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ゼロのミーディアム 第一章 -08


「薔薇人形に♪薔薇人形に♪薔薇人形にごっすんごっすん五寸釘ぃ~♪」
素敵なセンスの歌をノリノリで口ずさみルイズの衣類を洗濯板でゴシゴシと洗っている水銀燈
ちなみに今彼女が歌っているのはアリスになった暁にお父様にご披露する「お父様は大変なものを盗んでいきました」である
しかしそんな彼女の思惑は歌ほどおめでたくは無い。彼女は昨日の決闘を思い起こしていた
(あの子から…ルイズから引き出した力…戦っている最中は気付かなかったけど今考えたらすごい物だったわね…)
思い返しながらも手は止まらない
洗い終えたネグリジェを籠に入れ水銀燈は次の物に手を伸ばす

ルイズから発現させた力、脆弱だった羽を青銅を貫く威力にまで引き上げ、一度は砕かれた剣を今度はそれを一刀のもとに斬り捨てる域にまで強化させた物だ
水銀燈がミーディアムから力を引き出すのは初めてでは無い。が、ここまでの効果をもたらしたのはルイズが初めてだ
(これだけの効果を考えればミーディアムの負担はかなりの物でしょうに…)
後でそれをルイズに聞いてみたのだが…
「負担って何よ?ちょっと指輪が熱を持って温かくなった気はしたけど?」
なんて言葉がルイズから帰ってきたらしい。
つまり…あれだけの効果を出しながらも彼女から引き出せる力はまだまだ余裕と言えるのだ
(フフ…メイジとしてはともかくミーディアムとしては当たりをひいたのかもしれないわねぇ?)
そんなことを考え真剣な顔でお電波な曲を歌う様はちょっと怖い
「…死してなお、この世に未練!残せしは魑魅魍魎!」
さらに歌の方向性が変わってきているが気にしては負けだ
そんな水銀燈の後ろ姿に近づいてくるメイド姿の少女
「精がでますね、水銀燈?」
「あら、シエスタ」
メイドは水銀燈の後ろから声をかけた。昨日、決闘前からすでにピンチだった彼女に救いの手を差し伸べた少女、シエスタである
シエスタは不自然に手を腰の後ろに回し何かを隠している
「無事だったんですね…活躍も聞きましたよ?
…すみません。私、あの時何もできませんでした…」
あの時とは無論、食堂でのギーシュとのいざこざの事だ。あの騒動の中、シエスタはただ見ていることしか出来なかった事を悔やんでいるのだろう
「別に気にする事はないわよぉ。貴女には関係無い話だし」
「…魔法の使えない平民にとって貴族は恐怖の対象と言っても過言じゃないんです」
「まあ分からなくも無いわねぇ…」
魔法の力は水銀燈もその身を持って知った。体験者は語る、と言ったところか
「でも私はこうして健在よぉ。余計な心配など不要だわ」
「あの…私、水銀燈のために服を作ったんです!その、ほら!水銀燈のお召し物綺麗だし掃除とかで汚れちゃうし!」
そしてその手に隠していた物は…
「これって…メイド服?」
「はい!サイズの一番小さいものを私が手直ししたんです!水銀燈ならきっと似合いますわ!」
正直水銀燈はお父様から頂いた黒のドレス以外の服を着る気はあまりないのだが…
キラキラと瞳を輝かせ水銀燈を見つめるシエスタの表情の前には流石に断るのが気まずかった
「ええ…ありがとう…使わせてもらうわぁ…」
水銀燈は苦笑いしてそう言った
シエスタはそれにも気づかず
「それじゃ、この後も仕事がありますので!」
と嬉しそうに帰って行った
(ふぅ…思えば私も丸くなったものね。以前なら何のためらい無く突っ返したでしょうに…)水銀燈はスキップしながら去っていくシエスタを見送りながら思った
具体的な数字は伏せておくが彼女がローゼンメイデンとして生まれ、流れた時間は長い。そして幾多の人間と彼女は契約した
かつて孤独を好み群れることをよしとしなかった水銀燈
しかし繰り返される出会いと別れを経てその心も変わって言ったのだ。…そう、彼女の妹達がそうであったように…
(まったく…真紅達に見せられたものじゃないわね…)
「なーんてセンチメンタルに浸ってる場合じゃないわよねぇ?さ、洗濯、洗濯っと」
やっぱり昔の彼女からは想像出来ない発言
人間…いや、人形変われば変わる物と言ったところか


「ただいまぁ~」
洗濯も終わり水銀燈はルイズの部屋に戻ってきた
「お帰り。洗濯に行ってたのね」
「あらぁ、もう起きてたの?珍しいわねぇ」
水銀燈の言葉通りルイズはすでに起床し着替えをすましている
「今日はちょこっと遠出するからね、さ!あんたも準備なさい!」
「遠出ぇ?授業はどうするのよぉ?」
「今日は虚無の曜日だから授業は無しなのよ」
この世界の日曜日かしら?と水銀燈は思った
「ふぅん…でもどこに行くのよぉ?」
「トリステインの城下町よ」
「何をしに?」
「そ、それは…」
突然しどろもどろになるルイズ
…実は彼女。ただ水銀燈と一緒に遊びに行きたいだけだったりする
魔法の事や性格の都合でこの少女、ずばり女友達と遊びに行く経験と言う物が少ないのだ
「そ、そうよ!あんたに剣を買ってあげるためよ!」
ルイズはとっさに閃いた言葉を口走るが、水銀燈は興味無さそうに答えた
「剣?別にいいわよぉ。もう持ってるし」
そして彼女の手に羽が集まり剣を形どった。意味もなく左手のルーンが輝いている
どうやらこのルーン剣に反応してるらしい
(く、空気読みなさいよこの呪いの人形!)
ルイズは心中で愚痴るが切り返しの言葉はすぐに出た
「青銅のゴーレム相手にも刃こぼれして折れちゃったけどね~」
ちょっと意地悪く答えるルイズ
「うっ…それはぁ…」
そこをさされると水銀燈も痛い。ルイズから力を引き出せば問題無いことだが。あまり頻繁には使う物ではない
切り札は最後までとっておくものだ
「だから私があんたに剣を買ってあげるわ!」
(そうよ…昨日だって私の為にも戦ってくれたし…)と心の中で付け加える
水銀燈もようやく察した。ああ、つまりこの子は昨日の礼がしたいのだと
「まぁいいわぁ。貰えるものなら貰ってあげるわよ」
水銀燈は素っ気なく言った
「まったく…ホント素直じゃないわね…」
「だからぁ…それは貴女に言われたくはないと何度言えば…」


てな訳でやって来ましたトリステインの城下町。流石はこの国の中枢。人の多いこと多いこと
「のわりには道は狭いのねぇ…」
「狭いって、これでも大通りなんだけど」
「これでぇ?」
道幅は5メートルあるかないか。そこを老若男女、大勢の人間が行き来しているため結構混雑している
「でもこう言った雰囲気、嫌いじゃないわよぉ?」
道端に並ぶ露店をキョロキョロと興味深く見回し水銀燈は言った
そんな水銀燈を見てルイズも小さな笑みがもれる
「まあ時間に余裕もあるし少し寄り道するのもいいわね」



「あの看板って酒場よねぇ?」
「そうよ。ガラの悪い傭兵なんかがたむろしてるから近づいちゃ駄目よ」
「あのバッテンのついた看板は?武器屋?」
「武器屋じゃないわ。あれは衛士の詰め所」
「交番みたいなものかしらぁ」
「コーバンって何なの?」

片や貴族の娘で片や呪いの人形(←失礼…)でも年頃の女の子には違い無い。二人(一人と一体?)ともおしゃべりしながら楽しそうに大通りを進む
ふと水銀燈の目にとある露店が目に留まった
「どうしたの水銀燈?…なにこれ。牛乳?」
「これは…!」
物珍しげに店を覗く二人に露店の店主が声をかけた
「いらっしゃいお客さん!こいつは牛乳を発酵させて作った新しい健康食品だよ!どうだい?美容にもいいよ!」
「美容に効果あるの?こんなのが?」
「ルイズ…、ヨーグルトを…乳酸菌を甘く見てはいけないわ…」
水銀燈がルイズを見据え答えた
「え?これがあんたがいつも言ってた乳酸菌なの?」
「そうよ。まさかこんなところでお目にかかるなんて…」
「…ふーん、これがねぇ。せっかくだから食べてみよっか?」
「いいのぉ?」
「いいわよ、大して高くないし。主人、お二つ貰えるかしら?」
「まいど!」

「で、買ってみたのはいいんだけど…食べてお腹壊さないでしょうね…」
ルイズは白いどろりとした液体をスプーンでかき混ぜながら言った
「チーズの遠い親戚みたいな物よぉ。貴女もチーズは普通に食べてるでしょ?」
「チーズね…まあとりあえず一口…酸っぱぁぁぁぁぁい!!」
ルイズの叫びが通りに木霊する
「ちょっとルイズ、いくらなんでも大袈裟じゃないのよぉ」
「いや、スッゴく酸っぱいじゃないのよコレ!これが乳酸菌!?あんたこんなのが好きなの!?」
「乳酸菌の良さが理解できないなんてまだまたお子様ねぇ」
と言いながら水銀燈も一口
…彼女は知らなかった。元々彼女の世界で口にしていたヨーグルトや乳酸菌飲料は万人に飲みやすく味を整えてある事を
加糖したりジャムをつけたりと工夫を凝らした結果が水銀燈が元の世界で摂っていたそれだ
当然今食べたヨーグルトにそんな工夫がされてる訳も無く…
「酸っぱぁぁぁぁぁい!!」
今度は水銀燈の絶叫が城下町に響き渡り青空に吸い込まれた。

…でも勿体無かったので二人とも頑張って全部食べた。良薬は口に苦し(酸っぱし?)とは言ったもの。これでちょっとは綺麗になれるかもよ?


「まぁ確かに体には良さそうだったけど…もうあんまり食べなくてもいいかな…」
「こんな…こんなはずじゃなかったのにぃ…」
げんなりしながら歩いている二人。すると今度はルイズが一つの店の前に立ち止まった
「ルイズ?どうしたのよぉ?」
立ち止まったのはパン屋の前。そこに外売り用の机が出され、その上に甘い匂いを漂わせた菓子パンが並べられている
「今度は私があんたに美味しい物を教えてあげるわ」
そしてルイズは店主を呼び出した
「おっ!これはこれはいらっしゃいませお嬢様!」
「また来てあげたわよ。いつもの奴、二つね!」
どうやらルイズ、この店のお得意様らしい。店主は手慣れた手つきで紙袋に菓子パンを二つ入れるとルイズから代金を貰い袋を手渡す
「まいどあり!今後ともご贔屓に!」
店主の言葉をバックに二人はまた大通りを歩き出した
ルイズが袋からパンを出し水銀燈に手渡す
「これってメロ…」
「違うわ。クックベリーパイよ」
「いや、これどう見てもメロンパ…」
「これはクックベリーパイよ!それ以上でもそれ以下でもないわ!!」
何故か知らないがこのルイズ非常に必死だ
「そ、そうなの…。悪かったわね、クックベリーパイなのね…」
ルイズ必死の説得により流石の水銀燈も折れた
見た目はどう見てもアレにしか見えないが中にクックベリーとやらが入っているのかもしれない。
どっかの討手が大好きなアレがパイに見えるのか?なんてツッコミが来そうだがそこは華麗にスルーさせて頂く
メロ…クックベリーパイににかぶりつくルイズ。思わず彼女の顔に幸せそうな笑みがもれた
「うん…これはなかなか…悪くないわねぇ」
水銀燈も一口食べ素直な感想をもらした
「でしょカリモフが一番なのよ!」
「でも良家のお嬢様が歩き食いなんてはしたない事していいのぉ?」
「これに限ってはいいのよ!あ、でも母様や姉様には内緒ね!」

たわいもない会話だが二人とも実に楽しげだ
、水銀燈も思えばこうやって友達感覚で遊びに行く事など初めてなのだから尚更なのだろう
元の世界では普通に人形が町中を堂々とウロウロする等考えられない事だその後はオープンカフェでお茶したり、露店に並ぶアクセサリーを見回したり、お城を見物しに行ったりしながら二人は町を回った
「結構ぶらぶらしちゃったわね。そろそろ剣買いにいかないと」
「あら本当ぉ。もうこんな時間」
そして今回のメインイベント。剣の購入へと移ることになる
「ところで武器屋ってどこにあるのぉ?」
「こっちよ。この路地の先が武器屋なんだけど…」
ルイズの指差した先は大通りから外れた狭い路地。ゴミ等が道端に散乱し悪臭が鼻をつく
「なんか不衛生なとこねぇ…」
「だからあんまり来たくないのよ」
あまり気乗りしないルイズと水銀燈だったが仕方なく路地に入っていった
そして四辻に出て立ち止まる二人。ルイズはキョロキョロと辺りを見回す
「ビエモンの秘薬屋の近くだったから、この辺なんだけど…」
「あの看板がそうじゃないのぉ?」
水銀燈の指差した先に剣をかたどった看板が下げてある
「あ、あった。そうよ、あれが武器屋」
ルイズと水銀燈は石段を上り羽扉を開け店に入っていった


店内は昼間にもかかわらず薄暗い。ランプの灯りが壁や棚に陳列された剣や槍を鈍く照らしている
そして店の奥にパイプをくわえた胡散臭い中年の親父が一人。この店の主人だろう
ルイズをジロジロと見やり紐タイ留に描かれた紋章に気づくと(おいおい…貴族かよ…)と言い出さんばかりに顔をしかめた
「旦那、これでもうちはまっとうな商売をしてまさぁ。お上に目を付けられることは何も…」
「客よ。剣を見せてもらえるかしら?」
ルイズの客だと言う言葉を聞きとたんに主人は騒ぎ立てる
「ほほお!こりゃ珍しい。貴族の方が剣を!おったまげた!」
「私が使うんじゃないわ。使い魔よ。この子が使うの」
ルイズが水銀燈の方を向いて言う。主人が水銀燈を珍しそうに眺めた
「使い魔さん?お付きの侍女さんといったとこですかい?」
「侍女ねぇ…」
水銀燈が苦笑した
「こちらのお嬢さんの剣を見繕えばよろしいので?」
「ええ、適当に選んで頂戴」
主人はそれを聞くと倉庫の奥にいそいそと消えていった
「鴨がネギしょってやってきたわい…」
なんてこっそり呟きながら…この世界にも鴨鍋ってあるのだろうか?

小汚い武器屋でも水銀燈の興味の対象になるらしい。彼女は壁や棚に置いてある武器に興味深々だ
そんな水銀燈にルイズが注意する
「あんまり触んないでよ。壊して弁償なんてゴメンなんだから」
「わかってるわよぉ」
なんて言いながらも水銀燈は一本の剣を手にとった
「これ、なんて書いてあるの?」
「えーっと…なになに~?エクスカリパー?」
「なんか偽物臭い名前ねぇ…それじゃこっちは?」
「ロトの剣って言うらしいわね」
「この剣は?」
「アイスソード。見たまんま氷の剣ってとこね」
「なんか不吉なオーラが漂ってるわね…」
そりゃ殺してでも奪われることで有名な呪いの魔剣ですから
「あら、これって…」
水銀燈が次に手にとったのは他の剣と違い刀身の反ったどこか趣ある雰囲気の長剣
「珍しい形の剣ね。名前はガーベラストレートだって」
「さしずめ菊一文字と言ったところかしらぁ?でもこんな所で日本刀だなんて」
「ニホントー?なにそれ?」
「こういう片刃の反った剣の事よ。あらぁ?もう一本あるわね?」
「えーっと…何これ、読みにくい名前ね~」
「なんて銘なの?」
「贄殿(にえとのの)シャ…」
「ストップ!そこから先は言っては駄目よ!!」
とくにルイズがこれ持ったら物語の収集つかなくなるので本気で勘弁


そんな事をしているうちに主人が1メイル程の片手剣を持って戻ってきた
「そういや、昨今は宮廷の貴族の方々の間で下僕に剣を持たせるのがはやっておりましてですね、
それでよくお選びになるのがこのレイピアでさあ!」
「貴族の間で剣を下僕に?何で?」
「へえ、なんでも『土くれ』のフーケを名乗る盗賊が貴族のお宝を荒らし回っているとか言う話でして
おかげでそれに恐れた貴族の方々は下僕にまで剣を持たせる始末でさあ」
だがルイズは盗賊の話にはさほど興味を示さずその剣を見る
細い…すぐ折れてしまいそうなレイピア。水銀燈の羽の剣とさほど変わらなそうだ
せめて鋼…とは言わないから青銅ぐらいは軽く斬れる物がいい
「もっと大きくて太いのがいいわ」
「お言葉ですが剣と人には相性ってもんがございます。そちらの侍女さんを見るとこれぐらいが無難かと…」
「そうよ。使うのは私なんだけどぉ」
主人と水銀燈が抗議するがルイズは聞く耳を持たない
「大きくて太いのがいいと、言ったのよ」
店主は無言でぺこりと頭を下げると倉庫に戻っていった
「ちっ…素人が生意気に」
…とつぶやきながら

「ルイズ…私あんまり大きな剣なんか使いたくないんだけど…」
水銀燈がため息をついて言う。彼女の背丈は幼児が少し大きくなった程度の高さ
先ほどのレイピアですら彼女にとっては人間で言う大きめの長剣と変わらないサイズなのだが…
「大丈夫よ。世の中自分の背丈以上の大剣振り回すような輩だって結構いるわ
あんたも私の使い魔なら大剣の一本でも使いこなしなさい!」
ルイズの無理難題に水銀燈は呆れて口を噤んだ
まあ確かに探せばドラゴンころしとか斬艦刀なんて代物を振り回す屈強な戦士もいることはいるが、それを小柄な人形の少女に求めるのは如何な物か
主人が一振りの剣を持って戻ってきた
「お待たせしやした。こいつなんかいかがです?」
全長1.5メイルはあろうかという大剣。両手で扱えるように柄が長くがっちりとしている
ところどころに宝石を散りばめた豪華な装飾と鏡のような両刃の刀身が薄暗い店内に眩く光っていた
「店一番の業物でさ!一流の貴族の従者足るものこのぐらいは腰から下げて欲しいものですな!
と言ってもこいつを腰に帯刀するのはよほどの大男でないと無理でさあ。そちらのお嬢さんなら背中にでも背負って…
…やっぱちょいと無理な気もしやすな…」
主人は水銀燈を見て思わず本音が漏れた
だがルイズはこの剣に満足したらしい。貴族の性分と言うか何でも一番でないと気がすまないのだろう
隣で顔をしかめている水銀燈をよそにルイズは値段を訪ねる
「おいくら?」
「こいつはかの有名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿の鍛えたものでして…」
「いくらかと聞いてるのよ。私は貴族よ!」
主人の能書きを無視してルイズは(貧相な)胸を張って言った。主人は淡々と値段を告げる
「エキュー金貨で二千。新金貨なら三千」
ルイズが不機嫌に顔をしかめる
水銀燈は相場も貨幣価値も分からないが少なとも高価であるとしか認識できなかった。故にルイズに尋ねる
「そんなに高いのぉ?これぇ?」
「…立派な家と、森付きの庭が買えるくらいの値段よ」
「こんな剣がねぇ…」
「名剣は城に匹敵しやすぜ」
「新金貨で百しか持ってきてないわ」
ルイズは貴族である故にこんな買い物の駆け引きなど知る由もない
あっさり自分の手持ちをばらしたルイズの言葉に主人は話にならないと言わんばかりに手を振った
「まともな大剣ならどんなに安くとも相場は二百でさ」
ルイズは顔を赤くする。たかが剣がそこまで値が張るなど知らなかったのだ
この剣は買えないようだが水銀燈は別に気にした様子は無い


「別にいいわよ。こんな煌びやかな剣、私のガラじゃないわぁ」
「でもやっぱり買うなら一番のがいいじゃないのよ」
「嫌よ。こんな無駄に豪華でテカテカした剣なんて。これ、武器って言うより装飾品みたいじゃないのよ。部屋の壁に掛けてるのがお似合いだわぁ」
「やっぱあんたにはこれぐらいの持たせたいんだけどな…」
「値段なんか関係無いわ。どんな剣でもちゃんと実用的で私に合ってるのなら何でもいいわよ。
見てくれなんか問題じゃない、さっきのレイピアでも十分よ。」
別に気遣っている訳ではない。これは水銀燈の率直な意志だ。こんな派手な剣は彼女の趣味じゃないらしい
「…と言うか私にこんな大きい剣を使わせる気なの?」
「えー。私の使い魔なら大剣の一本ぐらい使いなさいよ~」
しつこく食い下がるルイズ。しかし文字通り思わぬところからそれを非難する声が上がった
「生意気言ってんじゃねぇ!そこの娘っ子!」
ルイズと水銀燈が声の方を向いた。主人は「またかよ…」とつぶやいて頭を抱える
「おめえそこの親父の言ってたこと聞いてなかったのか?剣にだって相性ってもんががあんだよ!
小さな従者に無理矢理でっけえ大剣を使わせるだぁ?ふざけてんじゃねぇ!!」
「なんですってぇ~!」
突然の予期せぬ暴言にルイズが熱くなる
だが声の聞こえた先にはただ乱雑に剣が積んであるだけ
「わかったらさっさと家に帰りな!もっと剣について勉強し直すこった!世間知らずの貴族の娘っ子!」
「し、失礼ね!」
水銀燈がすっと声をする方に近づく。当然誰も人らしき者はいない
彼女は積み上げられた剣の山を見やり一本の剣を手にとった
「貴方ねぇ?さっきからの声の主は」
「ほお~俺に気づくたぁあんたやるな」
水銀燈が手にとったのは錆の浮いたボロボロの剣。そこから声が発せられているのだ
「やい!デル公!お客様に失礼なこと言うんじゃねぇ!」
「デル公ねぇ」
水銀燈がまじまじと剣を見つめる。全長は先程の剣と変わらないが刀身は薄手な長剣
ひどく浮いた錆がその剣が作られてどれほどの月日がたったかを示しているがお世辞にも見栄えがいいとは言えない
「これってインテリジェンスソード?」
ルイズが当惑した声をあげた
「インテリジェンスソードぉ?何よそれ?」
その問いには主人が答えた
「インテリジェンスソードたぁ意志を持った魔剣のことでさあ。ったく、いったいどこの酔狂な魔術師が始めたんでしょうかねぇ?剣を喋らせるたぁ…
おまけにこいつはやたらと口が悪いわ、客に喧嘩売るわで閉口してまして…
やいデル公!これ以上失礼があったら貴族に頼んでてめえを溶かしちまうぞ!それとも叩き折ってジャンクにしてやろうか?ああ!」
「ジャンク…!!」
その言葉に反応し水銀燈が瞳を細める
「おもしれえ!やってみろ!」
熱くなった剣も退かない
「やってやらあ!」
主人がこちらに歩いてくる
水銀燈が剣に問った
「謝らないの?ジャンクにされるわよ?」
「へっ、見損なっちゃ困るぜ。例え見てくれはこうでもなぁ、俺は六千年と時を生きた…生きた…あー、なんだっけ?
とにかく俺は言ったことは曲げるつもりはねぇよ。剣として生まれた誇りにかけてなぁ!」
「ふぅん…」
水銀燈の興味がこの剣に向く
「それにこんなつまんねぇ世界にも飽き飽きしてたとこだ!ジャンクにだってなんだってなってやるぜ!上等だ!」
「例えここで朽ちようとも後悔は無いのね」
「男に二言はないぜ。
ところであんたさっきなかなかいいこと言ったじゃねぇか。剣の価値は値段や見てくれじゃない、か
…カッコだけの貴族や戦士に聞かせてやりてえとこだ。あんたみたいなのに看取られて逝くなら俺も本望だぜ!」


「フ…面白い…!」
水銀燈が口元をニヤリとさせ呟いた
「貴方、名前は?」
「デルフリンガー。記憶の片隅にでも置いてくんな!」
そして近づいてきた主人を遮り彼女は言った
「この剣、私が預かるわ」
「お嬢さん、こんな剣持ったって何の得にもなりやせんぜ」
「喋る剣なんて珍しいし、何よりこの剣の気性…興味深いわ。ルイズ、これにしましょ」
ルイズはいやそうな声をあげた
「え~。そんなのにするの?もっと綺麗で喋らないのにしなさいよ」
そこに剣が口を挟む
「気遣いはありがてえとこだが俺はよ…ん?」
断りかけた剣だが突然押し黙る。まるで水銀燈を観察するように。しばらくして剣が驚きながら言った
「こいつはおでれーた!見損なってたぜ、あんた『使い手』じゃねぇか!」
「『使い手』?何の事よ?」
「気が変わったぜ、俺を買ってくれ!いや、姐さん!あんたの舎弟にしてくだせえ!!」
「姐さん…」
姐さんだの舎弟だの微妙な物言いに水銀燈が顔をしかめた
六千年云々とか言ってたから少なくともこの剣の方がはるかに年上だろうに

水銀燈と剣のやりとりを見ていたルイズ。他に買えそうな剣も無いので主人に剣の値段を尋ねた
「あれ、おいくら?」
「あれなら百で結構でさ」
「剣の相場は二百じゃないの?」
「こっちにしちゃ厄介払いみたいなもんでさ」
主人が手をひらひら振って言った
財布から金貨をじゃらじゃらとカウンターに金貨をばらかれ。主人が慎重に枚数を数える
「新金貨百、確かに!毎度!」
かくしてデルフリンガーは水銀燈の手に渡った
「ところでお嬢さん、どう言う風に帯刀させやしょう?」
デルフを鞘に納め主人が聞いた
「帯刀?」
「ええ、腰に下げやすか?背中にしょいやすか?」
「そうねぇ…やっぱり背負おうかしらぁ…」
翼の可動の邪魔になるためたすき掛けにはできない。そのため水銀燈は右翼の付け根に垂直にデルフを引っ掛けた
それを見てルイズが無意識に感想を漏らす
「…運命(デスティニー)…」
「…!!」
水銀燈の顔が引きつった。たしかに今の水銀燈の左翼に銃器を引っ掛ければまさにあの不遇の名機
「や、やっぱり腰に差すわぁ!」
負け犬フラグがたってたまるかと言わんばかりに水銀燈が訂正した。そして腰に帯刀してみるが…
「…バランス悪っ!」
またルイズからのツッコミが入った
まあ身長が1メイル前後の水銀燈に長さ1.5メイル近いデルフリンガーを帯刀させようとすることに無理があるのだろう
結局周りの邪魔になるという理由が決定打になり水銀燈はデルフを背負う事にした。尚、彼女は常に宙に浮いてるため縦に差しても問題ない。だが…
「おーい、姐さん。俺引きずられてんだけど~?もうちょい高く飛んでくんね?」
背中のデルフリンガーからの声
「…うっさい!」
水銀燈は乱暴にガチンとデルフを鞘に納め黙らせた


剣も買い終え学院に戻ってきた二人。日はとっくにに沈み空には二つの月が輝いている。結構遅い時間だったので二人とも帰ってそうそうすぐに寝ることにした
遊び疲れたのか二人は寝床にはいるやいなやすぐに寝息を立て夢の世界へと誘われた



夢の中、水銀燈が立っていたのは薄暗い廃墟の街だった
「ここは…私のフィールド…」
nのフィールド、ローゼンメイデン達がアリスゲームを繰り広げる戦いの舞台である。その中でもこの朽ち果てた街並みは水銀燈の心象風景を具体化した言わば彼女のテリトリーだ
辺りを見回す水銀燈の視界に紫色の発光体が映った
「あれは…メイメイ!」
メイメイ、水銀燈の人工精霊の名前だ。人工精霊とは各ドールに一体付き添う言わば彼女達の従者とも言える存在
メイメイはまるで「ついて来て」と言うように辺りをせわしなく飛び回ると奥の道に飛びさって行く
「待ちなさい!メイメイ!」
水銀燈はメイメイの後を追った
幾多の道を曲がり朽ちた建物を抜けメイメイが向かった先は開けた広場
「やっと…追いついたわ」
メイメイを発見し安堵する水銀燈


そこに何者かの声がかかる
「黒薔薇に秘められし言葉は様々、『終わり無き憎しみ』・『彼の者に死の制裁』・『恒久の束縛』…」
「誰ッ!?」
水銀燈が振り向いた先には一枚の鏡
「ですがその黒薔薇の花言葉からあえて一つ挙げろと言われれば…私はこれを挙げましょう。そう、『儚き夢』…」
声の主は鏡の中に移る黒い燕尾服を纏った人影だった。暗がりのため顔は見えない
「人の夢とかいて『儚い』とはよく言ったもの、果たして夢破れるのは異界に舞い降りし黒き翼か…はたまた翼を拾いし異界の少女か…
それを決めるのは他ならぬ貴女なのですよレディ?」
鏡の中の人影が顔を明かした。いや、その顔は人の物ではなかった
「さて、お久しぶりと言うべきですかな?」
「ラプラス…!」
水銀燈の目に映ったのはシルクハットをかぶった兎の顔
nのフィールドに存在しアリスゲームの運営を担う者、ラプラスの魔であった


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