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虚無と最後の希望 Level05


level-5 「契約」


「後で話、聞かせてもらうからね!」

 学院前でワートホグを降りて、学院へ歩いていくルイズ。
 チーフとタバサが何かを話していたのに気がついたのだろう。
 しょうがないと、すぐに諦める。

「はは、嬢ちゃん気になって仕方が無いようだねぇ。 ある程度話しておいたほうがいいんじゃねぇか? 相棒」
「そうだな」

 杖で突付かれ振り向くと。

「いつ」

 と、聞かれた。
 これからやることがある、それに追従してもらえれば話しやすい。

「これから行く所がある」
「付いて行く」

 もう一度、ワートホグに乗り学院外に墜落しているペリカンへと向かう。
 ものの数分、到着して見るとタバサの目の前には鋼鉄の何かが地面にめり込んでいる。
 半分ほど土に埋まっているので、全体図がわからないが独特なフォルムなのはわかった。

「これは?」
「『D77H-TCI ペリカン』、垂直離着陸機だ」

 よくわからないと言った顔のタバサ、このハルケギニアに人を乗せて飛ぶ物はフネ位しか存在しない。
 全くと言って良いほど存在しない機械の、最上級と認められるであろう品質の鋼鉄で組み上げられた垂直離着陸機などと説明しても分からないだろう。
 口を開けているかのように見えるのは人員を乗せる貨物部分。
 チーフはその中に入っていく、タバサはそれを見つめるだけ。
 十秒も経たず、手に何か細長い物を持って出てくる。
 そのまま、ワートホグに乗せた。

「私の本当の名前は『シャルロット・エレーヌ・オルレアン』」
「オルレアン? つーことはおめぇは王族か」

 暇を見てこの世界の情勢などを調べていたチーフ。
 そのチーフが知る世界情勢を読み取り、デルフリンガーは『オルレアン』に適合した情報を口にする。

「いや、いきなり重い話になっちまったなぁ」

 『オルレアン』、その名を持つものは現ガリア王国の王、ジョゼフ一世の弟であり、暗殺された天才的なメイジだと聞いていた。
 そうなると、タバサは、シャルロット・エレーヌ・オルレアンはオルレアン公の娘であり、王位継承権を持つ王女。
 そして父が暗殺された事、母がエルフの薬で精神を壊された事、そしてその母が人質に取られている事。
 それを利用してガリア北花壇騎士団員として呼び戻されては危険な任務を強いらされている事。
 その全てがジョゼフ一世の指示で行われた事を話した。

「こりゃあ、重すぎたな。 嬢ちゃん、すまねぇ」
「いい」

 無表情で返事を返すタバサの瞳は、先ほど以上の憎悪が渦巻いていた。

「事情はわかったが、これは貸せない」

 その言葉を聞いたタバサに失望の色が宿る。

「どうしてもと言うならばこんな物を使わず、自分の手でやるんだ」
「だな、あれはかなりあっけねぇぞ。 殺したって感覚がねーし」

 あたかも撃ったことあるようなデルフリンガーだった。

「そう」

 少し俯くタバサ。

「まぁそう落ち込むなよ、今すぐは無理でもいずれその機会が来ると思うぜ? その時まで自分を磨いときゃいいじゃねぇか」

 チーフはその話を聞きながら、弾薬ケースを開け、弾丸の数を数える。
 その後、スナイパーライフルのグリップを持つとステータスに4/0と表示される。
 弾倉に4発、予備弾薬は0、弾薬ケースの中には12発。
 他の所を回ればまだあるかもしれない 。

「今度は貴方の番」

 スナイパーライフルを置きながら、自分の素性を話し始める。
 呼称マスターチーフ、正式名称スパルタン-117は『Spartan-II Project』により作られた兵士。
 最新鋭強化複合装甲服『ミョルニルアーマー』を装備し、あらゆる武器と兵器の知識を備える。
 また、肉体強化を施され、常人とは比べ物にならない反応速度や筋力を手に入れている。
 それらにより極めて高い戦闘能力を発揮、座学で学んだ知識と実戦で磨かれ厚く蓄積された経験により、多彩な戦況に対応できる。

 時には部隊を率いたり、またある時はたった一人で敵地へ乗り込む最強の歩兵、それを目指して作られ完成した兵士。
 そして、チーフと同様の装備と知識を持ち合わせるスパルタン達が存在していたが。
 『人類の存在は神への冒涜である』と戦いを仕掛けてきた異星起源種族軍事連合『コヴナント』の圧倒的な技術力と数の前に敗北を重ね、最後にはチーフを残し全滅したと言う。

「馬鹿げた話だろ? あんな奴らに攻め込まれたらあっという間に終わっちまう」

 馬鹿げた話所ではない、本当の話なら人間同士が争っている場合じゃない。
 チーフと同様の、強力な兵士が複数居たにも拘らず人類を敗北させ続けるコヴナント、その強大さが手に取るようにわかった。

「信じる信じないはそちらに任せる」

 ただ、淡々と話すチーフの言葉にタバサは頷く。
 荒唐無稽な話だが、それを嘘と判断する物は無く、チーフの戦闘能力と手に持つ武器により高い説得力があった。
 だから。

「信じる」
「なら、具体的な訓練内容は──」
「夜に」
「……、わかった」

 今すぐにでも聞きたいと言った感じだが我慢しているようだ。
 話が終わる頃には日が落ちかけ、双月が顔をのぞかせていた。
 ワートホグの銃座には拾い集めてきた銃、ハンドガンやアサルトライフル、バトルライフルなどがあった。
 助手席にタバサを乗せ、学院の門をくぐる。

「ここでいい」

 女子寮から少し離れた場所でタバサは降りた。

「夜に」

 違えない様に再度確認、それを聞いて頷く。
 歩きながら口笛を吹くタバサ、数秒後にタバサの使い間が飛んできて背中に乗せ飛んでいった。

「嬢ちゃんの目、やべぇな」

 どんなことをしても『殺す』と言う決意。
 あの幼さでここまでの覚悟をするほどの出来事だったのだろう。
 ハンドルを切り、シエスタに聞いた使われてない倉庫へ向かいアクセルを踏み込んだ。





「遅いわよ」

 銃の手入れをこなし、部屋に戻ると完全に日が落ちていた。
 それを待っていたのは腕を組み椅子に座るルイズ。

「それじゃ、何話してたか聞かせてもらうわよ」
「まあまあ落ち着けって、相棒は元から話すつもりだったしな」
「アンタは黙ってなさい! 私はチーフに聞いてるの!」

 「おーこえぇこえぇ」と鞘に納まるデルフ、それを見た後にチーフは話し出す。
 タバサの素性を除き、戦った経緯、その後の話した内容。
 そして、戦闘技術を教えることになった事を。
 一々質問を挟んでくるルイズのおかげで外は紅と蒼の、双月の光が世界を照らしていた。

「なんでそんなに……」
「事情はしらねぇが、強くなる必要があるんじゃねぇか?」

 先ほどタバサから聞いた話をおくびにも出さず、デルフは語る

「でも、何でチーフに?」
「おいおい娘っ子、相棒がべらぼうに強いこと忘れてんだろ?」
「それでもよ、メイジがその……、魔法を使えないチーフに何を教わるのよ」
「娘っ子、タバサって嬢ちゃんは魔法の扱いはかなり上手いと思うぜ、それには納得出来るよな?」
「え、ええ」

 悔しいが、タバサのその才覚は素晴らしい物であるとルイズは思っている
 あの歳でトライアングルクラスは伊達じゃない
 もし自分が対峙したとしたら、数秒と持たずやられてしまうだろうと結論付ける

「まあ本気出してないとは言え、魔法を使えない相棒に負けたんだぜ? それがどういう意味か、解らねぇわけじゃねぇだろ」

 うっ、と言葉が詰まる。
 よほど油断している状況で奇襲を掛けるぐらいしか、メイジに勝てない。
 正面に立って対峙すれば、何らかの魔法によってあっさりと倒されてしまうだろう。
 だがチーフは正面からメイジを、それもトライアングルのタバサに正面から打ち勝った。
 チーフという個人はハルゲニアの「魔法を使えない者はメイジに勝てない」と言う絶対に近い定義を破壊していた

「第一、優れた技術を持つやつに師事を仰ぐなんざよくある事じゃねぇか」
「そ、それはそうだけど……」

 一理ある、確かにデルフリンガーが言うことには一理在るけど……。
 あのチーフがタバサを抱きかかえていた光景が浮かび、何かが引っかかっていたルイズ。
 少し考える、「まさか、まさかね」と飛躍しすぎた考えに頭を振った。

「う~、まあいいわ! 今回は許してあげる、でも──」

 言い掛けたルイズが止まる、チーフも気づいている。

「地震……?」

 かすかに感じる、女子寮が揺れている事に。

「地震、じゃないわね……」

 揺れは一度だけではなく、定期的に揺れている 。
 歩いていれば気が付かないほど小さな揺れ 。
 ルイズは窓に手を掛け外を覗く。

「……なにあれ?」

 本塔の横には巨大な何かが聳え立っている 。
 本塔と同等の高さを持つ──。

「ゴーレム!?」

 音がしないと言うことは『サイレント』を掛けていると言う事。
 巨大なゴーレムが本塔の壁を殴っている、その殴っている場所は宝物庫。
 ソコから考えられる結論は一つ。
 ルイズはかかとを翻し、ドアを勢いよく開ける。
 ガンッ、とドアは鈍い音を出しながら何かにぶつかった。

「あっ」

 ドアを開けた先にはタバサが蹲っていた。

「ご、ごめんなさい!」
「大丈夫」

 よろめきながら立ち上がるタバサ。

「約束」
「それは後にして! 本塔の横にゴーレムが立ってるの!」

 そう言ってルイズは駆け出す。
 だが、少女の足では遅い。

「きゃ!」

 軽い悲鳴を上げたルイズ。
 チーフはルイズを抱えて、廊下を走る。
 ルイズの二倍以上の速度で駆けた、それを見ていたタバサは。

「アン・ロック」

 ルイズの隣の部屋、キュルケの部屋の鍵を解除。
 杖でキュルケを叩き起こした。

「ちょっと~、なんなのよぉ」
「外にゴーレム」
「え、なに? なに?」

 よく理解できていないキュルケを他所に、タバサは自分の部屋に戻り、口笛を吹いて数秒経ってから窓から飛び降りた。





 時を遡る事、数時間前。

「チッ、なんて頑丈な……」

 本塔の外壁、非常に分厚く、さらには『固定化』の魔法まで掛けられておりフーケのゴーレムでも壊せない頑丈さがあった。
 塔内部の扉にも同様に強力な『固定化』が掛けられており、他の物質へ変化させる『錬金』を弾くほど強力。
 固定化を上回る錬金を掛ければ良いが、フーケ以上のメイジが掛けた代物であり、変質は不可能であった。

「中が駄目なら外、と思ったがそう上手く行かないようだね……」

 だが、ここで諦め無いのがフーケ。

「とりあえず、叩いてみるかね」

 地面が競りあがり、物の数秒で巨大なゴーレムが出来上がる。
 そして、大きく振りかぶったゴーレムの腕。

「ひび位は入っておくれよ!」

 壁に当たる瞬間、ゴーレムの拳を鉄へと錬金した。




「やっぱりゴーレム!」

 外に出ると見えたのは巨大な、30メイルはあるゴーレム。
 その土の拳を本塔にたたき付けていた。

「まさかフーケ!?」

 チーフと武器を買いに言ったときに、店主から聞いた言葉を思い出す。

『近頃、下僕に剣を持たせる貴族様が増えてきたんですよ』
『どうして?』
『何でも、「土くれのフーケ」ってな貴族様ばかり狙った盗賊が居るって話でさ』

 そのフーケが宝物庫を狙ってる!?
 止めなければ、そう思いルイズはゴーレムへ向かって駆け出そうとしていた。

「なにをする気だ」
「何って、あいつを止めるのよ!」

 怒鳴るようにルイズは言った。

「何か手はあるのか」
「うっ」

 言葉が喉に詰まる、考えなしに突っ込もうとしてた様だ。

「で、でも! 何とかしなくちゃ……」

 指を唇に当て考え始めるルイズ。

「ルイズ!」

 そこへキュルケが走ってくる。
 その上空にはタバサとシルフィード。

「何なのよあれ! あの大きさだとトライアングル所かスクウェアは有るわよ!」
「多分、土くれのフーケよ」
「まさか、あんな堂々と狙ってくるとは思っても見ないわよね」
「何とかして止めないと!」
「とりあえず……、タバサ!」

 呼びかけ、操っている奴の顔を見れないか尋ねる。

「見えない」

 距離もあるが、夜な上にフードを被っている為、男か女かすら解らなかった。

「ダーリン、あれ、何とか出来そう?」
「ちょっと! 何がダーリンよ!」
「あら、良いじゃない別に」

 口喧嘩を始めそうな二人に割って入る 。

「無理だな」

 アサルトライフルにハンドガン、デルフリンガーにあとは『プラズマグレネード』と『フラググレネード』が2個ずつ
 あのゴーレムを破壊するには明らかに火力不足、『ロケットランチャー』や『ロッドガン』、『スコーピオン』でもあれば簡単だろうが

「だが、やって見るしかないようだ」

 アサルトライフルを構えるチーフと杖を手に持つキュルケ。
 上ではシルフィードに乗るタバサ。

「わ、わたしも!」

 いそいそと杖を取り出すルイズ。

「それじゃあ、援護をお願いできるかしら? ミス・ヴァリエール」
「任せて! ミス・ツェルプストー!」

 それを聞いてゴーレムへ駆け出すチーフ。
 後に続くように杖を振るうキュルケとタバサ。

「ファイアボール!」
「エア・カッター」

 噴出した火球と風の刃。
 チーフの上を通り過ぎ、ゴーレムに直撃した。

「やった!」

 それを見たルイズが喜ぶが。

「あー、駄目っぽそうね」

 表面を焦がす程度と浅い傷を作る程度、すぐさま傷が修復され元通りになった。
 走りながらハンドガンを構え、肩に乗るフードを被ったフーケへと照準を向けるが、ゴーレムは体を捻り、腕を振り上げる。
 体の向きや腕のお蔭で、フーケがゴーレムの影へと入り見えなくなる。
 そして、キュルケとタバサの攻撃に気が付き、踏み潰そうと歩き出すゴーレム。

「下がるわよ!」

 踏み潰される事を危惧したキュルケがルイズの手をとり、逃げようとするが。

「駄目よ! ここであいつを捕まえなきゃ!」

 そう言って杖を振るうルイズ。

「ファイアボール!」

 ゴーレムの表面、軽い爆発が起きる。

「ルイズ!」

 引っ張っていこうとするキュルケだが、振りほどいて再度杖を振るうルイズ。

「ファイアボール!!」

 同様の、小さな爆発。
 1メイルも無い小さな穴を作るだけに至った。

「もう!」

 無理やり、ルイズを抱え上げて逃げ始めるキュルケ。

「何馬鹿なことしてるのよ!」
「離して! 貴族は敵に後ろを見せないのよ!」
「ちょっ、キャ!」

 ルイズが暴れキュルケが転倒、抱えられていたルイズも同様に転がる。
 ゴーレムは踏み潰そうと歩み寄る、次第に強くなる地響き。

「ファイアボール!!!」

 起き上がり、呪文と唱える。
 先ほどより大きな爆発だが、ゴーレムを崩すには至らない。

「ルイズ!」
「ファイアボール!!!!」

 またも爆発。

「どうしてよ! どうして出ないのよ!!」

 唱えるのはファイアボール、起こるのは爆発。
 踏み潰そうと迫るゴーレムの足。
 キュルケはルイズに覆い被さり、タバサは間に合わないと目を瞑った。
 確実に踏み潰された、確かにそうなるはずだった。
 だが、ゴーレムから少し離れた場所にチーフと、二人の少女を抱きかかえる姿があった。
 そして、ゴーレムの足首は青白い閃光とともに砕け散る。
 バランスを崩し、倒れそうになるも足首がすぐさま再生を始める。

「馬鹿! 何であんなことしたのよ!!」
「悔しく……て、いつも馬鹿に、されて……、フーケを捕ま……、えれば、もう誰にも『ゼロ』なんて……」

 溜めに溜めた思いが堰を切ってあふれ出していた。
 こんなにも強い使い魔を呼び出したくせに、事に関して何も出来はしない。
 己の無力さで涙が溢れ出し、喋れなくなるほど泣きじゃくった。

「メイジの実力を見るなら、使い魔を見ろ」

 泣くルイズの声をさえぎる様に、チーフは言った。

「契約を」

 目の前に立つ使い魔は、恐怖や慢心が無く、ただ起伏の無い感情で言った。
 彼は決めたのだ、ルイズの使い魔になることを。
 正式な契約を結ぶことは、元居た世界に返れなくなるかもしれないという事。
 それを承知で言ったのだ。
 その決意を固めた使い魔がたった一言を要求している、ならば主人として答えてあげなければならない。
 溢れていた涙は止まり、一つの信念が宿る。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 ルイズはチーフに口付けをした。
 その途端、チーフの左手から光があふれ出す。
 浮かび上がったのは『ルーン』。
 ここに契約に至り、チーフは正式なルイズの使い魔となった。

「命令を」
「っ…、フーケを、『土くれのフーケ』を捕まえなさい!」

 その言葉を聞いた使い魔は、一言返した。

「了解した」

 頷いた、デルフリンガーを持つ左手にはルーンが淡く輝いている。
 振り返ると同時に右手に持ったアサルトライフルを背中に担ぎながら駆ける。
 視線の先には高さ30メイルはある巨大なゴーレム。

「突っ込んでいくなんて……」

 チーフの行動を見てキュルケは呟く。

「大丈夫よ! チーフは私の使い魔なんだから!」

 涙目ながら自信たっぷりにルイズは言った、その姿を見たキュルケは嬉しそうに。

「ええ、大丈夫よね」

 と、僅かに微笑んだ。

 その頃、ゴーレムへの攻撃が効果無しと判断したタバサは上空へ舞い上がっていた。
 ゴーレムへの攻撃が効かないなら、それを操るメイジへ攻撃する。
 対土メイジの基本であり、最も効率がいい解決方法。
 幸い、ゴーレムを操るメイジの意識はチーフに向いている。
 好機と判断、上空へ舞い上がっていたシルフィードは一気に下降する。

「───」

 タバサは小さくつぶやき、ゴーレムの肩に乗るローブを着たメイジに向かって杖を振るった
 威力と詠唱速度を考慮した風の魔法を放った
 うねる風の刃、メイジを切り裂かんと空を走るが直前で弾け消えた
 途端、ゴーレムの左拳が迫る
 振り上げる拳は鋼色に変化し、魔法を防ぎつつタバサへ攻撃を行う
 だが、体をひねるシルフィードには当たらない
 それを見てフーケは笑った

「残念」

 ゴーレムの腕になぞるように突っ込んでくるタバサとシルフィード
 すれ違いざまに魔法を叩き込もうという魂胆だろうが

「見え見えなんだよ!」

 ゴーレムの腕から土の壁はせり上がり

「!」

 シルフィードは避けきれず激突した
 放り出されたタバサと、墜落するシルフィード

「残念だったねぇ、これで仕舞いだよ!」

 止めと言わんばかりにフーケの足元から撃ち出される石礫
 シルフィードは咄嗟に尻尾を振るい、石礫の射線上に割り込ませタバサを石礫から守る
 だが、完全とは言えなかった
 たった一つ、通過を許した礫が杖を振るおうとしたタバサの額に直撃
 その威力は十分、一発でタバサの意識を刈り取った
 それを見たシルフィードは「きゅいっ!」と軽い悲鳴を上げ、バランスを立て直せずそのまま落ちていく

「タバサッ!」

 悲鳴に近いキュルケの声
 杖を構えたキュルケの『レビテーション』は間に合わない
 シルフィードは落下する前に体勢を立て直せるだろうが、タバサを救うに至らない
 杖すら握っていないルイズは持っての他
 ならば駆け出す者は一人
 およそ3メイル、落下寸前のところでタバサを抱きかかえ大地を駆けるのはチーフ
 キュルケの前まで駆け、タバサを渡し抱える

「離れろ」

 キュルケは頷き、二人はタバサを抱えその場から遠ざかる。

「タバサの顔に傷が残ったら、骨の一欠けらさえ燃やし尽くしてあげるわ」

 気絶したタバサを抱えるキュルケの声は明らかな怒気を含んでいた。





 左手にデルフリンガーを持って走る。

「相棒! やっちまえ!」

 その速度は風、振るわれた剣は剛力。
 剣の面で叩かれたゴーレムの足は爆発したように弾ける。

「なッ!」

 驚きをあげたのはゴーレムを作り上げたメイジ、土くれのフーケ。
 足首の8割を吹き飛ばされ、バランスを崩すゴーレム。

「その程度で!」

 即座に修復を始めたゴーレム。
 やはりこの程度では破壊できない、一撃で大部分を破壊できる武器ではないと。
 破壊、その言葉で思い出した。
 何度かデルフをたたきつけ、土を吹き飛ばす。

「無駄だって言ってるだろうがぁ!」

 踏み潰そうと足を上げるが、すでにその場所には居ないチーフ。
 見ると、ルイズ達の元に駆け寄っていた。

「ど、どうしたの!?」
「ルイズがゴーレムを破壊するんだ」
「え?」

 突飛に言った言葉にルイズが固まる。

「本気なの?」

 信じられないといったキュルケ。
 その問いに答えるチーフ。

「ああ」
「で、でも!」

 口ごもるルイズ、前方には迫り来るゴーレム。

「ルイズは『ゼロ』ではない」

 と、隣で呟くように言ったチーフ。
 驚きながらもその言葉に同意したのはキュルケ。

「そうね、ダーリンを召還したんだから、ルイズはもう『ゼロ』じゃないわ」
「キュルケ……」
「ほら、杖を構える!」
「え、あ」

 キュルケがルイズの腕を取り、杖をゴーレムへ向けさせる。

「狙いはゴーレムの胸だ」

 杖先はゴーレムの胸部へ。

「さあ、集中」
「うん」

 瞼を瞑るルイズ。

「全力で唱えなさい、貴方の魔法を」

 瞼を開くと同時に唱えた。

「すぅーーー」

 息を吸い込み、魔法を唱えた。

「ファイアァァァァボォォォーール!!!」

 一瞬、ゴーレムの胸が凹んだが何も起こらない。

「失敗……?」

 迫るゴーレム、高く上げられた足は寸分違わず自分達の下へ降ろされる。
 終わりだ、と悲観したキュルケだったが。

「いや、成功だ」

 チーフが言うと同時にゴーレムの上半身が凄まじい爆発を起こして吹き飛んだ。
 地面が揺れ、響き渡った轟音が鳴る、爆発は激しい閃光を生み、暗く染まった学院を染め上げた。

「す、凄いわね……」

 目前で大爆発を起こし、その突風で煽られながらもあまりの威力に驚くキュルケ。
 確かに、戦車砲並みの破壊力。
 多少の爆発遅延があったが、個人が扱える魔法の中でもトップクラスの威力があることは間違いない。
 そんな思考の中、落下する土片の中にフーケを見つけたキュルケがレビテーションを掛けていた。

「ね、ねえ、しししし死んで無いわよね……?」

 ゆっくりと降りてきたフーケを見てルイズが言った。

「死んでない方がおかしいわよ」

 ど、どうしよう! と困惑するルイズ。
 火系統のキュルケが見たことが無いほどの大爆発。
 その爆心地近くに居たフーケが生きていればそれこそ奇跡だが。

「と思ったけど、生きてるっぽいわね」

 微かな呼吸、恐らく衝撃で気絶しただけのようだ。

(見た目ほど威力は無かったのかしら?)

 失敗したのにこの威力、正しく成功させて居たらどれぐらいの威力になっていたか。
 想像を超えるルイズの今だ開かぬ才能に冷や汗を流した。

「ん」

 目が覚めたタバサ、空ろな瞳には落ちる土破片が映っていた。

「タバサ、大丈夫?」

 タバサの額から流れていた血をぬぐうキュルケ。

「大丈夫、ゴーレムは?」
「ルイズの魔法で吹き飛んだわよ」

 失敗魔法しか出来ないルイズがゴーレムを吹き飛ばした?
 30メイルはあるゴーレムを?

「本当?」
「うううそじゃないわよ! 私が吹き飛ばしてやったんだから!」
「本当?」
「ええ、かなり凄かったわよ」

 その言葉を聴いて納得した。
 ルイズがあのゴーレムを吹き飛ばしたのは真実だと。
 自分の魔法ではあのゴーレムを破壊するどころか、小さな傷を付ける程度しか出来ない。
 そう考えてほんの少し、ルイズの魔法の攻撃力に嫉妬していたタバサだった。

「すごい」
「え、あ、ありがと」
「まぁ、ともかくさっすがはダーリン!」
「ちょぉ! なに人の使い魔に抱きついてるのよっ! それにゴーレム壊したのは私なんだからねっ!」
「感謝」

 キュルケはチーフに抱きつき、ルイズはそれを見て激怒、タバサは軽く頭を下げていた。

「なあ、相棒。 俺は『剣』なんだぜ……?」

 騒ぐ3人を他所に返事も返されず、本来の用途で使用されなくて落ち込むデルフリンガーだった。


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