あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

汝等、虚無の使い魔なり!-01



「な、に!?」

 視界が歪んだ。
 否、空間が歪んだ。

「空間、いえ、時空間干渉!?」

 突如起こった出来事に、己の半身が在り得ないと叫ぶ。
 銀色の鏡、すでに体を飲み込み始めている。

「クッ!?」

 不味い、脊髄に走る電撃が『これは危険だ』と警告を発する。
 逃れられない、ズブリズブリと少しずつ沈んでいく。

「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃうぶえ、どうしたのであるかぁ~? デモンベィィィィィン!」

 途端に動きが鈍くなったデモンベインを見て、走り寄って来る無敵ロボ(以下略)。
 こちらの状況にかまわず、大音量で聞こえてくるドクター・ウェストの声。
 頭部の巨大なドリルを回転させて突っ込んでくるドラム缶。

「ハァァァァァアアア!」

 すでに下半身は飲み込まれ、動かせるのは上半身のみ。
 それでもデモンベインを巧みに動かし。

「アトランティスッ!」

 真下から右足で蹴りを入れ、ドラム缶が中に舞う。

「ぬぅおおお!?」
「ストライクッ!」
「まったねぇ~♪」

 下ろされる右足と同時に、左足が空間を捻じ曲げながらドラム缶を蹴り飛ばし、星の彼方へとやった

「騎士殿ッ!」

 ドラム缶のことなど眼中に無く、飛んできた半身は魔術紋様を一瞬で展開させる。
 赤光して軋みを上げ、1秒と持たず魔術紋様が砕けては、新たに現れてまた砕ける。

「ッ!」

 それが数百単位で起こり、己の半身が苦悶の表情を浮かべる。

「どうなって、いる!?」

 己の半身と同様に、魔術紋様を組み上げ抵抗する。
 が、同様に一瞬で砕け散る。
 溢れ出るは凄まじい魔力、銀鍵守護神機関に匹敵するかもしれない。

「クイーンッ!」

 通信を入れるが、反応が返ってこない。

「グオッ!!」

 一層引きずり込まれる、これは逃れられない。
 魔術では無駄だと感じ取ったのか、半身が手をとり引っ張り上げようとする。

「紅朔! 手を離せ、巻き込まれる!!」
「駄目よ!」

 んー! と一生懸命引っ張る姿は何時もでは見られないものだった。
 さらに引き込む力を強くなる。
 もう持たない、紅朔の手を振り払おうとするが。

「こうなったら」
「ナッ!?」

 「いっちゃえ!」と言いながら紅朔が銀色の鏡に九朔を押し込む。

「ニィィィィィ!!」

 その手はしっかりと握られ、二人は時空の壁を越えた。






 少女は苦しんでいた。
 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
 唱えては杖を振り、唱えては杖を振り、唱えては杖を振り、唱えては杖を振り。
 何れ来る使い魔に夢を馳せながら振り続ける。
 だが、現実は甘くは無い。
 冷徹に、無情にそれを無視した。
 周囲の地面は抉れている、少女が行った魔法の失敗で幾つもの穴が出来ていた。

『ミス・ヴァリエール……』

 頭髪の薄い男が、少女に声を掛ける。

『もう一度、もう一度やらせてください!!」
『……解りました、でも次が最後です』
『はい!』

 気持ちの良いくらい気合の入った返事が帰ってくる。
 大きく杖を振り、『サモン・サーヴァント』の呪文を唱える。
 だが、何も起こらない。
 周りからは失笑が起こり、少女の事を嘲笑している。

(彼女ほどの努力家でも駄目とは、なんと非情な事だ……)

 少女は強く杖を握った。
 悔しい、悔しい悔しい悔しい!!
 なぜ成功しないのか、なぜ何も起こらないのか。
 血が流れ出るほど唇を強く噛んだ。
 大きな、鳶色の瞳から零れ落ちた涙。
 頬を伝い流れ落ちる。
 綺羅綺羅と輝き、太陽の光を反射した涙が地面に落ちると同時に耳を劈く雷光音が響いた。
 空には星、太陽は双月に。
 誰もが驚いた、今は昼だったはずだ。
 なぜ空に月がある、なぜ空は暗い。
 気が付いたときには空に巨大すぎる魔術紋様陣。
 赤く光を放ち、少女の腰の高さまで降りてくる。
 異常な状態に誰もが動けない、動いてはいけない気がした。
 赤い魔術紋様陣は瞬時に縮小、1メイルの大きさまで縮んだ。

『なに……?』

 少女が声を上げた、小さくなった魔術紋様陣はゆっくりと回転している。
 一歩、また一歩。
 少女はそれに近づいた。

『ミス・ヴァリエール! 危険です! 離れなさい!』

 少女はそれを聞かず、歩み寄る。
 淡く、赤い光を放ち続けるそれに手を伸ばした。

『ッ!?』

 赤い閃光が視界を埋め尽くし、雷光が走った。
 夜は昼となり、双月は太陽へ戻る。
 瞼を開くと、そこに居たのは少年と少女。

『え?』

 赤いマントを羽織る、美細工な少年。
 赤いドレスを身に纏う、美細工な少女。
 眼前に現れた、二人の人間。

「な、汝は……?」

 瞼を開くと桃色髪の少女が立っている、隣には紅朔が同様に立っている。

「あれ? ここは?」
「それはこっちの台詞だ、なぜあの時押した」
「引いて駄目なら押してみろって言うじゃない?」
「時と場合によるだろう!」

 目の前で喧嘩? を始めた少年と少女。

『ちょっと! 煩いわよ!』
「いきなり叫びだして、何なのよこの子」
「恐らくは注意されたのであろうが、なんと言ってるか解らないな」
「時空を超えてきたんだから、言語が通じるとは思えないわよ?」
「同じであったら、むしろおかしいだろう」
「まぁ~それもそうよね」
『ちょっと! あんた達何言ってんのよ!?』

 何かよく解らない言葉で捲くし立てられる。

「これは如何するべきか」
「じゃあ、少し調べてみましょ。 見たところ人間のようだし」

 そう言って紅朔は親指の腹を八重歯で切り、人差し指につける。

「何をする気だ?」
「“調べる”のよ」

 紅朔は何か言っている桃色髪の少女の口の中へ人差し指を突っ込んだ。

『もあっ!?』
「今もあって言ったな」

 顔をそらせ、口の中から指を出す。

『ちょっとアンタ! 何すんのよ!』

 その、少女の唾液と自分の血が混ざり合い付いた指を自分の口へ運ぶ。

『なっ!?』
「紅朔!?」
「うーん、大体は解ったわよ? はい、騎士殿も口を開けて」
「なにもがぁ!?」

 と、無理やり口の中へ突っ込まれた。

「“解る”はずよ、ちゃんと理解するようにしましょ」

 途端に、この世界や国の言葉が頭に叩き込まれる。
 そして、その少女の名前や悩み、今やっていた儀式の事も全て理解できた。

「いきなりは無いだろう、いきなりは!」
「解ったんだし、そこはプラスマイナスゼロってことにしておきましょ?」
「あ、あんた達喋れたんだ……」
「ああ、今まで解らなかったがな」

 少女、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールは二人の姿を再度確認した。
 少年の方はマントを羽織っているが杖を持っていない。
 少女の方はいろいろ薄い紅いドレスのみ、如何見ても貴族ではない。

「あんた、貴族?」
「この世界の定義で言えば違う」

 少年、九朔は答えた。

「この世界……? まぁ平民ってわけね、そっちの方も貴族ではないわよね?」
「さぁ? どうかしらねぇ?」

 少女、紅朔はひらひらとドレスのスカートを舞わせる。

「どっちなのよ、答えなさい!」
「違う、貴族ではない」

 変わりに九朔が答える。

「両方平民……ね」

 かなり落胆したルイズ、あれだけの出来事があったのに召還したのはただの平民。
 それこそ、ドラゴンとか現れるかも!? と期待したのだが現実は厳しかった。

「ミスタ・コルベール! もう一度召還させてください!」
「それは出来ない相談だ、ミス・ヴァリエール」

 頭を横に振ったのは教師のコルベール。

「『サモン・サーヴァント』は神聖な儀式だ、たった一度きりなんだ」
「君は彼らのどちらかと『コントラクト・サーヴァント』を──」
「お断りね」

 コルベールの言葉を遮ったのは紅朔。
 真紅の瞳がルイズを覗き込む。

「ああ、駄目よ駄目よ? 『ゼロのルイズ』なんかに使役されたくないわ~」

 芝居掛かった言葉と仕草、完全にルイズを馬鹿にしている。

「な、なんですって!?」

 その言葉と仕草を見て顔が茹で上がる。
 周りで聞いていた者達は爆笑が渦巻いた。

「さ、さすがはゼロのルイズ!」
「使い魔に拒否されてらぁ!」

 ドっと上がった笑いにルイズは拳を握った。
 俯き、顔は先ほど以上に紅く染まり、涙が零れ落ちる。
 ブルブルと震えるルイズをよそ目に、紅朔は続けていった。

「でもね、あなた達のような他人をけなす事しか出来ない屑より、好感が持てるわ」

 笑い転げる少年少女達に、並々ならぬ殺気を叩きつける。
 「ひっ!」と軽い悲鳴を上げる人垣。
 それに反応し、コルベールは咄嗟に構えてしまう。

「紅朔!」
「なぁに?」

 にっこりと笑う紅朔、それを止めたのは少年。

「止めておけ」
「騎士殿がそういうなら、止めておきましょ」

 殺気を抑え、先ほどと変わらない雰囲気に戻す。

「それでだ、汝はルイズと言ったな」
「え、あ、は、はい!」

 殺気に当てられたルイズが敬語になっていた。

「我で良ければ、使い魔になってもいい」
「え?」

 ルイズと九朔の声が重なる。

「使い魔が出来ぬと、落第になるのであろう?」
「え、ええ」
「騎士殿、本気なの?」
「ああ、本気だ。 困っているものを放って置くなど騎士道に反する」
「はぁ……、しょうがないわね」

 紅朔は呆れ顔、こうなると何が何でも助けようとするのが九朔である。

「使い魔になってもよいが、条件がある」
「なに?」
「衣食住、衣服は何とかなるだろうが、食住の提供と我等を送り戻す手段を探してくれ」
「食事と宿は提供できるけど、元の場所に戻す魔法なんて……」
「無いのは解っている、それでも良いから調べてほしい」

 肩に手を置かれたルイズは顔を赤くしながら頷いた。
 よく見ればこの少年はかなりの美形、少女の方も同様に美形。
 ついよ、つい顔が赤くなっただけよっ!
 と内心で叫んだ。

「ならば契約を」
「え、ええ」
「我が名は『大十字九朔』、我が騎士道に誓い、汝、『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』に忠誠を誓う』」
「我が名は『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』、五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 唇が触れた、途端左手に熱が走る。

「っ!?」
「ッ!!」

 同時に苦悶の声を上げたのは九朔と紅朔。

「え?」

 二人の左手には使い魔のルーンが浮かぶ。

「こ、これは……、ルーンを見せてもらってよいですかな?」

 九朔のルーンを見つめ、紅朔のルーンを見る。
 薄いが全く同じ紋様、一人で二人の使い魔。

「うーむ……」

 解らない、少年と契約したのに少女の方までルーンが現れる。

「見た事が無いルーン、それにお二方に付くとは……」

 頭をひねるコルベール、だが九朔と紅朔は理由を理解していた。
 真紅と深緑の瞳がルイズを見つめる。
 彼らは、二人ではない、“一人”なのだから。




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