あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

うらにわのつかいま

 神、それは人智を超越したもの。そして人という知的生命体に恐れ、崇められている。
 ある者は火を神として崇め、ある者は動物を神と崇めるなどその形は様々である。
 それらに共通するものは、作物の豊穣等の様な幸福を神に願うのである。
 だが総ての人間がそれを願うのではない。ある者は神に破壊や混沌を望むのだ。
 彼らが崇める神は邪神と呼ばれ、云わば普通の神々と一線を引く。
 邪神を崇拝するものはアウトローという訳ではない。文明社会において重要な地位を保持しているものもそのような神を崇めている者さえいる。
 そして、その邪神を崇める者たちは団結し、巨大な秘密結社を築き上げてきた。
 その集団の名はクトゥルー教団、崇める邪神の名は教団名ともなっているクトゥルー。
 地球上のルルイエという所在が定かでない海底に、深き眠りにつくクトゥルー。教団は予言された復活の時を静かに待っている。
 再びこの邪神が地球を支配するその時を。
 だが彼らの願いが叶うことはなかった。とある異世界とゲートを繋げた少女がいた。その少女によって彼らの崇拝する邪神が異世界へと渡ったのだ。



 その少女の名はルイズ。トリステインに住まう貴族の娘だった。



 それは使い魔召喚の儀式が迫っていた日のこと……。魔法が使えぬと揶揄されていた少女は儀式を目前に一念発起し、今まで彼女を馬鹿にしてきたものたちを見返してやろうと考えていた。
 そのために彼女は自身が学ぶ学院の図書館にて、様々な書物に目を通していた。どの様にすれば、素晴らしい使い魔が呼び出されるのか、目を通してはみれど、どの記述も似たような内容だった。
 曰く、どのような使い魔が呼び出されるのかはメイジの力量によって左右される、だ。
 何ともあいまいな記述。それでも彼女は諦めず、幾多もの書物に目を通そうと考えていた。
 だが、あいにく図書館は閉館の時間となり、司書から退室するよう促され、仕方なく何冊かの書物を借りて自室に戻ることにした。
 自室に戻ったルイズは我が目を疑った。借りて帰った本の中に妙に古惚けた虫食いだらけの本が混じっているではないか。
 彼女はこんな本があったかしらと首を傾げながらもタイトルを読み取ろうとする。
 表紙に書かれていた文字もはっきりと見えず、ネクロノミコソとも読み取ることが出来た。
 表題だけでは内容も察することが出来ず、破けぬよう丁寧にページをめくって行く。
 虫食いだらけ、そして見慣れぬ文字が多く、内容が辛うじて読み取れる程度の劣悪な保存状態。
 眉を顰めながらもページを捲るルイズの手が突然止まる。
 彼女の視線はあるページに釘付けになった。
 そこに書かれていたのは……

『神■■る、く■うるうへの■■について』

 これだとルイズは大きな声をあげ、その記述をメモに書き写した。
 来るべき召喚の儀式に備え、書き写した召喚に必要と思しき呪文を何度も口の中で呟く。
 彼女は知らない。己が如何なる存在を呼び出そうとしているのかを。

 そしてついにその時が訪れた。
 春の使い魔召喚の儀式……。
 周囲の生徒の嘲る様な視線を受けながらや威風堂々と、異世界から神を呼び出す呪文を唱えんとしていた。

「宇宙の果てより来たれ! 我の呼びかけに答えよ!」

 辺りは静まり返り、周囲の人間は聞いたこともない呪文に我が耳を疑った。

―ああ、汝、死して横たわりながら夢見るものよ
 我の呼びかけるのを聞きたまえ
 ああ、強壮なるクトゥルーよ、我が声を聞きたまえ
 夢の主よ、我が声を聞きたまえ
 ルルイエの塔に汝は封じ込められしも
 ダゴンが汝の呪わしい戒めを破り
 汝の王国が再び浮上するであろう
 深きものどもは汝の秘密の御名を知り
 ヒュドラは汝の埋葬所を知れり
 我に汝の印を与えたまえ、されば我も汝に印をつけよう
 汝がいずれ地上にあらわれることを知りたいがために
 死が死するとき、汝の時は訪れ
 汝はもはや眠ることなし
 我に波浪を鎮める力をあたえたまえ
 汝の呼び声を聞きたいがため―


 ルイズが呪文を紡ぎ終えても辺りには何の変化も訪れなかった。
 口を閉ざしていた生徒達もやはりこうなったかと彼女を囃し立てようとした時にそれは起こった。

 突然、見慣れぬ魔方陣が地面に刻まれ怪しく発光し始めたたのだ。
 無知とは幸福である。彼女は期待に胸を躍らせてその光景を見守っていたのだ。
 ここいる人間は誰も知らない。ルイズが呼び出そうと試みたのが邪悪な神であったことを……。


 早く出て来いという思いをのせ、再び呪いの言葉を紡ぎだすルイズ。

―フングルイ・ムグルウナフ・クトゥルー・ルルイエ・ウガフナガル・フタグン―

 そして遥か地球のルルイエとハルケギニアが「門」を通じて繋がった…。
 それは彼女の願いどおりの存在がこの地に舞い降りることが約束されたのだ。
 ついにそれは姿を現した……。



「こーんにっちわーっ!」

 何やら楽しげなオカリナをBGMに、回転しつつ満面の笑みを浮かべて顕現したローティーンの少女。
 頭に可愛らしい蛸に蝙蝠の羽の生えた被り物をつけ、地球でスク水と呼ばれる、露出の激しい服と白いニーソックスを身に纏う(胸には平仮名でくとぅ~らと書かれている)少女。
 傍らにぬいぐるみのような魚の体に手足の生えた生き物(?)を従えている。

 ルイズも含め、そこにいる人間全てが呆然としてしていた。

「えーと…みなさん、こんにちはー!」

 涼やかな声で再度挨拶。そして自己紹介。

「お呼びにより顕現させていただきました、クトゥルー改め、クトゥーラでーっす!」

 沈黙と静寂が痛いほど続く。

「あ、あんた何?」

 沈黙を打ち破りルイズが尋ねる。それに対してクトゥーラと名乗った少女は嬉しそうに質問に答えた。
 曰く、神という存在だそうだ。
 ルイズは心の中でガッツポーズを決めた。身なりは変だが神を召喚したというのだ。想像してたのより姿かたちが変だけど現実って残酷よね、と無理やり肯定しつつ。
 だがルイズが喜びを満喫する間もなく怒声が響いた。

「嘘だ!!」

 突然叫び声をあげるとツカツカと皆の前に歩み出てクトゥーラを指差し、再度口を開いた。

「あなた、ハスターの手のものね!」
「モ、モンモランシー? 行き成り何を?」

 モンモランシーという名の少女が声高らかにクトゥーラの嘘を断罪する。
 彼女が言うには……

 本物のクトゥルー様はタコともイカともつかない軟体状の御体を御持ちになって、見るものを恐怖に、そして平伏せされるようなお方なのだと…。

「そして何より神々しさが足りない…って今呼び出したロビンが言ってたわ!」

 両手で先ほど呼び出した蛙の使い魔を高々と掲げた。
 それを聞いた生徒達は次々と口に出してそれを確認した。

「なんだ。嘘か」

 まぁ子供のいうことだから大目に見てやらないと、等など生暖かい目で見られるクトゥーラ。こうなってはいくら弁明したところで無駄だった。
 必死で邪神から愛と恋の神に転職したと伝えても信じてもらえない。 
 一方のルイズはというと未だ現実から目をそらし、わたしが呼び出したのはこいつよ、などといいながら魚に手足の生えたような生き物と契約をしようと口付けをしていた。

「イタイー」
「ああ、だごんたん大丈夫?」

 舌足らずな悲鳴をあげるだごんたんなる生物を気に掛けるクトゥーラ。そのやり取りを聞いてようやく教師であるコルベールが口を挟んだ。

「ミス・ヴァリエール。それは頂けない。ちゃんと彼女と契約するんだ」

 ルイズがコルベールに必死に抗議するもそれも実らず、結局クトゥーラと契約する事になった。
 そうなったのだが成功しなかった。何度口付けしても契約できない何故ならすでにだごんたんと契約してるから……。
 そのことに誰も気付かず、羞恥のあまりクトゥーラが気を失うまでそれは続けられた。

 クトゥーラが召喚されて数週間が過ぎた……。結局ルイズはクトゥーラと契約が結べぬまま、ルイズ付きのメイドという形でクトゥーラは学院に居ついた。
 おいしいご飯に頬を緩ませる平凡な学院の風景がそこにはあったがそれが崩れんとしていた。
 そう、クトゥルーの名を語る不届き者現るの一報がハルケギニア全土を駆け抜けた。それを聞いて激怒したのはガリアの王ジョゼフであった。
 何を隠そう彼はクトゥルー教団ガリア支部の支部長だったのだ。
 怒りに狂った彼はエルフの中でもインスマンス族といわれるエルフを集めてトリステインに侵攻を開始したのだ。
 それに驚いたのはトリステインだけでない。アルビオンで内戦を繰り広げるレコン・キスタの一党だ。
 反エルフを標榜する彼らにとってこれは見過ごせる事態でなく、王族と講和を結び、アルビオン・トリステイン連合軍を結成することとなった。

 争う人とエルフのインスマンス族。次第に人の側が押され、ついに学院の生徒達も少年兵として借り出される事態にまで陥った。

「ごめんなさい…」

 神としての力を取り戻せないでいた彼女はルイズたちの出兵をただ見守るしか出来なかった。
 何より謝る彼女にルイズは自分の責任だから気にするなと声を掛けるのである。

 学院を最終防衛ラインとして戦う学院生と教師達、襲い掛かるエルフ達……だがエルフにしては妙に風貌が変である。エルフというよりは蛙人間と言った方が正しい、そんな醜い姿をしているのだ。

「あの姿形は深きものども(ディープ・ワンズ)!」

 少女は自らの言葉に首を傾げる。そう、彼女は思い出したのだ。昔の知識を。
 思い立てば即行動と、傍らでぽかんと口を開けているだごんたんを引きつれて戦場へ向けて駆け出した。


「それ以上やったら『メ』!」

 戦場に涼やかな声が響き渡る。そして争いの音がやんだ。
 クトゥーラは形のよい逆立てて腰に手を当て、「怒ってますよ」というポーズをとっていた。
 ついでにだごんたんもクトゥーラの肩の上に乗っかり、三又矛を掲げて威嚇のポーズらしきものをとって深きものどもの注目を得ていた。
 争いをやめた深きものどもに向かって地面を指差す。すると数百もいた彼らが一斉に正座をし始めた。

「な、何で戦いを止めるのだ!? 」

 慌てふためくのは一段を率いていたジョゼフ。

<当然です>

 突如聞こえてきたどこの言葉でもないがどこの国の人間でも理解できる言葉が響いた。

<深きものどもはわたしの眷属の一員で……あれ?>

 深きものどもは眷属の一員でもあるから言うことを聞くのです、と言おうとしたのだが、彼らの様子がおかしい。

「オノレ、トリステインの人間どもめ!」
「我らの父、ダゴン様を人質に取るとは!」
「卑怯ものめ!」

 別段クトゥーラを彼らの信仰する神と認めたわけではなかったらしい。
 この後しばらくだごんたんと共に説得攻勢に入るのだが……話にさっぱりついて行けなくなったトリステインの兵士や戦闘に参加した学院生は次々と我が家へと帰っていった。
 後に残されたのは僅かにそれを見物する物好きな人間だけだった。もちろん、ルイズもその中に含まれている。


 長い時間を掛けて自分がクトゥルーと同一であると信じてもらえたクトゥーラは喜んでいた。ルイズはそれを眺めながら何故自分は帰らなかったのか自問していた。
 気が付けば深きものどもの群れの中に放り込まれ、他のクトゥルー信仰者の説得の旅をする破目になった。
 それは許せる。百歩譲って自分が一緒でなければならないとしても、この深きものどもの群れと一緒に旅などしたくない。生臭いし。


 クトゥーラとルイズが去り、トリステインに平穏が戻った。しかし、ギーシュと呼ばれる少年はあることに気付いた。

「あれ? 君は旅に同行しないのかい?」
「オイテカレター」

エピローグ



 ルイズとクトゥーラが説得の旅をしているその間、置いていかれただごんたんはというと……

「お、おめぇ使い手か…?」
「ケンガシャベッター」

 運命的な出会いを果たしていたのだ。



 さらに月日は流れ、ルイズとクトゥーラが再びトリステインに舞い戻って来た。
 しかしそこにはトリステインという国はなかった。アンリエッタはアルビオンに移り住み、ウェールズと共に幸せな日々をすごしていたのだ。
 ではトリステインがあった場所はどうなったのか。ゲルマニアが併合したのか、それともガリアか……。
 そのどちらでもなかった。かつてトリステインがあった場所には神聖だごんたん王国が建国されていたのだ。


(うらにわのかみさまよりクトゥーラ)



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