あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロな提督-22 b


 その日の放課後。
 既に学院前の臨時停留所には多数の馬車が並んでいた。御者が馬にエサをあげたり、メ
イドが荷物を積み込んだりしつつ、それぞれに主の出発を待っている。
 生徒達もほとんどが制服を脱ぎ、そこかしこで新しく仕立てたドレスやマントや煌びや
かな宝石類を自慢し合っている。ゲルマニアへの道中に何か本を読もうかという生徒達が
図書館から本を借りていく。
 でも図書館から本を借りていくのは一部の生徒。ほとんどは悪友から借りたりコッソリ
手に入れた、例えば『メイドの午後』『バタフライ伯爵夫人の優雅な一日』『せつなさは夜
の媚薬』等、思春期の若者達なら絶対に興味をそそられる内容の本を密かにトランクの中
へしのばせる。


 そしてルイズの部屋では、ヤンが鏡台の前に立つ。
 しげしげと自分の姿を見つめる。
 後ろも向いて肩越しに鏡に映る背中も見てみる。

 鏡に映るのは執事らしい黒の燕尾服に白手袋の男。だが、激しくガッカリして肩を落と
してしまった。
「やっぱり、変だ…似合ってないよ」
 ヤンが着ているのは、以前マザリーニへ拝謁した帰りに注文した新しい服。結婚式に着
ていく一張羅、のハズだった。確かに服の生地もデザインもルイズの執事として一級品の
はずなのだ。
 ただ、着ている人が一級品に見えなかった。

 後ろでルイズが溜め息をついてしまう。
「別にいいのよ。あんたの服なんて誰も見ないんだから」
「そーだぜ!ヤンは娘ッコの引き立て役なんだからよ」
 デルフリンガーも似合ってるとか慰めの言葉を言ってくれなかった。


 ヤンがしょんぼりしながらいつもの黒服へ着替えていると、ドアがコンコンとノックさ
れた。
「失礼します。シエスタです」
「あ、いらっしゃい。さっそくルイズのドレス、お願いするよ」
 そう言って扉を開け、シエスタを招き入れる。ヤンはクローゼットから、同じく20日
ほど前、城の帰りに注文した新しいドレスを取り出した。
「じゃ、僕は外に出てるから」
 ヤンはシエスタにドレスを手渡すと、そそくさと部屋を出て行こうとする。
「あ、こらヤン!執事が主の着替えを手伝わずにどうするのよ!」
「僕にドレスの着付け方なんて分からないよ。それに、またマチルダに怒られたらイヤだ
からね。墓参りも今日のウチにしておきたいんだ。
 それじゃゴメンだけど、後はシエスタにお願いするね」
「はーい!任せて下さいね」
 小さくガッツポーズをするシエスタにルイズの着替えを任せ、ヤンは部屋を後にした。




 ヤンは夕暮れ空の下、学院から少し離れた小さな村へ馬を走らせていた。その村の共同
墓地にはヨハネス・シュトラウスの墓がある。
 以前は素っ気ない、墓碑銘もない幅広の墓石だった。今はヤンが身分証明書から名前等
を読み取ったので銘を刻んである。帝国語とハルケギニア語の両方で名前と生年月日、そ
して没年が記してあった。


 墓の前に立ち、しばし瞑想する。
 そして鞄からワインを一本取り出して、赤い液体を墓石の上に垂らした。
「いやぁ、遅くなって済まなかったね。最近忙しくて、せっかく手に入れたワインを持っ
てくるヒマがなかったよ」
 赤い夕陽の光に赤い液体が照らされる。真紅に彩られた墓石は、彼がハルケギニアで流
した血に染まっているかのようだ。
 それは彼の身体の傷から流れたものか、絶望のあまり流した血の涙か。

「僕は神だの死後の世界だのは大して信じてないけど、それでもこれくらいはしていいと
思う。魔法が存在するこの宇宙なら、幽霊や天国や地獄が実在しても不思議はないだろう
しね。
 これは、タルブっていう村で作られたワインさ。なんと銀河帝国のワイナリーが作った
ものなんだよ。君や僕と同じ、この世界に迷ってきた人さ」
 瓶に栓をして、よっこらせと墓の前に腰を降ろす。
 春もそろそろ終わりを告げる季節だが、やはり夕暮れになると風も冷えてくる。

「彼はトリステインの片田舎に流れ着いて、一人の人として幸せな一生を過ごしたらしい
よ。彼の子供達は、今やハルケギニアに名を轟かす立派なワイン職人さ。
 君が学院で生き延びる事が出来れば、きっとオイゲンが話を聞きつけて迎えに来てくれ
たろう。惜しかったよ、もう少しだったのに。ブリミルの虚無すら全能でも万能でもない
んだろうさ」
 まったくブリミルのバカは…と始祖への愚痴がさらに続く。
 ここまでトリステイン魔法学院に虚無関連の手掛かりを集めるなら、ちゃんと最後まで
やり遂げてくれれば良かったのに、とか。亞空間ゲートを6000年維持出来る神話級魔
力の持ち主のクセに、被召喚者がどれだけ被害を受けるか想像出来ない間抜け、とか。

 夕陽と地平線が解け合い始めた頃、ようやく神への悪態をつき追えた。
 よっこらせ、とめんどくさそうな声を上げて立ち上がり、墓地の入り口へと歩き出す。
「一段落したら、また来るよ。ブランデーでも土産にしてね」
 もちろん墓石は感謝の言葉を返してくれたりはしなかった。


 乗ってきた馬を繋げた墓地の入り口の木、その横には馬に乗った女性が居た。赤い夕焼
けの中でも、ポニーテールにまとめた艶やかな緑の髪が輝いている。
「やぁ、学院の方はいいのかい?」
「もう今日は出入りする馬車は無いし、旅の準備は終わったから、明日の朝まで一息つけ
るわ。あなたが村へ向かうのが見えたから、追いかけてきちゃったの」
「そっか。それじゃ、一緒に帰ろう」
 ヤンは、よいしょっと馬の背に乗る。
 二人は並んで馬を学院へと歩かせた。


 タルブほど広大ではないけど、黄金色に染まる草原。
 遠くに見える学院へ向け、二人は馬を並べている。
 何か言葉をかわすでもなく、ゆっくりと道を進む。
 規則的な馬の蹄が土を蹴る音の中に、たまにそよ風になびく草の擦れ合う音が混じる。

「ねぇ、あの森」
 ロングビルが指さす先には、学院の横にある森があった。
「ああ、あの森、か」
 ヤンの頭に、これまであの森で起きた事が流れていく。
「ちょっと行ってみない?」
「そうだね」
 二人は、それが当たり前のように森へと馬を向けた。



 トリステイン魔法学院近くには、付近の村の人が苺やキノコを取りに来る森がある。
 この二ヶ月の間には二人が時折訪れていた。ヤンがロングビルをフーケと見破り、手紙
回収依頼に来たアンリエッタを追い返し、ビダーシャルと聖地について情報交換した時な
ど、密会場所としてこの森を使っている。

 森の中に少し入ると、木々が少しだけ開けて空が見える、広場のような場所があった。
「懐かしいわね…ここで姫さんの無様な姿を大爆笑してたっけ」
 下草を踏みしめながら、広場の真ん中へ歩いていくロングビル。
「そうだねぇ、さっきの森の入り口では、君と殺し合いになりそうだったっけ」
「もう!そいつは言わないでおくれよ」
「はは、ゴメン」
 ヤンは少し笑って、ロングビルの横に立つ。
 見上げれば、梢の合間からのぞく空は紅から黒へと塗り変えられつつあった。
「まだ、僕がここに来て二ヶ月しか経ってないんだね。信じられないよ、昔からトリステ
インにいるような気がしてるのに」
「あたしだって信じられないさ。まさか男のためにフーケを辞めて、ただの秘書になろう
だなんてね」
「ホント、信じられないなぁ」
「全くだわね」

 二人は、口を閉ざした。
 女の瞳は、少々の星明かりと僅かな月光の下ですら輝いている。
 男の瞳には、少々の照れが見え隠れしてる。

「ねぇ」
「ん?」
 女も少し照れて、顔を伏せる。
 そして、上目遣いにヤンを見上げた。
「触れて、くれる?」
 男は顔を真っ赤にして、照れ隠しに頭をかく。

 ヤンは彼女の背に腕を回す。ポニーテールの髪が手をくすぐる。
 ロングビルも男の腰に腕を添える。細くとも引き締まった腕が彼を強く抱きしめた。

 そして二人は、互いの唇を求めた。




「・・・ねぇ、ヤン」
 男の耳元で、女が囁く。
「ん…なんだい?」
 男は、女の背に広がる長い髪を優しく撫でている。
 髪も素肌もきめ細かく、汗にしっとりと濡れて瑞々しい。
「んと、あのさ」
 男の身体の上で、女はちょっと恥ずかしげに身をよじらせた。
 そして、頬を合わせる。


「愛してる」
 ロングビルは頬にキスをした。



 男は、少し押し黙った。
 そして、ゆっくりと口を開く。
「…僕も」
 ロングビルの人差し指がヤンの唇の上に置かれる。
 キョトンとした半開きの目が、すぐ横の理知的な瞳へ向けられた。
 彼女はヤンの口を指で押さえたまま上半身を少し起こした。大きな胸の圧迫から解放さ
れて、ちょっとだけヤンは呼吸が楽になる。
「ダメだよ。あんたは今、それを言っちゃダメ」
 少し哀しげに、苦しげに、女は言葉を紡ぐ。
「あんたは故郷を、女房を忘れようと無理してる」

 長い緑の髪がヤンの身体にかかっている。
 汗で湿った髪が月明かりで光りを放つ。

「いつか、本当にあたしを愛してくれた時、その言葉を言っておくれよ。それまで待って
るからさ」
 ロングビルはヤンの肩に手を置き、唇を重ねた。
 ヤンはロングビルを力一杯抱きしめた。




 ところで、この森を使用しているのはヤン達だけではない。
 近くに住む村の人だけでもない。
「きゅ、きゅい…きゅい~!」
 青い風竜が、かなり離れた茂みの向こうから二人をコッソリ見つめていた。

 この森にはタバサの使い魔である風竜のねぐらがある。
 木をその牙と爪で切り倒し、天井を拵え、地面には柔らかい藁を敷き詰めてある。傍ら
には飲むための水が張られた飼い葉桶まで置いてあった。
 そこからちょっと離れた場所に、風竜と少女の姿がある。

「声が大きい」
 青いショートヘアの少女が風竜の口を杖で押さえる。
 風竜は慌てて口をすぼめ、身体も低くした。
「きゅい、ゴメンなのね。でもでも、人間って凄いのね!激しいのね!」
  ポカッ
 杖が風竜の頭を小突く。
「しゃべっちゃダメ」
「きゅい~…きゅい!」
 大きな牙の間から呟きが漏れる。ルーンではなく口語の呪文だ。

  我をまとう風よ、我の姿を変えよ

 風が風竜の体にまとわりつき、青い渦となる。
 それは一瞬光り輝き、すぐに消えた。
 後には20歳ほどの女性がいた。青い長い髪の麗人で、素っ裸。雪のように白い肌を星
空の下にさらしている。
 そして少女の耳元で囁く
「これなら韻竜ってばれないのね。しゃべっていいのね?」
 少女はちょっと首を捻り、そしてコクリと首を縦に振った。


 そして、二人は改めて茂みの向こうを覗き見る。
「きゅい、こ、これも任務なのね。きゅいきゅい、ヤンって人を監視するのが、新しく命
じられた任務なのね」
「そう、任務」
「そうなのね、きゅい。お姉さま、だからしっかり監視するのね。さっそく頑張るのね。
しょうがないのね。お姉さまもシルフィも、働き者なのね」
「そう、働き者」
 そんな話を囁き合いながらも、青いショートヘアーの少女と青い長髪の裸の女性は、視
線を茂みの向こうから外す事がなかった。




 同時刻、聖地。
 夜の闇を貫いて、クレーターの中に爆発音が響き続けている。

 盆地中央は『門』から湧き出す光を多い隠そうとするかのように、大地が触手を伸ばし
『門』を包み込む。その度に盆地を闇が包むが、即座に土と岩の囲いが吹き飛ばされ、激
しい光がクレーターを照らし出す。大地も負けじと再び触手を伸ばし、『門』から飛び出そ
うとする物体を叩きのめす。そしてまた爆発が生じる。
 その光景はクレーター周囲で『門』を監視する、多数のエルフ達にも観測されていた。
半径10リーグのクレーター円周部には、恐らくは各部族から派遣されたであろう調査隊
が幾つも待機している。

 彼等は不審と不安に満たされた心を押し隠し、つとめて冷静を装って意見をぶつけあっ
ていた。だが、エルフの理性すらも限界が近いようだ。
「どうなってるの…大地を抉る爆発こそ無くなったけど、今度は門が閉まらないなんて」
「一体、何が召喚されようとしているんだ?どうにかサンプルを採れないものか…」
「バカを言うな!30年前の悲劇を忘れたか!?あの砂漠から引き上げられた超兵器、二
度と見たくはない」
「そうですね、それに、いつ再び『すぱるたにあん』とやらが大爆発を起こすか分かった
物ではありません。調査はしたいですが、近付くなどもってのほかでしょう」
「やはり、早急にヤンとやらを連れてくるべきだわね…私達だけでは手に負えないわ」
「ああ、その件は既に評議会が…。・・・ん?」
「どうした…おや?」
 エルフ達は、クレーター中央部を見つめた。

 爆発音が、停止していた。

 召喚門は閉じていない。
 遙か彼方に、小さな丸い光るものが見える。
 それはただ光っているだけで、何も出てくる様子はない。

 エルフ達はじっと光を見続けた。
 だが、いつまで経っても何も出てこないし、『門』も閉じる様子がなかった。
 何も出てくる様子のない『門』に、大地も攻撃の手を休めているかのようだ。

「何だ…?」
 誰とはなしに、呟き声が漏れる。
 一瞬、彼等には『門』が放つ光が強まったのかと思えた。
 だが、違った。


 門それ自体が膨れあがった。



「門が…巨大化する!」
「まさか、例の蛮人が言っていた、『門のサイズの活性化』か!?」
 観測者達に動揺が広がり、ざわざわと声が大きくなる。


 『門』が、広がっていた。
 いや、もはや『門』というレベルの代物ではなかった。
 聖地のクレーター中央に、巨大な鏡のようなものが現れた。それは10リーグ彼方から
でも分かるほど巨大な丸い鏡。その直径は、どう見ても数百メイルはある。聖地中央の小
さな光点が突然膨れあがったのだ。

 大地の精霊が攻撃を試みた。
 だが、重力を生み出す大地は、自らの重力に縛られた。触手が門の下しか届かない。
 巨大な鏡は、光を増し始める。それはクレーター周囲を朝日のごとく照らす。

「風の精霊よ!我らを守りたもう!」
「大いなる意思よ、この地を守護する数多の精霊よ。かの悪魔達を退け、生ける全てのも
のを救うことを請い願う!」
 調査隊に参加する全エルフが精霊に願いを捧げる。
 同時に、聖地周辺の大気が唸りを上げて動き出す。門へ向けて突風が吹き荒れ、エルフ
たちの鼓膜に痛みが走る。門を空気の壁で押さえこもうと、周囲の空気を吸い上げて気圧
を上昇させているようだ。
 さらにクレーターを中心に吹き荒れる突風は激しい上昇気流を生み、特大の積乱雲を天
にそびえたたせた。夜の闇を貫く雷光をまとい、門の上空に分厚く重くのしかかる。幾筋
もの竜巻が空から降りてきて、聖地の荒れ果てた土を宙へ巻き上げる。

 そんな中、それは現れた。
 巨大な光る鏡に、幾つもの黒い点が湧き出す。
 何かが召喚ゲートから、ゆっくりと顔を覗かせていた。


 雷光が、爆ぜた。


 クレーター上空に分厚く滞空する暗雲から、数え切れないほどの雷撃が放たれた。
 白く輝く竜達が、鏡から湧き出す何かを噛み砕き、焼き滅ぼすべく襲いかかる。
 雨のように降り注ぐ激しい雷光に、聖地は昼間の如く照らされる。
 エルフ達の鼓膜を破ろうかというほどの炸裂音がサハラ一帯に響き渡る。
 さらには林立する竜巻までもが踊り狂い、鏡へと襲いかかる。

 エルフ達は魅入られたかのように、あるいは精神の根源より湧き出す恐怖で身体がすく
んだかのように、精霊達の怒りに討ち滅ぼされる悪魔の姿を見つめ続けた。

 はるか遠く、雷光に浮かぶそれらのシルエットは、何か鳥のような姿をしていた。巨大
な鳥だ。他に棒のような形も、まん丸のボールのようなものも、意味不明な表現出来ない
ものも見えた。
 それらは鏡から姿をのぞかせた瞬間に雷を喰らい、多くはその瞬間に爆発四散した。
 たとえ鏡から出る事が出来ても、竜巻に巻き込まれ、宙に巻き上げられた後に地面に叩
き付けられて砕け散った。
 砕け散った残骸の多くは高圧大気の壁に阻まれ、クレーター内部へと弾き返されて落下
していく。大地に落ちた残骸は、次々と地下深くへと飲み込まれていく。

 だが 残骸のうちの幾つかは大気の壁を貫き、クレーター外周部に待機するエルフたち
の近くへも落下した。
「あ、危ない!」「逃げろぉ!一旦退避だ!」「まて!何が起きているのか調べぬうちは逃
げてはならない!」
 恐怖と義務感からの叫びがあがり、降り注ぐ黒焦げの物体や大きな破片から逃げ惑う。
彼らを守護する精霊も土や風の壁で破片を弾き返し皆を守る。


 だが、いくら撃ち落とされようと、地面に叩き付けられようと、悪魔達は尽きることな
く湧き出し続ける。自らの死という恐怖を微塵も感じないかのように、次から次へと精霊
の包囲の突破を図って湧き出し続ける。


 どれほどの時間が過ぎたか。


 精霊達の怒りは留まるところを知らず、尽きることなく稲妻を撃ち続ける。竜巻も変わ
ることなく荒れ狂っている。

 だが、湧き出した悪魔の一つが精霊の手を逃れた。

 それは塔の様な形をしていた。鏡から飛び出したそれは、高圧大気の壁を貫き、一直線
に遙か彼方の空を目指し、轟音をあげて逃げ去ろうとする。
 雷は幾つも撃ち込まれた。だが意に介する様子はない。何のダメージも受けた様子はな
く、みるみる速度をあげていく。
 竜巻が空飛ぶ塔を追ったが、もはや遅かった。空へ向かうそれは竜巻が追いつける速度
ではなかった。

 塔が上空を通過した瞬間、下にいたエルフ達の全身を衝撃波が打ち付ける。
 そして空の彼方、まだ星空が見える雲の切れ間を貫いて星空へ昇っていった。

 しばらくして、悪魔達が湧き出すのはピタリと止まった。
 同時に、門は一瞬で縮む。遙か彼方に見える小さな光点を残すのみとなった。
 雲は晴れ、竜巻は消え、サハラ一帯に響いた炸裂音も既に聞こえない。

 暗い荒野を星の光と静寂が満たしている。


「一体・・・なんだったんだ?」
「・・・さぁ?何か、空の彼方に飛んでいったな」
「とにかく、調査を再開しよう。まずは残骸を集めるか」
「評議会に緊急連絡だ。使いを急いで…」
 後には呆然とするエルフ達と、聖地からあまりに遠方へ飛ばされたため、大地の精霊に
飲み込まれなかった細かな残骸が残った。

 夜が明け、朝日がクレーターを照らす。
 それでも相変わらず中心部にある小さな光点と化した『門』は消失せず、なにも吐き出
そうともしなかった。

            第22話      嵐の前後   END


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