集まる虫と同じではないか。

「今度は失敗しないわ」




数分後、ここ数十分ばかりの記憶を失った男が詰め所へと戻ってきた。
仲間たちは冗談交じりに貴族様の愚痴をいい、変な魔法でもかけられたんじゃないかと揶揄する。
給料は良いが暇な事この上ないこの仕事で、こういった話題はいい暇つぶしだ。
やがて交代の時間が来て、彼らは今日のことをすぐに忘れてしまった。


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