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割れぬなら……-16




森を焼く……
話を聞くと、賈言羽はプチ・トロワを出発する前からこの策を考えていたらしい。
事前に間者を放ち、村の情報を集めさせ、さらに森の複数個所に火薬の詰まった球を埋めさせてある。
後は合図一つでライカの森は火の海に変わるのだ。
これによって翼人達が焼け死ねば良し、逃げられたとしても、彼等は住居を失う事になる。

「先住魔法」

そこまで聞いたところで、タバサがごく簡潔に問題点を提起した。

「消火しきれない程、火勢を強くする事です。
 森の要所には火のメイジが8名待機しており、仕込んである火薬の量も併せて鑑みれば、消火しきるのは不可能かと。
 また、先住魔法は森の精霊の協力が無ければ有効に作用いたしません。
 森が焼ければ、翼人達の魔法も力を失う事となりましょう」

タバサは一瞬、妙に先住魔法について詳しい理由を訪ねてみたくなったが、すぐに考え直した。
翼人達にも気取られないように間者を張り巡らせ、さらに火責めの用意までしているような男が、まともに情報を明け渡すとは思えなかった。
むしろ、わざと疑念を抱かせるように喋っているかのようにさえ感じた。

「村人は?」

話題を変える。
少しばかり強引過ぎたかもしれない。

「森の半分は焼け残ると計算しております。
 また、この森は土壌が良く水源も近いので、焼け跡を畑に変えるのも簡単でしょう。
 まとまった農業生産が得られるまで多少の先行投資と2・3年の時間が必要でしょうが、
 既にガリア王は補助金の出資を承諾しております」

そこまで計算・準備をしているのかと、タバサはさらに警戒を強めた。
そして認識を改める、この男は本物ほ智者・賢者の類であると。
もしも賈言羽が敵にまわったら……首筋に感じた悪寒を、必死になって隠した。

「翼人は昼行性で、夜目もさほどきく方でもなし。
 決行は今夜、夜が明けるまでに決着をつけます」

「翼人が焼け残った森に再び住居を構える可能性は?」

「翼人は本来、好戦的な種族ではありません。
 わざわざ必争の地に居残る可能性は低いのではありますが、
 念のため、対策は考えてあります」


そうやって、計画の細部を詰めていた時だった。
タバサの耳に、足音が届いた。
ほぼ同時に賈言羽もその音に気づいたらしく、話を中断した。

「だれ?」

「ぼ、ぼくです……ヨシアです」



……中略……



ヨシアと途中から部屋に入ってきたアイーシャは、村の実情、翼人の生態、そして2人の馴れ初めの話をした。

驚くべき事に、その間シルフィードは黙ったままだった。
たぶん『賈言羽の目の前では絶対に喋らない』という約束を律儀に守ろうとしていたのだろう。

タバサは2人の話を黙って聞きながら、注意深く賈言羽を観察していた。
案の定と言うべきか、一度たりとも驚いた様子が無かった。
たぶん、全てが既出の情報だったのだろう。
さっきから『出ていく』だの『出ていく必要はない』だのと言い争っているが、おそらく、すぐに矛先はこちらに向かってくる。

「お願いです騎士様! お引き取りください! それかお城に訴えてください!」

ほらきた。
タバサは無言で賈言羽の方を向いて『どうする?』と視線で訴えた。

タバサにはもう、賈言羽が何と答えるのか予想がついていた。
『作戦は変更しない』
きっと賈言羽はそう言う筈だ。

賈言羽があらかじめあらゆる情報を集めていたのなら、
2人の話に未知の何かが無かったのなら、作戦を変更する理由は何も無い。
情に流されでもしない限り、作戦を変更するとは思えなかった。

「……一つ、策がございます」

賈言羽は数秒考え込んだ後、そう宣言した。
タバサは一瞬、己の耳を疑った。

「特に理由の無い敵対ならば、1度でも協力して何かをやらせれば、和解に導く事も可能でしょう。
 人間も翼人も森に生活の基盤を持っている部分は共通しております。
 故に森に火を放てば、人間も翼人も我を忘れて消火にあたりましょう」

「騎士様! 上手くいったらアイーシャと別れずにすむのですか!?」

「明朝の正午にでも実行いたします。
 ヨシア殿とアイーシャ殿はそれぞれの住処へと戻り、火の手を確認したらすぐに消火を呼び掛けていただきます。
 出火を事前に知っていたとわかれば、後々厄介な事になります故、できる限り不審な行動は控えていただきたい」

2人はやや緊張した面持ちで頷いた。

「くれぐれも普段通りの生活を心がけてくだされ。
 最悪の場合、今以上に両者の対立が深まる結果となりましょう」

もう一度、かなり力を入れて念を押す。

「やってみせます」

その力強い返答に満足したのか、賈言羽は僅かに眼を細めた。

「タバサ殿、作戦変更の通達、火薬の配置換えをして参ります。
 夜明け前に戻りますので、明日に備えて休息を」

そう言うと、賈言羽はヨシアとアイーシャと共に部屋から去っていった。
1人残されたタバサは、茫然としていた。
賈言羽という人物を、量りかねていた。
ガリア王と通じているかと思えば、まるでタバサを庇うかのような行動をとる。
綿密な計画、入念な準備をしていたかと思えば、この土壇場で作戦変更。

賈言羽が一体何をしたいのか、まるでわからなかった。

「何故……?」

気づけばそう呟いていた。

「すごい! すごいのね!
 感動したのね、憧れるのね!
 翼人と人間で恋仲なんてなかなかないのね!」

聞こえてくる声は、そんな実にどうでもいいものであった。




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