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異世界BASARA-53


城内は凄惨を極めていた。
押し寄せた敵に斬り裂かれた者、最初の大砲で吹き飛んだ者……
討ち死にした王軍のメイジの死体が転がり、城内からは戦いの音が今なお響いている。


ジェームズ1世はただ1人、パーティーで設けられていた玉座に座り、静かにホールの大きな扉を見つめていた。
遠くから爆発音と、悲鳴が聞こえてくる。爆発の音は次第に大きくなり、振動がホールの中にまで伝わってきた。
彼はその音を聞いて悟った。これは大砲の音ではない、だが火の魔法とも違うと。
そう思ったその時、ホールの扉が轟音と共に吹き飛んだ。
火が燃え広がり、黒煙が濛濛と立ち上る。

その煙の中から、1人の男が現れた。

見た事のない服を着た男であった。このアルビオンでも……いや、ハルケギニアのものではなかった。
ただその眼が、男の凶悪さ、狡猾さを表していた。

「ご機嫌如何かな?空の国の王よ」

ジェームズの姿を見て、男は口の端を吊り上げて言った。
その言葉に、ジェームズの顔が怒りに歪む。
「機嫌だと?約定を破り、奇襲を仕掛けておきながら……よくもそんな事が言えるな」
「私は本来騙し合いは苦手なのだがね。ところで……」
と、男はぐるりとホールを見回す。
「……ここにいるのは卿だけかな?」
男の問いにジェームズは答えない。しかし、男はここに目的のものがない事を理解した。
「そうか、ならばもうここに用は無い。邪魔をしたね」
踵を返し、爆破した扉から男は出て行こうとした。
「待て!」
だがそこに、ジェームズがウィンディ・アイシクルを唱えて発射した。
男は振り向き様に、手に持った剣でそれを切り払う。
「朕のような老いぼれでは戦うに値しないという事か?このジェームズ1世、年老いても貴族の誇りは失っておらぬ!」
ジェームズ1世は杖を向けながら男に叫んだ。



「……生憎だが、卿の朽ちかけた“誇り”には興味がないのだよ」

激しい攻防の中、ウェールズ皇太子は鍾乳洞の港にいた。
戦えない女子供をイーグル号に乗せる為、メイジ達と一緒にレコン・キスタ軍を迎え撃っていたのである。
だが、圧倒的な数と、奇襲によってその抵抗も空しく、一人、また一人と倒れていく。
遂にはウェールズと数人のメイジだけになってしまった。
「イーグル号はまだ出港出来ないのか!?」
「もう少し掛かります!」
ウェールズは汗を手で拭い、上へと続く階段から現れる敵兵に魔法を放つ。
「何としても守れ!敵を1人も通すな!!」


戦いの音はイーグル号内部にも響いてきていた。
轟音が響く度に、乗り込んでいる婦人や貴族の子供から悲鳴が上がる。
その一角に、造花の薔薇を持った青年と、年老いた老人がいた。ギーシュと氏政である。
運良く彼等は奇襲から逃れ、このイーグル号まで辿り着く事が出来たのである。
2人はただ黙って床に座っていた。
「……ウジマサ、僕はやっぱり戻るよ」
と、突然ギーシュが立ち上がって叫んだ。
「このまま敵に背を向けて逃げたんじゃ貴族の恥だ。僕のワルキューレで1人でも多くの反乱軍の兵士を倒してみせる!」

「阿呆かお主は!!」
そんなギーシュを氏政は一蹴した。
「ついさっき聞いたじゃろ?敵は5万じゃぞ。お主1人加わった所で何も変わらんわい!」
「じゃあウジマサはこのまま逃げるのかい?ここに来るまで手柄を立てるとあれ程言っていたじゃないか」
それを言われると氏政も言い返せない。ギーシュの言う通り、わしが手柄をたてるんじゃあと意気揚々としていたのは事実だからだ。
「い、いやまぁあれは……文を取り戻すまでが任務じゃから……」
氏政はばつが悪そうに口をもごもごさせる。
「ととととにかくじゃ!こんな所で犬死せんでも良いじゃろう?ここでおとなしく出港を待てば……」


「それではグラモン家の名に、父上の顔に泥を塗るようなものじゃないか!」

“命を惜しむな、名を惜しめ”……武人であった父の言葉をギーシュは思い出す。
「そんなに戦うのが怖いなら、ウジマサはここにいればいい!父上、見ていてください!ギーシュは今から男になります!!」
ギーシュは杖である薔薇を手に持ち、船室から飛び出して行ってしまった。

「父上の顔に泥を塗るじゃと?」

ギーシュの言葉が氏政の頭に響き、今は亡き父の事を思い出させる。
氏政の父、北条氏康は偉大な戦国大名であった。
16歳で初陣、以来36回の合戦に出撃して一度も敵に背を見せた事がなく、あの上杉、武田と渡り合った勇武の父。
さらに民衆からも慕われ、「相模の獅子」とまで呼ばれた父……


だが氏政にとって、父の存在は重荷となっていた。
父の氏康があまりにも偉大過ぎたのだ。


自然と、氏政は父の氏康と比べられるようになった。
初めは氏政も、その名に恥じぬように必死に尽力していた。
しかし天は彼に父のような力を与えなかったようで、氏政は次第に周囲から呆れられていった。
「氏康様さえいてくれれば……」こんな事を言う兵もいた。
そんな氏政の前で、父上の、グラモン家の誇りのために飛び出していったギーシュ。
氏政には、さっきのギーシュが昔の自分のように思えた。
「嫌な事を思い出させおって……ええい!仕様のない若造じゃ!!」
氏政は栄光槍を重たそうに持ち上げる。
そして、気づくと彼はギーシュと同じように船室を後にしていた。

勢いよく駆け出したギーシュはワルキューレを用いてレコン・キスタの兵と戦った。
しかし、戦争での戦いを経験した事のないギーシュは次々とワルキューレを破壊されていく。

ガシャン!と、派手な音がして最後の1体が壊された。
「そ、そんな……いくらなんでもこんな早く……」
ワルキューレの全滅というこの現状に、ギーシュは腰を抜かした。
「おいおいどうした坊や?助っ人にしちゃ随分と弱過ぎるぜ?」
傭兵風のメイジがギーシュを嘲笑うかのように言った。
その言葉に、ギーシュは悔しくて唇を噛み締める。
「退け!後は私達に任せろ!」
ウェールズが言うが、ギーシュは腰が抜けているのか、立ち上がれない。

「何だ、本当に終わりか?じゃあとっととくたばれ。こっちは色々と忙しい身でな」
そう言うと男は呪文を素早く唱える。
巨大な火の球、『フレイム・ボール』が発射され、ギーシュに襲い掛かった。

ああ、なんてあっけない最後なんだ…

氏政にあれだけの啖呵を切っておきながら、敵を1人も倒せずにいる自分が情けなくなった。
巨大な炎の球が自分に迫ってくる。
ギーシュは思わず目を瞑り、今まさに訪れようとしている死を覚悟した。
その時である。


「きえええぇぇぇぇぇぇぇーーーっ!!」


聞いた事のある声に、ギーシュははっと目を開く。
そこには、フレイム・ボールを防いだのであろう、巨大な氷柱と……
自分を守るように立っている使い魔であった。



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