使い魔を召喚した日の夜、ルイズは夢を見ていた。
それは、幼い日の記憶。
雪の中での記憶。
それは、幼い日の記憶。
雪の中での記憶。
夢の中のルイズは、今より10程も幼い姿をしていた。
季節は冬から春へと変わる頃。
その年の冬は暖かく、過ごし易い冬であった。
しかし、冬の終わりに雪が降ったのだった。
降ったと言っても、足先が埋もれる程度でしかない。
だが、ルイズは雪に喜び駆け回った。
誰にも踏まれていない新雪に、小さな足跡を残して駆ける。
屋敷から見える風景は、全て真っ白に染まり、陽光を反射してキラキラと輝いている。
白く染まった植え込みをかき分け、ルイズは走った。
季節は冬から春へと変わる頃。
その年の冬は暖かく、過ごし易い冬であった。
しかし、冬の終わりに雪が降ったのだった。
降ったと言っても、足先が埋もれる程度でしかない。
だが、ルイズは雪に喜び駆け回った。
誰にも踏まれていない新雪に、小さな足跡を残して駆ける。
屋敷から見える風景は、全て真っ白に染まり、陽光を反射してキラキラと輝いている。
白く染まった植え込みをかき分け、ルイズは走った。
ルイズは石のアーチをくぐり、中庭の入り口に立つ。
池のほとりの船にも雪は積もり、真っ白な小島が浮かんでいる。
白い石で出来た東屋は、その白さを純白に変えている。
何時もとは違う中庭の美しさに目を奪われるが、直ぐに此処まで来た目的を思い出す。
叱られる度に、ルイズはこの場所へと逃げ込んでいたのだが、この日は違った。
この日は単純に、お気に入りの場所で雪遊びをするために来たのだ。
ルイズは、両手で雪を掬い、上に放り投げて撒き散らす。
空中に舞い散る雪は、陽の光を乱反射しながら降り注ぐ。
飽きる事無く、ルイズは何度も何度も雪を撒き散らした。
池のほとりの船にも雪は積もり、真っ白な小島が浮かんでいる。
白い石で出来た東屋は、その白さを純白に変えている。
何時もとは違う中庭の美しさに目を奪われるが、直ぐに此処まで来た目的を思い出す。
叱られる度に、ルイズはこの場所へと逃げ込んでいたのだが、この日は違った。
この日は単純に、お気に入りの場所で雪遊びをするために来たのだ。
ルイズは、両手で雪を掬い、上に放り投げて撒き散らす。
空中に舞い散る雪は、陽の光を乱反射しながら降り注ぐ。
飽きる事無く、ルイズは何度も何度も雪を撒き散らした。
『キレイ、ずっと見ていたい……』
何時までそうしていただろうか、太陽はもう少しで天頂に差し掛かろうとしている。
陽が高くなってきた事で、雪は溶け始めていた。
その事に気が付いたルイズは、雪を撒き散らす事をやめて雪で小さな塊を作った。
その塊に、残っている雪をかき集めて中位の塊にする。
そうやって作った、二つの雪塊を持って、ルイズは東屋へ足を踏み入れた。
陽が高くなってきた事で、雪は溶け始めていた。
その事に気が付いたルイズは、雪を撒き散らす事をやめて雪で小さな塊を作った。
その塊に、残っている雪をかき集めて中位の塊にする。
そうやって作った、二つの雪塊を持って、ルイズは東屋へ足を踏み入れた。
『ココなら大丈夫……』
東屋の中は、外よりも温度が低くヒンヤリとしている。
ルイズは、大きさが少し違う雪玉を積み重ねる。
出来上がったのは、30サントほどの大きさの雪だるまであった。
石で眼を造り、完成させる。
だが、何かが足りない。ルイズは頭を捻る。
雪だるまを見つめて考える事、数秒。
ルイズの脳裏に光が閃き、その何かに思い当たった。
指を伸ばして、雪だるまの両目の上の雪を削る。
雪だるまに太い眉毛が出来上がり、先程までより生き生きしているように思える。
ルイズは雪だるまに、様々な事を語った。
ルイズは、大きさが少し違う雪玉を積み重ねる。
出来上がったのは、30サントほどの大きさの雪だるまであった。
石で眼を造り、完成させる。
だが、何かが足りない。ルイズは頭を捻る。
雪だるまを見つめて考える事、数秒。
ルイズの脳裏に光が閃き、その何かに思い当たった。
指を伸ばして、雪だるまの両目の上の雪を削る。
雪だるまに太い眉毛が出来上がり、先程までより生き生きしているように思える。
ルイズは雪だるまに、様々な事を語った。
魔法が如何しても成功しない事。その度に母にしかられ、使用人には姉と比べられる事。
上の姉は意地悪で厳しいが、下の姉は優しいから好きだということ。
もう直ぐ、晩餐会が開かれて、憧れの人と会えるという事。
他にも、印象に残った出来事。どうでもいい些細な出来事も雪だるまに話した。
語り終わってからルイズは、物言わぬ友達に寂しく思った。
上の姉は意地悪で厳しいが、下の姉は優しいから好きだということ。
もう直ぐ、晩餐会が開かれて、憧れの人と会えるという事。
他にも、印象に残った出来事。どうでもいい些細な出来事も雪だるまに話した。
語り終わってからルイズは、物言わぬ友達に寂しく思った。
「……貴方も、話せれば良いのにね。
そうなったら、もっと好きになれるのに」
そうなったら、もっと好きになれるのに」
そう言ってルイズは思いつく。
「そうだわ。私が魔法を掛けてあげる。
春になっても溶けなくて、話す事が出来る様になる魔法よ。
今なら、きっと出来ると思うの」
春になっても溶けなくて、話す事が出来る様になる魔法よ。
今なら、きっと出来ると思うの」
短い杖を取り出し、魔法を唱える。
ルイズは、そんな魔法など知らなかったが、そうなる様に思いを込めて詠唱する。
魔法を掛ける為に、杖で雪だるまを指し示す。
だが何も起こらない。
爆発すら起こらず、雪だるまに変化も見られない。
もう一度魔法を掛けるべく、杖を振りかぶる。
だが、その行為は聞こえてきた声に中断された。
ルイズは、そんな魔法など知らなかったが、そうなる様に思いを込めて詠唱する。
魔法を掛ける為に、杖で雪だるまを指し示す。
だが何も起こらない。
爆発すら起こらず、雪だるまに変化も見られない。
もう一度魔法を掛けるべく、杖を振りかぶる。
だが、その行為は聞こえてきた声に中断された。
「ルイズ! そこに居るのでしょう?
早く出てきなさい。
今日も魔法の練習ですよっ!」
早く出てきなさい。
今日も魔法の練習ですよっ!」
それは、ルイズの母カリーヌの声だ。
声にホンの少しの怒りを滲ませ、呼び掛けている。
ここで出て行かないと、苛烈なお仕置きが待っていることだろう。
ルイズは身を縮ませて、カリーヌの前に出て行った。
声にホンの少しの怒りを滲ませ、呼び掛けている。
ここで出て行かないと、苛烈なお仕置きが待っていることだろう。
ルイズは身を縮ませて、カリーヌの前に出て行った。
「ルイズ、遊んでばかりではいけませんよ!
貴女は、まだまだ多くの事を学ばねばならないのですから」
貴女は、まだまだ多くの事を学ばねばならないのですから」
ルイズは、カリーヌに手を引かれて屋敷に戻っていった。
次の日、再び中庭を訪れたルイズが見たのは、東屋の中にある水溜りであった。
水溜りの中には、小さな氷の欠片が浮かんでおり、ルイズは涙を浮かべて、それをそっと胸に抱いた。
水溜りの中には、小さな氷の欠片が浮かんでおり、ルイズは涙を浮かべて、それをそっと胸に抱いた。
・
・
・
その冬の出来事以来、ルイズは雪だるまを造る事はなかった。
一日限りの友達を亡くした事実は、幼いルイズの心を打ちのめし、心から魔法を渇望するようになったのであった。
しかし、そんな記憶も成長するにつれ、唯の思い出へと変わり、思い出す事も無くなっていた。
心の内に残るのは、何に変えても魔法を使えるようになるという目標のみであった。
一日限りの友達を亡くした事実は、幼いルイズの心を打ちのめし、心から魔法を渇望するようになったのであった。
しかし、そんな記憶も成長するにつれ、唯の思い出へと変わり、思い出す事も無くなっていた。
心の内に残るのは、何に変えても魔法を使えるようになるという目標のみであった。
・
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ルイズは眼を覚ました。
窓から射す光は太陽の暖かい光ではなく、双月の冷たい光である。
月の位置から判断するに、時刻はまだ深夜だ。
窓から射す光は太陽の暖かい光ではなく、双月の冷たい光である。
月の位置から判断するに、時刻はまだ深夜だ。
『おかしな時間に眼を覚ましたものね。
始めての魔法の成功で、気が昂ぶっているのかしら?
それとも、召喚したものが原因?』
始めての魔法の成功で、気が昂ぶっているのかしら?
それとも、召喚したものが原因?』
ルイズは眼が覚めた原因を考えるが、どちらもあり得る様に思える。
『魔法が成功したときの興奮は忘れられない。
でも…… それは、直ぐに落胆に変わってしまった。
なら、呼び出したもののせいであんな夢を見て眼を覚ました?』
でも…… それは、直ぐに落胆に変わってしまった。
なら、呼び出したもののせいであんな夢を見て眼を覚ました?』
ルイズは、その時になって自分が泣いていた事に気が付いた。
目尻に触れると湿っている。
明かりを付けて、鏡で確認すると頬には涙が流れた跡が残っている。
目尻に触れると湿っている。
明かりを付けて、鏡で確認すると頬には涙が流れた跡が残っている。
幼い頃を懐かしむように、ルイズは眼を閉じる。瞼の裏にはあの時の光景。
溶けて土と交じり合い、泥と成ってしまった友達の姿。
残った一握の氷。
溶けて土と交じり合い、泥と成ってしまった友達の姿。
残った一握の氷。
ルイズは何かに気づいた。
顎に手を当てて黙考する。
夢に見た光景と、自分の記憶を照らし合わせる。
顎に手を当てて黙考する。
夢に見た光景と、自分の記憶を照らし合わせる。
『あの時拾った氷は如何したんだっけ?
直ぐに溶けてしまった?』
直ぐに溶けてしまった?』
氷なのだから溶けるのは当たり前だ。
しかし、何かが引っかかる。
しかし、何かが引っかかる。
『でも、大事にとっておいたような気がする。
でもどこに? 私の部屋?』
でもどこに? 私の部屋?』
…………
「氷は……溶けなかった?」
・
・
・
赤と青の月の光がソレを照らす。
ソレとは、ルイズが召喚して中庭に放置した使い魔であった。
ソレの周りの空気は冷えて、ソレが冷気を放って居るのが判る。
まん丸の瞳と、力強い眉。
そして、限りなく澄み切った氷の結晶が胸に埋め込まれていた。
本来ならば物言わぬ物であるが、幸い時刻は深夜。
誰もソレの事を見ては居ない。
ソレとは、ルイズが召喚して中庭に放置した使い魔であった。
ソレの周りの空気は冷えて、ソレが冷気を放って居るのが判る。
まん丸の瞳と、力強い眉。
そして、限りなく澄み切った氷の結晶が胸に埋め込まれていた。
本来ならば物言わぬ物であるが、幸い時刻は深夜。
誰もソレの事を見ては居ない。
「ルイズ、また会えたのだ」
誰も居ない中庭に、小さな呟きが聞こえた。
続かない
「ロマンシングサガ3」から『ゆきだるま』を召喚