あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔を使う使い魔-01

 異様な光景が眼前に広がっていた。嗅いだ事のない強烈なにおいが鼻を突き、
 これ以上においが入ってこないようにと、思わず両手で鼻を覆った。
 人並みの向こうから灰色の煙が垣間見え、もうもうと天に昇っては消えていく。
 あの場所で何が起こっているのか、ルイズには想像することが出来なかった。

 ちっこい体を人の間に一生懸命ねじ込んで、ようやくその有様を見れるようになったときに
 は全てが終わっていた。 
 きついにおいを発する原因であろう、焼け溶けた何かを境目とするように対峙している2人。
                     ・・・・・・
 そのうちの片方――あの青銅のギーシュが、あろうことか、私の召喚した使い魔の目の前に
 屈服していた。



                   第一話 



「ちょっと! 何があったの!? ねぇ、聞いてる!?」

 ルイズは自分の使い魔の少年に飛びつき、事情の説明を求めた。
 甲高い声が当たりに響いたが、少年はただ無口を貫き、服に掴みかかるルイズの手を
 邪魔くさそうに払った。   

「こら! 無視するな! あ、ちょっと!!」 

 使い魔は踵を返すと、無言のままスタスタと歩き去った。
 通る道には貴族達の集まりがあったが、使い魔が真っ直ぐに歩いてくると誰もが無言で
 後じさり、次々と道を譲っていた。
 身を乗り出す気持ちで「まちなさい!」と思いっきり叫んでやりたかったが、それは
 突然後方からやってきた揺さぶりによってさえぎられ、使い魔に届かなかった。
 次に「あっ!」と口から出たときには、もう使い魔の後ろ姿は見えなくなったいた。

「おいルイズ……オマエいったいなんて奴を召喚したんだよ!?」

 振り向くより速く聞こえた声は、聞き覚えのある声で、やや震えていた。
 コレは確か、同じクラスにいる太っちょ、『かぜっぴき』マルコリヌの声だったと
 ルイズは思った。
 振り向いて顔を見てみれば、そこにはふっくらと頬肉を蓄えたマルコリヌが、
 驚いたような、恐怖を感じているような、なんとも形容しにくい微妙な表情を浮かべていた。
 しかし、それはマルコリヌだけではなかった。
 彼の後ろにいるクラスメイトのほとんどが、マルコリヌのように形容しにくい表情を
 顔に貼り付けており、特にギーシュと仲のいい面子はこっけいだと思える程間抜けな顔をしていた。

 だがそんなことはどうでもいい。
 それよりルイズにとって、そんな彼らの質問はむしろ自分が誰かに聞きたいことであった。

「あのねぇ、わたしは今ここで何があったのか見てないのよ! わかる訳ないでしょーが!」

 むしろあんたたちこそ何が起こったのか教えなさいよと気迫の篭った声で押し返すと、
 ルイズに攻め寄って近くにいた何人かの生徒はいっせいに耳を塞いだ。よほど金切り声が
 うるさかったのだろう。それでも何人かの生徒は、頭を抱えてその場にしゃがみこんだ。
 回復にはしばらくの時間が要った。


 しばらくし、生徒達はふらつきながらも立ち上がった。
 ようやく話が聞けるかと思っていた途端、しかし……

「ふん。自分の使い魔のことぐらい、ちゃんと理解しとけってんだ。これだから『ゼロ』のルイズは……」

 ぶちんっ

 聞こえてきた小さな呟きは、再びルイズの堪忍袋をずたずたのボロボロに引きちぎった。

「いってくれたわね――――――!!」


 広場に、爆発音がこだました。





 ルイズが使い魔として、少年を召喚したのはつい先日のことだった。
 幾度の失敗の果てに成功した『結果』が何の変哲もなさそうな平民の、しかも子供だったことに
 ルイズはこの世が、始祖ブリミルがわたしのことをお嫌いになっているんだ! とかなり強い
 ショックを受け、案の定その場にいたコルベールを除くほぼ全員に笑われた。

 一方で、召喚されたばかりの少年は、驚いたように目を見開いてあたりを見渡した。
 だが、決して騒ぎ立てることもなく、目の前にルイズが現われて儀式の説明をしてもまったく冷静な態度を
 崩さなかった。さすがにコントラクト――要するにキス――されたときは顔を赤くしていたが、
 それ以外ではルーンが刻まれるときすら顔を苦痛にゆがめたものの、声という声を一切上げなかった。

 少年は一風変わった格好をしていた。
 赤を基調とした見たこともない服を着ていて、頭には何か印のついた、これまたやはり赤を基調とした帽子を
 かぶっており、空色のズボンと妙にマッチして見栄えはそこそこよかった。顔も悪くはなく、むしろいい男だ。
 少年の面影の中に大人びた知性が見て取れたのは、決して態度だけのせいだけではないだろう。

 ただ、愛想はすこぶる悪かった。

 ルイズが勇気を出して何かしゃべりかけても、ほとんど返してくることがないし、ひどいときに
 は目も合わせようとしない。
 あまりの態度にルイズが怒鳴りあげても、まるで聞いちゃいないとでも言うようにふらふらと部
 屋から出て、毎回必ずどこかへ消えていた。
 特別に食堂入りを許したときも、食堂に一歩足を踏み入れたとたんに背を向け、ルイズの制止も
 聞かずに勝手にどこかに行き、食堂には戻ってこない。
 食べ終わって部屋に戻ると、その扉の前で何をすることなく立ち尽くしていたのだ。 
 その間にどこに行ってたのかルイズが尋ねても、少年はまるで寝むるように目を瞑り、
 こくりと頭を頷かせるだけ。



 ルイズは使い魔の生意気な態度に怒りを覚えるとともに、
 使い魔の1人すら、それも平民すら使いこなす事が出来ない自身に対する失望を感じていた。
 そんな使い魔があのギーシュと決闘するのだという情報を聞いたのは、
 食事を終え、部屋の中であの使い魔のことに頭を悩ませているときだった。



 【平民対メイジ】。
 どっかのバカ貴族どもなら嬉々として向かえる余興だが、この学院ではあってはならない絶望的な図式だった。
 あのバカ! と内心で叱り飛ばすとともに、すぐにルイズは飛び出した。
 道中であの少年が……名前すら知らない自分の使い魔が無残にやられてしまう姿が
 まざまざと思い浮かび、ルイズは震えた。
 名前も知らないはずなのに、あの少年には死んでほしくないと、心のどこかで思っていた。



 ……そして、たどり着いた決闘の場。
 ルイズはまさかのメイジ敗北という、信じられない結果を目にしてしまった。というわけである。



 ムカつくクラスメイトを適当に吹っ飛ばしたルイズは、自分の使い魔を探して
 廊下をあっちにこっちにうろうろしていた。
 はじめはとっくに部屋に戻っているだろうと戻ってみてのだが、おかしなことに
 使い魔はおらず、仕方なく鍵を掛けなおしてその場を去った。

「ああーんっ! もうどこにいるのよあのバカは!! ……ん?」

 唯一の居そうな所に居なかったため、手当たり次第に探し回る。しかし見つからない。
 食堂に着いた時点で疲れて止まり、仕方ないのでもう一度広場に戻って残ってる生徒
 に手当たり次第に聞いてやろうと決めたとき、ふと厨房から声がした。

「なにかしら?」

 壁に耳を当ててみると、野太い笑い声が聞こえた。

『はっはっはっ! えんりょすんな。まったく謙虚な奴だなお前は!』  
『マルトーさん、……さん困ってますよ』
『………………呼び捨てでいいです。シエスタさん』
『いいえそんな、レ……さんはそっちの方がいいんですか?』

 豪快な声で笑うのは料理長のマルトーだろう。あの人は料理人の癖して戦士のようながっしりした
 体つきだから声だけで安直にイメージが浮かぶ。
 控えめな声で優しく語り掛けるのは声質からして間違いなく女。おそらくメイドの一人だ。
 ということは……ぼそぼそ声で話すこの男の声は……? 

 もしかして!

 思い立ったら即行動。
 ルイズは散々探し回った疲れも忘れて厨房に駆け込んだ。



「こらーっ! バカ犬!!」

 そりゃあ扉があったら蹴破る勢いで飛び込むと、マルトーと若いコック陣と、そう年の
 変わらないだろうメイドと、そのメイドに向かい合っている使い魔の、唖然とした表情が
 ルイズを迎え入れた。

「あ、あ、あ、あんたねぇ。ご主人様に断りもなしに決闘しといて、その上説明もせずに
 立ち去ったあとこんなメイドには、鼻の下伸ばすなんて、いい身分なものねぇ……」

 こめかみに浮かんだ血管がピクピク揺れ、隠し切れなくなっている怒りのあまり、ろれつ
 もスムーズに回っていない。 
 実際、使い魔は鼻の下を伸ばしていないどころか、盗み聞きした会話からしてもいつもど
 おりの無愛想を貫いていたことは容易に判断できたのだが、ご主人である『わたし』を
 さしおいて、こんなメイドごときのもとに駆け込み、なおかつ普通に会話していることが
 どうしても許せなかった。

「も、申し訳ありませんミス・ヴァリエール!」
「あんたに謝ってもらったってどうしようもないのよ! そこをどきなさい!!」
「いいえ、どきません!」

 使い魔をかばうように立ちはだかった、先の会話から『シエスタ』と思えるメイドの少女
 は、ルイズの背後からにじみ出る恐ろしいほどどす黒い圧力に冷や汗をかきながらも負け
 じと頭を下げた。

「この人が……レッドさんが決闘してしまったのは、私が原因なんです!」

 シエスタはルイズの知らなかった使い魔の名前を交えて、思いっきり叫ぶように言った。



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