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ゼロのミーディアム 第一章 -09


水銀燈のフィールド、暗き廃墟の中にある広場。その一角に不自然にかけられた鏡に映ったのはnのフィールドに潜みし兎のクラウン、ラプラスの魔…

「ふう…ようやくお会いすることができましたよ」
やれやれと言わんばかり右手を額に当てながらうやうやしく首を振りラプラスの魔がつぶやく
そしてシルクハットをかぶり直すと水銀燈に向き直った
「ふん…珍しい事もあるものねぇ。道化者の悪戯ウサギが私を探しているなんてぇ…
で、私に何の用なの?くだらないこと言うようならその皮ひん剥かれる事になるわよぉ?」
水銀燈の物騒な物言いにクックックと含み笑いをするラプラス
「これは手厳しい…。せっかく貴女にとって重大とも言える事をお伝えするために馳せ参じたものを…」
「重大?信じられないわねぇ。貴方と関わって起こることと言えば大抵はろくでもない厄介事ばかり…
本当に皮剥いじゃおうかしらぁ?知ってる?皮を剥かれた肌には塩水がよぉく効くのよぉ?」
妖艶な笑みを浮かべ水銀燈が言った
「フフ‥‥貴女の口から因幡の白兎とは趣深い‥私をかのエンシェントデューパー(古代の詐欺師)に例えて頂けるのは光栄の至り
…ですが残念ながら今回ばかりは何の含みもありませんよ…」
「ならばさっさと要件を言うのね。信用はしないけど」
「アリスゲーム」
「!!」
その言葉を聞いたとたんに水銀燈がその瞳を鋭く細めた
「そう、始まるのね…この地でアリスゲームが…」
だが…水銀燈のつぶやきにラプラスが返した言葉は彼女には全く予測できないものだった
「アリスゲームは…始まりません」

「…なんですって?」
水銀燈が聞き返す。ラプラスの言っている事はひどく単純。それでもあまりの予期せぬ一言に彼女の理解が追いつかなかった
「今言った通りですよ。レディ?アリスゲームは始まりません
…このままでは永遠に」
何の感情も読めぬ表情でラプラスは答える
事の重大さとは裏腹にラプラスのその淡々とした言いように水銀燈の怒りが一瞬で沸点まで上がった
「何を馬鹿な!くだらない冗談も休み休みに言いなさい!八つ裂きにされたいの!?」
だが水銀燈の怒声を気にもかけずラプラスは語り始めた
「…前回の戦いも結局決着がつかずあなた方姉妹達は眠りにつくことになる…
そして幾多の月日が経ち再び目覚めの時を迎える事となった…」
「突然何を…!」
「まずは静聴願いましょう
…それぞれ己のミーディアムを得るべく散らばりゆく薔薇乙女達。だがそこに思わぬアクシデントが起こります
…姉妹の一人の行方が完全に消失したのです。演劇の主役たる姉妹達に一人でも欠員がでてしまえばアリスゲームの続行は不可能…」
「くだらない!そんなことの為にアリスゲームを取りやめるなんて…残りのドールで決着をつければいい物を!」
「本当にそうお思いですかな?」
「当然じゃないのよ!」
「クックック…」
再びラプラスが含み笑いを始める。まるで前にいる水銀燈を小馬鹿にするように
「何が可笑しいッ!!」
「いや、失敬…。ですが貴女ほどの者がお気づきにならないとは…
行方不明となりし姉妹の一人…お心当たりありませんかな?
…例えばこの世界とは全く違う世界へと飛ばされたとすれば…」
「ま、まさか!!」
水銀燈の顔が青ざめた
「ようやく気付かれたようだ…。突然姿の消えた少女。どれだけ我々の世界を探しても見つからないはずです…
何故なら彼女は我々とは違う世界、異界へと降り立ちそこで新たなミーディアムを得てしまったのだから…
そう、貴女の事なのですよ!黒薔薇のローゼンメイデン!!」
「!!」
ラプラスから放たれた衝撃的な言葉に水銀燈は絶句するしかなかった…

驚愕の表情を浮かべ固まる水銀燈にラプラスが言った
「たしかに『このまま』ではアリスゲームは始まりません
…もっとも、貴女がこちらに戻ってくれば別ですがね」
そして救いの船を出したかに見えた
「戻る…戻るわ!元の世界に!!」
水銀燈がすかさずそれに飛びつく
彼女は忘れていた。目の前の兎が救いをもたらすような善人等では無いという事に
…むしろラプラスがいる場所はその対極
「ほぅ?それは彼女を捨ててですか?」
ニヤリと口元を歪ませ意地悪くラプラスは言った。そして彼の隣に映る桃色のブロンドの髪をした少女…その表情はどこか悲しげだ
「ル、ルイズ…」
「安心して下さって結構。これは彼女の幻影に過ぎない
…だが今一度お聞きしよう。彼女を裏切ってこちらに戻ると言うのですね?貴女は!」
「そ、それは…」
ローゼンメイデンとして生まれた水銀燈の存在意義
それはアリスゲームを制し完全な少女『アリス』となりお父様…すなわち創造主ローゼンに合うこと
ルイズとはただたまたま巡り会い契約を結んだミーディアムに過ぎない
ローゼンとルイズ。どちらを取るべきかは言うまでもないはず。だが…
「……」
水銀燈はラプラスの問いに答えることができなかった
「どうなさいました?レディ?」
そんな言葉も水銀燈には聞こえていない
薔薇乙女として生まれた宿命。ルイズを捨ててでも元の世界に帰り、アリスゲームに復帰するのが正しいと言うのが彼女の本心
だが…ほんの数日しか共に過ごしただけのミーディアム
出会い…そして予期せぬ二重の契約・ゼロとジャンク…似た悩みによる葛藤・ギーシュとの決闘で近づいた心・まるで友人のように遊び歩いた城下町
それらが水銀燈の心に思い起こされる
だがラプラスはそんな心中を知る由も…否、知った上で言い放つ
「黙っているだけではわかりません。さあ、答えていただきましょう、
『帰りますか?』 『帰りませんか?』!!」
苦悩する水銀燈に催促するかのように問うラプラス
「私は…私は!!」
水銀燈は顔を俯き苛立つように言うが答えは出てこない
するとラプラスはシルクハットを目深にかぶり視線を隠しながら言った
「…まあいいでしょう。どの道私には貴女をこちらに呼び戻す術がないのですから…」
「な…に…?」
俯いた顔を上げラプラスに尋ねる

「貴女を探すため、幾多の扉を開き気が遠くなる程の数の鏡を抜け、ようやく見つけたか細い光、貴女の従者が放つ輝きを辿りここまで来たものの…」
ラプラスが自分と水銀燈を隔てる目の前にある鏡をコンコンと小突く
「最後に立ちはだかりしこの鏡。これをどうしても抜けることができない」
鞄に入って眠っていた水銀燈は知る由もないがこれはルイズのサモン・サーヴァントにより使い魔を呼び出すための鏡であった
「つまり…こちら側に帰るとしても貴女自身でその手段を見つけなければならない」
「そんな…!」
さらなる絶望が水銀燈を襲うがラプラスは続ける
「幸い貴女のお父様はとても慈悲深きお方。貴女が戻らぬ内にアリスゲームを再び始めるという事はないでしょう…」
水銀燈が少しだけ安堵するが…
「ですが…彼は貴女だけのお父上と言う訳ではない…。あまりにも長い間こちらに戻らなかったり…戻るのを諦められた場合は…」
「ど、どうなるのよ!」
「愚問ですな。それは貴女自身が最も御存知のはず!」
ラプラスの言うとおりだ。それは水銀燈本人が知っている事。だが彼女は認めることができなかった、認めたくなかった
だがラプラスはそれを残酷にも言い放つ
「あえて言わせていただきましょう。もしもこちらに戻れなければ貴女はアリスゲームの輪から外され、アリスとなる権利を…貴女のお父様と合う権利を永遠に失う事となる」
それは水銀燈にとって死刑宣告に近いものだった

「よく考えることです…今貴女がいる場所は『9秒前の白』。
…それが『9秒後の黒』となる前に決断をして頂きたいものですな」
『9秒前の白』とは現実に対し少しだけ後ずさりして立ち止まることができる世界の事
それが『後の黒』となれば…お分かりだろう。もはや取り返しのつかない過ち、それが結果として確定してしまった世界を言う。つまりは…後悔しても遅いと言うことだ
ラプラスは水銀燈に背を向け奥に歩き始めた
「ま、待ちなさい!ラプラスッ!!」
呼び止められたラプラスは水銀燈に顔だけ振り向き別れの言葉を告げる
「願わくば次お会いする時はこちらのnのフィールドで…。それではレディ、ご機嫌よう。よい夢を…」
そしてラプラスの魔は鏡の奥の暗がりへと消えていった


「ラプラスッ!」
鞄が乱暴に開かれ息を荒げた水銀燈が中から出てきた
そこは彼女のフィールドではなくルイズの私室
「今のは…夢…」
夢と言えど彼女達ローゼンメイデンとその他の者ではその認識は違ってくる。ある意味彼女らの見る夢は現実以上に意味を持つ
その証拠に水銀燈の周りを舞う紫色の光…
「ありがとうメイメイ…心配してくれてるのね…」
主の所在を知らせるため水銀燈のフィールドをさ迷っていた彼女の従者、人工精霊のメイメイが水銀燈を気遣うように瞬いた
「よい夢をですって…?」
苦々しくつぶやく水銀燈。先程まで会っていた礼装の兎が目に浮かぶ
「私にとってこれ以上の悪夢は無いわよ…!」
そして彼女は奥のベッドに目を向けた。閉め忘れたカーテンから月明かりが射し眠れる少女の穏やかな寝顔を照らす
ルイズはとても気持ち良さそうに眠っていた
「まったく…人が深刻に悩んでるのに…」
自分をこの世界に呼び出した張本人であるルイズ。言い方は悪いが水銀燈の苦悩の原因となった少女。だが彼女は不思議とルイズを責めようとは思わなかった


だが水銀燈は決断しなければならない。『9秒前の白』が、『9秒後の黒』になる前に…

彼女の脳裏にラプラスの声が反芻された。


『帰りますか?』 『帰りませんか?』


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