昨夜の、近年類を見ない大地震は、トリステイン魔法学院に勤める者を煩忙させた。
学棟の被害は、連綿と施された固定化の魔法により軽微である。
しかし、保管されていた瓶詰めの秘薬や陶器など、
設置されていない物は悉く損壊し、甚大な被害と成っていた。
怪我人一人として出なかった事が、奇跡的様相を呈している。
夜を撤して院内を奔走し、事態の収拾に人力尽くした教員や奉公人は、明け方あたりに漸く報われ、
日の上る頃には、常より少々慌しい業務を残すのみとなった。
欠伸を噛み殺し、山の様な洗濯物を消化する為、
メイドの少女は一人、学院外に設置された洗い場へと赴く。
気持ち足早に辿り着くと、先に訪れていた人影へ目を奪われた。
暫し立ち止まり思案の後、少女は喜色満面の笑みを湛え、小走りに近づき、
その者をまじまじ下から覗き込んで観察する。
学棟の被害は、連綿と施された固定化の魔法により軽微である。
しかし、保管されていた瓶詰めの秘薬や陶器など、
設置されていない物は悉く損壊し、甚大な被害と成っていた。
怪我人一人として出なかった事が、奇跡的様相を呈している。
夜を撤して院内を奔走し、事態の収拾に人力尽くした教員や奉公人は、明け方あたりに漸く報われ、
日の上る頃には、常より少々慌しい業務を残すのみとなった。
欠伸を噛み殺し、山の様な洗濯物を消化する為、
メイドの少女は一人、学院外に設置された洗い場へと赴く。
気持ち足早に辿り着くと、先に訪れていた人影へ目を奪われた。
暫し立ち止まり思案の後、少女は喜色満面の笑みを湛え、小走りに近づき、
その者をまじまじ下から覗き込んで観察する。
「あの……貴方はもしや……悪魔さん? ですか?」
傍らに、堆い洗濯物を置き訊ねると、大きな黒い瞳を輝かせた。
洗い場に向き立ち尽くしていたそれは、少女に顔のみを向き変え、
視線を絡めると頷き、そうだと主張する。
洗い場に向き立ち尽くしていたそれは、少女に顔のみを向き変え、
視線を絡めると頷き、そうだと主張する。
「やっぱりッ! そうなんですねッ!
初めて見るので少し自信無かったんですけど……
あの……さッ……触ってみても……宜しいですか?」
初めて見るので少し自信無かったんですけど……
あの……さッ……触ってみても……宜しいですか?」
喜びから不安、不安から懇願へと表情を次々に変えて、佇む悪魔に言葉を紡ぐ。
悪魔が、その身も向き変えて無言の肯定を示せば、
少女は己が撓わに揺れる胸の前で掌を合わせ、跳ねて全身で喜びを顕にした。
悪魔が、その身も向き変えて無言の肯定を示せば、
少女は己が撓わに揺れる胸の前で掌を合わせ、跳ねて全身で喜びを顕にした。
「あぁ……ありがとうございますッ! では……」
触りますね、と心中で続け双手を広げると、壊れ物を扱う様に悪魔の胸へ細い指を這わせる。
悪魔はされるが侭、微動だにしない。
悪魔はされるが侭、微動だにしない。
「綺麗です……紋様。力の流れを感じます。
きっと、とても高位な悪魔さんなんですね」
きっと、とても高位な悪魔さんなんですね」
触れる指の動きは止めず呟きながら、多くを感じ取ろうとひたすら行為に耽る。
指の腹が甘い痺れを覚え、吸い付く様に夢中となった。
悪魔の肢体は、華奢と云う程に細くも無く引き締まっており、
艶やかな肌や温かみのある弾力、揺るぎない逞しさが感じ取られる。
胸から腹へ、紋様をなぞる様に動かすと、今度は肩口に上り腕へとそれを繰り返す。
末端の五指に至り、後戻って喉元から頬、赤く揺らめく目元に指を進めると、
己の髪と同様の深い黒髪に指を埋め、頭の後ろへと滑り込ませる。
遂に指先を、首筋から突き出た、黒く不気味な鋭い突起物に接触させると、覚えず声が零れた。
指の腹が甘い痺れを覚え、吸い付く様に夢中となった。
悪魔の肢体は、華奢と云う程に細くも無く引き締まっており、
艶やかな肌や温かみのある弾力、揺るぎない逞しさが感じ取られる。
胸から腹へ、紋様をなぞる様に動かすと、今度は肩口に上り腕へとそれを繰り返す。
末端の五指に至り、後戻って喉元から頬、赤く揺らめく目元に指を進めると、
己の髪と同様の深い黒髪に指を埋め、頭の後ろへと滑り込ませる。
遂に指先を、首筋から突き出た、黒く不気味な鋭い突起物に接触させると、覚えず声が零れた。
「ぅあぁ……凄く硬い……それに熱くて……
指が焼けてしまいそうです……」
指が焼けてしまいそうです……」
脈動する魔力の源に柔柔と指を絡め、その存在に熱っぽい吐息を漏らす。
「ふぅ……こんなに溢れて……
これが……」
これが……」
悪魔の反応を伺う様に顔を持ち上げ、融けた視線で確認すれば、
先程と何ら変わらぬ静かな漆黒の眼が見下ろしている。
全てを見透かされてしまう様な見開かれた目に、思わずシエスタは全身を密着させた。
魔性に自らの溢れる胸を押し付け、指の股や腹、掌でそれを擦り、軽く、強く緩急を付け握る。
先端を包み転がして弄び、一頻りその熱さを愛でると、
名残惜し気に背中、そして腕へと、その手を這わし悪魔を堪能し終えた。
先程と何ら変わらぬ静かな漆黒の眼が見下ろしている。
全てを見透かされてしまう様な見開かれた目に、思わずシエスタは全身を密着させた。
魔性に自らの溢れる胸を押し付け、指の股や腹、掌でそれを擦り、軽く、強く緩急を付け握る。
先端を包み転がして弄び、一頻りその熱さを愛でると、
名残惜し気に背中、そして腕へと、その手を這わし悪魔を堪能し終えた。
「ふぅ……ありがとうございました……悪魔さん。とても素敵でした」
紅潮し茹った顔を手の甲で冷やし、感触の余韻に浸っていると、
不意に重要な何かを忘れている事に囚われる。
とろけて停滞した思考に湧き起こる疑問を燻らせ、幾許置くと自己紹介もまだな事に気付いた。
慌てて滑らかな少し長いボブの黒髪を手櫛、くたびれたメイド服の皺を伸ばして身なりを整える。
深呼吸して落ち着きを取り戻すと、畏まって名を告げた。
不意に重要な何かを忘れている事に囚われる。
とろけて停滞した思考に湧き起こる疑問を燻らせ、幾許置くと自己紹介もまだな事に気付いた。
慌てて滑らかな少し長いボブの黒髪を手櫛、くたびれたメイド服の皺を伸ばして身なりを整える。
深呼吸して落ち着きを取り戻すと、畏まって名を告げた。
「すみません私、舞い上がってしまって。いきなり失礼な事を……
私、シエスタと云います。この学院で奉公してるんですよ。
悪魔さんのお名前は、何と仰るんですか?」
私、シエスタと云います。この学院で奉公してるんですよ。
悪魔さんのお名前は、何と仰るんですか?」
仕切り直し言上すると、その悪魔が魔人であり、名をヒトシュラと知る。
更に言葉を重ねれば、昨日行われた使い魔召喚の儀式にて喚びだされた事が判明した。
魔人と云う存在に、一際興奮の色を隠せないシエスタは、尚も会話に没頭する。
更に言葉を重ねれば、昨日行われた使い魔召喚の儀式にて喚びだされた事が判明した。
魔人と云う存在に、一際興奮の色を隠せないシエスタは、尚も会話に没頭する。
「ミス・ヴァリエール……
悪魔召喚を、しかも貴族の中に行使できる方が居らしたなんて。
私のお爺様の代で失われたとばかり思ってました。
あッ! 私の家は代々、悪魔合体の秘術を執り行う者の血を組んでるんですよ」
悪魔召喚を、しかも貴族の中に行使できる方が居らしたなんて。
私のお爺様の代で失われたとばかり思ってました。
あッ! 私の家は代々、悪魔合体の秘術を執り行う者の血を組んでるんですよ」
だから、と先程暴走して行動が先走ってしまった事を再び謝り、目を伏せた。
「昔はもっと沢山居たんですけど、お爺様の代で異端の煽りを受けてしまって。
短い間に多くの同胞と、大半の技術は失われたんです。
私の様な者はこうして、社会に紛れ生活してるんですよ。
まさか生きてる内に、悪魔を目に出来るなんて思わなくて」
短い間に多くの同胞と、大半の技術は失われたんです。
私の様な者はこうして、社会に紛れ生活してるんですよ。
まさか生きてる内に、悪魔を目に出来るなんて思わなくて」
悲惨な顛末に臆面も見せず、そう云ってのけ、更に話は続く。
「それにしても魔人が召喚されるなんて……
死を与える事に特化し、行動理念とする存在。試しの者。
あッ……もしかしてヒトシュラさんは、この世界を?」
死を与える事に特化し、行動理念とする存在。試しの者。
あッ……もしかしてヒトシュラさんは、この世界を?」
含みを持たせた端的質問をヒトシュラに投げ掛けるが、応えはない。
シエスタは、それでも何かを察したのか頷き、真摯の眼差しを向ける。
シエスタは、それでも何かを察したのか頷き、真摯の眼差しを向ける。
「そうですか……私に出来る事があれば何でも云って下さい。
それに、さっきのお礼もしないと」
それに、さっきのお礼もしないと」
努めて明るく振る舞うと、此処で初めてヒトシュラの両手が学院の女子制服と下着、
掃除に用いられたと思しき雑巾で、一杯に埋まっている事を知った。
それが意味する事を瞬時に理解すると即座に奪い取り、
隣に置いた洗濯山に重ねる。
掃除に用いられたと思しき雑巾で、一杯に埋まっている事を知った。
それが意味する事を瞬時に理解すると即座に奪い取り、
隣に置いた洗濯山に重ねる。
「これは私がしておきます。今度から、気軽に申し付け下さいね。
後ぉ……そうだッ! マガツヒッ! 私のマガツヒを差し上げますッ!
悪魔の方はマガツヒが無いと、この世界に留まれないんですよね?」
後ぉ……そうだッ! マガツヒッ! 私のマガツヒを差し上げますッ!
悪魔の方はマガツヒが無いと、この世界に留まれないんですよね?」
名案を思い付いたとばかりに顔を綻ばせ、いそいそ着衣を脱ぐと、
首筋から肩を晒し、横髪を耳に掛けて己を差し出す。
首筋から肩を晒し、横髪を耳に掛けて己を差し出す。
「必要な時は何時でも差し上げますから、全部は吸わないで下さいね」
目を瞑り待ち構える少女の肩をヒトシュラは掴み、自然と首元に顔を沈める。
本来、生命エネルギーであるマガツヒを吸収するのに部位は問わない。
しかしシエスタはそれに気付くでも無く精一杯身を竦め、
程なく全身から噴き出す赤い光の粒に合わせ弛緩した。
本来、生命エネルギーであるマガツヒを吸収するのに部位は問わない。
しかしシエスタはそれに気付くでも無く精一杯身を竦め、
程なく全身から噴き出す赤い光の粒に合わせ弛緩した。
「ふぁ……ぁあ……ぁ」
首の付け根から流れ出る灼熱の奔流に意識を焼かれ、嬌声をあげる。
産まれ出でて味わった事のない死の悦楽は、
悪魔の埋まる其処から全身を駆け巡り、少女を蹂躙した。
我知らず覚束無い腕で空を掻き、ヒトシュラの首にそれを絡めると、
あらん限りの力で後頭部の突起物を握り締め、殊更深く自らに押し付ける。
産まれ出でて味わった事のない死の悦楽は、
悪魔の埋まる其処から全身を駆け巡り、少女を蹂躙した。
我知らず覚束無い腕で空を掻き、ヒトシュラの首にそれを絡めると、
あらん限りの力で後頭部の突起物を握り締め、殊更深く自らに押し付ける。
「ふぅ……くふぅ……んんッ」
口は既に語るのを止め、雫と喘ぎを垂れ流す器官へと成り果てていた。
擦り寄る様に、剥き出しの肩口を必死に密着させようと身じろぎ、
胸元が己の体液で、しとどに濡れる事など気にも止めない。
時間の感覚も定まらず、その行為の意味さえも忘れ耽溺すると、
突如訪れる喪失感に、思わず抗いの声音を洩らす。
擦り寄る様に、剥き出しの肩口を必死に密着させようと身じろぎ、
胸元が己の体液で、しとどに濡れる事など気にも止めない。
時間の感覚も定まらず、その行為の意味さえも忘れ耽溺すると、
突如訪れる喪失感に、思わず抗いの声音を洩らす。
「……ぃあぁ」
シエスタは頭を振り俯いて、絡めた指を放すまいと力を込めるが、いとも容易く解かれた。
何故、と目線を擡げてヒトシュラ見やれば、
今し方の行為が何であったか思い出し、気恥ずかしさからかその場へ崩れ落る。
肩を揺らし涙に頬を濡らすと、傍らに跪いた悪魔に顔を優しく拭われた。
柔らかく撫でられるくすぐったさに幾分気が晴れたのか、
はにかんで、ぎこちない笑みを作って見せる。
何故、と目線を擡げてヒトシュラ見やれば、
今し方の行為が何であったか思い出し、気恥ずかしさからかその場へ崩れ落る。
肩を揺らし涙に頬を濡らすと、傍らに跪いた悪魔に顔を優しく拭われた。
柔らかく撫でられるくすぐったさに幾分気が晴れたのか、
はにかんで、ぎこちない笑みを作って見せる。
「ごめんなさい……ヒトシュラさん……
私ったら先から迷惑ばかり掛けてしまって……
今度からはちゃんと……大丈夫ですから」
私ったら先から迷惑ばかり掛けてしまって……
今度からはちゃんと……大丈夫ですから」
誰よりも、自分に云い聞かせる様に言葉を綴る。
開けた服も整えると、心許ない足取りで立ち上がり、
辺りを確認すれば、間もなく学院生の朝食である事が窺えた。
開けた服も整えると、心許ない足取りで立ち上がり、
辺りを確認すれば、間もなく学院生の朝食である事が窺えた。
「ふぅ……これは私がやっておきますから。
ヒトシュラさんも早くミス・ヴァリエールの所へ行って差し上げて下さい。
もうすぐ朝食の時間ですよ」
ヒトシュラさんも早くミス・ヴァリエールの所へ行って差し上げて下さい。
もうすぐ朝食の時間ですよ」
澄まして冷静に努め、そう述べれば、
ヒトシュラは首肯を残し、程なく洗い場を後にする。
シエスタは、その後ろ姿に憂いの眼差しを投げ掛け一息吐くと、
気分を一新して腕まくり、朝の日課を再開した。
ヒトシュラは首肯を残し、程なく洗い場を後にする。
シエスタは、その後ろ姿に憂いの眼差しを投げ掛け一息吐くと、
気分を一新して腕まくり、朝の日課を再開した。