あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのしもべ第2部-11



「うわぁー、魚紳さん、なんだべあれは!?」
「三平くん、あれが今日のターゲットの竜だ。」
 と、いきなりのインチキ東北弁で申し訳ないが、思わず釣りでキチで三平が出てくるほど、呂尚の釣りっぷりは見事であった。
 作画:矢口高雄って感じだった。
 虚空に稲妻が走り、裂けた。
 引き抜かれた釣竿に従って、空間の裂け目から巨大な竜が現れた。
「なんだ、あのドラゴンは!?」
「見たことがないぞ、あんな竜は!」
 幻獣やモンスターに詳しいはずのメイジたちが口々に騒ぎ立てる。当然である。彼らが知るドラゴンはティラノサウルスのような
二足歩行をし、羽の生えた恐竜といったものがほとんどである。中にはサラマンダーのようなタイプもいるが、それでもおおむねの
ドラゴンのイメージは前述のようなものであった。
 ところが、空に現れた老人が呼び出したドラゴンらしき幻獣は、長い身体にタテガミ、そしてヒゲらしきものが生えている。燃える
ような瞳がギラつき、手には宝玉のようなものを握っている。
「ギャルのパンティおーくれ!」
「わたしを不死身にしろ!」
「今、大界王界で戦っている孫悟空の体力を元に戻すことはできるか!?」
 混乱したメイジたちが口々に意味不明のことを叫びだす。いや、意味わかるけどさ。
 くいっと竿をしゃくると、竜は頬まで裂けた口を大きく開けた。牙がギラギラと輝く。
「この失態。もはやヨミ様に会わせる顔がない。こうなれば、わしの仙術の全てをかけて、おぬしと刺し違えてくれる。」
 竜の口から、凍てつく吹雪が吹き出した。
 吹雪は船に襲い掛かり、船体を見る間に凍りつかせていく。
 凍りついた船はバランスを崩し、斜めに傾いて落下し始める。
「ひぃ~。さぶいさぶいさぶい。」
「火のメイジはいないのか、火のメイジは!?」
「ええい、それよりも船を立て直せ。」
 マストが凍りつき、扉が氷で固まっていく。船内の温度は急激に下がり、いまにもバナナで釘が打てそうだ。
「わ、わしはよい。代わりに兵を暖めよ。」
 火のメイジが数人がかりで威力を抑えたファイアボールで、ジェームズ国王を暖める。しかしその必死の努力もむなしく、どんどん
船内の温度が下がっていく。

「なによこれ!わたしは微熱の二つ名どおり、暖かいほうが好きなのよ!」
 キュルケが出した炎で暖を取る5人。ロボットな孔明はこの気温でも平気な顔をしている。
「よ、よく平気だな…そこの平民。」
 藤木くんのように紫色の唇をしたギーシュが歯を鳴らしながら言う。
 タバサは雪風の二つ名ゆえか、寒さには強い。だが限度があるのでいつの間にか冬服を着込んでいた。どこから取り出した!?
「ちょ、ちょっと!あの、ロ、ロプロスとかいうでっかい鳥で攻撃しなさいよ」
 歯の根を鳴らしながらいうルイズ。よく考えたらミニスカートだ、こいつ。そりゃ寒いだろうなぁ。
「だめだ。」
 ルイズの思いつきをあっさり却下するバビル2世。
「もし、ヨミがいればロプロスを操られて、逆に攻撃されかねない。そうなれば間違いなくこの船は沈む。」
「いえいえ、バビル2世様。その心配はありませんよ。」
 よく見たらまつげとかひげとかが凍っている孔明が厳かに言う。凍りついた羽扇を優雅に揺らしている。
「よく、お考えください。もしヨミがいれば部下1人に任せておくどおりがありますまい。間違いなく、部下を手助けして襲ってくるで
しょう。そもそもバビル2世様の恐ろしさをしっているヨミであれば、必ず自分で始末をつけようとするはずです。そうでなくては、安心
できないと知っているからです。」
 頷くバビル2世。言われてみれば確かにその通りだ。
「だが、チャンスをうかがって身を潜めている可能性もあるんじゃないか?」
「それならなおさら行動を起こすことはないでしょう。動くのは確実にバビル2世様を倒すことができると確信したときだけ。そのときは
念密に計算をして出しているはず。偶然やってきたチャンスで、その計算を狂わそうとするようなヨミとはとても思えません。」
「それもそうだ。」
「な、なんのことかよくわからないけど、早く何とかしてくれよ。」
 ワルキューレに石炭を入れて燃やし、簡易ストーブにしているギーシュが呟いた。なかなか応用が利くようになってきたな、こいつ。
「よし、そうと決まれば話は早い。」
 部屋を飛び出し、甲板めがけ駆け出すバビル2世。扉が凍り付いていたので火炎放射を使い、全身を火の玉と化して突っ走る。
「おお!」
「なんだ、あれは!?」

 寒さに耐えながら懸命に操船作業をしていた船員たちが火の玉と化したバビル2世に気づく。
「皆さん。もうじき援軍がきます。その援軍と一緒に囮になるのでそのすきに逃げてください。」
 国王の侍従をしていた、背の高い黒覆面が慌てて駆けつける。
「どういうことです?またコウメイ様の作戦でしょうか?しかし我々に来る援軍など…」
「ぼくを信じてください。さあ、逃げ出す準備をしてください。」
 首をかしげながら所定の位置に戻っていく船員たち。バビル2世はマストを駆け上がり、見張り台の上に飛び乗った。
「おお!」
「まるでサルや鳥のようだ。」
 下の甲板で船員たちが騒いでいる。上につくと、見張りはすでに凍死し、屍が転がっていた。
「せっかく脱出したというのに…。」
 キッと吹雪を吐く竜を睨みつけた。
「来い!ロプロス!」
 雲を蹴散らし、雄叫びをあげながら、この船よりも巨大な鳥が現れた。

「来たな、ロプロス。」
 竜の頭の上からバビル2世が飛び乗ったロプロスが見える。予想以上に巨大ではないか。
「だが、こやつならば充分勝負になる。たとえ3つのしもべといえども充分だ!」
 吹雪をやめ、飛び掛ってくるロプロスを迎撃せんと竜が立ち向かった。
 耳をつんざく轟音と共に、激突した2匹ともがはじけ飛んだ。
「どうやら互角というわけか。」
 ヨタヨタと逃げ出した船を見る呂尚。
「ならば、バビル2世の気を散らしてやろう。」
 懐から札を何枚も取り出し、印を切って船めがけ投げた。

「な、なんだ、あれは!?」
 突如現れた怪鳥に、度肝を抜かれる船員たち。トリステインのピンク頭の使い魔だという少年がマストをくるくる登っていくことにも
驚いたが、それ以上に突然現れた化け物鳥に驚いた。中には敵の新手かと早合点した人間も居た。
「行くぞ、ロプロス!」
 その鳥にバビル2世が飛び乗っていく。それを見て、ようやくバビル2世の言う援軍があの鳥だと理解する。
 そしてドラゴンに体当たりをし、吹っ飛ばす。その光景に歓声を上げる船員たち。
「うわあ!」
「いいぞ、やっちまえ!」

「見とれている場合ではないぞ。今のうちにタルブに降りるんだ!」覆面が叫ぶ。
 吹雪が止み、氷はあっという間に溶け出している。なるほど、魔法ではないが、なにか似た力で無理矢理作り出した氷らしい。
魔法ならばこんなに早く溶け出すことはない。延々と吹雪を浴びせてきた理由がわかった。
「面舵、一杯~!」
「よ~そろ~」
 船が、傾いていた進路を元に戻す。翼が風を受け、大きくしなる。
「お、おお……」
 杖をつきながら、ジェームズ国王が甲板に出てきた。目を潤ませながらロプロスを操って呂尚と戦うバビル2世を見ている。
「陛下!」
 国王に気づいた覆面が、慌てて駆け寄った。
「やはり、あの少年は普通の人間ではありません。ハルケギニアを救うべく送り込まれた、始祖ブリミルの使者に違いありません!」
 うむ、うむ、と頷く国王。だが、その光景を見ながら孔明はむふふとほくそ笑んでいたのだった。

「船長!見えました!目的の草原です!」
 眼下に広く美しい緑の海が広がっている。この分だとあと2分もあれば大地を踏むことができるはずだ。
「ん?あ、あれ??」
 甲板に出て、キュルケとまだ残っている氷をストーブ状態のワルキューレで溶かしていたギーシュが、きらりと雲の上に輝いたもの
を見たような気がして声を上げた。
「なによ、すっとんきょうな声を出して?」
「い、いや、今何かが光ったような気が……気のせいかな?」
「気のせいじゃない。」
 タバサが、杖ですっと空を指した。
 キラキラと輝きながら、何枚もお札が船めがけ落ちてくる。
 呪文を詠唱し、杖を振った。ウィンド・ブレイクだ。強風が舞い降りる札めがけ放たれた。
 が、札は風に吹き飛ばされず、逆らって船へとやってくる。
 ここになって他のメイジも気づき、炎で燃やそうと、風で吹き飛ばそうとするが意にも介さず札は舞い降りてくる。
「国王、万一があります!中へ!」
 ジェームズ国王が船内へ逃げ込む。メイジたちに緊張が走る。なにか、対船用のマジックアイテムでは?杖を握り締め、不測の事態
にそなえようとする。

 札が、空中で突然速度を上げた。
 そして見る間に巨大化し、獣の姿に変形しながら甲板にぶつかった。
 翼の生えた巨大な熊に、札は変身したのだ。全部で4匹。
 大きさがグリズリーほどもあるそれは、あまりの急変にぼけっとしていたメイジの頭を、その腕と爪で吹っ飛ばした。
「う、撃て!」
 慌ててメイジたちが魔法を放った。だがいっこうに効いている様子もなく、メイジに突進して手当たり次第に暴れ始めた。

「うっ!」
 その光景をバビル2世はロプロスの上から見ていた。バビル2世の顔色が変わったのを見て呂尚はにやりと笑う。
「どうじゃ、いつもと逆の立場になった気分は。このままだとお前の仲間たちはこのままではわしの飛熊に食い殺されるぞ。」
 飛熊、という怪物は自由に船の周りを飛びながら、船に攻撃を仕掛けている。量産型エヴァみたいな連中だ。せいぜいトライアングル
クラス以上のメイジの呪文が効き目があるぐらいで、ほとんど好き勝手に破壊を続けている。
「だが、助けに行かせるわけにはいかぬ。」
 竜が今度はロプロスめがけて吹雪を吐いた。それをかわし、ロケット弾を放つロプロス。
「ふん!」
 今度は札でロケット弾をガードする。やりたい放題だ、このジジイ。
「やはり気が散ってまともに戦えぬようじゃな。今のうちに勝負を決めさせてもらう。こいつはあまり長く動けぬからな。」
 呂尚の乗る竜には秘密があった。この竜は、サイボーグなのである。死に掛けていた竜を見つけたヨミ一味がその身体を改造し、
復活させた。そのとき脳にコントロール装置を埋め込んだのである。竜は装置のおかげで自由に操ることができる。おまけに力は
フルパワーを自由に出すことができるのだ。
 バビル2世がこの世界に来たときに備えてつくられた、V2計画の第1弾であった。
 竜がロプロスに絡みつき、その身体を締め上げだした。

 飛熊の右目が燃え上がった。悶絶しながら転がる飛熊。
「いただき!」
 ガッツポーズをとるキュルケ。ワルキューレで相手を囲んでけん制し、隙を見てルイズが熊の足元めがけ、魔法を失敗した。当然
爆発が起こり、バランスを崩した熊は倒れまいと手を突く。無防備になった頭部に、キュルケが炎を放つ。作戦は見事決まり、
見事に右目は吹っ飛んだ。

 痛みで暴れまわる熊が甲板ギリギリに立ったところを、タバサがエア・ハンマーで下に突き落とした。翼があるせいで死には
しないが、今の目的は地面に降りることである。落下した熊は速度の関係上、船に追いつけないからだ。
「なんで私は失敗前提なのよ!」
 ルイズがぷりぷり怒る。せっかく熊を倒しても素直に喜べないではないか。
「チームプレイなんだから文句言わないの。」
 キュルケがやれやれと肩をすくめる。
「いいじゃないの。結果オーライなんだから。」
「よくないわよ!」
 そう言いながらも律儀に失敗を続けるルイズ。ルイズは、本人しか思っていないが、瀬戸際に追い詰められていた。
 あのギーシュがワルドを倒してしまったのである。おまけにほぼ主力だ。いくらコウメイというゴーレムが始祖ブリミルの使い魔
だとしても、まさかギーシュを主力にしてトライアングルメイジに勝たせるとは思わなかった。唯一自分の中にあった、
「悪者の基地で大活躍」
というプライドのよりどころが、それ以上の活躍で否定されたような気分になっていたのだ。別にギーシュが悪いわけではないのに、
ギーシュのくせに生意気だぞ、とか思っていた。
 だからこれで大活躍をしなければいけないのに…
「どうして失敗前提なのよ!」
 怒りと共に振った杖から出た魔法は、偶然熊の目に当たった。
 その途端、熊は音もなく消え去った。
「あ、あれ?また、消えた?」
 目をパチパチさせながら消えた熊のいた方向を見ているルイズ。
「バ、バカ!何やってんのよ!」
 キュルケが突然叫んだ。
 はっとしてルイズが振り返ると、いつの間にかそこにはルイズめがけ爪を振り下ろそうとする飛熊の姿が。
「ワルキューレ!」
 ギーシュが慌ててワルキューレでルイズを突き飛ばそうとする。だが、ギリギリ間に合いそうにない。
 思わずルイズが目を瞑った瞬間―――
「ぎゃおん!」
 叫び声をあげ、熊が吹っ飛んだ。胸板に大きな穴が開いている。
 ウィンド・ブレイクだ。だが、この魔法にこんな威力があっただろうか。
「驚いたな。魔法の威力が上がっているとは…」
 声のほうを見るルイズ。そこには黒い覆面をした、怪しい男が立っていた。
「……あんた、だれ?」

 そういえば国王の周りにちょくちょくいた男だ。遠くにいたときは気にならなかったが、こうしてみると明らかに怪しい。
「それはあとで。今は逃げようじゃないか。」
 ルイズを抱えて覆面が駆け出した。直後、2人がいた位置を爪が床を抉りながら通過した。

 ロプロスの身体がギチギチと音を立てる。それほどに強力な締め上げなのだろう。
「ふははは。どうした、バビル2世。されるがままかな?」
 すっかり調子を取り戻した呂尚が笑う。絶好調だ、このジジイ。
「くっ。がんばれ、ロプロス。」
 だがバビル2世もされるがままにしていたわけではない。
 竜が現れても「魔法のある世界だから」と納得していたが、ロボットであるロプロスをここまで締め上げるとなれば、ひょっとして生き物
ではないのではないか、と考え出していた。
 そこで透視をすると、予想通りこの竜はロボットであった。内部に機械類が見えたのだ。
 さらによく見ると、それは身体を補助するようについている。脳に機械が埋まっているのだ。
『ひょっとすると、これは本物の竜を改造して、操っているのかもしれないぞ…』
 あの機械で痛みを麻痺させ、火事場の糞力の状態を常に出させているのかもしれない。それならば、ロプロスでも締め上げることが
できるだろう。そう思ったバビル2世は、ターゲットを一つに絞った。
『あの機械を壊せば、竜を操ることができなくなるかもしれない。』
 精神を集中する。目標は、竜の頭部。脳に取り付けられた機械。

 船はガタガタと音を立てながら猛スピードで地面へ向かっていた。
 そう舵手はすでに飛熊にやられた。何人かが何度も舵の奪取を試みたが、そのたびに殺された。
 その上、今は舵さえ破壊された。飛熊が張り手で吹っ飛ばしたのだ。
「まずいな。このままだと地面に激突する。」
 飛熊をふっ飛ばしながら覆面が呟く。強力な魔法を何度も使っているのに、未だに精神力が持つのはなぜだろう、とルイズは不審
がる。結構な数を落としたのに、未だに飛熊は追いすがり、襲い掛かってくるのだ。
「それじゃあ、このままだと!?」
「激突。」
 すでに残るワルキューレは1体となったギーシュ。この段階でも冷静なタバサ。

 もっとも、キュルケはタバサが多少慌てていることに気づいていた。タバサは考えていたのだ。こんなところで犬死をするわけには
いけない、と。自分にはまだすることがあるのだ。
 だがその思いもあと何秒持つか。激突は時間の問題である。
「なんだ?」
 覆面が、何かに気づいたように呟いた。熊が突然慌てて逃げ出したのだ。逃げ出すに従い、大きくなってくる音がある。
「なにか音がしないか?炎が吹き出るような…」
「そういえば…」
 たしかに、する。猛烈な炎が噴出す音。ゴオオオオオという激流が流れるような音だ。
「ミス・ヴァリエール!?」
 その音が最も大きくなったところで、聞いたような声が響いた。
「し、シエスタ!?」
 呼ばれたルイズが見上げると、そこにはあの巨乳メイド、シエスタの姿があるではないか。何故だ!?空の上ですよ、まだ。
「ミス・ツェルプストーやミスター・グラモンまで!?た、大変ですよ!この船落ちてるんですよ。」
 焦って叫ぶシエスタ。私服姿だが、なぜかズボン姿だ。ミス・ヴァリエールだけならほっといて帰ろうかな、と思っていたような濁った
目に一瞬見えたのは気のせいだろう。
「し、知ってるわよ!というかどうやってここに来たのよ!?」
「練習していたら船が村めがけて落ちてきたんで、おじいちゃんと助けに来たんです。ゆれるから捕まってください!」
「へ、なに?助ける!?どうやって助けるのよ!?」
「鉄人ですよ!鉄人で船を支えます!」
 ガオー!という雄雄しい叫び声。
 ガシッと鉄の指が船体を掴み、崩れていた体勢を立て直す。
 猛烈なGと風が、甲板に襲い掛かる。
 船が地面に激突することなく、平行に飛びながら速度を落としていく。
 ドスン!と船体が大きく揺れた。そして地面を擦る轟音が響く。徐々にスピードが落ちていき、船体は1リーグも滑って、静止した。
 その背後に、巨大な鉄の巨人が立っていた。
 西洋甲冑のような姿。太い腕。どんなものをも弾き返す鉄の皮膚。
 甲板へわらわらと出てきた人間が、その異形に震え上がった。
「こ、これって……」
 ルイズが見上げながら言う。
「あの鉄の巨人?」
 キュルケが目を丸くする。2人とも、まさか船を助けるほどのものとは思っていなかったのだ。
「そうです!」

 シエスタが大きな胸を張る。
「その通り、これが鉄人28号だ!」
 老人、ショウタロウが鉄人の肩に誇らしげに立っていた。手には操縦器がしっかりと握られていた。
「太陽の使者。」
 タバサが……まあいいか、ほうっておこう。
「シエスタ!」
 ショウタロウ老人が操縦器をシエスタに投げ渡した。それをしっかりとキャッチするシエスタ。
「どうやらあの羽の生えた熊がこの船を落としたようだ。鉄人で倒して来い!」
「はい、おじいちゃん!」
 シエスタが力強く頷いた。操縦器を操ると、鉄人は吼え、背中から炎を噴射して飛び上がった。
「くっくっくっ。貴様らにも思い知らせてやる。鉄人の恐ろしさって奴をなぁ~!」
 シエスタは、ハンドルを握ると性格の変わるタイプらしい。鉄人で容赦なく飛熊を叩き落し、破壊していく。飛熊は殺されると破けた
札に戻り、今度は風に飛ばされて行った。
「我が孫は、操縦はまだまだなのになぜ戦闘に関してはあれだけすごいのだろうか。」
 苦笑するショウタロウ老人。そしてなぜか、
「……素敵だ。」と頬を染める覆面男。この3人を除いて、全員シエスタにドン引きしていた。

「な、なんじゃと!?」
 船が無事着陸した上、妙なロボットに飛熊が全て打ち砕かれたのを見て呂尚は叫んだ。
「あの飛熊はそう簡単には倒せぬはず…それを……」
 もっとよく確かめようと、思わずバビル2世から目を離す呂尚。だが、それが事実上の命取りとなった。
 足元の竜が大きくぐらつき、バランスを崩したのである。
 あわてて釣竿を角に引っ掛けたが、片手でどうやら命を支えている状態になった。
「な、何事じゃ!?なぜわしの命令もなく動くのだ!?」
 竜は壊れたおもちゃのように意味もなく身をくねらせ始めた。ロプロスの拘束が見る間に緩んでいく
「ま、まさか!」
「そのまさかだ。竜を操っていた機械は破壊した。いけ、ロプロス。」
 バビル2世が命じると、ロプロスは拘束から脱出し、飛び上がった。そしてぐるっと一回転し、呂尚めがけて急降下する。
「お、おのれ……今一歩というところで……」
 ロプロスの口からロケット弾が発射された。竜は大爆発を起こし、燃え上がった。内部の機械が爆発したのだ。
 首を失った竜は燃えながらのた打ち回り、ゆっくりと大地へと落ちて行った。


「さあ、皆様。ここでボヤッとしている暇はないですぞ」
 孔明が、竜を打ち倒したバビル2世を見て歓声を上げていたアルビオンの亡命者に厳かに宣告する。
「なにしろ今から皆様は地下にもぐり、祖国解放運動をしなければなりません。まずは、このあたりに隠れる場所が必要ですが。」
 チラッとショウタロウを見る。ショウタロウは丁寧に頭を下げた。
「アルビオンの苦境はこの田舎者の耳にも入っております。どうぞ、我が家にお越しください。わしの息子や娘連中の家に分散
すれば、この人数でも充分に泊まる事ができます。どうぞ、遠慮なさらず…。」
 今の間に、孔明は手を打っていた。バビル2世からタルブの村の情報を仕入れたときに、この老人が戦前の生まれだと聞いている。
孔明はショウタロウ老人に、楠公と後醍醐天皇の話を説いたのであった。ショウタロウ老人は、敗戦後を経験しているとは言え、
戦前の人間である。そんな人間にとっては楠正成は理想であった。
 つまり、窮地に陥った亡国の王を、1人の忠誠心溢れる武将が命を賭けて救うという神話である。この手の話は、ロビン・フッドと
リチャード獅子王の逸話に限らず、洋の東西共通して人気がある。人間の心を掴む何かがあるのだろう。
 ショウタロウは遠く離れたこの世界に迷い込んだ人間。かつての思い出は美しく着飾られている。特に、先日バビル2世という
同じようにこの世界に迷い込んだ人間と会ったのだ。故郷の思い出は、全て美に直結する状態になっていたといってもよい。
 そこを突き、孔明は囁いた。「国を追われた王がいる。彼は故郷へ帰る方法を模索している。助けて欲しい」と。
 こうして、ショウタロウ老人はあっさりと孔明の罠にかかった。だが本人は、
「我こそは楠正成なり」
とご満悦なので、まあいいか。それに、大多数はすぐに孔明の策に従い、アルビオン奪回のための工作活動のため、地下にもぐり
金をばら撒き、と大陸に散らばっていくのである。残っている連中も肩身がせまくなり、別の都市に拠点を移すだろう。
 実に恐ろしい孔明の策略であった。


 いろんな騒ぎがあったが、割愛する。
 簡単に言うとおじいちゃんと息子さんたちが揉め出すとか、村長さんがうちにじゃあ来てくだされと言い出すとか、家割で揉めるとか、
メシはどうするかとか、降りてきたバビル2世が質問攻めにあったとか、そんな感じである。
 深夜。
 バビル2世は草原を歩いていた。
 2つの月が煌々と船を照らしている。船は翼が折れ、船体に穴が開き、治すにしてもかなりの手間がかかるだろう。
「魔法の威力があがった?」
「はい。」
 バビル2世に、頭を深々と下げる男が1人。黒覆面の男であった。
「もともとの私の実力はトライアングル。それが先ほど、明らかに最低でもスクウェア並みの威力が出ていました。」
 バビル2世が汗を流す。思い出していた。アメリカであったことを。
「かつてぼくは101と呼ばれていたことがあった。そこで、ぼくの血を輸血すると、重傷者がまたたくまに傷が治ることを知った。」
「つまり、私のように、ですね。」
 バビル2世が頷く。
「ぼくはそのことを思い出し、あなたに血液を注射した。だが、ぼくの血液は怪我人ではなく適合者に注射すると恐ろしい力を身に
つけてしまうということもわかった。」
「つまり、私がその適合者だったと?」
「それしか考えられないんです、王子。」
 黒覆面が、するすると覆面を外した。現れたのは紛れもなく、死んだはずのウェールズ皇太子であった。


 あの時、ペドに胸を貫かれたウェールズ皇太子を医務室に運んだバビル2世は、そこで孔明の指示で作ったという注射器を渡され
た。刺されるのがわかっているなら、刺されないようにしろ!とも思ったが、ここでそんなことを言っていても仕方がない。
 注射器を受け取り、血を抜いて消毒すると、水のメイジの必死の治療もむなしく、ウェールズは死んでいた。知らせを聞きつけ
駆けつけたジェームズ国王は、早すぎる息子の死に呆けたようになっていた。
「まだ間に合うかもしれない」
と、無理矢理人を押しのけて注射をすると、ウェールズ皇太子胸の傷は塞がりだし、脈が戻り、息を吹き返したのである。
 その光景に逆にジェームズ国王が死ぬところだった。
 その後の周囲の喜びようは尋常ではない。なにしろ一度死んだ人間が生き返ったのだ。ジェームズとウェールズは、長年伝わって
きたコウメイが主君のように接することから、「ブリミル様の使いではないか」と囁きあった。
 復活したウェールズは孔明に渡されていたという袋を思い出し、開けた。
 そこには一言「生存を隠す事」と書かれていたのだ。
 もはやことここにいたっては反対する者はなく、孔明の言葉通り、ウェールズは死んだ、ということにした。
 孔明はウェールズを殺された怒りを利用し、城に罠を仕掛けたのであった。
 その間、ウェールズは覆面をかぶり、父の傍で身を潜めていた。復活したとは言え、胸を貫かれたのだ。事情を知るものが無理を
させようとしなかったのである。
 だが、ついにそうも言ってはいられなくなった。ウェールズはせっかく助かった命を、再びなくす覚悟で出撃した。
 そして、自分の身体に起きた異変に気づいたのである。


 ふたたび覆面をかぶるウェールズ王子。どういうセンスでこの覆面を選んだのかだけが気になる。
「私は思うのです、ビッグ・ファイア様。」
「様づけはやめてください、王子。」
 妙にかしこまって言うウェールズに困惑するバビル2世。仮にも一国の王子に様づけをされるとどうも座りが悪い。
「やめません。ビッグ・ファイア様、よくお考えください。私はあなたが一体どこからやってきたのかわかりません。ですが、ブリミル様
の使い魔として伝わっていたコウメイ様は、あなたを追ってこられたとか。時間を越えてやってこられたのか、全く別の世界からやって
こられたのかわかりませんが。そのような遠い場所からやってこられた方の血に、私は適応したというのです。これは運命では
ないでしょうか!?」
 目がキラキラと輝いているウェールズ王子。やばい、この男、霊感商法とかにかかりやすいタイプだ。思い込みが激しい。
「王子。考えすぎではないでしょうか?」
「ウェールズは死に申した。今は一夢庵ひょっとこ斎……ではなく、『白昼の残月』。」
「白昼の残月?」
「はっ。」
 天にかかる二つの月を、指して言った。
「たしかにそこにあるが薄ぼんやりとして見えない月。私はすでに死んだ身。たしかにそこにいるが、いないも同然の存在。即ち、
白昼の残月。ビッグ・ファイア様!どうか、敵と戦うために、我らにご協力いただきたい。」
 深く、頭を下げた。
「そう、それでこそわたしの予定通り。」
ふらっと、孔明が姿を現したのだった。



新着情報

取得中です。