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AI使い魔タチコマンズ+α-03


 決闘にうってつけの日



 時刻も昼を回り、学院の生徒達が食堂に集まってき始めた頃、三体のタチコマは周囲の散策をしていた。

「いやぁ~中々有意義な時間だったね」
「経験値アップ~」
「また行こうね」

 彼らはすっかり忘れていた。それぞれの主に、授業が始まる前にちゃんと帰るようにと言われたことを。
 キュルケとモンモランシーはさほど気にしていなかった。そもそも教室に連れて行くには大きすぎる体。彼女たちは授業に連れて行く気などなかった。
 ルイズはといえば、仮にも成功した魔法の証であるタチコマを連れて行く気満々だった。これを気に自分を馬鹿にする輩を見返す気でいたのかもしれない。
 そして彼女は錬金の実演に失敗し、荒れた教室を一人で片付けていたのだ。ルイズのイライラは募るばかり。ここにはいないタチコマに対しグチグチと文句を言いながらも片づけをするのだった。もちろん昼食は抜き。

「バカタチコマー! 覚えてなさいよ!」

 ルイズの雄たけびは教室に虚しく響いた。



「ん? 誰か呼んだ?」
「別に……ハッ!? もしかしてもしかするとー!」
「こ、これがゴーストが囁くってやつ?」

 タチコマたちはお互いの顔を見合わせ、おもむろに学院へ視線をやった。

「そんな訳ないよねー?」
「そだね、所詮僕たちはAI。ゴーストを獲得するなんて夢のまた夢」
「どうでもいいから早く帰ろー」

 やはり彼らはマイペース。そこのけそこのけタチコマが通る。



 一方その頃、ジェイムスン社長は洗濯の後はタチコマたちと行動を共にせず、ギーシュと行動を共にしていた。
 そして今も食堂で、友人と他愛もない会話を交わしている彼の側にいた。
 ジェィムスン社長は何をするでもなく、傍から見ればボーっとしているように見えるのだが、物珍しい目で周囲の人物を観察していたのだ。
 ふとジェィムスンが視線をギーシュに向けると彼のポケットから何かがコロコロと落ちてくるのが見えた。
 仕方がないと言わんばかりに素早くそれを拾い上げるとギーシュの下に駆け寄る。

「おや? どうしたんだい」

 駆け寄ってきたジェイムスン社長の手には良く見慣れた小瓶が握られていたのだ。

「いつの間に落ちたんだ? まぁいいか」

 ギーシュは周りの目を気にするでもなくその小瓶を再びポケットにいれた。しかし、それを目敏く見ていた彼の友人騒ぎ始める。

「おいおい、それってモンモランシーの香水じゃないのか?」
「なにぃ? ギーシュ、この前ほかの女の子と出かけてなかったか?」
「まさか二股? 羨ましい奴だ」

 いくらギーシュが否定しようとも彼らは大声で騒ぎ立てる。それは単にギーシュをからかっていただけなのかも知れない。
 まさかそれを聞いて涙を流す者などいるとは思いもしなかったのだ。その証拠に、大粒の涙を浮かべた少女を目にした途端、騒ぎ立てるのを止めて黙り込んでしまった。

「け、ケティ…あーいやその、これは」

 咄嗟の事で良い言い訳が思いつくはずもなく、右往左往するしかない。そしてケティと呼ばれた少女に無防備な頬を打たれたのだ。
 突然の出来事に皆動けなかった。それはジェイムスンも同じだった。ただ黙って泣きながらその場を立ち去るケティを見送るしかなかった。

「なんというか…すまん」
「わ、悪いな」

 ギーシュにかけられる謝罪の言葉も彼にとっては馬耳東風。何故なら一難去ってまた一難、ギーシュの前に幽鬼のごとく現れた少女、モンモランシーがいたからだ。

「あわわ、ご、ごめんよモンモランシー」
「ふぅん……ギーシュの癖にいいご身分ね」

 一歩、また一歩近づいてくるモンモランシー。その右手にはワインの瓶が握られていた。ギーシュは腰を抜かし、思わずその場へと座り込んでしまった。
 彼の友人たちはといえば、既にその場から逃げ傍観を決め込み、彼を助ける気など微塵も感じられない。
 哀れギーシュ。このままモンモランシーの餌食になるかと食堂に居合わせた誰もが思ったその瞬間、救世主は現れたのだ。
 モンモランシーの前に立ちふさがるなんとも頼りないその物体。それはジェイムスン社長に他ならない。

「じぇ、ジェイムスン!?」
「何かと思えばギーシュの使い魔じゃない。わたしの邪魔をする気かしら?」

 モンモランシーの言葉にジェイムスンは腕をちょいちょいと動かして答える。まるでかかって来いといわんばかりに。

「よくできた使い魔じゃない」
「そ、それほどでも……あるんだけど」
「いいわ。その挑戦受けてあげる。決闘ね」
「へ?」

 ポカンと口を開けるギーシュを放ってモンモランシーはパンパンと手を叩いて何かを呼んだ。

「タチコマ、火急的速やかに来なさい」

そして食堂の扉と壁が壊れる轟音、テーブルに並べられた料理たちが無残に床に飛び散る音と共に奴らは現れた。

「青いボディーが正義に燃える! タチブルー参上!」
「黄色いボディーが敵を蹴散らす! タチイエロー見参!」
「白銀のボディーが悪を斬る! 真打タチシルバー推参!」

「「「AI使い魔タチコマンズ! 呼ばれ飛び出てジャジャジャーン!」」」

 決まった…そう言わんばかりのポーズを決めた三体のタチコマ。表情はわからないがとても満足気だ。
 それとは対照的に食堂の人間たちは凍りついていた。タチコマのエージェント機能で時を止めたといえば誰もが信じるだろう。

「あれ?」
「みんな動かないよ。どうしたのかなぁ?」
「うーん、こうなったら仕方がない」
「ま、まさかアレを…ヤメロー!」
「見るがいい! リセット・ザ・ワールド!!」
「え!? 今の僕たちにエージェント機能は…」
「禁止ー! メタな発言は禁止!」

 そして何事もなかったかのように物語は進む。

「随分な登場の仕方だけどまぁいいわ。ギーシュ、決闘といっても使い魔同士の決闘よ」
「ということは僕のジェイムスンと君の…どの色のタチコマと?」
「灰色よ」
「灰色のタチコマと決闘だって!?」
「そうよ。決闘はヴェストリの広場にしましょう。食堂をこれ以上壊しても仕方がないわ」

 ギーシュは灰色じゃなくて白銀と文句を言うタチコマと己の使い魔を見比べる。どう見たって勝ち目はコルベールの頭の様に薄い。
 それにもかかわらずジェイムスンは堂々と食堂から出て行こうとするではないか。

「あら? ジェイムスンだっけ? そっちは広場じゃないわよ」

 どうやら逃亡を謀ったようだが結果は失敗に終わった。



「決闘があるらしいけど次の授業はギトーだ。口惜しいが教室に行こう」


 広場にはほとんど人がいない。いつの間にかやってきたタバサとキュルケと他数名(マリコルヌ含む)の生徒しか観客がいない。

「がんばれー」
「まけるなー」

 広場の中央には二体のタチコマの声援を受けた灰色のタチコマ。その背後には勝利を確信したモンモランシー。
 そして青い顔をしたギーシュを背後に携えて仁王立ちするジェイムスン。

「ギーシュ、準備はいい?」
「あ、ああ」

 何を合図に決闘を開始するか。その口上を述べる前にジェイムスンがトテトテとタチコマに突進していった。
 先手必勝。その思いがジェイムスンにあったのだろう。しかしタチコマは落ち着いてアームを前に出すと近づいてきたジェイムスン社長を迎え撃つ。
 皆が固唾を呑んで見守る結末。それは余りにもあっけなかった。タチコマのアームから繰り出されたデコピン一発。吹き飛ぶジェイムスン社長。
 勝敗は早々とついた。それはもうあっさりと。
 お喋りなタチコマもあっけに取られていた。モンモランシーは余りにも情けないギーシュにかけると言葉など持ち合わせておらず、タチコマたちと共に立ち去った。
 うな垂れたギーシュに皆一様に哀れみの視線を向け、静かに立ち去っていった。 
 気がつけば広場には膝を着いたギーシュと倒れたままのジェイムスンが取り残された。

 その後、授業に遅刻したギーシュがギトーにいびられたのは言うまでもない。


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